☆4.4
出羽にて単なる小さな勢力のひとつでしかなかった最上家を、東北でも有数の大名へと栄えさせたとして有名な最上義光。
彼の波瀾に満ちた一生を書き上げた作品。
若い頃は妹の義にも小言を言われてしまうような、ちょっと頼りなさもあった人。
でも、大切な妹を守るためなら身を投げだしてでも守ろうとする
...続きを読むような、優しい優しい人。
そんな人が戦の世を生き抜き、大切な領民や領土を守るために、時には調略を用いて非道な決断も下しながら戦う。
その覚悟を、決して軽く見るなどできないよな、と今の平和な世に生きるのんきな人として思う。
何が起きてもおかしくないほどに乱れた世で裏切り裏切られ、家族であっても争ったり、情勢によっては手にかけねばならないのは、どんなに胸引き裂かれる思いだったろうか。
戦にて自らを慕いついてくる部下たちに、死んでこいと言わねばならないその声は、どんなに力を込めて作った声だったろうか。
決して特別な人間ではなかったその男は、それでも自らを奮い起たせ前に進んだ。
あまりにもいとしくなる、そんな最上義光を書き上げている。
家臣たちなど脇役にも、活躍の差はあれど気に入ってしまう人たちがたくさんいて、その人たちの人生も時に涙しながら見守った。
588ページとボリュームいっぱいの作品ですが読むのが止まらない。
この人から見たらこんな風になるのか、と読むときの"敵味方"って本当に視点次第よな、と感心しながらのあっという間の読書時間だった。
初読みだったの天野純希さん、これからめっちゃ推してく。