水仙に菫、つゆ草に菊。
馴染み深い花々の美しさ、事件の哀しさ、そして花守の底抜けの優しさが印象的な物語だった。
歯医者ながら人間の悪意を養分にする寄生植物「異客」を枯らすのではなく解いてしまう器用な手を持つ。
植物を愛しながらも枯らす手を持ってしまった白菊にとって、花守の手はまさしく救いの手だった。
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彼の「花を守る」名に相応しい優しさも。
それゆえ、彼の「解く」行為に伴う代償怖さに、白菊は一度彼から離れようと決意してしまうが。
ここで、自分が傷つくことを恐れず、まして白菊に「僕が傷つく覚悟をしてくれないか」という花守。
この発言には驚いた。
ただ優しいというだけではない。
友を信じているからこそ言える言葉だと思う。
一人で抱えるのではなく、共に傷つこうというのだ。
敵わないなと思った。
白菊も、きっと。
どの事件も一筋縄では行かず、「そう来たか!」と驚く話が多い。
特にラストの「菊」の話は、真犯人の意外な正体も含めて本当に驚いたし、結末の切なさが印象的だった。
書き下ろしペーパーにあった話を読んだ後だとより辛い。
でも美しくて、哀しいのにその美しさにどうしようもなく惹かれてしまう。
心に残る物語だった。
願わくば、彼らの更なる活躍を読めますように。