30代半ばで独身の女性が叔母の死をきっかけに婚活や終活というものに向き合うとともに、幼少期の叔母とのやりとりを思い出しながら叔母と自分の母親との確執などを理解していくおはなし。
主人公の山口鳴海(やまぐちなるみ)は都内の美術館で働く学芸員。
このお話は彼女のおばが孤独死したことからはじまる。
...続きを読む亡くなった場所が布団の上ではなくお風呂場の浴槽だったため、ほぼ液状だったらしい。
おばは鳴海にとって憧れの人物だった。
父方の姉でいつもおしゃれ、いつもいいにおいがして会うときはおみやげをくれる。
大人になったらこんなふうになりたいと思える身近な人物だった。
キャリアウーマンで生涯独身という彼女の死を受けて弟である父と、義理の妹である母は独身でバチが当たったと言っている。
それはひどいじゃないかと反論するが定年を迎えたころには卑屈で愚痴っぽいただのおばあちゃんになった叔母がウザくなってた鳴海は彼女が来てもあまり相手にしなくなっていた。
その罪悪感を見ないようにするために彼女の遺品を引き取ったが、そのなかにはおとなのおもちゃも入っていた。
そんな叔母に心底ゾっとした鳴海はこんな風に死にたくないと思い婚活を始めようと意気込む。
じつは鳴海は最近マンションを購入し念願だったネコを飼い始めた。
自分が死んだら誰がネコの世話をするのかと現実的な問題が見えてきたので余計婚活のことばかり考えるようになった。
しかし同僚の言葉で30代半ばの自分が簡単に結婚できないと気付いた彼女はひとりで生きてひとりで死ぬ、という人生にシフトしようと思いなおした。
今の独身の人たちが迎えるであろうリアルな死に方だけにとても恐ろしくなった。
孤独死が怖いからという理由で結婚しようとする人がいるのはこういう背景があるからなんだろうなぁ。
今が幸せでも死ぬとき幸せとは限らないし、それを回避するために人を頼っても晩年人に囲まれて死ねるわけでもないし中々難しい問題だと思った。