『天国大魔境』で話題の石黒正数作品の素晴らしさ|RABマロン話題の漫画レビュー
どーもマロンです!最近話題の石黒正数先生作の『天国大魔境』をご存じですか?
1巻が出るやいなや反響を呼び、”このマンガがすごい!2019”でオトコ編第1位にランクインしたことでも記憶に新しいですね。今回はその『天国大魔境』…ではなく、作者である石黒正数先生の作品を紹介しようと思います。
目次
石黒先生作品との出会い
僕が石黒先生の作品に初めて出会ったのは漫画の専門学校時代に友人から薦められた『それでも町は廻っている』(以降それ町)でした。電車男などのヒットもあり、当時は空前の萌えブームで漫画でもいわゆる”萌え系”が流行っていました。
その中でも特に題材で多かったのがメイドのキャラクター。それ町の表紙にはメイド服姿の女の子が大きく描かれていました。その時は「あ~、萌えブームに乗っかった作品なのかな?」って読んでみると…
“この漫画…むちゃくちゃ漫画力があるぞ…!”
と感じたのが第一印象。
何を偉そうにと思うかもしれませんが、当時漫画の専門学校で基礎を徹底的に勉強していた私としてはその凄さをヒシヒシと感じました。
シンプルな白と黒バランスの良い線画、派手な演出は無いのにグイグイ読ませられるコマ割りや台詞回し、これは相当漫画をコントロールしている人じゃないとできない事だ!
石黒先生の作品を読むとまず気が付いたの点は主要キャラの線は極力少なくした、良い意味で”力の抜けた絵柄″なのだが、脇役である喫茶店のおばあちゃんや商店街のおじさんはまるで劇画のキャラクターのように描きこまれており、柔らかい印象とは裏腹にガッシリとした世界観があるのを感じました。
そして話の構成は1話完結でキャラクターが自由に動いているようで、起承転結がしっかりしている。少し、ミステリーやSFの要素も入れてきて、読み終わったあと「上手い…!」とつぶやいてしまったほど。
派手なコマ割りや、荒唐無稽な設定などなくてもついつい読み進めてしまうこの漫画力は藤子・F・不二雄作品にも通ずるものがある…
などと考えていたら本当にインタビューで石黒先生は藤子・F・不二雄先生の作品に影響されたと書いてあり、やはり!とガッツポーズをしました(笑)。
他の作品との出会い
そこから他の作品も読みたくなり、全1巻の『ネムルバカ』を読みました。これは石黒先生の作品の中でも代表作のひとつ。大学の女子寮で同部屋の先輩と後輩の日常の話なんですが、生き方の違う二人のモラトリアムな大学生活から段々と浮き彫りになっていく夢と現実…誰もが共感できるテーマを柔らかく胸を付いてきます。これだけ書くと凄く重い漫画に思えますが、皮肉めいたギャグや先輩後輩のちょっと百合めいた感じもほほえましく読めます。いや傑作です。
こうなってくると短編集も気になってきます。『探偵綺譚』、『ポジティブ先生』、『Present for me』など読んだがどれも完成度が高い!一話完結へのオチを持って行くのが本当に上手い。ギャグなものから、ちょっとホラーやSFなど、探偵モノなど全部綺麗に落としてくる。
特に全1巻の『外天楼』は圧巻の作り!最初はギャグの短編詰め合わせだと思っていたら、一つ一つ短編のストーリーが繋がっていき、最後はすべて繋がる。しかもその中にホラー、SF、推理ちょっとブラックな部分や作者のフェチズムも入っており、石黒先生の描きたいことが詰め込まれている一冊なので是非読んでほしいです。
後にインタビューで大友 克洋さんの『AKIRA』に影響を受けたと知り、石黒先生のSFで良く描く荒廃した近未来の世界観にその面影を感じた。それと同時に石黒先生は本当に描きたいのは長編SFではないのか?と思いました。
そんな矢先発表されたのが今話題の『天国大魔境』。今まで連載であれ、1話完結形式の漫画を描いてきた石黒先生の初の長編SFです。
世界観、セリフ回し、フェチズム、謎が謎を呼ぶ展開…早くも作品からは、石黒先生がノリノリで描いている感じが伝わってくる!ようやく長編SFに挑む準備ができた、そんな感じです。
既に大きな評価を得つつも新しい冒険に出ようとする石黒正数先生を僕は尊敬し、全力で応援したいと思います。『天国大魔境』で気になった方は是非他の石黒先生作品を読んでみてはいかがでしょうか?
紹介した作品はこちら
天国大魔境
『それでも町は廻っている』
完結『それでも町は廻っている』 全16巻 石黒正数 / 少年画報社
『ネムルバカ』
完結『ネムルバカ』 全1巻 石黒正数 / 徳間書店
『探偵綺譚』
完結『探偵綺譚 石黒正数短編集』 石黒正数 / 徳間書店
『ポジティブ先生』
完結『ポジティブ先生 石黒正数短編集』 石黒正数 / 徳間書店
『Present for me』
完結『Present for me 石黒正数短編集』 全1巻 石黒正数 / 少年画報社
『Present for me 石黒正数短編集』を試し読みする
『外天楼』
『木曜日のフルット』
RABマロンの描く”石黒先生キャラクター大集合”!
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【ネタバレ注意】『天国大魔境』最新刊までにわかったことをまとめて紹介。さらに勝手に考察!
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