【グロ度レベル別】サバイバル&パニック!ゾンビ漫画10選
身近な人が得体の知れない化け物になる、増殖して追いかけてくる……ゾンビ漫画は、現実では体験できない恐怖が味わえます。極限状態で人の本性があらわになったり、非日常のシチュエーションの中で、感動のドラマが生まれたりするのも魅力です。
そんな見どころいっぱいのゾンビ漫画を、定番から通好みまで11作品ご紹介します。主観的な指標ではありますが、作品を「グロ度レベル ★★★(三つ星評価)」で分類してみました。「残酷すぎる描写はちょっと苦手」という方は参考にしてみてくださいね。
グロ度レベル:★★★ のゾンビ漫画3作
ゾンビの生々しさがリアルなことに加え、人間同士の諍いや殺し合いでも残虐な場面が多く、出血や肉体の損傷がリアルに描かれているものを選定しています。「グロさ」を、漫画ならではのエンタメ要素と捉えて、オープンに描ききっている作品もあります。
日常と非日常は紙一重…リアリティが超ド級のゾンビ大作『アイアムアヒーロー』
完結『アイアムアヒーロー』 全22巻 花沢健吾 / 小学館
【グロ度】★★★
鈴木英雄は漫画家として目が出ず、アシスタント生活をしながら、いつか再起を……と考えている35歳。自分に自信がなく、アシスタント仲間にも強いことが言えない気弱な性格です。そんな英雄の身の周りで、じわじわと起きる不可解な現象。謎のウイルス蔓延の噂が広がります。ついには、英雄を支え続けてくれていた彼女が、突如襲いかかってきて……。
本作の魅力は、現実感を伴った生々しい恐怖です。登場人物が変に美化されておらず、ごく普通の人が持つ心の弱さ、凶暴性、事なかれ主義などが露わになります。
もし、現実世界に本当にZQN(本作でのゾンビの呼び方)が現れても、ハリウッド映画の主人公のように、すぐに事態を察知して行動したり、緊張感を保ち続けたりすることは、普通の人間にはできないでしょう。花沢健吾先生は、そういった等身大の人間の描写が非常に秀逸です。英雄が、富士の樹海で出会った女子高生・比呂美と共にZQNから逃げている時に、比呂美がつぶやいた
「…なんか笑っちゃいそう。」
という一言は、漫画でありながら実感を伴って胸に迫ります。ZQNが向かってきても逃げようともしない、ある種の鈍感さや、さめた態度をとりながらも情報に踊らされるという矛盾、扇動される集団心理の怖さなど、英雄の目線を通じて、人間のリアルな本質がえぐり出されています。
政府や自衛隊はもはや機能せず、非感染者のコミュニティーがカルト集団化して暴力事件を起こしたり、日本以外でもZQNが現れたりと、何気ない日常から始まった事件は世界的な広がりを見せながら、非日常の世界に読者を引き込んでいきます。ZQNになっても、微かに理性や自我が残っている人もいて、それが窮地を救ったり、時には悲しい結末を生むことも。「もし自分がZQNになったら……」と、思わず考えずにはいられません。
ゾンビ漫画の決定版とも言える本作は、大泉洋さん、有村架純さん、長澤まさみさんの出演で、2016年4月に実写映画が公開予定。日本での公開に先立ち、第48回シッチェス・カタロニア国際映画祭で、観客賞・最優秀特殊効果賞をW受賞しています。
現在も『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載中ですが、果たして、「英雄(ひでお)」は混沌の街で「英雄(ヒーロー)」になれるのでしょうか? いまだ明かされていない謎も多く、まだまだ目が離せません!
エログロ暴力がカラッと満開!『血まみれスケバンチェーンソー』
完結『血まみれスケバンチェーンソー』 全13巻 三家本礼 / KADOKAWA / エンターブレイン
【グロ度】★★★
解体屋の娘・鋸村ギーコは15歳。酒を飲みタバコをふかすスケバン中学生です。ある日、ギーコが住む「解体のノコムラ」を異形のモノたちが襲撃してきます。なんと彼らはギーコの同級生! クラスメートの天才少女・碧井ネロに改造手術を施され、フランケンシュタインのような怪物にされてしまったのでした。怒ったギーコは愛用のチェーンソーを手に、ネロのアジトへと乗り込みます。かくして3年A組の全員を巻き込み、ギーコとネロの女の意地をかけた血みどろバトルが始まったのでした!
本作の魅力は徹底したエンタメ性! 女子中学生ギーコのむちゃくちゃな強さも、敵方の極悪ぶりも破格で現実感がなく、良い意味でB級ホラームービーを見ているようです。同級生のゾンビたちが自分らを指して「改造死体から成る学生集団!!」と決め台詞を吐き、「ゴアゴア・ゾンビクラブだ!!まだ(仮)だが!!」とオトすなど、ギャグも良いキレっぷり。チェーンソーでゾンビをぶった切るギーコがフンドシとサラシを巻いていたり、半裸・全裸シーンが多かったりと、突き抜けた設定とサービスカット(?)が豊富なのも魅力です。
ぶっ飛んだ血みどろバトル一辺倒ではなく、「昨日の敵は今日の友」という少年漫画っぽさもある本作は、2016年に内田理央さん主演で映画化が決まっています。本作で三家本礼先生の独特な世界観にハマった方は、代表作『ゾンビ屋れい子』もぜひどうぞ。
戦い方、十人十色!バトル+ゾンビな学園漫画『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』
『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』 1~7巻 佐藤ショウジ・佐藤大輔 / KADOKAWA / 富士見書房
【グロ度】★★★
「奴ら」と呼ばれるゾンビが急増する町で高校生たちが必死に生き抜く、青春&パニック&サバイバル漫画です。主人公の小室孝は面倒くさがりで受身な少年。しかしある日、ふいに「奴ら」のに襲われ、幼なじみの宮本麗を守るために戦い始めます。成りゆきで仲間をリードする立場となった孝は、「奴ら」による襲撃や人間同士の対立など、めまぐるしく変わる状況に対応しながら、次第に成長していくのでした。
ゾンビの増殖、人のエゴの暴走、大切な人を手にかける悲しみ等、ゾンビもののツボを押さえた漫画です。「まるでロメロの映画みたい」というセリフが示す通り、ゾンビ好きなら分かるネタが要所に仕込まれているので、それを探すのもまた一興。キャラがそれぞれ立っていて、おのおのが刀、槍、銃などの得意な武器を駆使して戦う様は見応えがあります。特に、女性キャラはみな魅力的! コスチュームにもお色気・萌え要素があり、エロめなシーンも多めです。
架空戦記作家であり、ゲームデザイナーでもある佐藤大輔先生が原作を、『トリアージX』の佐藤ショウジ先生が作画を担当した本作は、テレビアニメ化もされて話題となりました。フルカラーの『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD FULL COLOR EDITION』や、『干物妹!うまるちゃん』のサンカクヘッド先生によるスピンオフ『学園黙示録 ハイスクール・オブ・ザ・ヘッド』も併せてどうぞ!
『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD』を試し読みする
グロ度レベル:★★☆ のゾンビ漫画3作
死体や殺傷シーンは出てきますが、表現はやや抑え気味です。ただし、やはりゾンビ漫画としての怖さはあるので、苦手な方はご注意を。非日常世界における日常性や、過酷な状況での人間性にフォーカスした作品が多いです。
小野不由美×藤崎竜による、ホラーサスペンスの傑作『屍鬼』
完結『屍鬼』 全11巻 小野不由美・藤崎竜 / 集英社
【グロ度】★★☆
舞台は、外界から隔絶された山あいの集落・外場村。土葬や悪霊祓いの祭りといった独自の風習を持つ村に、富豪の一家がひっそりと移転してきます。一家の娘・沙子は日光に当たれない病気だとのこと。それから村では死者が増え、まるで何かに操られているかのように、奇妙に振る舞い消息を絶つ者も出てくるように……。
村の僧侶・室井静信と医者の尾崎敏夫は「何者か」が、村の行政や交通等の実権を乗っ取りつつあることに気づきます。やがて、死んだはずの者が現れて、生きている人間の血を吸い始め……。ヴァンパイアなのかゾンビなのか、死から「起き上がった」者たちはとても賢く、巧みな心理戦をしかけて村人たちを追い込んでいきます。
『悪夢の棲む家 ゴーストハント』などの悪霊シリーズや『十二国記』で有名な小野不由美先生の長編小説を、『封神演義』の藤崎竜先生がコミカライズした本作。小野先生の意向もあって、小説の焼き直しではない独自の漫画作品に仕上がっており、原作ファンも必読です。感染により「屍鬼」になるのであれば、屍鬼は治療されるべき患者なのではないかという本作の視点は、従来の作品に多い「ゾンビ=非人間」というイメージとは一線を画しています。恐怖だけでなく、人間の存在への問いかけをも含み、そこが心理的な怖さをもたらしています。屍鬼の退治を目指す敏夫に対し、生きづらさを感じている静信は屍鬼への同情と共感を禁じ得ず、次第にそちら側へ引き寄せられていく……。ふと、自分はどちら側になるだろうと、読みながら想像してしまいます。人間が攻撃側に立った時、屍鬼よりも残酷な悪鬼と化すさまが克明に描かれており、そのドラマも衝撃的な作品です。
ほのぼのと狂気が交わる話題作『がっこうぐらし!』
『がっこうぐらし!』 1~10巻 海法紀光(ニトロプラス)・千葉サドル / 芳文社
【グロ度】★★☆
2015年のテレビアニメ放送時には、表紙やタイトルに反したその凄絶な内容に騒然となり、一気にファンを増やした話題作です。
由紀、胡桃、悠里の3人は、学園生活部という部活動にいそしむ女子高生。明るく天然な由紀に振り回されつつ、学園に泊まり込んで楽しく暮らしています。3人を見守るのは優しい顧問のめぐ姉こと慈先生。由紀はいつも級友たちとじゃれていて……と、これだけだとほのぼのテイストの萌え漫画のようですが、実は真性のゾンビ漫画! 3人が住む一角を除き、学園も街もゾンビがうろつく地獄と化しているのです。めぐ姉や級友たちの姿は、現実を受け入れられない由紀が作り出した幻影で、実際の生き残りは3人だけ。学内の非常食を食いつなぎ、なんとか生きのびてきたものの、ヘリの墜落による火災でインフラが全滅。3人は脱出を余儀なくされます。
「――最近 学校が好きだ 何でもあって まるで一つの国みたい」という、由紀の母校ラブ! なモノローグと廃墟と化したゾンビ学園、ほんわかムードと凄惨な状況設定の対比にゾクッとします。これ以上ないくらい過酷なはずですが、可愛くけなげな彼女達が、絵柄も相まって救いになっています。友だちと助け合い、知恵と勇気を結集して生き残るという、サバイバル漫画、パニック漫画としての面白さもありつつ、無邪気な由紀が、友人をかき回しつつも皆の拠り所となり慰めにもなっている状況は切なくもあります。待ち受けるのはハッピーエンドか、それとも……!? ハラハラしながら、続きが気になる作品です。
グロくてエロくてバカっぽくてジンとくる『Z〜ゼット〜』
完結『Z~ゼット~』 全3巻 相原コージ / 日本文芸社
【グロ度】★★☆
『コージ苑』や『かってにシロクマ』などのギャグ漫画で知られる相原コージ先生のゾンビ漫画で、2014年に実写映画化もされた作品です。
20XX年、謎のウイルスが発生し、感染するとすぐ死に至り、ゾンビとなってしまう……。社会は大混乱に陥り、生き残った人々は家や避難所に立てこもってサバイバル生活を送ります。薙刀を武器にゾンビを撃退する高校生の戸田凛子は、中学生の火野原あかり、鈴野恵を守りながら生き延びているのでした。
本作はオムニバス形式になっており、ウイルスによる疫病の発生中期を舞台とした短編、発生初期を描いた一話、また発生中期の話、そして発生後期という具合に、時系列を行ったり来たりしながら、人々とゾンビとの物語が縦横無尽に展開されます。読みながら「そんな時代もあったね」という、既視感のような不思議な感覚で楽しめます。同時に、描写が淡々としているので、歴史資料や新聞で別の国の動乱について読んでいるかのような、妙な「対岸の火事」っぽさもあります。あかりのボケに恵がつっこむシュールなギャグや、ゾンビ相手に人間がムラムラ……といったエロ要素もあり、また一方で、最も過酷な発生中期を生きる凛子たちが、生まれたての赤ん坊を見て、
「こんな地獄みたいな世界に生まれてきて この子だって可哀想だよ」
「でも…こんな地獄のような世界でも 命が生まれてくるということが 逆に希望なのかもしれない」
と話すシーンなど、グッとくるシーンも。構成と絵面のユニークさと、グロ・エロ・ギャグが絶妙な、唯一無二のゾンビ・ワールドが楽しめる漫画です。
また、本作はゾンビの特徴を理詰めで捉え直した作品でもあり、「ゾンビは焼いて灰にするまで動き続ける」「動物もゾンビ化するので食肉がなくなる」など、ゾンビマニアもうなずくこだわりの設定が多く出てきますよ。
グロ度レベル:★☆☆~☆☆☆ のゾンビ漫画4作
残虐なシーンはほとんどなく、あってもぼかされており、現実感が薄めのゾンビ漫画です。怖さを際立たせるためにあえて絵柄をソフトにしているものや、人間ドラマに焦点をしぼったものなどがあります。
思わず胸キュン!?ゾンビ美少女に恋したら『さんかれあ』
完結『さんかれあ』 全11巻 はっとりみつる / 講談社
【グロ度】★☆☆
降谷千紘(ふるや ちひろ)は、ゾンビ大好きという変わった高校生。愛猫を蘇生させる実験中、千紘は散華礼弥(さんか れあ)という可憐な美少女と知り合います。礼弥は事故で崖から転落死してしまうのですが、千紘の蘇生薬のおかげでゾンビに……という、変わり種のラブコメです。礼弥はゾンビなので、いつかは肉体が朽ちてしまいます。限られた時間の中で、礼弥を救おうとする千紘の一途な想いと、普通の女のコとして生きたいという礼弥の健気な想いに胸がキュンとしてしまう(ゾンビなのに!)作品です。
見どころはなんといっても、礼弥の可愛さ! 厳格な両親のもとで過ごしてきた礼弥にとって、千紘との生活は初めて味わう楽しさでいっぱい。もう少しだけでいいから、ここにいたい……という礼弥の切なげな表情に、思わず「守ってあげたい!」(ゾンビなのに!)と思う読者も多いのでは?
あなたの大事な人がゾンビになったら…『世界の終わりのはじまりに』
完結『世界の終わりのはじまりに』 全1巻 田中慧 / 白泉社
【グロ度】★☆☆
ゾンビというとホラー的な要素がクローズアップされがちですが、こちらは少女漫画だけあって、ヒューマンドラマ的な性格が強い作品となっています。
舞台は北海道。猿が持ち込んだウイルスによって人々がゾンビに……という王道の展開でありつつも、極限状態での人間同士の絆や信頼、絶望の中に見える希望などを描いているのが特徴です。感染した恋人との切ない別れや、長く続く避難所生活でのささやかな心の触れ合いなど、ぐっとくるエピソードがたくさん。また、「普通の人」である登場人物たちが、それぞれに勇気や知恵を出し合い、危機的な状況を打破していく姿は感動的で、読んでいるこちらも勇気が湧いてきます。
ゾンビものとしては珍しい、爽やかな読後感の本作。グロやホラーではないゾンビ漫画を読みたい人におすすめです。
ゾンビ回収業者のシュールな日々と恋『就職難!! ゾンビ取りガール』
『就職難!! ゾンビ取りガール』 1~2巻 福満しげゆき / 講談社
【グロ度】★☆☆
ゾンビはゾンビでも、本作に出てくるゾンビは老人を主とした「非力なゾンビ」。主人公は、そんなゾンビたちを回収する業者に勤めています。ある日、美人のアルバイト女性が入社してきたことから、主人公に恋のフラグが……!という、日常のほのぼの感とゾンビの対比が、なんとも言えぬ味があって面白いのです。
しかし、この漫画の魅力はそれだけではありません。第1巻の半ばで若者ゾンビが大量発生するエピソードがあるのですが、そこで繰り広げられるアクションシーンが実にうまい! 普段はモッサリしている主人公が、自前のゾンビ捕獲アイテムを駆使してゾンビを捕まえていく姿に、思わず「やるじゃん」と呟きたくなります。この事件をきっかけに師弟関係を結ぶ主人公とヒロインが、今後どうなっていくのかも気になるところです。
作者の福満しげゆき先生は、『僕の小規模な生活』をはじめ、第14回文化庁メディア芸術祭マンガ部門・奨励賞を受賞した『うちの妻ってどうでしょう?』など、その独特の絵柄と作風で人気があります。
ひと夏の切ない情景を描いた、ほのかな百合×ゾンビ漫画『花と嘘とマコト』
完結『花と嘘とマコト』 全1巻 あさの / 秋田書店
【グロ度】☆☆☆
「代行症」と呼ばれる病によって、動く死体となってしまった親友・マコト。彼女への想いを断ちきれず、こっそりと家に匿い続ける主人公・ハナ。肉体が腐敗し、記憶と人間性を失っていくマコトの側で、ハナはひたすら現実から目をそらそうとします。しかし、いよいよマコトに限界がきてしまい……というストーリー。
死体になっても側にいて欲しいというハナの思いが、痛々しいほどに切ないです。少しずつ明かされていく過去のエピソードからも、2人が互いをどれほど深く想い合っていたかが分かり、それだけに痛烈な別れの予感をはらんだ2人の関係に胸がぎゅっとなります。
世界に2人だけしか存在しないような、ノスタルジックな箱庭感が魅力の本作。絵柄も可愛いので、百合好きさんにもぜひ読んでほしい漫画です。
まとめ
ゾンビ漫画は、殺戮シーンや人間の本性など「怖いもの見たさ」な面が強い一方、死の悲しみや命のはかなさといった情感もあるのが魅力です。新解釈のゾンビ漫画も続々誕生しているので、「これはおすすめ!」という作品は、今後も追加していきます! お楽しみに!