異世界もあります! ファンタジー系胸キュン恋愛漫画9選
現実の恋愛から少し離れて、ファンタジー世界のロマンスはいかがでしょう。
剣や武器、特殊能力がモノを言う世界でイケメンたちがかっこよく戦ったり、身分や種族の違いが恋の障害になったりと、リアルとはひと味違う9作品をご紹介します。
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未完結の2作品
タイムスリップした明治40年で出会った、懐かしいあなた『涙雨とセレナーデ』
『涙雨とセレナーデ』【1〜5巻】河内遥 / 講談社
現代の女子高生が、明治40年の東京にタイムスリップ。そこで出会った男性との切ない恋を描いた作品です。
ひいおばあちゃんからもらったネックレスを、大事に身につけている女子高生・陽菜(ヒナ)。彼女には、いつも見る不思議な夢がありました。それは古めかしいお屋敷の庭で、出会った男の子と遊ぶ夢。そんなある日、授業で明治時代の人々も聴いていたというクラシックを観賞していると、陽菜は突然、水の中に入り込んだような感覚に襲われます。そして気がつくと、夢に出てくるあの屋敷の庭に倒れていて、一人の青年が心配そうに彼女を覗き込んでいたのでした。
その青年・本郷孝章(ホンゴウ タカアキ)は陽菜を誰かと勘違いしているようで、彼女をとある屋敷に送り届けます。そこで陽菜が出会うことになったのが、自分とうり二つの容姿を持つ伯爵家の令嬢であり、孝章の婚約者である雛子(ヒナコ)でした。孝章は陽菜を雛子だと思い込んでいたのです。
雛子の部屋にかくまわれて暮らし始め、屋敷の誰にも気づかれないまま、雛子の代役として家族の前に出るようになっていく陽菜。また、今が明治40年5月であることを、雛子から知らされます。
親が決めた婚約者である孝章と会うことをかたくなに拒んでいる雛子。彼女は、父の友人の大学教授のお供として屋敷にやってくる書生・武虎(タケトラ)を密かに慕っていたのでした。イケメンでお金持ちで紳士的な孝章に好感を持ったのは、むしろ陽菜のほう。やがて彼女は、孝章が「夢」で一緒に遊んでいた男の子「たーくん」であることに気づき、そこから陽菜と孝章の時空を超えた恋が本格的に始まります。
いつの間にかなくしてしまったネックレスを孝章と一緒に探し始めた陽菜は、彼の優しさや男らしさにどんどん惹かれていくのですが、孝章はあくまで陽菜を雛子と思い込んで接している、この皮肉で切ないすれ違い…!
「初めてお会いした時から 貴方をお慕い申し上げておりました」と陽菜に告白する孝章でしたが、彼が言う「初めてお会いした時」というのは、もしかしたら──。陽菜が心を揺らす中、ネックレス探しはやがて大冒険へと発展し、波乱のストーリーになっていきます。
飄々としたタッチで切ない恋を描かせたら天下一品の河内先生。花屋で働く青年とその上司である女性店長、そして彼女の亡くなった夫の幽霊との三角関係を描いた『夏雪ランデブー』もオススメです。
個性豊かな騎士たちの恋と冒険の大活劇『マロニエ王国の七人の騎士』
『マロニエ王国の七人の騎士』【1〜3巻】岩本ナオ / 小学館
「このマンガがすごい! 2017オンナ編」の第1位を『金の国 水の国』で、同「2018オンナ編」の第1位を本作で受賞した岩本ナオ先生。デビュー15周年を迎えた今、大注目の描き手であることは言うまでもありません。本作は8つの国からなる大陸を舞台としたファンタジー。その中央に位置するマロニエ王国の7人の若い騎士の活躍を描いていく物語です。
マロニエ王国の女将軍バリバラには、騎士である7人の息子がいました。そんな彼らが騎士長として、マロニエ王国を取り囲む7つの国に友好の意を示すため派遣されることに。まずは長男の「眠くない」が「夜の長い国」へと旅立ちます。
「眠くない」というのは長男のれっきとした名前で、7人兄弟はそれぞれ変わった名前の持ち主です。面白いので列記すると、次男「博愛」、三男「暑がりや」、四男「寒がりや」、五男「獣使い」、六何「剣自慢」、七男「ハラペコ」となります。この名前が彼らの特殊な力を表していることが、物語が進むにつれ分かっていきます。
「眠くない」の補佐役となるのは、男勝りの剣士で彼の婚約者であるエレオノーラと、大貴族の子弟で親友のヨアン。年かさの外交官が旅団の長になり、一行は北東にある「夜の長い国」へと旅立っていきます。
穏やかな性格の「眠くない」と凜々しく腕っぷしも強い美女・エレオノーラ。国のお偉方によって結婚を決められた2人が、旅を通して心を通わせていくのが、本作の「きゅん」ポイントです。「夜の長い国」ではとある事件に巻き込まれて激しいバトルも。力を合わせて困難を乗り越えたふたりがお互いの気持ちを確かめ合うシーンは必読です。
「眠くない」の冒険が終わると、次は五男「獣使い」が「生き物の国」に派遣されることに。それぞれタイプの違うイケメンである7人と彼らの「お姫様」の物語は、これからも続いていきます。
岩本先生は、和風ファンタジーの『町でうわさの天狗の子』もオススメ。天狗の娘として生まれた秋姫が普通の高校生活を送りたいと願いながら、様々な騒動に巻き込まれていく姿に癒される作品です。
完結済の7作品
名君だけど、ヒロインを愛するときはケダモノになる王子がかっこいい、『砂漠のハレム』
完結『砂漠のハレム』 【全10巻】 夢木みつる / 白泉社
砂漠の王国を舞台にした本作。貧しい少女だった主人公のミーシェが、カルム王子の後宮に入り、王子との愛を深めていくお話です。
物語の舞台となるのは、砂漠の王国ジャルバラ。国王は国を四つに分割し、自分の領土以外の土地を第一王子から第三王子に分け与えて、統治させていました。第三王子であるカルムは南州の統治者。ミーシェは彼の三十人目の側妻(そばめ)として、後宮で暮らすことになります。
強引に後宮に連れてこられたことから、最初はカルムを拒絶するミーシェ。ベッドに押し倒されたときは「このケダモノ王子!!」と、顔を張り倒します。もちろん死罪にされてもおかしくない所業ですが、カルムは「やはりイイな その気丈な性格」と笑みを浮かべるのでした。
実はミーシェは、隣国の後宮から逃れてきた元奴隷。そこでは女性はとことん物扱いされていたことから、王族という存在を憎み、軽蔑しています。しかしカルムと接するにつれて、彼が後宮の女性達を大切にしていることを理解。統治者としても有能で、民に愛されることも分かって、彼を見る目が変わっていきます。
何か事件が起こる度にカルムの素敵な部分に気づき、優しい笑顔を彼に向けるようになっていくミーシェ。そんなミーシェに対して、「そういう顔をするお前が悪い」とキスや抱擁を迫るカルム、というのが、何度も出てくる本作のお約束シーン。王族と元奴隷という身分の差を飛び越えた2人のラブラブぶりに「きゅん」とさせられます。
しかし、王国は決して平和ではありません。隣国との緊張関係から、王子同士の次期国王の座を巡る争いまで、火種がいっぱい。カルムとミーシェが力を合わせ、数々の困難を乗り越えていく正統派の大河ロマンとしても読み応えのある作品です。
他人の心が読めるイケメンが心を許した唯一の女性は? 『高台家の人々』
完結『高台家の人々』 【全6巻】 森本梢子 / 集英社
人の心を読める高台家の3兄妹と、彼らに関わる人々のドラマを描いた日常系ファンタジー。クスッと笑いながら幸せになれる作品です。2016年に綾瀬はるかさんの主演で映画化もされました。
平凡なOL・平野木絵は、口下手で妄想癖のある29歳。会社では地味な存在ですが、決して他人の悪口を言わず、同僚は彼女の良さを理解していました。そんな彼女がニューヨーク支社から戻ってきたエリートサラリーマンの高台光正(コウダイ ミツマサ)に、知り合って早々、食事に誘われるところから物語は始まります。
27歳の光正は、先祖は華族だという名家・高台家の長男で、イギリス人の祖母から受け継いだ青い目を持つイケメン。会社の女性社員達は、そんな高嶺の花が地味な木絵と付き合うことになったのを不思議に思います。
実は光正は、他人の心が読めるという不思議な力の持ち主。女性の本心が分かってしまうゆえに、一生恋愛はできないと思っていたところに現れたのが、いつも頭の中で楽しい妄想を繰り広げている木絵だったのです。心に一切の毒がない彼女に惹かれるのは必然でした。
本作の「きゅん」ポイントとしてまず挙げたいのは、どんなことがあっても木絵を愛し続ける、光正の一途な想いです。ただし、彼が木絵を愛しく感じるときは、だいたい彼女のおかしな妄想を読み取ったときなので、「きゅん」としながらも、笑えてしまうのが、本作の特徴。
たとえば、光正が「ずっと一緒にいたいと思ってる」と告白したときも、木絵の妄想が爆発。頭の中にギャグめいたキャラが次から次へと現れて、好きな人の名前を呼び始めるのでした。それを共有できる光正は、木絵を抱きしめながら、笑いが止まらないのでした。
さらに、光正の妹・茂子、弟・和正も、他人の心が読める能力の持ち主。彼らの恋愛模様も平行して描かれ、2巻になると祖母と祖父のなれそめのドラマも。心が読める力を持ったことで苦しむ高台家の人々が、大切な人との出会いで救われていく姿にも「きゅん」とさせられます。
兄とは違って、性格がひねくれている和正も魅力的なイケメン。彼の素直じゃない恋にも注目してください。
戦乱の時代を生きた、姫とその従者の身分差愛『女王の花』
完結『女王の花』 【全15巻】 和泉かねよし / 小学館
亜(あ)、土(ど)、黄(こう)、曾(そう)の4つの国が勢力を争う、架空の古代。亜国の姫君・亜姫(あき)は、第一王妃・黄妃を母に持ちながら、王子を生んだ第二王妃・土妃の権勢によって、王宮で冷遇されていました。そんな亜姫の心の支えは、異民族の少年奴隷・薄星。やがて母を失った亜姫は、黄の国へ人質として出されることに。金髪碧眼を持つ薄星と共に、亜姫の生きるための戦いが始まります。
歴然とした「身分の差」がある、亜姫と薄星の切なさあふれる、胸キュン漫画です。子供の頃から仲むつまじく、成長する2人の間には、主従より深い絆が芽生えていきます。しかし、亜姫の悲願は、いつの日か亜の国に戻り、母を殺した土妃を失脚させること。そのためには黄の国で身を立てなければならず、薄星と恋人同士として暮らす道は、自ら捨てるしかありませんでした。戦場で命の危機にさらされたり、スパイに命を狙われたり、何度も辛い状況に立たされる亜姫ですが、傍らにはいつも薄星の姿が。亜姫の夢は、いつか王族の身分を捨て、ひとりの女性として薄星と結ばれること。しかし、その道のりは果てしなく遠く、亜姫と薄星の逢瀬には常に切なさが漂うのでした。身分の差を越え、薄星と抱き合う時に見せる亜姫の幸福感と悲哀が混ざった表情には、胸が締めつけられます。
和泉かねよし先生にとっては、『二の姫の物語』に続く2作目の歴史漫画。2つの作品の世界観は繋がっていて、『二の姫の物語』は『女王の花』より100年前の黄国を舞台にした物語です。合わせて読んでみてはいかがでしょうか?
恋、魔法、超能力、王子さま…夢があふれる古典的名作!『ときめきトゥナイト』
完結『ときめきトゥナイト』【全30巻】池野恋 / 集英社
1982年~1994年に連載され、当時の女の子たちをとりこにした大長編です。本編は全30巻ですが、正式には『ときめきトゥナイト―星のゆくえ―』をもって完結となります。
主人公の江藤蘭世は、吸血鬼を父に、狼女を母にもつ女の子。人間界では中学校に通っており、クラスメイトの真壁俊に恋をしています。しかしボクシングに心血を注いでいる硬派な真壁は、つれない態度を示すばかり。一方、蘭世に一目ぼれした魔界の王子・アロンは、二人を引き裂こうと動き始めるのですが……。
80~90年代ならではのドタバタ学園ものラブコメであると同時に、予言や生まれ変わり、出生の秘密、運命の人など、女の子がときめく少女漫画のエッセンスをほぼ全て詰めこんでいる作品です。
その後、物語の舞台は魔界や外国、天上界へと広がり、主人公も蘭世からその弟、さらには子どもたちの世代へと移り変わっていきます。長編作品なので胸キュンポイントは挙げきれないほどありますが、ひとつは「運命の人との絆の強さ」でしょう。ヒロインたちの一途な恋が、魔法を打ち破って実を結ぶさまは、ピュアなラブストーリーが好きな読者の胸を熱くしてくれます。不器用で純情な王子さま・真壁をはじめ、「想いを素直に伝えられない」少年少女キャラたちの、いじらしい青春っぷりもたまりません。
近年出された番外編『ときめきトゥナイト 真壁俊の事情』や『ときめきトゥナイト 江藤望里の駆け落ち』は、今や蘭世・真壁くらいの年齢の子どもを育てる親となった、かつての読者たちの間で、「登場人物の姿がわが子のイメージに重なって、また別のときめきがある」と話題になっています。
ピュア系胸キュンものの傑作+異世界ファンタジー!『彼方から』
完結『彼方から』【全7巻】ひかわきょうこ / 白泉社
平凡な高校生のノリコはある日、爆発事件をきっかけに異世界へ飛ばされてしまいます。右も左も分からず慌てふためくノリコを助けてくれたのは、旅の戦士イザーク。ぶっきらぼうながらも優しいイザークにノリコは惹かれていきますが、実は彼の正体は破壊神「天上鬼」であり、ノリコはその起爆剤「目覚め」であったのでした。
壁ドンや花束プレゼント、ひざまずいての誓い、イケメンな恋敵など、キュンキュンな要素がたっぷり詰まった本作。惹かれあう者同士が「共にいてはならない存在」だったという、究極の「許されざる愛」でもあります。その理由が「世界を破滅に導くから」というダイナミックさも、やはりファンタジーならでは。一方で、本作はディテールが丹念に描かれていて、ファンタジーらしからぬ生活感&リアリティーが、話に深みをもたらしています。異界の言語をがんばって習得しようしているノリコが、かわいい片言でイザークをあたふたさせたり、美剣士のイザークが農場で働いて生活費を稼いだりする微笑ましさも、胸キュンポイントと言えるでしょう。
『彼方から』はひかわきょうこ先生の代表作であり、作者初のファンタジーでありながら、優れたSF作品に与えられる「星雲賞」のコミック部門を受賞しました。ファンタジーとしても、恋愛ものとしても、読みごたえのある1作です。
妖(あやかし)との危うく色っぽい恋……美しい和風ファンタジー『BLACK BIRD』
完結『BLACK BIRD』【全18巻】桜小路かのこ / 小学館
原田実沙緒(はらだ みさお)は「ふつうの人の目には見えないモノが見える」女子高生。幼い頃は、隣のお兄ちゃん・烏水匡(うすい きょう)に、いつも守ってもらっていたため、匡への初恋を忘れられずにいました。ある日、ずっと空き家だった隣に人の気配が。匡が戻ってきて、再び住み始めたのです。喜ぶ実沙緒ですが、彼の正体が天狗であり、能力ある実沙緒を妻に欲しがっているのだと知って……。実沙緒が通う学校の教師となって近づいてくる匡と、実沙緒を狙う他の妖たちが、初恋と恐怖の間で戸惑う実沙緒を巡って、戦いを繰り広げます。
本作の特徴は、なんと言っても和風ファンタジーであること。匡を始め、その配下の天狗たちは、たいてい着物姿で(しかもイケメン)、和服男子の色気を存分に見せてくれます。戦闘の場では刀を使用するので、時代劇が好きな方にもおすすめ。
一方で、匡は高校の教師をしているため、「先生と教え子の禁断の恋」の危うさも楽しめます。匡がきわどい下ネタが大好きな「エロ天狗」(by実沙緒)であったり、実沙緒の血がしたたる傷跡を舐めて癒したりと、官能的で耽美なシーンが多いのも魅力の一つです。
運命に抗う実沙緒と匡の、ドラマティックな異類婚ラブストーリー。感涙必至のラストまで、一気読みをおすすめします。
ファンタジーもので切ない胸キュンを『黎明のアルカナ』
完結『黎明のアルカナ』【全13巻】藤間麗 / 小学館
舞台は、半獣半人の「亜人」と呼ばれる種族と、普通の人間が混在する異世界。亜人は社会の底辺に位置づけられ、人間も髪の色によって差別されるという格差社会です。王族でありながら、赤毛ゆえに冷遇されてきた王女・ナカバは、和平の捨て石として、隣国の王子・シーザのもとへ嫁ぐことに。幼少時より仕えてくれている従者ロキだけを心の支えに生きるナカバですが、望まない結婚相手だったはずのシーザとも、次第に心を通わせていきます。そんな中、ナカバに未来を予知する不思議な能力が現れ、3人は世界を揺るがす陰謀に巻き込まれていくのでした。
本作は本格的な異世界ファンタジー。王族ものならではの「政略結婚から始まる愛」がポイントの一つですが、愛情のなかった2人が、ゆっくりと距離を縮めながら愛を育んでいきます。一方で、心より立場と責任を優先せねばならないこともあり、政略によって2人が離れてしまう局面では、ギュッと胸が締めつけられます。
また、従者で亜人のロキと、王女であるナカバの種族差、身分差も切ないところ。シーザとはまた違う2人の関係性は、もう一つの切ない胸キュンポイントです。怒涛のラストまで、予想外な展開の連続ですが、読後は静かな感動が押し寄せます。ファンタジーならではの非日常の中で、「愛とは?」ということを強く考えさせられる作品です。
最後に
完結していてラストシーンの感動を味わえる作品、連載が続いていて、今まさに注目の作品、両方ご紹介しました。死と隣り合わせの緊迫した闘い、華やかなコスチューム、他の人にはない能力を持ってしまったが故の孤独…現実世界では出会えない(出会いたくない?)ピンチの連続にひやひやした後は、胸キュンシーンでほっと一息。このメリハリをお楽しみください!
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