この手の犯罪ルポルタージュの中では最高傑作の部類に入るんじゃないだろうか。
1992年に発生した市川一家四人殺人事件を題材に、まだ未決囚であった頃から綿密な取材を重ね、犯人の男の底知れぬ心理の闇に迫った一冊。
だいぶ前からこの事件を知っていた自分でも、改めて犯行の軌跡を読むと絶望的に気が滅入るので、
...続きを読む知らずに読んでしまった人にとっては相当のトラウマになるだろう。
何年にも渡る取材の末に筆者が男に下した評価は「理解不能」の4文字だった。
人間という存在の底知れない不気味さを突きつけられる。
当時3歳だった自分が生きた1992年という時代を思い出すと、何故だか過剰露光した写真のように彩度の鮮やかな当時の街の光景が浮かび上がる。
かつて訪れた現場のマンションをそのイメージに重ね合わせると、あまりの不吉さに視界が歪みそうになる。
初めて自分がその場所を訪れたのは2009年の9月だったか。当時よく聴いていた曲から時期を思い出せた。
大通りから病院の角を左折してしばらく路地をさまよった先・・・。今も事件当時と全く変わらない姿で佇んでいる。
まだ暖かい秋の日の昼下がり、目の前の公園では子供たちが楽しそうに遊んでいた。