身の丈ほどもある大きなトランクを持った少年・才賀勝に「サーカスに連れて行ってくれませんか」と頼まれた、拳法家の青年・加藤鳴海。そこに人間と見紛う奇妙な人形が現れ、勝を連れ去ろうとします。拳法が通じない人形相手にピンチを迎えた2人の前に現れたのは、謎の銀髪の美女・しろがね。さあ、ここに世紀の機巧活劇が開幕する――。
不死の体を持つ人間「しろがね」と自動人形(オートマータ)との闘いを、国境そして時空を超えて壮大なスケールで描いた藤田和日郎先生の代表作。
これほどまでに人間の持つ感情、喜怒哀楽全てがビビットに描かれた作品を私は他に知りません。ストーリーは闘いを中心に進んでいくのですが、その闘いに身を投じた「しろがね」達の生き様、闘いに巻き込まれた人間の悲劇、そして「しろがね」ではないものの大きな鍵を握る存在である勝の成長――その全てがクソデカ感情でもって読者の胸に迫りくるのです。
登場人物たちは火傷しそうなほどの熱さを持った愛すべき奴らなのですが、物語は彼らをあざ笑うかのように残酷な展開を見せます。なので、後半は傍らにティッシュのご用意を。
「面白い」「ドキドキする」「泣ける」「感動する」「怒りを覚える」「声を上げて応援したくなる」。こうした漫画体験の全てが詰まったこの作品、陳腐ですが、読まないと人生の半分損してると言わざるを得ません……!
感情タグBEST3
脱出行とか
阿紫花さんを10億円で雇った勝君、傷だらけになって獅子奮迅の活躍ですが、時限爆弾が……。
養子組とぶっ殺し組の戦いもド派手で、人形を使って塔から塔へとジャンプしたり。
檻に閉じ込められていた鳴海・しろかねさんたちも何とか抜け出しますが、誘拐したおじのお屋敷も崩壊し……勝君を最後まで守っていた鳴海さん、ここはTVアニメでも極めて印象的な場面でした。でもまだここまでが序章でしょうか。
匿名
最初は弱々しかった泣き虫の勝が、鳴海たちとの出会いで殺し屋に向かっていけるほどに急成長、こういう場面が好きです。
テンションがあがる
スピード感のある動きと、スピード感のあるストーリーが、どんどん話に引き込まれて、マンガを読む手が止まりません。
最初は、しろがねが、無機質に見えていたのですが、そんな中にも、素敵なポイントが見え隠れして、とても魅力的なキャラだと思います。これから少しずつ、勝も、しろがねも、みんな成長していき、深みが増していくのだろうなと、分かります。
先が楽しみです。
Posted by ブクログ
阿紫花が操るプルチネラと共に叔父がいるモニタールームに突入する勝。これで勝負あったかと思いきや、モニターには糸で拘束され身動きが取れなくなっている鳴海としろがねの姿が。叔父は二人の苦しむ姿を餌に「私の養子になれ」と勝に持ちかける。徐々に糸の締め付けがきつくなり、もがく二人の姿を見るに見かねた勝はそれを無念ながら承諾する。そして、二人を助けてくれと叔父に懇願するが、卑劣な叔父は彼らを塔から落とすという。落とす直前に一目だけあわせてやろうという魂胆らしい。その非道さに切れた勝は鳴海の形意拳「竜形」を真似て、叔父の足を骨折させる。突然のことに虚を突かれた取り巻きを阿紫花がプルチネラで蹴散らし、屋上にまわった後、勝と共に二人が囚われている塔へと飛ぶ。それから誘拐組やら護衛の人形やらを優のファインプレーで切り抜けついにしろがねと鳴海に合流する。その後も勝の超人的な記憶力と模倣能力でピンチを切り抜け、阿紫花としろがねは塔から脱出できたのだが、勝が助けを乞う叔父を庇ったため、それを追った鳴海と共に彼らは塔に残ってしまう。鳴海は勝を抱え込む形で最後の爆発に備えていた。視界は完全になくなる大爆発のあと、勝が「助かった」と鳴海に声をかけるのだが、そこに鳴海の姿はなく、ただ彼のちぎれた右手が肩にのっているだった。
ひたすらに鳴海がカッコイイ回。エレベーターに閉じ込められたしろがねが震えてる時のやり取りも素敵だし、ゾナハ病の発作を痩せ我慢しながら笑えないしろがねを慰めるところも外せない。極めつけは、勝を身を呈して爆風から守りながら「笑うべきだと思った時は泣くべきじゃない」というところ。いやあカッコイイ。自分の苦痛を痩せ我慢しながら、誰かを自己犠牲的に守るっていうのは漢として憧れる。
匿名
最後の幕が閉まるシーンで鳥肌が立ちました。え、うそ。驚きすぎてなんて言っていいかわからないです。とにかく続きを読まなくてはという気持ちにさせられます。
最初の山場
長いからくりサーカスの中での最初の山場である3巻です。短期間ながら成長していく主人公。ナルミとはしばしの別れになりますが、再会の日がさらに感動できます。
人形を使って自分で戦う勝や勝を助ける鳴海がすごくかっこ良くて面白かったです。これからどうなっていくかも気になりました。
勝の異常なほどの集中力と記憶力開花、グリモルディと阿紫花「お代はいかほど、いただけるんで?」は格好良い!「おまえは、おっかしいよな」が、鳴海としろがね今生の別れのようで、後の事を考えても分かっていても、やりきれない。
止まらない面白さ
たった3巻だってのに、物凄い濃密なストーリーです。王道の少年成長譚でありながら、懸糸傀儡を始めおどろおどろしたギミック満載なオリジナリティ溢れる絵面と言い、まさに藤田和日郎ワールド全開。