昨年6月から1年間、毎日新聞夕刊に連載されたものの単行本化。
江戸時代の男社会をひたむくに生き抜く女性を描く作者が忠臣蔵を書くと、なるほどここうなるのか、という作品。
赤穂浅野家に奧女中奉公した美貌の「きよ」と、内匠頭(たくみのかみ)長矩の寵童から近習に取り立てられていた美青年磯貝十郎左衛門は
...続きを読む、かつての幼馴染だったことに気づき恋に落ちるが、ごくたまに人目を忍んで会うことしかできない。
そこに起きたのが松の廊下の刃傷事件で、内匠頭は即日切腹、浅野家5万石は取り潰し。
仇討ちを心に秘めて十郎左衛門は酒屋に身をやつし、きよは一緒に住んで束の間の新婚生活を味わうが、十郎左衛門の母に忠義の心を諭され、本懐を遂げさせるために身を挺して決死の覚悟で吉良家の下女として潜入し、浪士たちに情報を伝える。
決行の日を知らされて屋敷を抜け出し、隠れ家で浪士たちを送り出して、吉良邸の向かいの屋敷で討ち入りを待ち、泉岳寺までの行進に付き従う。
浪士たちは4大名の屋敷に分かれてお預けとなり、切腹の処分となって、泉岳寺に埋葬された。
浪士の遺児や弟も遠島の処分となったため、赦免と浅野家再興の嘆願活動が行われる中、柳沢吉保の裏工作で、きよは嬉世と名を改めて跡継ぎのいない将軍綱吉の甥甲府宰相綱豊の屋敷に女中奉公に上がり、すぐ見初められてお部屋様となる。将軍の養子となった綱豊から男子出産の褒美として遺児たちの赦免を勝ち取る。
綱吉の死により綱豊は6代将軍家宣となり、嬉世も大奥に入って「左京の方」となり、浅野家を旗本として再興させる。
家宣が在位3年で死んだため、左京の方は落飾して月光院となり、幼い将軍の母として権力を握るが、女にしかできない忠義を果たして密かに泉岳寺に詣でる。