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異世界(日本)でバイトに励む魔王を100円ナイフで襲う勇者『はたらく魔王さま!』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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今回は『はたらく魔王さま!』をレビューします。勇者との戦いに敗れた魔王が異世界(日本)に転移して力を失い、再起を誓いつつアルバイトで日銭を稼ぎ六畳一間の古いアパートで暮らしていたら、勇者とばったり再会しちゃった物語です。

原作小説は、和ヶ原聡司(わがはら・さとし)さん。キャラクターデザインは、029(おにく)さん。コミカライズ担当は、柊暁生(ひいらぎ・あきお)さん。KADOKAWA「月刊コミック電撃大王」にて連載中で、単行本は17巻まで刊行中です。

原作小説は電撃文庫から本編が21巻(完結)、外伝が6巻刊行されています。2013年にテレビアニメ化され1クールのみで話が止まっていたのですが、つい先日、第2期制作決定の発表が行われました。記念にレビューします。

電撃大王公式作品紹介ページ
電撃文庫公式作品紹介ページ

『はたらく魔王さま!』作品紹介

はたらく魔王さま!

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『はたらく魔王さま!』 1~17巻 柊暁生・和ヶ原聡司・029/KADOKAWA
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魔力を失いアルバイトに精を出す魔王

本作の主人公は、魔王サタン。魔王軍を率い、聖十字大陸エンテ・イスラの征服を目論むも、勇者エミリアに追い詰められ、異世界の門「ゲート」の向こうへ逃亡します。そこはなんと現代日本の東京都渋谷区笹塚。魔力をほとんど失った魔王サタンと、その配下の悪魔大元帥アルシエルは、人間と変わらぬ姿になっていました。

魔法や魔物が概念でしか存在しない異世界(日本)で、魔力を回復する手段がわかりません。エンテ・イスラへ戻るため、まずは生き延びようと戸籍を偽造します。魔王サタンは真奥貞夫(まおう・さだお)、アルシエルは芦屋四郎(あしや・しろう)と名乗ることになりました。

真奥は幡ヶ谷駅前のファーストフード店・マグロナルドでアルバイト、芦屋は家計を管理しつつ魔力を回復する手段を探り出す日々を送ることになります。エンテ・イスラへ反攻するため、まずはマグロナルドの正社員を目指す、という理想と現実のギャップが面白いところ。

天界の力を失うも、魔王を倒そうとする勇者

そんな真奥がアルバイト先へ向かうとき、出会った美少女がまさかの勇者エミリア・ユスティーナ。なぜか聖剣ではなく、100円ショップで買ったようなナイフで真奥へ襲いかかってきます。そう、勇者エミリアは魔王サタンにトドメを刺そうと後を追い、異世界(日本)へ渡っていたのです。

しかも真奥たちと同様、天界の力「聖法気」をかなり失った状態。まともなバトルにならず、警官には痴話ゲンカと勘違いされる始末。なお、エミリアは日本では遊佐恵美(ゆさ・えみ)と名乗っています。遊佐は、残った力を使えばいつでも真奥を倒せるとうそぶくものの、力を使い切ってしまったらエンテ・イスラへ帰還できないと、真奥の扱いを一時保留とするのです。

バイトに励む真奥を見張る遊佐。真奥は明るい笑顔で的確な接客をし、店長から信頼され後輩からも慕われています。そんな真奥に遊佐は、エンテ・イスラを諦めこの世界に留まれば、無理に倒そうとは思わないと提案をします。しかし真奥は、

……ありえない
俺は必ずエンテ・イスラを征服しに戻る

と返すのです。異世界に渡って力をほとんど失っても、基本的に魔王と勇者の対立構造は変わりません。ただ、魔王が魔王らしくない勤勉さと真面目な生活態度であるというギャップと、勇者が勇者らしくない振る舞いをする辺りが、本作の面白さ。財布を落とし家に帰れなくなった遊佐が真奥の家まで来て、

と…泊めてもらえないかしら?

と恥ずかしそうに告げるシーンなど、魔王と勇者が敵対関係であることを忘れそうになります。さらに、真奥のバイトの後輩、佐々木千穂(ささき・ちほ)を巻き込んだ三角関係に。ラブコメか。ところがそんなおかしな「日常」は、エンテ・イスラから次々とやってくる来訪者にかき乱されるのです。

まだ物語はこれから……!

原作小説が本編だけで21巻というボリュームなので、マンガは17巻でもまだ物語の中盤。魔王がなぜ魔王になったのか、勇者がなぜ勇者とされるようになったのか、悪魔や天使はどういう存在なのか、など、実は非常に奥の深い話です。コミカライズ担当の柊暁生さんには、ぜひ最後まで描ききって欲しい。応援しています。

はたらく魔王さま!

作品の詳細を見る
『はたらく魔王さま!』 1~17巻 柊暁生・和ヶ原聡司・029/KADOKAWA
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『はたらく魔王さま!』のレビューページ

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