チームワークで傑作小説を生みだせ!『乙女文藝ハッカソン』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー
こんにちは、鷹野凌です。今回は講談社「コミックDAYS」で連載中の漫画『乙女文藝ハッカソン』をレビューします。著者は山田しいたさん。最強の文芸部を決める闘い「文藝ハッカソン」に挑む乙女たちを描いた、ユニークな作品です。本稿執筆時点で、コミックス第1巻が発売中です。
『乙女文藝ハッカソン』作品紹介
『乙女文藝ハッカソン』 1巻~ 山田しいた / 講談社
実在する小説ハッカソンを取材して描かれた作品
本作の主人公は、安達倉麻紀(あだくら・まき)。作家志望で、栃木大学藝術学部文藝学科(実在しません)の1年生です。寮に入り、先輩に
「文芸サークルに入りたいんですけど」
と質問したところから物語は始まります。実はこの栃木大学には文芸系サークルが20くらいあり、大学祭でやる「文藝ハッカソン」というイベントで競い合っているのです。
タイトルにある「ハッカソン(hackathon)」とは、ハック(hack)とマラソン(marathon)からなるIT業界発の造語です。もともとは、IT系のさまざまな技術者が集まりチームを作って、与えられたお題に対し数時間から数日間の日程で集中的に企画開発を行い、成果を競うイベントです。
近年は、IT業界以外にも広がりつつあり、ハードウェア、アート、音楽、ヘルスケア分野などでも行われていたりします。そして、私が理事長をやっているNPO法人でも、出版創作のハッカソン「NovelJam」というイベントを何度か開催しています。そうなんです、小説ハッカソン、ほんとにやっているんです。
そして実は、山田しいたさんはこの「NovelJam」第2回の参加者で、その後、本作の連載を始めた、という経緯があったりします(とはいえ本作の「文藝ハッカソン」は、「NovelJam」とは若干ルールが異なっています)。
そのため、コミックス(紙版)1巻の裏表紙(カバー下)に「取材協力 NovelJam関係者の皆さま」と記していただきました。この場をお借りして御礼申し上げます。山田しいたさん、ありがとうございます!
ユリイカ!!
さて、作品のほうへ話を戻します。先輩から試しに書いてみようと誘われ、3時間で1200字のショートショートを書くことになった安達倉。
「なにも思いつかない」
とすんごい顔になります。わかる。先輩たちから勧められ、お風呂に入った安達倉。頭になにかが降りてきます。アルキメデスが風呂に入って叫んだという「Eureka(見つけた!)」と「閃いた」をもじったと思われる
「閃(ゆり)いか!!!」
と叫び、執筆に取りかかるのです。
煮詰まったときは彼女のように、ぜんぜん違うことをするといいです。私もお風呂でアイデアを思いつくことが多いのですが、「よし!」とお風呂を出ると忘れてしまう場合も。寝る前にベッドの上で思いつき、そのまま寝てしまい、きれいさっぱり忘れることも。なにかを思いついたことだけは覚えているのが厄介です。だいたい思い出せません。最近は、気分転換に散歩をするようにしています。歩き目です。ユリイカ!!
付箋とホワイトボードでアイデア出しとか、ポメラで執筆とか、Googleドライブで校正とか、音声入力などなど。「文章を書く」という動作はひとつなのに、いろんな道具があり、好みもわかれます。そんな「物書きあるある」が随所にちりばめられているのが、本作です。文章に限らず、現役クリエーターな方々や、クリエーターを目指している方々におすすめします。
『乙女文藝ハッカソン』 1巻~ 山田しいた / 講談社