大江健三郎のレビュー一覧

  • 芽むしり仔撃ち
    大江健三郎さんの本は亡くなってから読み、これがまだ4冊目だが、こんな面白いとは思わなかった。難しくて自分には合ってないと思ってたのかもしれない。恥ずかしい。
    この作品も、人間の嫌なところ、人間の習性を、独特の文体でこれでもかと、読み手の心に刻み付ける。
    大江さんはそんなに人物に感情移入させないので、...続きを読む
  • 見るまえに跳べ
    大江健三郎さんの作品は亡くなってから、読み始めたくちだけど、もっと若いうちに読んどきたかったなと思う。
    難しいイメージだけど良く噛み砕いて読めば、ユーモアや皮肉を込めたメッセージ性のある大衆的な作家だと思った。性的な話も文学的になってしまうから凄い。10編の短編集。面白い。自分的には最後の話が一番好...続きを読む
  • 死者の奢り・飼育
    初・大江健三郎。国語の教科書に出てきそうなくらい文章が上手。一言で簡潔に言えるものを、叙情的かつ具体的に例えて言い換えているのがすごい。「かわいい」をもっと詳しくどんなふうにかわいいのか説明してる的な。その言葉が何を指しているのか考えなければならず、頭を空っぽにしてボーッと読めるわけではないけど、文...続きを読む
  • 死者の奢り・飼育
    これまで大江健三郎を読んだことがなかった。メガネをかけたいかにもものかきといった風貌が好きなれず、確か万延元年のフットボールを購入したが、読まずにそのまま本棚に突っ込んでいる。(はず)大江が亡くなられてこの際読んでおかなくてはと処女作を購入してみた。飼育、人間の羊、不意の唖、戦いの今日と戦中から戦後...続きを読む
  • 大江健三郎全小説 第1巻
     読み終えたとか言ってますが、正確には、今回読み終えたのは「芽むしり仔撃ち」だけです。
     初期の大江作品を読むのは、40年前の自分と出会うようなところがって、懐かしいとか面白いとばかり言っていられない、なんだかめんどくさい作業です。ああ、それから、この第1巻に収められているほどんどの作品が、20代の...続きを読む
  • 死者の奢り・飼育
    短編集ですが、後の作品になるにつれてどんどん面白く感じました。主人公は、みんな怒っていますね。最初の方の作品は、読点の位置が変わっていて読みづらく感じました。
  • 僕が本当に若かった頃
    「火をめぐらす鳥」を読んだ時点で。

    大江健三郎という小説家を表すいくつもの側面があるけど、そのうちの一つは「小説の言葉で『詩』を書く作家」というものがあるだろう。この短編はその側面の最良の一つではないか。

    読み終わって

    大江の最後の短編集であり、まさに円熟の筆致ということもあるが、語り直し、捉...続きを読む
  • 芽むしり仔撃ち
    疫病などに接した際の人間の暴力性が見事に描かれている。最近のコロナの中の同調圧力でも分ったように人間は閉塞された環境ではこういうことをする生き物なんだなぁと、そういう本質を突きつけられた。
  • 治療塔
     「著者初の本格的近未来SF」と銘打たれているが、発表当時の評価はあまり芳しくなかったような記憶がある。スペースシャトル「チャレンジャー」事故など、1980年代後半の出来事から作り上げられた世界観なので、古いと言えば古いのだが、東京電力福島第一原発事故を経た現在から見ると、作中に描かれた核戦争後の「...続きを読む
  • われらの狂気を生き延びる道を教えよ
    人間の内奥に居座る、根源的な黒いものを「狂気」として捉えている。
    福永光司著の「荘子」にて、人間は非合理で混沌な存在であると述べられているのを思い出したが、この説明のつかない非合理性は「狂気」の表出ではないだろうか。

    詩、私小説、エッセイを総合した、40年前の短編・中編集でありながら、「新しい」文...続きを読む
  • ヒロシマ・ノート
    大江健三郎氏の訃報を受け、ずっと積読となっていたこちらを。
    終戦後何年も広島の原爆被災者から、その苦悩や悲惨さは語られなかった。ずっと存在していた被爆者に対する差別。誤った原爆症に関する情報。。。
    忘れてはならない事、持ち続けなければならない信念がある。
    大江氏のご冥福をお祈りします。
  • 個人的な体験
     鳥は邪魔者だと思っていた赤んぼうを最終的には受容し自らに父親としての責任を感じるが話はそんなに簡単なのか?
     私は常に子供から逃避していた人間が最後にケロッと父親とならねばならないと、この赤んぼうと生きねばならないと思えるようになるとは素直に納得できない。本当にその責任を感じられる人間とは、赤んぼ...続きを読む
  • 空の怪物アグイー
    短編集。めちゃくちゃ心震え感動に胸打たれた!というものはなかったが、どれもそれなりに面白かった。『不満足』は暗すぎて好きではないが。

    全体的に暗いのはいつも通りだが、それプラス諧謔、皮肉が効いている印象を受けた。
    『スパルタ教育』、『敬老週間』、『アトミックエイジの守護神』は特にそう。『スパルタ教...続きを読む
  • 個人的な体験
    終わり方が自然で、ああ、実際こうなるんだろうなあ、と納得感のある最後だった。
    ただ、自己中心的なバードの行動には苛々するし、女友達の厄介さといったらない。一方で内面の描写が非常に飾らなくて人間らしく共感してしまう部分があるので、彼を真っ向から責められない自分にも呆れるという始末。
    優れた作品で面白い...続きを読む
  • 死者の奢り・飼育
    かつて、繰り返されるモチーフや同じテーマに新鮮味を感じなくなり、次第に飽きてしまった。
    今読み返すと、社会の閉塞感や戦後のどうにもならない感情の息詰まり、それらと青年が対峙する世界をひしと感じる。
    他の作品も読んでみようかと思う。
  • 僕が本当に若かった頃
    半分くらいは自選短編集に掲載されていたが、表題作が読みたくて購入。
    なるほど、自選短編集には選ばないだろうなという完成度だったが、好みの構成で「やりますか!」「ギルティ」などの迷言、迷フレーズもあって楽しく読めた。
  • 死者の奢り・飼育
    比喩的表現に圧巻。
    ただあまりに多用にされるため、時に読みづらさを感じてしまう場面もあった。

    個人的に整理したテーマは以下の通り。

    『死者の奢り』:生と死の曖昧さ、その中間に生きる人間の葛藤。自分で生きているのすら曖昧なのに、新しくその上に曖昧さを生み出さなければならない重大さ。という女学生の言...続きを読む
  • われらの時代
    行動しないことの絶望、行動したらしたでまた次の選択を迫られて結局行き詰まりとなる絶望、閉塞感。戦争に敗れた国を覆うそれらが性を通じて個人の不能として襲いかかる。言葉もまた、国語であるという点においても不自由をもたらす。プールの犯罪者が捕らえられたのちの静けさが好きだった。
  • 死者の奢り・飼育
    芥川賞受賞作「飼育」を含む、最初期の短編集。戦中、戦後GHQ統制時代の色濃い背景の作品が並んでます。
    大江健三郎未読だったので、今回、主要作品をおとな買いし、少しずつ読んでいきたいと思ってます。20代前半でこれだけ濃密な小説を書けるなんて、ほんと凄いですね。まあ、芥川賞を取る人は総じてお若い方が多い...続きを読む
  • 芽むしり仔撃ち
    ちょっとクレージーな男の子の自立の物語。と言っても、読書会で賛同は得られなかった(^_^;)

    凶暴化した社会は主人公の凶暴と呼応している。その中で、純粋なものを失っていくのは、暴力と直接リンクしているわけでなく、暴力の周縁で発生し、主人公を揺さぶる。

    現代の10代にもそうしたことがあるのか、私に...続きを読む