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どこまでが実体験なのか『そしてボクは外道マンになる』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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今回は漫画『そしてボクは外道マンになる』をレビューします。著者は平松伸二(ひらまつ・しんじ)さん。代表作『ドーベルマン刑事』『ブラック・エンジェルズ』などの著者でもある、ベテラン漫画家です。本作は集英社「グランドジャンプPREMIUM」と「グランドジャンプ」で連載され、単行本は全4巻で「第一部 完」となっています。

平松さんの自伝的漫画で、冒頭には小さく「実体験をもとに、脚色・構成したものです。」と注釈されています。同じような自伝的漫画でありながら、冒頭に大きな文字で「この物語はフィクションである。」と宣言されている島本和彦さんの『アオイホノオ』とは、ある意味で対照的です。

集英社グランドジャンプ公式サイト『そしてボクは外道マンになる』

『そしてボクは外道マンになる』作品紹介

『そしてボクは外道マンになる』 全4巻 平松伸二/集英社
『そしてボクは外道マンになる』を試し読みする

イケイケで勢いのあるジャンプ編集者と漫画家の……

平松さんは岡山県高梁市外の山奥出身。子供のころから漫画家になるのが夢で、16歳で「月例ヤングジャンプ賞」(当時)の佳作を入賞。高校卒業後の1974年に有望な新人として上京し、当時「週刊少年ジャンプ」で人気だった『アストロ球団』の中島徳博さんの臨時アシスタントをする――というところから物語は始まります。

講談社「週刊少年マガジン」と小学館「週刊少年サンデー」の創刊が1958年。集英社「少年ジャンプ」が月2回刊で創刊したのがその10年後の1968年で、週刊化はその翌年のこと。平松さんが上京したころすでに「週刊少年ジャンプ」の発行部数は「週刊少年マガジン」を超えていたようで、イケイケで勢いのある漫画家や編集者の「野武士」のような姿が、ある意味で生き生きと(?)描かれています。なんというか、凄まじい。

実体験がどこまで脚色されているかわかりませんが、代原(代理原稿)が決まった平松さんを副編集長が

「(原稿を)オトしたら…地獄へ堕ちろ」

と脅すセリフには、思わず笑ってしまいました。これは『ブラック・エンジェルズ』の決め台詞なのです。もしかしたら、実際に言われた言葉を漫画に使ったのか? なんて想像までしてしまいました。まさかね。

編集者の「ド外道」っぷりはどこまでが実体験なのか

また、平松さんの担当編集である権藤狂児(モデルは実際の初代担当者である後藤広喜さん)が、ネームを目の前で破り捨てるシーンがあります。平松さんに「ド外道」に対する怒りを表現させるのが目的だったようですが、あまりに酷い。ところが、武論尊さんと原哲夫さんのヒット作『北斗の拳』の連載2話目に、一度仕上がった原稿を担当編集の堀江信彦さんが破り捨てた(記事)という有名な実話エピソードがあります。

当時の集英社ではそういう鬼畜な行為があちこちで行われていたのか、堀江さんの有名なエピソードを利用して平松さんが脚色したのか。実際のところはどうだったのでしょうね? ちなみに、平松さんが作中でカンヅメにされたビジネスホテル「錦友館」は、どうやら神保町に実在していたようです。ひえっ。

『そしてボクは外道マンになる』 全4巻 平松伸二/集英社
『そしてボクは外道マンになる』を試し読みする

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