直木賞作品一覧

  • 秘伝
    4.0
    巨魚に挑む男たちを描いた直木賞受賞の大ロマン。長崎県西彼杵半島の西海岸を舞台に、二人の釣り名人と怪魚イシナギの死闘劇の幕は切って落とされた。まるで潜水艦のような黒い影が潜む海中に、特殊な工夫を施した必殺の仕掛けが送り込まれていった……。他に中編「赤い海」を収録。
  • それぞれの終楽章
    2.5
    自殺した同級生の葬儀に故郷秋田を訪れた作家がふりかえる自らの生の軌跡。友と聴いたクラシック、仲間と励んだ雪の中の野球……万引事件や生家の破産を越えて胸に迫るのは懐しい思い出の数々。人生の終楽章を迎えて、自分を支えてくれた友人、父の愛、妻の献身に気づく。胸を打つ感動的な直木賞受賞作。
  • 肩ごしの恋人
    3.7
    欲しいものは欲しい、結婚3回目、自称鮫科の女「るり子」。仕事も恋にものめりこめないクールな理屈屋「萌」。性格も考え方も正反対だけど二人は親友同士、幼なじみの27歳。この対照的な二人が恋と友情を通してそれぞれに模索する“幸せ”のかたちとは――。女の本音と日常をリアルに写して痛快、貪欲にひたむきに生きる姿が爽快。圧倒的な共感を集めた直木賞受賞作。
  • 落ちる(電子復刻版)
    -
    おれは子供のころからひ弱な神経の持ち主で、生命力も強くはなかった。それが今日まで生きてこられたのは、多額な財産があったからだ。そんなおれが美貌で生命力に溢れた佐久子と結婚してからは、平和な生活を築くことに生き甲斐を感じていたのだが……。気弱な男の恐怖心を利用した殺人計画を描く直木賞作品『落ちる』ほか英雄たらんとして挫折した男を描く『ヒーローの死』など〃不幸な犯罪者たち〃を描く好篇。

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  • プラナリア
    3.9
    「何もかもが面倒くさかった。生きていること自体が面倒くさかったが、自分で死ぬのも面倒くさかった。だったら、もう病院なんか行かずに、がん再発で死ねばいいんじゃないかなとも思うが、正直言ってそれが一番恐かった。矛盾している。私は矛盾している自分に疲れ果てた。」(本文より)乳ガンの手術以来、25歳の春香は、周囲に気遣われても、ひたすらかったるい自分を持て余し……〈働かないこと〉をめぐる珠玉の5短篇。絶大な支持を得る山本文緒の、直木賞受賞作!
  • 雁の寺・越前竹人形
    4.3
    1巻528円 (税込)
    “軍艦頭”と罵倒され、乞食女の捨て子として惨めな日々を送ってきた少年僧・慈念の、殺人にいたる鬱積した孤独な怨念の凝集を見詰める、直木賞受賞作『雁の寺』。竹の精のように美しい妻・玉枝と、彼女の上に亡き母の面影を見出し、母親としての愛情を求める竹細工師・喜助との、余りにもはかない愛の姿を、越前の竹林を背景に描く『越前竹人形』。水上文学の代表的名作2編。
  • 思い出トランプ
    4.0
    浮気の相手であった部下の結婚式に、妻と出席する男。おきゃんで、かわうそのような残忍さを持つ人妻。毒牙を心に抱くエリートサラリーマン。やむを得ない事故で、子どもの指を切ってしまった母親など――日常生活の中で、誰もがひとつやふたつは持っている弱さや、狡さ、後ろめたさを、人間の愛しさとして捉えた13編。直木賞受賞作「花の名前」「犬小屋」「かわうそ」を収録。

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  • 強力伝・孤島
    3.9
    五十貫もの巨石を背負って白馬岳山頂に挑む山男を描いた処女作「強力伝」。富士山頂観測所の建設に生涯を捧げた一技師の物語「凍傷」。太平洋上の離島で孤独に耐えながら気象観測に励む人びとを描く「孤島」。明治35年1月、青森歩兵第五連隊の210名の兵が遭難した悲劇的雪中行軍を描く「八甲田山」。ほかに「おとし穴」「山犬物語」。“山”を知り“雪”を“風”を知っている著者の傑作短編集。

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  • 二つの山河
    3.6
    【第111回直木賞受賞作】 かれらも祖国のために戦ったのだから――。 大正初め、徳島のドイツ人俘虜収容所で例のない寛容な処遇がなされ、日本人市民と俘虜との交歓が実現した。真のサムライと讃えられた所長・松江豊寿の生涯を通して、国境を越える友愛を描いた「二つの山河」ほか、二篇収録。
  • 切羽へ
    3.5
    かつて炭鉱で栄えた離島で、小学校の養護教諭であるセイは、画家の夫と暮らしている。奔放な同僚の女教師、島の主のような老婆、無邪気な子供たち。平穏で満ち足りた日々。ある日新任教師として赴任してきた石和の存在が、セイの心を揺さぶる。彼に惹かれていく──夫を愛しているのに。もうその先がない「切羽」へ向かって。直木賞を受賞した繊細で官能的な大人のための恋愛長編。
  • 虹

    -
    1950年敗戦直後の大阪。四国の田舎町から、広島から、名古屋から、丹波から天王寺駅界隈にすみついた戦災孤児たちはたくましく生きる。そのひとり、虹を見るといつも泣き出すカズヒコと交番の巡査との暖かい心の交流を、独特の大阪の匂いにのせて描いた第53回直木賞受賞作。表題作ほか「風土」「善界」「牧歌」「世染-私版・夫婦善哉」を含む珠玉短編集。
  • 螢の河 源流へ 伊藤桂一作品集
    値引きあり
    4.0
    苛烈な戦場での日々に、死を凝視しつつ、なお友情、青春が息づく、その刻々を淡々と描いた、直木賞受賞作「螢の河」。堪え難い神経痛と耳鳴りに悩む“ぼく”が山奥での岩魚釣り中、不意に“生きてゆくこと”を深く認知する名作「源流へ」。「帽子と菜の花」「帰郷」「溯り鮒」「名のない犬」等、詩人の眼が捉えた、戦場、身辺、釣り、動物達との交歓。伊藤桂一の小説世界を開示する珠玉の名篇全10篇。
  • 湖畔 ハムレット 久生十蘭作品集
    値引きあり
    4.2
    女装、泥酔、放火――、模範少年はなぜ一見、脈絡のない事件を起こしたのか? 少年の心理を過去現在の交錯する戦後空間に追い、母と息子の残酷極まりない愛の悲劇に至る傑作「母子像」(世界短編小説コンクール第一席)、黒田騒動に材を採り破滅に傾斜する人間像を描破した「鈴木主水」(直木賞)等、凝りに凝った小説技巧、変幻自在なストーリーテリングで「小説の魔術師」と評される十蘭の先駆性を示す代表的7篇。
  • 蔭桔梗
    3.9
    紋章上絵師の章次のもとに、かつて心を寄せあっていた女性から、二十年前と同じ蔭桔梗の紋入れの依頼があった。あの時は事情があって下職に回してしまったのだが、それは彼女が密かな願いをかけて託した紋入れだった……。微妙な愛のすれ違いを描き直木賞受賞作となった表題作はじめ、下町の職人世界と大人の男女の機微を、しっとりと描いた十一編の物語を収録する、珠玉の短編集。
  • 人間万事塞翁が丙午
    4.0
    呉服問屋が軒をつらねる東京・日本橋堀留町の仕出し弁当屋〈弁菊〉。人情味豊かであけっぴろげ、良くも悪くもにぎやかな下町に、21歳で嫁いできたハナは、さまざまな事件に出会いながらも、持ち前のヴァイタリティで乗り切ってゆく。――戦中から戦後へ、激動の時代をたくましく生きた庶民たちの哀歓を、自らの生家をモデルにいきいきと描き出した、笑いと感動の下町物語。直木賞受賞。
  • 黄色い牙
    5.0
    1巻495円 (税込)
    第83回直木賞受賞作品  直木賞受賞の不朽の名作、待望のリニューアル。  家族の絆、人間と動物の熱い交流。失われた価値を求めて今、圧倒的な注目を集める話題作がついに電子書籍で復刊!  秋田山中で狩猟によって生活しているマタギの社会を迫真力に富んだ筆致で描いている。  マタギの頭領をシカリというが、主人公のシカリ・佐藤継憲の目を通して、近代化に向かう日本社会のなかでしだいに滅びに向かうマタギ社会の悲哀が伝わってくる。大自然と動物、動物と人間とのかかわりも巧みに描写されているが、とくに主人公と、その宿怨の敵である巨大なツキノワグマの鬼黒との決闘シーンは手に汗を握らせられる。  スケールの大きい動物小説として、文句なしの傑作。現代の乱脈な自然開発、環境汚染に警鐘を鳴らしている側面もあり、心おこしが叫ばれる今、再び脚光を浴びている。 ●志茂田景樹(しもだ・かげき) 静岡県生まれ。おひつじ座のA型。中央大学法学部卒。塾講師、新聞記者などを経て、1976年秋に『やっとこ探偵』で第二七回小説現代新人賞を、1980年には『黄色い牙』で第八三回直木賞を受賞。
  • 黒パン俘虜記(新装版)
    -
    1巻495円 (税込)
    第89回直木賞受賞作品 「軍隊は運隊だ」という言葉どおり、運悪く、敗戦と同時に送りこまれたモンゴルの収容所は、まさにこの世の地獄だった。軍律の崩壊した集団に君臨するやくざあがりの大ボス・小ボス。食糧といえば、黒パンとわずかなスープ、それも搾取され、強制労働にかり出される毎日。栄養失調、疾病、私刑で、つぎつぎと失われる生命。  襲いくる不条理に耐えながら、帰国を待ち侘びる日々を支えてくれたのは、小説と映画と流行歌への熱い思いだった……。  本書は、戦後モンゴルに抑留された二万人の日本兵の中にいた、著者自身の体験をベースにした作品である。  水と黒パンだけで奴隷労働を強いれられるなか、主人公が発見したのは、人間のどうしようもない愚かさか、あるいは生きる喜びか……。  第89回直木賞を受賞した名作が、読みやすく再編集されて、新装版として登場! ●胡桃沢耕史(くるみざわ・こうし) 1925年東京生まれ。府立六中(現新宿高校)、拓殖大学卒。『近代説話』同人。昭和30年、『壮士再び帰らず』(筆名・清水正二郎)で第7回オール讀物新人賞、58年、『天山を越えて』で第36回推理作家協会賞、同年『黒パン俘虜記』で第89回直木賞を受賞。『翔んでる警視正』シリーズ、『旅人よ』、『ぼくの小さな祖国』、『女探偵アガサ奔る』、『ぶりっこ探偵』、『夕闇のパレスチナ』、『闘神』など著書多数。
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    3.5
    アメリカ人夫婦が遊びにくる――にわかに甦る敗戦前後の記憶とあやしげな日米親善、そして屈折したアメリカに対する心理をユニークな文体で描く「アメリカひじき」。昭和二十年九月、三宮駅構内で死んだ浮浪児が持っていたドロップ罐のなかに収められた白い骨。それにまつわる兄妹の哀しい記憶を綴った「火垂るの墓」。昭和四十二年下期直木賞受賞作の二作品に加え、「焼土層」「ラ・クンパルシータ」「プアボーイ」など、“焼け跡・闇市派”の異名をとる著者の代表作を収めた。
  • 雁の寺(全)
    5.0
    頭の鉢が異常に大きく、おでこで奥眼の小坊主・堀之内慈念は寺院の内部になにを見、なにをしたか。京都の古寺、若狭の寒村、そして滋賀の古刹を舞台に、慈念の漂流がつづく。著者の体験にもとづいた怨念と、濃密な私小説的リアリティによって、純文学の域に達したミステリーである。昭和36年上期(第45回)直木賞を受賞した第一部の「雁の寺」につづく「雁の村」「雁の森」「雁の死」の四部作に新たに加筆し一冊に収めた、著者の代表作だ。
  • ソウル・ミュージック・ラバーズ・オンリー
    3.6
    1巻495円 (税込)
    「体はね、お菓子のようなものよ。心はね、パンのようなものなのよ。ベイビー」(「ME AND MRS. JONES」より)。「女の愛し方を知ってるの?」「体は知ってるけど、心の方は自信がねえな」(「FEEL THE FIRE」より)。ソウル・ミュージックの名曲タイトルを冠した8つの短篇からなる、極上の恋愛小説集。センセーションを巻き起こした第97回直木賞受賞作にして、著者の代表作!
  • アメリカひじき・火垂るの墓
    4.0
    昭和20年9月21日、神戸・三宮駅構内で浮浪児の清太が死んだ。シラミだらけの腹巻きの中にあったドロップの缶。その缶を駅員が暗がりに投げると、栄養失調で死んだ4歳の妹、節子の白い骨がころげ、蛍があわただしく飛び交った……戦後どれだけの時間が過ぎようと、読む度に胸が締め付けられる永遠の名作『火垂るの墓』をはじめ全6編を収載。

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  • 遠い国からの殺人者
    5.0
    1巻478円 (税込)
    「男の人が倒れている」110番通報の女の声には妙ななまりがあった──。マンションで死んでいたのは大学を中退した無職の若い男。姿をくらましたのは同居していた外国人ストリップ・ダンサー。彼女の身に一体何が起こったのか。彼女はなぜ真の素性を偽らなければならなかったのか。「じゃぱゆきさん」と呼ばれた外国人女性たち、経済大国ニッポンの底辺に生きる彼女たちの姿が、法廷での関係者の供述から次第に明らかにされていく。感動の直木賞受賞作品。
  • 最終便に間に合えば
    3.4
    OLから造花クリエーターに転進した美登里は、旅行先の札幌で七年前に別れた男と再会する。身勝手と独占の欲望にさいなまれた苦々しい思い出は、いつしか甘美な記憶にとってかわり、空港へと向かうタクシーの中で美登里を誘ってくる男に、彼女は感情の押さえがたい力をおぼえるようになるが……。大人の情事を冷めた目で捉えた表題作に、古都を舞台に年下の男との甘美な恋愛を描いた「京都まで」の直木賞受賞二作品ほかを収録する充実の短篇集。
  • 光と影
    -
    将来を嘱望された陸軍大尉の小武は右腕負傷の憂き目にあう。偶然にも同じ傷で同期の寺内と病院で一緒になるが、小武は切断、寺内は腕を残した施術となった。廃兵となった小武はしだいに転落の気分を味わうが、いっぽうの寺内は……。カルテの順番という小さな偶然がわけた人生の光と影を、的確なタッチで構築した直木賞受賞作に、人間の皮肉を巧みに描き出した「宣告」「猿の抵抗」、若く美しい女に潜む戦慄をあつかった「薔薇連想」の三篇を加えた卓抜な作品集。
  • 帰郷
    4.5
    エンジンが大好きな組立工がいた。故郷の自動車エンジン工場勤務から、ある日、F1チームのエンジン組み立てメンバーに選ばれた。サーキットを転戦して世界を回る毎日。すばらしい日々だ。帰国休暇にはガールフレンドに土産をやり、土産話をするのも、その栄光の一部だった。3年の出向期間が終わり、故郷に戻った男を待っていたのは、しかし味気ない、退屈な生活だった──喜びのあとに訪れる悲しさ、“成熟と喪失”を描いた第111回直木賞受賞作ほか、傑作短篇が全6篇。
  • 離婚
    3.2
    「ことさら深刻ぶるのはよそうぜ」などとカッコいいせりふを吐いてぼくたち二人はおたがい納得して「離婚」したのです。ところがどこでどうなってしまったのでしょうか、ぼくはいつのまにか、「もと女房」のアパートに住みついてしまって……。男と女のふしぎな愛と倦怠の形を、味わい深い独特の筆致で描き出した第七十九回直木賞受賞作品。さらに表題作の続篇の形で書かれた「四人」「妻の嫁入り」、前篇ともいえる「少女たち」の三篇を併録した。
  • GO
    4.3
    広い世界を見るんだ――。僕は《在日朝鮮人》から《在日韓国人》に国籍を変え、民族学校ではなく都内の男子校に入学した。小さな円から脱け出て、『広い世界』へと飛び込む選択をしたのだ。でも、それはなかなか厳しい選択でもあったのだが。ある日、友人の誕生パーティーで一人の女の子と出会った。彼女はとても可愛かった――。感動の青春恋愛小説、第123回直木賞受賞作。
  • 黒パン俘虜記
    4.5
    「軍隊は運隊だ」という言葉どおり、運悪く、敗戦と同時に送りこまれたモンゴルの収容所は、まさにこの世の地獄だった。軍律の崩壊した集団に君臨するやくざあがりの大ボス・小ボス。食糧といえば、黒パンとわずかなスープ、それも搾取され、強制労働にかり出される毎日。栄養失調、疾病、私刑で、つぎつぎと失われる生命。襲いくる不条理に耐えながら、帰国を待ち侘びる日々を支えてくれたのは、小説と映画と流行歌への熱い思いだった。死んでいった戦友たちへの祈りをこめた第89回直木賞受賞作。
  • てんのじ村
    3.3
    大阪は通天閣の下に、漫才師、奇術師、浪曲師といった芸人たちがあつまり住む一郭“てんのじ村”があった。戦前、戦後、そして高度経済成長期と、大阪芸人の活躍の場が、寄席からラジオ、テレビへと移りゆくなか、時代の波にとり残された八十二歳と五十五歳の漫才コンビ。しかし、その二人に、たった一度だけ華やかなテレビのスポット・ライトが当てられる日が来たのだが──。身を寄せあって生きていく善意の人々の哀歓を、しみじみと描いた第91回直木賞受賞作。
  • 武道伝来記
    -
    臆病者とさげすまれた間宮織部は、息子・和三郎に「武士」の心を打ち明けて死ぬ。後日、若殿のお供をした和三郎は、父の汚名を晴らす…「武道伝来記」。秀吉の妻妾たちの二派に分かれた争いに巻き込まれた千利休の娘お吟(ぎん)の悲劇と、芸術界の雄、千利休と俗界の雄秀吉とを対比させて描いた「天正女合戦」。海音寺潮五郎の直木賞受賞作2編を収めた。
  • 雨やどり
    4.1
    舞台は新宿裏通りのバー街。「ルヰ」のバーテンダー仙田を主人公に、彼の前を通り過ぎて行く、いろいろな男と女の哀歓漂う人間模様を描き出す連作。直木賞受賞の表題作をはじめ、「おさせ伝説」「ふたり」「新宿の名人」など8編を収録。
  • 演歌の虫
    4.0
    演歌歌手を育てて世に出すことに情熱を燃やすレコード会社のディレクターの夢と挫折を、冷めているようで暖かい女性作詞家の眼で描く「演歌の虫」、毎日美しく髪を結っては旦那が訪ねて来るのを待ち続ける老芸妓の心境を淡々と描く「老梅」の第93回直木賞受賞作2作のほか、だめな男に金を貢ぐのをやめられない女の心理をおそろしいほど正確に描く小説「貢ぐ女」、プロ野球選手とポルノ女優のしがらみを生々しく描く「弥次郎兵衛」を収録した著者会心の短篇集。
  • 手鎖心中
    4.0
    材木問屋の若旦那、栄次郎ときたら、いずれ大店を継ぐ安楽な身の上のくせに、他人を笑わせ、他人に笑われ、ちょっぴり奉られもしたいがために、絵草紙の作者になりたいと思い焦がれている。悲しいかな、その才能は皆無なのだが、それを知らぬは本人ばかり。暢気でお調子者の若旦那を主人公としたこの小説、江戸・寛政期の風俗と実在の戯作者たち、洒落や地口を綺羅星のごとくちりばめて、あまりのばかばかしさに読者が吹きださずにはいられない、第六十七回直木賞受賞作の傑作時代小説。
  • 熟れてゆく夏
    3.3
    夏。北海道。瀟洒なリゾート・ホテル。共通の“女主人”を、それぞれの思いで待ち受ける、美しく不安な若い男女。ときに反発しあい、ときには狎れあいながら、たゆたゆと待つ日々が過ぎてゆく。女主人の望みはいったい何なのか? 愛と性のかかわりの背後にうごめくエゴイズムや孤独感、焦躁感、そして混沌とした愛欲の世界をあざやかに描いた表題作は、第100回直木賞受賞作。藤堂作品の原型がここにある。他に「鳥、とんだ」「三月の兎」の二篇を収録する。
  • 鉄道員(ぽっぽや)
    4.2
    娘を亡くした日も、妻を亡くした日も、男は駅に立ち続けた……。映画化され大ヒットした表題作「鉄道員」はじめ「ラブ・レター」「角筈にて」「うらぼんえ」「オリヲン座からの招待状」など、珠玉の短篇8作品を収録した傑作集。日本中、150万人を感涙の渦に巻き込んだ空前のベストセラーに、あらたな「あとがき」を加えた。第117回直木賞を受賞。
  • 咬ませ犬
    -
    名犬の流れを汲む土佐闘犬・羽黒、関東地区の横綱犬であった。飼い主は東京の鉄工所社長。闘犬の一生は短い。社長は羽黒が全盛の峠を越したと判断、興行会社社長に売り飛ばす。ここから羽黒の流転が始まった。次々に変わる飼い主。あげくは「咬ませ犬」にさせられた。若い闘犬に自信を持たせるための咬まれ役。羽黒の意地がそれを許さない。若犬には負けない。飼い主たちの暴力と劣悪な環境。元闘犬のたどる過酷な道、心温まるハッピーエンドが待っている。「高安犬物語」で第32回直木賞を受賞、動物文学という新領域を開拓した著者の傑作。ほかに「忠犬像紳士録」「仔犬」「山犬塚」「猪犬物語」。
  • 江分利満氏の華麗な生活
    -
    1巻330円 (税込)
    エブリマン・シリーズの、お待ちかね第二集登場! 「サラリーマンいろは歌留多」や「大日本酒乱之会」、「草野球必勝法」など、全10編を収録する。この作品の、独特にユーモラスな魅力をささえているものは、なんと言っても戦時に苦い青春時代を送った著者の、いたって旺盛な批判精神であり、と同時に、大衆の悲しみと喜びの正体を遺憾なく描き出してくれる、強靱な庶民感情である。
  • 転がり試合 面 刺青
    -
    1巻110円 (税込)
    アメリカでのボクシング対柔道の試合。日本の名誉を賭けて戦うが勝算はあるのか「転がり試合」。かつての伯爵で元勲だった老人が若い女を囲っていたが彼女には恋人があった「面」。若い女の刺青に魅せられた男が夢中になったのは……「刺青」。短編三本を収録
  • 蒼ざめた馬を見よ 【五木寛之ノベリスク】
    -
    Q新聞外信部記者の鷹野は、主幹から社を辞めてモスクワへ行くことを命じられる。ロシアの老作家・ミハイロフスキが、ユダヤ人家族三代の運命を描いた、未発表の長編小説の原稿を受け取り、世界で出版するために。政府の弾圧は免れ得ない代物だ。鷹野は現地で原稿の回収に成功し、『蒼ざめた馬を見よ』と名づけられた本は、日本や欧米で刊行され世界中の話題になる。ところがその3ヵ月後に著者が逮捕され、思わぬ真相が……。
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