井伏鱒二のレビュー一覧

  • 荻窪風土記
    昔荻窪に住んでいた時に買ったけど結局読まなかった本を30年近く経ってから読んだ。井伏鱒二の文章はなんとなくおおらかさと洒落た味わいがあって「黒い雨」を読んで以来好きだ。昭和初期の荻窪あたりの今からは想像がつかないような田舎びた感じや、戦争に向かう時期の緊張、その中でしたたかに生きる街の人々や今よりは...続きを読む
  • 山椒魚
    作品の出来不出来が激しいように思えた。旅する主人公と、その旅先の人々との交流を描いた話が多かったが、同じ型の作品を並べるとこうなってしまうのかもしれない。
    似た作家として、漫画家のつげ義春を思い出した。特に「言葉について」などは彼の「紅い花」とよく似ている気がする。比較して読んでみるのも面白いかもし...続きを読む
  • ドリトル先生アフリカゆき
    「沼のほとりのパドルビー」に住む名医ドリトル先生は,オウムのポリネシアから動物語を習い,世界中の動物たちから敬愛されています.ある日アフリカのサルの国から,ひどい疫病が流行しているから救ってほしいという訴えを受けた先生は,犬のジップたちをひきつれて冒険の航海に出発します.ドリトル先生物語の第1作目....続きを読む
  • 荻窪風土記
    荻窪に住んでいた井伏鱒二による大正末期から昭和前期の東京の様子や世相、近隣に住む文士(阿佐ヶ谷将棋会)との交遊の記録。

    当時はまだ青梅街道を馬が野菜を乗せて通っており、阿佐ヶ谷や荻窪、高円寺に鉄道の駅を誘致の話が出ている。関東大震災の際には東京が3日間燃え、菊池寛が横光利一を探して幟を立てて東京中...続きを読む
  • 黒い雨
    「井伏鱒二」が広島への原爆投下から数年後の被爆者の苦悩を描いた作品『黒い雨』を読みました。
    「原民喜」の『夏の花』に続き、原爆関係の作品です。

    -----story-------------
    あの20世紀最大の悲劇を、坦々と、静かな語り口で後世に伝える――小説の力だ。

    一瞬の閃光に街は焼けくずれ...続きを読む
  • ドリトル先生航海記
    オリジナルのドリトル先生は初めて読んだ。
    せっかくなら井伏訳をと思い、岩波少年文庫をチョイス。

    シリーズがたくさん出ていて困ったけれど、スタビンズ君がちゃんと登場するのと、教科書に紹介されているらしいといういことで『航海記』を読んでみた。

    動物たちの、実際の習性とファンタジーがうまく融合していて...続きを読む
  • 黒い雨
    今ウクライナで戦争が起きている。この小説の中でも広島に原爆が落とされ未曽有の惨事が戦争という形で描かれているところは共通だ。だから戦争は止めていかないといけないと思う。正義の戦争より不正義の平和、地獄絵図が現実で起きている、新型兵器、悲惨な街、人々の様子は痛いほど分かった。読み進めていくのが辛いシー...続きを読む
  • 晩春の旅 山の宿 現代日本のエッセイ
    井伏鱒二の紀行文ですね。
    井伏さんらしい気さくな文章で、あたたかな筆遣い面白く可笑しく読み進めました。
    井伏さんは観察力と描写力に優れているので臨場感溢れるあきさせない文章が魅力ですね。
    旅先の一幕とご自身の内面の心理描写も手に取るように描き出されていて、画面が目に見えるようです。
    井伏さんの詩心も...続きを読む
  • 黒い雨
    日常を普通に生きる非凡で平凡な善良市民に原爆という未曾有の事態が降りかかった。こんなに悲惨だよこんなに辛いよ苦しいよと訴えかける戦争小説とは少し違った。登場人物たちは淡々と生きていた。これは本当に私が住む日本で起こったことなんだと震える思いだった。すぐ横で人があらぬ姿で死んでいた。平和を願う心から、
  • 黒い雨
    4年の時を経て再チャレンジしました。教科書やドキュメンタリーでは、原爆投下時に広島にいた人が取り上げられることが多いですが、この本では、投下時に離れたところにいた人の話も扱われています。記録映像ではないので100%正確とは言えないのかもしれませんが、原爆の記録の一つとなると思います。
  • 井伏鱒二全詩集
    有名な「勧酒」と、他の詩も読んでみたくて購入。
    のどかでありながら、どこか醒めた感じも受ける詩が多かった。
    高校時代に教科書で読んで印象に残っていた「秋夜寄丘二十二員外」が収録されていて、懐かしい気持ちになった。
  • 黒い雨
    教科書に載っていて一部は読んだことがあったが、全体を読み、改めて戦争の恐ろしさを実感した。あまりに生々しい表現に目を背けたくなったが、同時に読むのをやめてはいけないと思った。「戦争はいやだ。勝敗はどちらでもいい。早く済みさえすればいい。いわゆる正義の戦争よりも不正義の平和の方がいい。」物語の中盤で出...続きを読む
  • ドリトル先生アフリカゆき
    動物と話ができる獣医。子どもにとってはなんと夢に溢れた世界だろう、と思う。

    差別表現等の問題は、石井桃子さんが述べておられるように、作家自身、生きた時代や文化と無関係ではいられない、という、それだけの問題かと思う。
    これが人種差別による白人至上主義を述べたい本であるのならともかく、作家が作りたかっ...続きを読む
  • ドリトル先生アフリカゆき
    ホームズの次は怪盗ルパン!と決めていたら1~3巻が貸出中のままになっているので方向転換。実家の子供本棚に1冊ずつだけあったムーミンとドリトル先生、10代の頃に全シリーズ読もうと思ったけれどムーミンはパパが海へいった辺りで、ドリトル先生は月から帰った辺りで?頓挫して、ムーミンはその後30代と40代で全...続きを読む
  • ドリトル先生と月からの使い
    こどもへの読み聞かせ、ドリトル先生シリーズ7冊目。今年の3月からだいたい月に一冊くらいのペースで読んでいるので、もう半年以上は続いているのだが、まったく飽きる気配がない。僕が子供の頃は、この辺でつまらなくなって挫折した記憶があるのだが、40年ぶりくらいでシリーズ通読にチャレンジできそうな雰囲気だ(も...続きを読む
  • 黒い雨
    井伏鱒二が実際に広島で被爆した重松静馬氏と岩竹博氏の日記を元に、広島で二次被爆した姪の縁談を破談にさせたく無い思いから、当時の状況を記した日記を清書して、提示する事で、姪が被爆者ではない事を示そうとする顛末を物語として描いたもの。
    重松が日記清書する現在と、清書される日記の語る原爆投下の8月6日から...続きを読む
  • 黒い雨
    タイムリーになってしまった。
    大切な姪の結婚の為の覚書として書いたという所が良かった。死ぬも地獄生きるも地獄。ピカドンの一瞬で全てが変わってしまい、何が起きたか分からない死体だらけの中大混乱の日常。不安で、それでも何とか生きていく人々の姿に応援したい気持ちになる。
    横の繋がりで幾らか救われ、大事だと...続きを読む
  • ドリトル先生の動物園
    子供への読み聞かせシリーズ。僕が読み聞かせ終わった後、畑正憲の解説はもう自分で読んでいたので、「だったら最初からもう全部自分で読めるじゃん」とも思うのだが、まあ貴重な父子の時間なのでいいことにする。

    ネズミの挿話やミステリー仕掛けの後半など、小説としての完成度も高く、ドリトル先生シリーズ中興の佳作...続きを読む
  • さざなみ軍記・ジョン万次郎漂流記
    『ジョン万次郎漂流記』のみの感想。
     幕末から明治初期にかけての実在の人物についての小説。資料にない部分は井伏氏の空想で補われている。
     冒険譚として非常に面白かった。
     土佐で貧しい漁師だった万次郎は15歳の時の正月に他の四人とともに漁船に乗っていて、嵐に会い、一週間ほど漂流した。
     ようやく周囲...続きを読む
  • ドリトル先生のサーカス
    子供への読み聞かせ、ドリトル先生シリーズ4作目。このあたりはドリトル先生の中でも秀眉の佳作で、現代の大人が読んでも童心に戻って楽しめる。子供も楽しんでくれているようだが、僕の方が先を読みたくて毎晩遅くまで読み聞かせている始末。