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将軍世嗣の住まいである西丸の書院番に引き立てられ心浮き立つ伴鍋次郎だが、両親はなぜか狼狽する。町で会った初対面の老武士にいきなり土下座され、不審は募るばかり。そんな矢先、家で書物の整理をしていると、「鍋次郎」と記された自分の名前の位牌と、父の昔の日記を見つける。日記には、鍋次郎が生まれたころの記述だけが欠落していた。いったい私はいったい誰なのだ? 注目作家による傑作長編時代小説。
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Posted by ブクログ 2021年12月09日
202112/実際にあった松平外記による『千代田の刃傷事件』を素材にしたフィクション。序盤の仲睦まじく幸せそうな若夫婦の描写が、却ってこの先の辛い展開を感じさせた。作者の妥協することない筆力で、城内でのパワハラ・いじめ(と言うには余りにも酷すぎる…)が容赦なく綴られるので、読んでいてとてもとても苦し...続きを読むかった。でも結末知りたさと物語・人物描写の巧みさでページ捲る手は止められなかった。外記が我が子の為に作ったふくろうの根付に込められた想いが切ない。妻や他の息子娘らの悲しみ苦しみも思うと胸がいたむ。娯楽時代モノ好きにはおすすめしにくいけど良作だった。
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