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『推しが武道館いってくれたら死ぬ』感想解説|RABマロン話題の漫画レビュー

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『推しが武道館いってくれたら死ぬ』イラスト

どーもマロンです! 突然ですが僕が所属しているオタクダンスグループRAB(リアルアキバボーイズ)の夢ってご存知でしょうか? 実は武道館でのワンマンライブなんです! そんな僕たちが無視できない作品が出てきました…それが…

『推しが武道館いってくれたら死ぬ』です!

『推しが武道館いってくれたら死ぬ』書影

平尾アウリによる『月刊COMICリュウ』連載中、岡山県を舞台に、女性地下アイドルグループChamJamの人気最下位メンバー市井舞菜(いちいまいな)に人生の全てを捧げて応援する熱狂的ファンえりぴよ(えり)とその周囲の人々の様子を描いたコメディ作品。

この漫画のなんといっても面白いのはアイドルが主役ではなくそれを応援するファンが主役ということ。
僕自身は在宅アニメオタクで、こういった現場アイドルオタクの気持ちは完全にはわからずにいます。そういった意味で、なぜ人は頑張る人を応援したくなるのか、この漫画でわかるんじゃないかと興味を示しました。

地下アイドルという文化

80年代アイドルはまさに”偶像”であり、理想の女性像がアイドルと呼ばれていた。しかし2010年くらいからAKB48やももクロがブレークし”会いに行けるアイドル”がSNSやインターネットの時代とかみ合い爆発的に流行し、その時『地下アイドル』という言葉も世間に知られるようになった。今までテレビの中、ステージの上で見ることしかできなかったアイドルがより身近な存在となり、握手会で触れ合えたり、話したりできるというシステムが多くの人に受け入れられた。
自分の応援がダイレクトに推しに届く実感を持てるというのが『地下アイドル』の魅力だと思われる。それゆえに売れないアイドルを見ると、「俺がなんとかしなければ!」というファンが現れるという。
まさに本作に出てくるChamJamは売れないアイドルグループであり、主人公の”えりぴよ”(えり)はそのグループでも一番人気がない市井舞菜(いちいまいな)を「私の人生には舞菜の1分1秒が必要なんです!!」と言うぐらい熱狂的に推しているのだ。
本作の冒頭が「アイドルはみんなキラキラしてるものなんだと思ってた。」の一文から始まるように、えりぴよは舞菜のアイドルらしからぬ部分に逆に惹かれた。そこがまさに地下アイドルらしいとも言える。

素晴らしきアイドルオタクの日々

本作はアイドルオタクの話でもあるので、もちろんアイドルオタク知識や用語、あるあるネタなども漫画に詰め込まれており、現場に行っている気分になれる。そして楽しい現場なハズなのになぜか苦悩したりするファン心理が矛盾していてなんとも面白い。そんなシーンを見て僕が感じたのは…

「楽しそうだなぁ…」である。

誰か一人推しがいて、その人の一挙手一投足に一喜一憂し、同じグループのファンと語り合う日々…無茶苦茶楽しそう! 自分が今RABの活動をしていなかったら、こういう風な人生も幸せだったんじゃないか…? とか思ってしまう程です。

トレンディドラマ以上のすれ違い!?

本作で度々描かれるのが、えりぴよと舞菜のすれ違いである。舞菜へ最大限の愛をぶつけるえりぴよ。それに感謝しつつも、内気で人見知りなのとファンの対応に差を付けるわけにはいかないため、塩対応になってしまう舞菜。ファンとアイドルという絶妙な距離感が二人をすれ違いさせ読者側をやきもきさせ読み進めてしまいます。
とはいえすれ違いはドラマ! 昔のドラマの定番と言えば、待ち合わせ場所に相手が来ないとかのすれ違い! 携帯電話が普及してからは簡単に連絡が取れるようになったので、そういったすれ違いシーンは無くなった。そのため如何にすれ違いを起こすかが、今のドラマや漫画の課題だったりする。
そういった意味で本作はアイドルとファンという、会いに行ける程近いのに、連絡も取り合えない、本音を隠さなければいけない理由がある。そんな関係から見事なすれ違いドラマが展開される。ここの歯がゆい感じの距離感がこの作品の魅力でもあるだろう。

本作が描く理想のアイドルとファンの関係とは!?

アイドルとファンの理想の関係とは何なんだろうか?お互いに大切な存在と思いながら、連絡も取れない、本音も言えない、友達にもなれない。しかし、アイドルはファンにとっての理想であるように努力し、ファンはアイドルの幸せを願い、彼女たちの世界を守るように応援する。目に見えないだけでそこにはちゃんとした線引きされた関係があり、お互いが理想とされた距離感がある。言葉に無いだけでそれは親子、兄弟、友達に代わる新しい関係性なのではないだろうか? アイドルとファンの理想の関係…それが本作では見ることができるかもしれない。
そしてChamJamは果たして武道館にいけるのか?そしてそうなったらえりぴよはどうなるのか? えりぴよと舞菜の関係に変化はあるのか? 本作の結末がどこに向かうのか興味が尽きない。
そして自分もRAB活動を応援してくれる人たちが沢山いる。本作を読んで改めて応援する側はこんなにも熱い気持ちで応援してくれていると知ることができた。僕らも武道館目指してもっともっと頑張らねばならないなと感じた。
誰かを応援したくなる、そして誰かに応援されている事に気づける作品…現在アニメも放送中の『推しが武道館いってくれたら死ぬ』是非読んでみてはいかがでしょうか?

紹介した作品はこちら

『推しが武道館いってくれたら死ぬ』

『推しが武道館いってくれたら死ぬ』書影

作品の詳細を見る


『推しが武道館いってくれたら死ぬ』 1~6巻 平尾アウリ / 徳間書店

RABマロンの描く”えりぴよ&舞菜”!

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ガチ恋から極道まで!今推せるアイドル漫画おすすめ11選

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