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頭脳戦・心理戦漫画おすすめ12選!【天才の駆け引きが必見】

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※2021/1/20に『賭ケグルイ』『トモダチゲーム』『Dの魔王』の3作品を追加しました。
『DEATH NOTE』『賭博黙示録カイジ』『LIAR GAME』などに代表される頭脳戦・心理戦漫画。高い知能指数を持つ天才から、ゲームやギャンブルに驚異的な才能を持つ者、詐術を得意とする者など、異能の力を持ったキャラクターが登場し、知力を尽くして戦うストーリーは、手に汗握る迫力があります。今回は、ギャンブルからスポーツ、恋愛まで、多様なジャンルの中から頭脳戦・心理戦漫画12作品をピックアップ。天才達の命を賭けた駆け引きを楽しんでください。

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『賭ケグルイ』


『賭ケグルイ』
©Homura Kawamoto・Toru Naomura/SQUARE ENIX

『賭ケグルイ』 1~13巻 河本ほむら・尚村透 / スクウェア・エニックス

ギャンブル奨励の学園で、美少女たちが知略の限りを尽くす

シリーズ累計発行部数600万部を突破し、TVアニメ、ドラマ、映画と、華々しいメディア展開をしている人気作です。

政財界の有力者の子女が通う、私立百花王学園。国や企業のトップに立つには勝負強さが必須ということで、生徒たちにはギャンブルが奨励されていました。しかも、負けて借金がかさむと「家畜」扱いされるという厳然たる階級制度があり、生徒たちはまさに自らの人生を賭けて、ギャンブルに興じているのでした。

そんな学園に、ひとりの美少女が転校してきます。彼女の名は蛇喰夢子(じゃばみ ゆめこ)。さっそくクラスを牛耳る女子に勝負を挑まれた夢子は、それをなんなく撃退。そこから夢子は、学園のギャンブルを管理し、強大な権力と財力を持つ生徒会のメンバーひとりひとりに勝負を挑んでいくことになります。

普段はにこやかで、どこか天然なところもある夢子が、勝負で気持ちが高まるごとに「賭け狂い」の本性を表していくというのが、キャラクターとしての最大の魅力。

「ギャンブルは狂っているほど面白い」

という彼女は、純度100%の快楽主義者。富や幸せを手に入れるために勝負に挑むのではなく、勝負をしているその瞬間の恍惚こそが、すべてなのです。

登場するギャンブルは、本作オリジナルのゲームがほとんど。中には小型のギロチンに指を差し入れて、刃を支える紐を一本一本切っていくという過激なものも。そして、ほとんどのゲームにつきまとっているのがイカサマ。むしろイカサマは前提で、それをどう見破り、逆に利用していくかが、勝負のキモとなります。まさにギャンブルの上級者たちによる、ハイレベルな頭脳戦。それを女の子を中心にした高校生たちが繰り広げていくのです。

物語は、新たな生徒会長を決める選挙戦へと推移。選挙といっても結局は票を取り合うギャンブルで、少女たちが時に美しく、時に醜悪な本性をさらけ出し、しのぎを削ります。また、勝負の中で友情や絆が描かれることもあり、青春を感じさせる一面も。

『賭ケグルイ双』『賭ケグルイ妄』『賭ケグルイ(仮)』と、スピンオフ漫画が3作もあることも、人気の証です。

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『トモダチゲーム』

『トモダチゲーム』

『トモダチゲーム』 1~17巻 山口ミコト・佐藤友生 / 講談社

裏切り者は誰だ? 極限状態での友情が試される

仲良しだったはずの男女5人が、莫大な金額が絡む謎解きゲームの中で、今まで隠していた自分をさらけ出し、だまし合いをしていく。タイトルの通り、「友情」がテーマとなった頭脳戦漫画です。

クラスでは男3人女2人による仲良しグループに属していた片切友一(かたぎり ゆういち)。ある夜、何者かによってグループ全員が拉致され、気がつくと何もない部屋に閉じ込められていました。そこに現れたのは「マナブくん」という子どもの着ぐるみのキャラクター。5人には2000万円もの借金があり、その返済のための「トモダチゲーム」に参加してもらうという、とマナブくんは説明します。

「トモダチゲーム」は一つクリアするごとに200万円の賞金が出るというシステムで、第1ゲームは全員が指でひとつの10円玉を動かし、クイズに答える「コックリさんゲーム」。一見簡単にクリアできそうだったゲームの行方は、5人の中の「裏切り者」の思惑によって迷走していきます。

ゲーム自体をクリアするだけでなく、裏切り者を見つけ出すことも重要になっているのが、本作の特徴。友一は人間観察に優れたタイプで、言葉巧みに裏切り者をあぶり出していくのですが、その中で他の4人の隠された過去や本性が次第に明らかになり、友情が崩壊していくことに。頭脳戦だけでなく、清濁あわせのむ人間ドラマとしても読み応えがあります。

さらに、友一自身の隠れた一面も次第に明らかに。最初はマジメな好青年に見えた彼が、実は狡猾に人を操ることができる油断ならない男であることがわかり、ピカレスク的な面白さも加わっていきます。

他グループとの対戦があったり、ゲームの舞台がどんどん移り変わっていったりと展開も豊富。「トモダチゲーム」の運営側を巡る謎も物語が進むごとに深まっていき、ページをめくる手が止まりません。

2017年に全4回のTVドラマと映画2本の3部作で実写化。吉沢亮さんが友一役を務めました。

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『Dの魔王』

『Dの魔王』

完結『Dの魔王』 全3巻 柳広司・霜月かよ子 / 小学館

スパイの孤独な頭脳戦をスリリングに描く

実写映画化、TVアニメ化もされた柳広司先生のスパイ小説『ジョーカー・ゲーム』をコミカライズ。昭和10年代前半を舞台に、旧日本軍のスパイ養成所「D機関」の活動を描く物語です。

陸軍の中で「魔王」と呼ばれる元スパイ、結城中佐が作り上げた「D機関」。表向きは貿易会社を装いつつ、スパイを養成して国内外で極秘任務に就かせている組織です。

単独行動で敵の中に潜入し、ときには味方をも欺いて任務を遂行しなくてはいけないスパイ。D機関に所属した若者たちは、出身地、年齢、本名などあらゆる経歴や過去が記録から抹消され、家族や友人と会うことも許されなくなります。そうして無の存在となり、今後の人生をスパイとしてのみ生きることになるのです。

「当然 仲間、或いは国家ですら 貴様らを裏切る」

と結城中佐は言います。上官の命令や国家への信義にとらわれず、常に自分の頭で考えて生き残れ、というのが結城中佐の教えです。

最初のエピソード「ジョーカー・ゲーム」は、バリバリの陸軍軍人がD機関との連絡係に任命されて、普通の軍隊とD機関の考え方の違いに衝撃を受ける話。門外漢の主人公の目線によって、スパイ組織の特殊性が読者にもわかりやすく描かれていきます。

それ以降は、毎回ひとりのスパイが主人公になって活躍。物語の舞台も横浜、ロンドン、上海と世界各地に広がっていきます。主人公となったスパイが最も窮地に立たされるのが、3番目のエピソード「ロビンソン」。ダニエル・デフォー作の有名な小説「ロビンソン・クルーソー」がカギとなった物語で、伏線の張り方が見事。スパイの孤独な頭脳戦がスリリングに描かれます。

少女漫画出身の霜月かよ子先生による作画は、端麗愁眉といった印象。登場するスパイたちがイケメン揃いなのにも注目です。

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『嘘喰い』

嘘喰い

完結『嘘喰い』 全49巻 迫稔雄 / 集英社

頭脳戦と格闘アクションの相乗効果で迫力満点

主人公は、“嘘喰い”の異名を持つ若き天才ギャンブラー・斑目獏(まだらめ ばく)。若干15歳で「賭郎」(かけろう)という闇の賭博組織のメンバーとなり、神の頭脳と悪魔の冷徹さを持って百戦錬磨の会員達を次々に撃破。「賭郎」史上最強のギャンブラーと呼ばれました。しかし、“お屋形様”と呼ばれる「賭郎」のトップとの一騎打ちに敗れて、組織からはじき出されることに。一匹狼となった獏が「賭郎」のメンバーに返り咲き、「屋形越え」と呼ばれるお屋形様との一騎打ちに向かって上り詰めていくというのが、本作のストーリーです。

獏は銀髪の美形。小さな変化も見逃さない観察力と、勝負の先の先まで読み通す洞察力、追い込まれた時に打つ大胆不敵な逆転の一手、敵を幻惑する虚実織り交ぜた巧みな会話術など、ギャンブラーとしてのあらゆる強みを持っています。勝機を見いだした時は、懐から出す「かり梅」をかじるのが定番。その時、眼光が怪しく輝くという、実にキャラが立った男です。

描かれるギャンブルは、トランプを使ったゲームから、銃器で武装した男達を相手に、廃ビルから生還できたら勝利という血なまぐさいものまで、さまざま。敗者はその場で公開絞首刑にされることもあり、ガチの命のやり取りが描かれていきます。

また、知的バトルだけでなくアクション活劇の要素も持っているのが本作の特徴です。〈力なき勝者は消される〉のが常であり、〈この惑星は暴力を中心に廻っている〉というのが、本作の登場人物の多くが共有する哲学(2巻p.85)。知略を尽くしたギャンブルの後にやってくるのは、勝負に本当のカタをつける実力行使による取り立てです。獏にも、敵側にも、ギャンブルの立会人となる「賭郎」にも屈強な男達が勢揃い。彼らが鍛え抜かれた肉体をぶつけ合う格闘シーンも迫力満点です。

美麗な男性キャラクターが多く、女性ファンにも人気の本作。特に「賭郎」に所属するダンディーな老紳士やクセの強い立会人の活躍は見どころです。

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『約束のネバーランド』

約束のネバーランド

完結『約束のネバーランド』 全20巻 白井カイウ・出水ぽすか / 集英社

脱出不可能な孤児院からの逃亡。天才児達が策略を巡らせる

「このマンガがすごい! 2018」オトコ編第1位を獲得するなど、高い評価を得ているファンタジー漫画です。

舞台となるのは、世界のどこかにある孤児院グレイス=フィールドハウス(GFハウス)。優しい「ママ」のもと、38人の子供が何不自由ない暮らしを送っていました。しかし最年長である11歳のエマとノーマンは、ある日、衝撃の事実を知ることになります。

実はGFハウスは優秀な子供を育て、外の世界にいる「鬼」に食料として供給する施設だったのです。当然、ママは「鬼」の配下。気づいてみればGFハウスは森と堅牢な門、高い壁に遮られ、子供達は誰ひとり外の世界を知らないのでした。このままおとなしく食料にされるのはイヤだ。エマとノーマンは、同い年のレイを味方に引き込んで、子供達全員での脱獄計画を立て始めるのでした。

本作の読みどころはエマ、ノーマン、レイの頭脳にあります。「鬼」にとって優秀な子供の脳は最高のご馳走らしく、GFハウスでは英才教育が施されていました。その中でもトップの成績を収め続けているのが、この3人。現状を冷静に把握し、その対策をすぐに思いつき、迷わず行動に移します。頭のいい人間同士ならではの、スピーディな言葉のやり取りは読んでいて気持ちよく、読者は自分も仲間に加わって一緒に策略を練っているような感覚を味わうことができます。

それに対抗する「ママ」イザベラも、優れた頭脳の持ち主。エマ達の計略に気づきながらも優しい態度を崩さず、普段の会話からあらゆる情報を引き出そうとします。エマ達もイザベラも、表向きは平穏な暮らしを続けつつ、その裏では頭脳をフル回転させて策略を張り巡らせているのが、すごいところ。物語が進むと、そこに「ママ」の座を狙うシスター・クローネが加わり、頭脳戦は三つ巴の様相を呈していきます。

GFハウスを脱獄することができても、その外に待つのは、未知の世界と巨大な体を持った「鬼」達。GFハウスの子供達はどうやって世界の真実を知り、本当の幸せを掴んでいくのでしょうか。彼らの戦いは、かなり長いものになりそうです。

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『クロサギ』

クロサギ

完結『クロサギ』 全20巻 黒丸・夏原武 / 小学館

詐欺師同士のハイレベルな欺し合い。社会勉強にもなる

素人を欺す詐欺師を、警察用語で「シロサギ」と言います。そのシロサギだけを狙う特殊な詐欺師が、本作の主人公・黒崎高志郎。クロサギの異名を持つ男です。

黒崎は21歳という若さながらあらゆる法律に通じ、エリートサラリーマンから気弱な学生まで、多くの人格を演じ分ける天才詐欺師。彼がクロサギとなったのは、父親が詐欺の被害に合い一家心中を企てたことがきっかけでした。一人だけ生き残った黒崎は、家族を死に追いやった詐欺師グループへの復讐を誓ったのです。

架空の財団法人による融資詐欺、高額のニセ商品を売りつける美容品詐欺、就職斡旋や霊感商法に関わる詐欺など、全20巻で取り上げられた詐欺はなんと50種類。各巻の巻末には監修者・夏原武先生による解説が付き、通読すれば現代のあらゆる詐欺の手口を知ることができます。ちなみに女性の結婚詐欺師は「アカサギ」と呼ばれるそうです。

そして本作の一番の面白さは、詐欺師対詐欺師、つまりプロ同士の頭脳バトルです。暴力的な手段は一切使わず、知略だけで詐欺師達から大金を剥ぎ取っていくのが黒崎。相手を欺すためには、架空の会社を作ったり、海外の口座に見せ金を入金したりと、数億円もかけて準備を重ねることも。もちろん黒崎は犯罪者なのですが、弱い素人を助け、悪をくじく義賊ともいえる存在。胸のすく活躍を見せてくれます。

クライマックスは、父の仇の一人である一流詐欺師・御木本との直接対決。舞台となるのはM&A(企業の合併もしくは買収)に絡む大がかりな詐欺で、黒崎はターゲットになった建築会社を守りつつ、御木本を破滅に導くために奔走します。

全20巻の後、物語は「新クロサギ」「新クロサギ完結編」へと続いていくことに。山下智久さんの主演で2006年にTVドラマ化、2008年に映画化され、話題になりました。

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『マイホームヒーロー』

マイホームヒーロー

『マイホームヒーロー』 1~12巻 山川直輝・朝基まさし / 講談社

平凡なサラリーマンが、ヤバい組織に立ち向かう

主人公は47歳のサラリーマン・鳥栖哲雄。知能的にも肉体的にも平凡な彼が、頭をフル回転させて、拉致や殺人もいとわない凶悪な半グレ組織と対決する姿を描いたのが本作です。

全ての発端は、18歳の一人娘・零花に彼氏ができたことでした。その彼氏・麻取延人は、女性の顔をあざになるほど殴るろくでもない男で、実は半グレ組織の一員。しかも零花に近づいたのは、資産家である哲雄の妻の実家を強請るのが目的だったのです。零花のマンションで延人と鉢合わせして企みの全容を知った哲雄は、とっさの判断で殺害を決意し、それを実行します。

「47年間一度も刑法を犯さずに生きてきた だけど今日から殺人鬼だ」
そう頭を抱えながらも、冷静に死体を解体し証拠隠滅の作業を進めていく哲雄。彼は推理小説マニアで、殺人方法や死体の処理について深い知識を持っていたのです。一方、行方知れずとなった延人を探して半グレ組織も行動を開始。最も怪しい哲雄ファミリーをどんどん追い込んでいくのでした。

哲雄の目的は、延人殺しを完全犯罪にし、組織の追い打ちから逃れて、家族に平穏を取り戻すこと。本作の面白いところは、妻の歌仙が夫の犯罪を知った上で頼もしい味方になってくれることです。歌仙は、血だらけの殺人現場を目撃しながら悲鳴を上げることなく、哲雄から事の経緯を聞き出す冷静な女性で、夫の共犯者になる覚悟を決めるのでした。

一緒に死体の処理をしたり、組織に問い詰められた時のために、犯行をごまかす想定問答案を作ったりと、力を合わせて完全犯罪を目指す哲雄と歌仙。2人同時に別の場所で拉致・拷問されたりしながら、ギリギリのところで生きながらえ、組織に立ち向かっていきます。「ただの弱いおじさんなんだ」とつぶやきながらも決して諦めない哲雄。サラリーマンが見せるタフでハードボイルドな一面が、実に魅力的です。

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『アイシールド21』

アイシールド21

完結『アイシールド21』 全37巻 稲垣理一郎・村田雄介 / 集英社

部員集めから試合の戦術まで、策士・ヒル魔の活躍に注目したい

2000年代に週刊少年ジャンプで連載された高校アメリカンフットボール漫画。2005年から2008年にはTVアニメも放送され、今も人気の高い作品です。主人公は、高速のランニングバックとして活躍する泥門高校1年の小早川瀬那(セナ)。彼の俊足に目を付け、謎のデビルフットボーラー「アイシールド21」と名乗らせたのが、泥門高校アメフト部・泥門デビルバッツのキャプテン、蛭魔妖一(ヒル魔)でした。

主人公としてのセナの活躍はもちろん見どころですが、頭脳戦・心理戦漫画として本作を捉えた時、注目したいのはヒル魔です。たった2人の部活からメンバー集めを始め、素人の集まりだった新入部員達を鍛え上げた名キャプテンなのですが、そのやり方は奸計に次ぐ奸計。ヒル魔というあだ名も、生徒だけでなく教師まで、学校のほとんどの人間の弱みを握り、自由に操るところから付けられたものでした。

1巻の冒頭には、アメフトの闘いを制するのはパワー、作戦(タクティクス)、そしてスピードと書かれていますが、デビルバッツのタクティクスを一手に担うのがヒル魔です。部員を鍛え上げ公式戦が始まると、今度は試合の中での彼の頭脳戦が本格的に描かれていくことに。たとえば、地区大会での巨深ポセイドン(巨深高校)戦では、攻撃の革命として新たなフォーメーション「鳥の叉骨(ウイッシュボーン)」をセナ達に指示(14巻)。また、相手を挑発したり言葉巧みに欺したりと、心理的な駆け引きも彼の得意とするところです。

フィジカル面の能力では他のキャラに劣りますが、「地獄の司令塔」「悪魔の策士」と呼ばれたヒル魔は、明らかに天才プレイヤーの一角。アニメではロンドンブーツ1号2号の田村淳さんが演じましたが、納得のキャスティングでした。

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『百万畳ラビリンス』

百万畳ラビリンス

完結『百万畳ラビリンス』 全2巻 たかみち/ 少年画報社

ゲーム的思考に長けた女子大生が、異空間の謎に迫る

行けども行けども和室が再現なく続くボロアパート。外に広がるのは地平線まで続く広大な樹海……。どう考えてもリアルではない不思議な空間に迷い込んでしまった2人の女の子の冒険を描く物語です。

主人公は19歳の女子大生・玖波島礼香(くばじま れいか)。ゲームが大好きで、中でもバグ探しを得意とする彼女にとって、異空間は「ゲーマーの冒険心をくすぐる」楽しい場所。森の木は全部コピペで、一本を倒せば全部が倒れること、一台のちゃぶ台の上に置いた物は、この世界の全てのちゃぶ台の上に同時に現れることなど、ゲームのプログラムに似た法則が、礼香によって見出されていきます。常識にとらわれない自由な発想と、なんでも試してみる実験精神が、彼女の才能です。

蛇口をひねれば水が出て、冷蔵庫の中には食料が、タンスの中には衣服が入っている異空間のアパート。スマホもパソコンもWiFiのアクセスポイントもあって、ライフラインは保障されています。しかし、空間を丸ごと喰らうクリーチャーが出現するなど、危険も。礼香達はやがて、チャットを通して、異空間の秘密を知るゲームクリエイター・田神大介とコンタクト。この世界の謎に迫っていきます。

田神が言うには、礼香達は「人類の希望」。いつの間にか大きな宿命を背負うことになっても、彼女はあくまでマイペースに異空間攻略を楽しんでいきます。自由奔放でありながら、論理的思考にも長けた礼香。頭脳派の異世界ファンタジーとして、読み応えのある作品です。

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『ACMA:GAME』

ACMA:GAME

完結『ACMA:GAME』 全22巻 メーブ・恵広史 / 講談社

悪魔の目の前で、人間達が頭脳戦を繰り広げる

本作が描くのは、悪魔がゲームマスターとなって人間同士が戦う“アクマゲーム”。悪魔はどの人間にも肩入れせず、ゲームの進行から敗者への取り立てまでを引き受ける中立の立場。頭脳戦を繰り広げるのは、常に人間達です。

アクマゲームは、対戦者のどちらかが「悪魔の鍵」を使うことで始まります。鍵を回すとその部屋は「閉鎖空間」となり、ゲームマスターの悪魔が出現。まずは対戦者同士が勝負に賭けるものを宣言し、悪魔が選んだゲームによって対戦が行われるという流れです。

ゲームの内容は全てが本作のオリジナル。「相手の言ったことが本当か嘘かを言い当てる」というシンプルなものから、コインやカードを使うものまで多彩で、全22巻の中で同じゲームが繰り返されることはありません。悪魔がルールとして明言しないことは何でも許されるので、ルールの穴を突くことも勝敗を大きく左右します。たとえば、カードにペンで印を付けても、悪魔があらかじめそれを禁じていなければOKなのです。

そんなアクマゲームの世界に巻き込まれ、対戦を繰り返すことになるのが主人公・織田照朝。高校生でありながら、日本有数のグループ企業の総会長を務める少年で、知識、観察眼、思考力、精神力などあらゆる能力に秀でた「完璧超人」。自らの命や会社の命運を賭ける勝負にもひるむことなく、クセ者揃いの対戦者と頭脳戦を繰り広げます。

物語が進むと、謎の組織・グングニルがアクマゲームによって日本の政治を掌握。それに対抗するために、照朝はグングニルが開催するアクマゲームトーナメントに参戦することに。ヒリヒリする勝負の連続で、読み出したら止まらなくなる作品です。

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『エンバンメイズ』

エンバンメイズ

完結『エンバンメイズ』 全6巻 田中一行 / 講談社

策略と心理的駆け引きが命運を分ける闇のダーツ勝負

対戦相手との駆け引きや、点数計算を考慮に入れてのプレイなど、知的ゲームの要素が強いダーツ。本作はそれを題材とした頭脳戦・心理戦漫画です。

主人公は、ダーツプレイヤーの烏丸徨(からすま こう)。彼の戦いの場は世界大会のような表舞台ではなく、ヤクザが胴元を務める闇の競技場です。そこでは巨額の現金だけでなく、ルールによっては命を賭け合うことも。ダーツの種目も普通ではなく、ガラスで密閉された部屋に毒ガスが充満する中で戦ったり、点数をルールに定められた以上に取り過ぎると針で利き手を貫かれたりと、過酷で異常なものばかりです。

烏丸を初めとする闇のダーツプレイヤー達は、普通に投げれば、狙った点数を外すことなどあり得ない超一流の腕の持ち主。ですから勝負の行方はダーツの技術ではなく、言葉の応酬による欺し合いや、極限状態に追い込まれた時の精神力に大きく左右されることに。その中で、烏丸はまがまがしい強さを見せていきます。ついた異名は「迷宮の悪魔」。相手をどうあがいても勝てない袋小路へと追い込んで勝ちを確信したの、「ここが“行き止まり”(デッドエンド)だ」というセリフが、実にかっこいいのです。

ストーリーの中では、烏丸の過去も語られ、闇のダーツプレイヤー育成組織の存在も明らかに。クライマックスでは、意外な対戦相手とのドラマティックな戦いが描かれます。

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『かぐや様は告らせたい』

かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~

『かぐや様は告らせたい』 1~20巻 赤坂アカ / 集英社

恋愛こそ頭脳戦。素直じゃない天才達が面白い

ラストにご紹介するのはなんとラブコメ! しかし、恋もまた戦い。本作がまず主張するのは、「恋人達の間にも明確な力関係が存在する!」「好きになったほうが負けなのである!!」という、ある種の恋愛哲学です。

それを実践してみせるのが2人の主人公。名門校・秀知院学園高等部で生徒会長を務める白銀御行(しろがね みゆき)と、副会長の四宮かぐやです。御行は全国トップレベルの成績を誇る勉強の天才。名家の子女が集まる学校にあって、数少ない中流階級の出身ですが、生徒達に一目置かれる存在です。一方のかぐやは、日本の4大財閥の1つ「四宮グループ」の令嬢。芸事、音楽、武芸などあらゆる分野に秀でた万能型の天才です。

2人とも容姿にも恵まれ、プライドが高いことはこの上なし。それが邪魔をして、互いに好意をいだいているのに、恋愛関係に進むことが全くできないのでした。本作はタイトル通り、いかに相手に先に告白させるかを目的にした、2人の天才の頭脳戦。彼らの脳内は読者には全部明かされるので、意地の張り合いには笑いが止まりません。

たとえば、勝った方が負けた方に一つだけお願いごとができるという条件で始めた1対1のババ抜き。かぐやの狙いは、わざと負けて御行のお願いをデートの誘いに誘導することでした。プレイ中にそれに気づいた御行が最終的に取った行動とは……? 素直になれず、あくまで告られる立場に立とうと競い合う2人。競い合う2人の可愛すぎる頭脳戦にご注目ください!

『かぐや様は告らせたい~天才たちの恋愛頭脳戦~』を試し読みする

終わりに

頭脳戦・心理戦漫画の特徴は、あらゆる分野の天才の活躍を楽しめることです。そして作者は、彼らを競い合わせるために、オリジナリティ溢れるゲームや緊張感溢れた対決シーンを描くことに、知恵を注ぎます。どの作品も当然、セリフや説明が多くなりますが、それをじっくり味わうのが、このジャンルの最大の楽しみ。時には読む手を止めて、自分なりの勝利の一手を考え、キャラクター達に対抗してみるも面白いかもしれません。

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