ゲームで真剣勝負! eスポ根マンガ『東京トイボクシーズ』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー
今回は『東京トイボクシーズ』をレビューします。コンピュータゲームの対戦をスポーツ競技として捉える「eスポーツ」を題材とした青春物語です。著者はご夫婦の漫画家ユニット、うめさん。シナリオ担当が小沢高広(おざわ・たかひろ)さん、作画担当が妹尾朝子(せお・あさこ)さん。新潮社「月刊コミックバンチ」にて連載中で、本稿執筆時点で2巻まで刊行中です。
『東京トイボクシーズ』作品紹介
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『東京トイボクシーズ』 1~2巻 うめ/新潮社
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世界では市民権を得たeスポーツも、日本では……
一般社団法人日本eスポーツ連合によると、コンピュータゲームの誕生は1980年代。そのころからすでに、多くの大会が開催されていたそうです。「eスポーツ」という単語が使われ始めたのが2000年で、10月には第1回の国際大会WCGC(World Cyber Games Challenge)が韓国で開催されています。
https://jesu.or.jp/contents/about_esports/
競技大会には巨額の賞金が出るようになり、職業としてのプロゲーマーも登場。近年ではオリンピックの公式種目になるかも? なんてことが言われるほど、eスポーツは欧米を中心に盛り上がっています。
ところが日本は、コンピュータゲームが世界に冠たる一大産業になっているにも関わらず、競技大会の賞金が景表法や賭博罪に引っかかってしまう可能性が高いことから、eスポーツは後進国になっています。
本作はそんなeスポーツが、残念ながらオリンピック種目に入らなかった……というニュース映像から始まります。主人公は安曇野蓮(あずみの・れん)。作品開始時点は中学生で、国籍を偽り海外のゲーム大会へ出場、凄腕を振るっていました。
日本初の全日制eスポーツ科が設立!
そんな中、名門ながら少子化の影響で年々入学志望者が減ってきている白郷学園は大胆な改革を断行、高等部に日本初の全日制「eスポーツ科」を設立します。その特待生に、凄腕ゲーマーの安曇野蓮をスカウトすべく、白郷学園の理事長自ら出向くも……というのが本作の導入部です。
実際の世の中でも、ゲームを規制する妙な条例ができてしまうなど、まだ強い偏見があります。ましてや高校の授業でゲームを学ぶなど。作中でも白郷学園の発表は大きな話題を呼びますが、同時に「母校の名に傷をつけるな」などのクレーム電話が殺到する始末。
しかし安曇野蓮は幼少期に祖父から教えられた、
「真剣に生きた千時間はボンクラどもの1万時間に匹敵する」
という言葉通り、ゲームに対しては常に真剣。プロとして稼いでいけるだけの実力を持ちながらも、世間からは存在が認められておらず、いわゆる「客寄せパンダ」であることを承知の上で、入学式の代表挨拶で安曇野蓮は啖呵を切ります。
「10年後(略)今この場にいる誰よりも稼いでいるのは自分たちだと」
まさにプロフェッショナル。そう、これはゲームで真剣勝負する、スポ根(スポーツ+根性もの)マンガならぬ「eスポ根マンガ」なのです。なお、本稿ではネタバレを避けましたが、私は第2話のラストで「そうきたか!」と声が出ました。意外な設定ですが、時代を反映しているな、と。
ちなみに、本作はうめさんの代表作である『東京トイボックス』シリーズと、共通する登場人物が出てきます。これまではゲームクリエイターの話で、今回はプレイヤーの話。関連はあるものの直接は繫がっておらず、シリーズを読んでなくても楽しめます。でも、読んだらもっと楽しめることでしょう。
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『東京トイボクシーズ』 1~2巻 うめ/新潮社
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『東京トイボックス』シリーズ
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完結『東京トイボックス【デジタルリマスター版】』 全2巻 うめ(小沢高広・妹尾朝子)/ナンバーナイン
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完結『大東京トイボックス【デジタルリマスター版】』 全10巻 うめ(小沢高広・妹尾朝子)/ナンバーナイン
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