得体の知れない感動のようなものが最後にはふつふつ込み上げてきた。ここまで一人の他人(誰からしてみても他人なのだ)を解剖して、書き上げることができるのだという驚愕。
野口英世が特殊な人間だったことですら、もう後半、忘れてしまっていたような気がする。
とくに往年は、野口にとっても苦悩と不安の波だったから
...続きを読むかもしれないが、とても人間的に写るのだ。
そこで浮き彫りになるのは、どんなに野口が努力してきたかという事実。
天才、とか、偉人、とか、なんでもない人間、野口。
やはり人間は人間だと思った。
それでも成し遂げたことがあったからこそ、こうして語り継がれる理由がある。世の中の偉人伝の人たちも、そういうことなんだと思った。
中盤、著者は野口のことを否定的なのだろうか?と思えるような描写が続いたように思えて、斜め読みしていたけれども、やはり、心底、ひとりの人間として野口にほれ込んでしまった男のひとりなのだと痛感。
そういうのって、すごい。
ほんとうに、すごい。
そして私も野口が愛おしい。ものすごく愛おしい。
不器用で、変くつで、でも純粋で無邪気な野口博士。
あなたの人間性が、こうして渡辺淳一に一冊の本を書かせた。
そうして、あなたは、完全に記述され、歴史に残った。
そんな人なかなかいないと思う。
すべてはあなたがどれだけ一生懸命生きてきたかの、不思議な因果関係だとおもいました。