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東京近郊の海辺の町で密かにささやかれはじめた奇妙な噂。謎のツィス音=二点嬰ハ音が絶え間なく、至るところで聴こえるというのだ。はじめは耳鳴りと思われたこの不快な音はやがて強さを増し、遂に首都圏に波及して、前代未聞の大公害事件に発展していく。耳障りな音が次第に破壊していく平穏な日常。その時、人びとが選んだ道は? そして「ツィス」の正体は? 息もつかせぬパニック小説の傑作。
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Posted by ブクログ
「死ね、死ね」という声が聞こえるという精神病患者が、神奈川県C市の病院に入っていくところから説き起こし、視点を精神科医・秋葉に移していくあたり、非常に映画的というか、見事な導入。そして象徴的でもある。聞こえるとか聞こえないとかがテーマの小説なのだから。 秋葉のかつての患者の娘がツィス、嬰ハ音あ...続きを読むるいは♯ドの音が小さく持続的に聞こえていると彼に相談し、さあ話はもう止まらない。音に敏感そうな精神病の入院患者に訊くと彼らも聞こえるというので、音響学の専門家・日比野教授に相談。ツィス音測定器が製作され、C市での測定が始まる。話を聞きつけてやってくる新聞社。小さな記事。調査に動く市役所。テレビの取材。そして徐々に大きくなって首都圏を巻き込んでいくツィス音。 『ツィス』が発表されたのは1971年。『ゴジラ対ヘドラ』公開の年、社会的に公害がクローズアップされていた。『ツィス』で猛威を振るうのはヘドロでも怪獣でもなく、音である。ミュージシャンでもあった広瀬正ならではというべきか、主役はある意味でツィス音なのである。中盤では、“耳が不自由”とか“聴力を失った”という遠回しな表現が大嫌いな、つんぼの絵描き・榊が主人公格になるのだが、ツィス音の増大で都民は耳栓なく生活できなくなり、にわかつんぼの中で榊は健常者になってしまう。聞こえるとか聞こえないとかどうでもよくなってしまうのだ。「パニック小説」と謳われているが、実はツィス音によってパニックは生じず、人々は耳栓をして整然と行動する。しかしながら、「パニック小説」のフォーマットを用いていることも確か。他方、ツィス音の猛威の中、そんな音は聞こえないと言い張るおかしな人たちもおり、やはり話は聞こえるとか聞こえないとかいう点を巡る。 ツィス音がどのような顛末をたどるかはネタバレに属するので伏せるが、純音公害という一つのアイディアをもとに論理的にストーリーを組み立てていくいかにもSFらしい小説ながら、人物描写に下町人情話的な肌合いが残るのがまたいい。この本もまたほとんど一気に読んでしまった。
大好きな広瀬正、中でも一番好きなのがこの「ツィス」。 「どうなるの?」とドキドキしながら読み進め、最後の落ちにまんまとやられました。 この時代にこの内容を書いた先見性に脱帽。
理系の方にはおすすめしたい本。 ジャンルとしては「SF・パニック小説」となるんだろうけれど、非常によくできた思考実験のよう。 「日本中でツィス(C#)が聴こえる」 という条件の下に起こりえる状況を非常に細かい所まで考えている。 他の人のレビューを見てみるとオチにがっかり、という人が多い気がし...続きを読むますが、個人的には「なるほど」と思いました。
東京近郊の海辺の町で発生した謎の騒音公害。ツィス音=二点嬰ハ音が絶え間なく、至るところで聴こえるというのだ。この不快な音は徐々に拡大してゆき、やがて……。 謎の騒音が人間や社会に及ぼす影響が事細かに描写されるパニック小説の傑作。豊富な情報と緻密なディティールを基にした精緻なシミュレーションに圧倒され...続きを読むる。ラストの一捻りが示す社会批判も素晴らしい。
集団パニック物。とはいってもハリウッド映画のようなスペクタクルな展開はない。現実の日本にこんなことが起きたらこんな風に淡々と事が運ぶんだろうなと、3・11以降のネットを見て感じた。映像化するとしたらモチーフを「音」から「におい」に変えるといいと思う。
ラストがやはり秀逸。 ツィス音のレベル1が、「一部の非常に耳のいい人だけに聞こえる。」 としているのに、表現の妙があるなと思った。 「目に見えないもの」への集団心理なんて、30年経ってもあまり変わって ないように感じる。情報の取捨選択をしっかりできるようになりたい。
音が聞こえる。それからはじまるパニック小説。 そして、やっぱり、「マイナス・ゼロ」と同じく、地味だ。 以下、ネタバレありです。
広瀬正のツィスを読みなおしました。この本は昔読んで面白いと思った本だったので、文庫が再販されたこともあり、読み直しました。ある女性から奇妙な音が聞こえるという申告があり、それがだんだんエスカレートして首都圏に大打撃を与えてしまうという物語でした。物語としては、読みやすく面白く読みました。SFなので、...続きを読むちょっと無理な設定があっても仕方がないのですが、読み直してみると現実的にこの設定でこの状況は発生しないだろう、と考えてしまいます。しかし、インターネットで常時情報過多になりつつある現在では、別の意味でこのような事態が起きる可能性もあるなあ、と振り返って考えてしまいました。
SFとしてはなぜか解説している司馬遼せんせのおっしゃるように 奇妙な味わいある作品だが ミステリとして書かれている構成と描写に違和感ありまくりな 気持ち悪い作品 神奈川県民の扱いが適当過ぎでは 耳が聞こえなくても自分の口笛が聴こえないということはない
年齢とともに可聴域が狭まるために聞こえづらい「モスキート音」というものがあるのを何年か前に知りましたが、それよりもずっと前にこのような作品が書かれていたことに驚き、SF作家の想像力にまたもやうっとりするわけでした。
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