広瀬正のレビュー一覧

  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    久しぶりにSFの面白い本に出会えた感がある。時代はこの物語でいう過去も未来も自分が生まれていない時代ではあるのだけれど、なぜだかノスタルジーに駆られてページを捲る手が止まらなかった。
    巻末の星新一が昭和52年に書いたという解説があってそれによれば、この著者はその時点では既に亡くなられたようで、つまり...続きを読む
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
     予測できそうでできない少しできる……ような………という、言うなれば真相の気配が輪郭を帯びないまま漂い続ける。それはレイコが"あの日"の前日に孔雀の本に書き走ったメモに具体化されるひっかかりとして私たちの脳内における。
     なーんとなくうまいこと納得しちゃいそうだなぁという予感を捨て(きれ)ないままに...続きを読む
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    最高に面白い作品。

    時間旅行モノの王道SFでありながら、穏やかでノスタルジックな読み口。が、油断してると最終盤で一気にこちらの度肝を抜いてくる。
    タネが明かされた絶望から希望への転進と、それを後押しする人物が何と…という粋な演出。

    解説は星新一氏。なんという贅沢。


    新版5刷
    2021.4.4
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    タイムスリップ物。もう、タイムパラドックスしまくり。けど、細かなことはどうでもいいです。とても劇的に、情緒たっぷりに、ロマンチックに物語は展開します。
    この小説のメインは昭和7年の、戦前の平和な風景です。とても詳細にリアルに描かれており、まさにタイムスリップした気分で没入するように読みました。当時の...続きを読む
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    いわゆるタイムマシンもので、時間旅行のパラドックスを上手に扱ったもの。SFの要素はもちろんあるのだが、それよりも戦前、戦後の東京の様子や市民の描写が素直に楽しめる。SFとして読むのにはやや無理があって、矛盾というか、置き去りになるエピソードもあるが、読み終わると繋がりが理解できることもあり、読後も楽...続きを読む
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    多くの読友さんからの推薦本、その理由が分かります、壮絶な内容でした!最後に真相が明らかになる、どんでん返し。まさかの真相にそんなことあるんだ!と驚嘆。読み終えた瞬間は「まじかっ!こりゃ大変だ」、少し時間を置いたら「本当に、良かった!」となる。そもそもの間違いは、俊夫さん、なぜに啓子を連れて行かなかっ...続きを読む
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    昭和初期の東京を舞台にしたSF小説。‬

    ‪戦前の庶民の暮らしや価値観の描写が生き生きと魅力的だった。貴重な資料を読んでいるような気分になる。‬自分もタイムトラベルしたようだ。
    ‪丁寧に文字を追っていたが、後半の畳み掛けは食い入るように読んだ。タイムトラベル小説の金字塔とされる理由が分かる。‬
    はじ...続きを読む
  • エロス(広瀬正小説全集3)
    別の時間を生きる人間に、著者の生きた時間を追体験させてくれるかのような表現力の凄さはこの作品も例外ではない。この人の作品を読んでいる間は、自分自身もタイムトラベラーになったかのような錯覚を覚える。
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    333p南京町へ行ってたらふくご馳走を食べるところや、394p邪魔者が頭を上げたところ。おもしろい。

    銀座の描写など緻密であり、熱気を感じる。もれなく帽子を被った人々、目が痛くなるようなけばけばしいネオン、顔が真っ白の女たち、自転車の往来、などなど生き生きとしている。元々の設定にあぐらをかくことな...続きを読む
  • 鏡の国のアリス(広瀬正小説全集4)
     小さな鏡の中を覗き込むと、そこに広い世界が広がっているのが見えるけれど、鏡の中に世界なんかあるわけがないのだ。いったいいつ頃から「鏡の中の世界」についてのお話があったのか知らないが、当然、キャロルの『鏡の国のアリス』を挙げねばなるまい。しかしこれは広瀬正の『鏡の国のアリス』である。
     『ミラーマン...続きを読む
  • ツィス(広瀬正小説全集2)
     「死ね、死ね」という声が聞こえるという精神病患者が、神奈川県C市の病院に入っていくところから説き起こし、視点を精神科医・秋葉に移していくあたり、非常に映画的というか、見事な導入。そして象徴的でもある。聞こえるとか聞こえないとかがテーマの小説なのだから。

     秋葉のかつての患者の娘がツィス、嬰ハ音あ...続きを読む
  • エロス(広瀬正小説全集3)
    大歌手・橘百合子はふとしたきっかけで自分の過去に思いを馳せる。あの時、もしも違う選択をしていたら……。
    「現在」、「過去」、ありえたかもしれない「もう一つの過去」の3つの時系列を行きつ戻りつしつつ、昭和初期の風俗を細かいディテールまで綿密に描き込む筆致が素晴らしく、まさにその時代に生きているかのよう...続きを読む
  • ツィス(広瀬正小説全集2)
    大好きな広瀬正、中でも一番好きなのがこの「ツィス」。

    「どうなるの?」とドキドキしながら読み進め、最後の落ちにまんまとやられました。

    この時代にこの内容を書いた先見性に脱帽。
  • ツィス(広瀬正小説全集2)
    理系の方にはおすすめしたい本。

    ジャンルとしては「SF・パニック小説」となるんだろうけれど、非常によくできた思考実験のよう。

    「日本中でツィス(C#)が聴こえる」

    という条件の下に起こりえる状況を非常に細かい所まで考えている。

    他の人のレビューを見てみるとオチにがっかり、という人が多い気がし...続きを読む
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    「マイナス・ゼロ」は広瀬正のタイム・トラベルものの傑作SF。1960年に刊行された小説だけど、今読んでも最高に面白く、全く古さを感じさせない驚異的な作品。一時は絶版になっていて、結構な値段で売られていた記憶がある。

    2008年に復刊された時の文庫本のチラシには
    不朽の感動に満ちあふれた作品世界に書...続きを読む
  • タイムマシンのつくり方(広瀬正小説全集6)
    時間SFの詰め合わせ。タイムマシン話からちょっとはずれた「化石の街」「鷹の子」も印象深い名作。古典的短編を紐解いた「時の門をひらく」のおかげで一時期ハインラインにもはまりました。
  • タイムマシンのつくり方(広瀬正小説全集6)
    全集第6巻は短編集。
    「化石の街」、「鷹の子」が怖かった…ゾゾゾ。
    筒井康隆のあとがきも大変読み応えがあり、面白かったです。
  • 鏡の国のアリス(広瀬正小説全集4)
    鏡の向こう側へ入ってしまった青年が主人公。
    キャロルの「鏡の国のアリス」のオマージュ作品です。
    めちゃめちゃ面白かった!
    キャロルことドジソンの逸話が面白い。
    それと、「おねえさんはあそこに」がジンと来た。
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    鮮やかだ。ジグソーパズルのピースが一枚一枚あわさっていって、そして最後の一枚がパチリと音を立ててはまる瞬間の、あの鮮かさだ。ラストが近付くにつれて震えが止まらなくなり、読み終わったときにはしばし茫然とした。

    タイム・マシンに憑りつかれ、夭折した広瀬正の代表作。全体を貫くテーマは、「存在の環のパラド...続きを読む
  • マイナス・ゼロ(広瀬正小説全集1)
    長編タイムトラベルものの楽しさは、タイムパラドックスをいかにしてうまく丸め込んで最後にパズルのピースをぴったりあわせるか、だと思う。「マイナス・ゼロ」も順調にパズルのピースが埋まっていくのがまさに快感。だがしかし先の見え透いた予定調和ではなく、予想外の事柄も起こりつつきっちり落ち着くところにまとまる...続きを読む