有吉佐和子のレビュー一覧

  • 恍惚の人
    気難し屋の義父にさんざん泣かされ、別居して暮らしていたが義母が亡くなり義父のアルツハイマーが発覚。
    半年は仕事を続けながら世話もできたがどんどん悪化して施設に入れようか福祉に相談するが規約で受け入れる先が困難だと分かる。しかも家族が面倒を見るのが当たり前とも言われ、途方に暮れる。
    この小説の救いは家...続きを読む
  • 紀ノ川
    三代に渡る女の人生。
    描く人が違うとまた濃厚さが違う。
    風景の描写も流れる時間もまた違って方言まで美しく感じる。
    気丈な花が老いてワガママになるのも計算の内なのか、今まで抑えていた気持ちをボケたふりして孫に語っているような気がして、というよりそうあってほしいと思う。
  • 恍惚の人
    これが40年前の物語とは。
    認知症によってもたらされる本人の変化、周りの苦労。
    それが手にとるように伝わってくる。
    心理描写が絶妙。
  • 恍惚の人
    まるで実在の家の出来事をそのまま移し取ったようなリアリティで、舅の認知症が始まり、亡くなるまでのごたごたを描いた作品。

    茂造の認知症が進行していくのは、醜悪でありながらどこか可愛らしく、怖いもの見たさでぐいぐい読んだ。
    だんだん昭子の介護は、子育ての様相を呈してくるが、どんなに大切に世話をしても、...続きを読む
  • 新装版 和宮様御留
    ずいぶん久しぶりに読み返そうと思ったのだが、持っている文庫本はあまりにフォントが小さくて、とてもじゃないが読めない(トホホ…昔の文庫を見るたびに本当にこれ読んでたのかと思ってしまう)。ちょっとためらったけれど、とっても面白かった記憶に押されて新装版を購入。いやあ、これは大正解!もう夢中になって一気に...続きを読む
  • 複合汚染
    1974~75年の『朝日新聞』連載小説。といっても、脚色があるとはいえ、ストーリー性はない。「小説」というよりもルポルタージュに近い内容。冒頭の選挙応援に始まり(本題ではないが、これはこれで面白い。菅直人も登場)、化学肥料、除草剤、合成洗剤、食品添加物、PCB、配合飼料、自動車排ガス、交通事故などあ...続きを読む
  • 紀ノ川
    おそらく、本で読んだだけならここまで強烈に印象に残ることはなかったことだろう。
    毎朝のNHKの朗読で一回、それを録音で収録したものでもう一回。初夏のウォーキングのなかで聴いた。
     柔らかな紀州訛りと、もう失われた少し遠い時代の生活や言葉を背景に、“真谷のごっさん”花の見つめた世界に同化しながら浸った...続きを読む
  • 紀ノ川
    ラジオで朗読されていたので購入。題名からちょっと最近の人にはとっつきにくいのではないかと思う。女性4代の血脈が、紀ノ川の水脈のようにしっかりと、静かにゆるやかに流れる。女性の強さを感じる。女性の生命力、ミトコンドリアの力を感じさせられる良書。
  • 紀ノ川
    有吉佐和子の代表作。読んだのではなく、NHKラジオ「朗読の時間」で聞いた。目からではなく耳から、という朗読の面白さを初めて実感。朗読50回シリーズ。
    朗読は、俳優の藤田美保子さん。藤田さんの朗読の上手さも、この作品の魅力を一層引き出していた。
  • 恍惚の人
    「恍惚の人」

    タイトルに称賛を贈りたい。

    そして、昭子さんにも称賛を。

    時を経て、益々深刻化する「超高齢化社会」。

    風化しないテーマを抱えた小説。

    一読の価値ありです。
  • 華岡青洲の妻
    女という生き物の肚の底にある黒いものを、鏡に映し出すように、ありのまま書き出している。華岡家という特殊な家庭が舞台でありながら、その中で展開される嫁姑関係は、女性なら誰でも共感できる普遍性を持っている。
    男をめぐる嫉妬、決して自分から仕掛けていかない消極的な攻撃性、対外的な建前、本音全てをさらけ出せ...続きを読む
  • 恍惚の人
    まっすぐ胸に染み込んでくる文、深い人物描写。どこまでも現実的でありながら、幻想的な作品。
    主人公をはじめ、すべての登場人物が余すところなく生きている。昭和後期から平成初期にかけての家庭の雰囲気がよく伝わる。
    どんな言葉でこの作品を称賛したら良いか分からない。
  • 恍惚の人
    ◯名作。大変面白かった。
    ◯現代人であれば必ず読むべき一冊。将来の自分をあらゆる意味で見通す。

    ◯現代における個人の孤独を鋭く描写している。鋭角過ぎて突き刺さるほどである。
    ◯文章表現・演出も巧みである。言葉の選び方が場面を活かしている。

    ◯昔から認知症はあったはずである。しかし、核家族化が進む...続きを読む
  • 恍惚の人
    昭和47年(1947年)の著書。
    1960年代から老耄は痴呆症と呼ばれるようになり、2005年のクリスマスイブに認知症と名前を変えた。

    老耄をテーマに介護者の苦悩と福祉制度の脆弱性を示した。今とは時代背景が違うが介護者を悩ます、不治の病であることには変わりない。

    長寿延命の呪いであった籾付きの米...続きを読む
  • 恍惚の人
    何と壮絶な介護記録。
    これが昭和47年に出版されたということは、50年近く前の話。。。当時これを読んだ人は、さぞかし衝撃を受けただろうな。。。。
    私自身、介護に詳しいわけではないけど、この本で書かれている問題って今も結局変わってないような気がする。

    介護対象者が家族に出たら家の誰かが(特に嫁が)犠...続きを読む
  • 恍惚の人
    老人介護を巡る問題。中島京子の「長いお別れ」と「恍惚の人」の2冊を相次いで読みました。40年という時間の隔たりがあるが、前者の長いお別れが家族の大変さを描きながらも、どことなく「明るさ」が感じられるのに対し、恍惚の人にはそういった「明るさ」があまり感じられないことが印象的でした。この差は何でしょうか...続きを読む
  • 地唄
    昭和の時代、日本の伝統芸能が時代の波の中に失われていく中で、芸に身を捧げる人々を描いた短編集です。
    新しい時代の中で揺れる芸の世界を描いた「地唄」「人形浄瑠璃」。
    変わりゆく時代の中で、伝統芸能をひっそりとしかし一途に支える姿を描いた「墨」「黒衣」。
    厳しくも美しい世界に生きる人々の矜持が胸を...続きを読む
  • 複合汚染
    以前借りたけど頭に入らないか時間切れでつんどく…
    つん…ど…つんどくしてたもの

    再トライ

    各所で参考に出される大事な書か。

    長くかかりましたが読み終わり、
    私が産まれる9年前に書かれた本にすでに
    御用学者という言葉がかかれていたり
    企業の広告、国の機関の言うことを
    いちいちうのみにせず、疑って...続きを読む
  • ほむら
    味わい深い短編集。独特の言い回しはやや難しくもあり、そして情報密度が濃く、二度読み返してしまうが理解できないことはない。故に短編であってもとても読み応えを感じる。
    歴史上の史実や言い伝えをヒントにより深いフィクション要素を取り入れてあるらしく、歴史に照らし合わせて読んでも興味深い。どの作品も印象に残...続きを読む
  • 紀ノ川

    自分のひいひいおばあちゃんくらいが花の世代かな?そう思うと、女性がとんでもなく「家」に縛られて生きていたのは割と最近なんだなと、驚く。プラスチックを始めて触るシーンとかも、世代を逆算して考えると面白い。
    有吉佐和子の作品、もっと読んでみたい。たしかに努めて娯楽的にしている面も感じなくはないけど、女...続きを読む