こんなものを女性に読まれてしまったらオトコの居場所はなくなるのではないか?そんな背筋も凍るような話が・・・
というのは冗談で。。。
近代史を教えない歴史教育を受ける我々はこの書に書いてある歴史ワードをことごとく知っているはずだ。
聖徳太子、大化の改新、大宝律令、古事記、東大寺の大仏・・・
...続きを読む近衛文麿や石原莞爾が知らなくても上に書いたワードは聞いたことがあるに違いない。
しかし、このワードの中心にことごとく「女性」が存在していたことを知っている人はどれほどいるだろうか。
2000年を超える我が国の歴史において、女性の天皇は8人10代(重複して天皇に就いた人物がいる)だ。この小林よしのり『女性天皇の時代』はその8人の天皇がいかなる人物だったのかをとても分かりやすく紹介してくれる。
さきほどの歴史ワードはすべて女性天皇のころのものだ。
女性天皇を語るとき、それは“中継ぎ”であったと語られることが保守であるとされている。皇統は男系でつづいていたのであり、女性は次の男系天皇への“中継ぎ”であったと。
小林はその“中継ぎ”神話を歴史を語ることで崩壊へと追いやる。女性天皇の凄まじさを読者は知ることになる。と同時に皇統は男系で続いてきたという“定説”は大嘘であったこともわかる。
伝統は歴史の中に有り、我々はそれを受け継いでゆく者。
自分自身それを自覚している。その“自覚”の中に男系継承も含まれていた。それは歴史の中にある答えだと。しかしディテイルに迫らなければならない。答えはやはり歴史の中にあったのだ。単に不勉強な怠惰な己がそこにいて吼えていただけだった。
実に作りこまれた作品である。とてもわかりやすい言葉で、しかも歴史の話をしながら今を生きる人々の感性にユーモアと情熱を持って訴えかけてくる。歴史は研究者だとか歴史オタクのものではなく、普通の人の生活にもつながっているんだということを教えてくれる。
このわかり易い文章と構成は、古代に大活躍した女性天皇は彼方にある伝説などではなく、今にも十分出現しうることで、絵空事ではないということを訴えているようでもある。ここで試みられているのは古代と現代を繋ぐことだ。保守の文法で今の“保守”のデタラメさを炙り出すというカラクリだ。
そして、この書を読み終わる頃には日本人が抱き続けていた男尊女卑の感覚の“正体”が分かる。そしてその正体を乗り越えようとしていたのがいったい誰なのかも知ることになる。
男系神話を後生大事に戴くことが一体何を守ることになるのか。
本当の日本人の男女観は一体どこにあるのか。この示唆は本当に面白い。
これを読んだあとは
よし、伊勢へ行こう。
よし、沖縄へ行こう。
と思うはずだ。