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『Change!』感想解説|RABマロン話題の漫画レビュー

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どーも! マロンです! みなさん最近フリースタイルラップバトルってTVや雑誌、ネットで良く見ませんか? DJがランダムに選んだ曲に対し、即興でMC(ラッパー)が対戦相手をディス(批判)したり、韻を踏んだり(小節ごとの母音を合わせる)、フロウ(声のキーや速度)や内容を競い合う言わば「言葉の格闘技」です! そんな今話題のフリースタイルラップバトルシーンの熱さをそのまま詰め込んだような漫画が誕生しました! それがこの漫画『Change!』ですー!!

月刊少年マガジン連載中、現在ブームになっているフリースタイルラップバトルを題材に巨匠”曽田正人”が描く熱血美少女ラップ漫画である!

あらすじ

主人公の去年 栞(こぞの しおり)はお嬢様学校である私立・鐘鳴館高校1年生。厳しい校風の中に息苦しさを感じていたが、クラスメイトのミキのある言葉に憤りを感じ、全く無縁であったクラブ『FAMILY』に入ることに。その中で栞が出会ったのは言葉で戦うフリースタイルラップバトルだった。

マイナースポーツを題材にする難しさ

今はラップがブームであるとはいえ、野球やサッカーのような説明不要な競技ではなく、本作品はいわゆるマイナースポーツ漫画であり、漫画史において大ヒットしたラップ漫画は僕の知る限りではありません。

そして、ラップ漫画の成功の難しさもわかります。何故かというと僕もブレイクダンスの漫画を目指していた時期があったので、マイナースポーツの漫画の難しさを痛いほどわかるのです。

まずは”ルール”を説明しなければならない。

マイナーが故に読者にまずルールを説明しなければいけない。なのでどうしても説明臭く、新連載という掴みが大事な初回をほとんど説明で終わってしまうことになります。

続いては”音楽”が聞こえない。

漫画では読者に音のイメージに委ねるしかありません。バンド漫画などは作家の画力により、「なんか凄い曲!」を伝えることができますが、フリースタイルラップは勝敗を決めるものなので、重要なフロウ、ビートアプローチなどなどが伝わらないし、聞こえて初めてわかる韻も伝わりづらいという弱点があります。

そして”勝敗”がわかりづらい。

野球やサッカーのような点数があるわけでもなく、格闘技のように相手が倒れるなどのわかりやすい勝ち負けがない。審査員と観客の心を如何に掴んだかで勝敗を表現しなければいけないという難しさ。

弱点を克服するほどの漫画力

大きく出してもこれだけの弱点があります。しかし僕はこの『Change!』がラップ漫画として初めての大ヒット作になるのではないかと思っています。その理由としましては…

『シャカリキ!』『め組の大吾』『昴』『capeta』などの名作を生んだ曽田正人先生だということ!

なんだそりゃ! と思うかもしれませんが、全てにそこに集約します。つまりどの弱点も曽田正人先生の漫画力によってクリアされてしまっているのです。

まずはルール説明ですが、主人公の栞がミキを追って入り込んだクラブ「FAMILY」で行われているラップバトルに出合い、それを栞が観ることで説明がされています。普通なら凄く退屈なシーンになってしまいがちですが、それを新人作家ではできないような大ゴマによる大胆なコマ割りで魅せることで退屈せず、むしろ初めての文化に接する栞の感情の高まり具合を表現できてワクワクします。

そして音問題ですが、コマ割りにより読み手のリズムを誘導し、韻を踏む場所のフォントを大きくするなどして音が聞こえなくてもリズムを感じるような作りになっています。実際にどんな曲がかかっている設定なのか注釈もあったりするので調べてみるのもありかと。

そして勝敗がわかりづらいという問題。

さすがにハッキリとした勝敗を見せるのは難しいですが、勝負のポイントを韻と話の筋を通すことに絞り、「論破」に近い感じで勝敗を見せていきます。ここはラップを監修しているMC晋平太さんの力がかなり活きているなと感じました。そして曽田先生による圧倒的な漫画力によりコマ割りはもちろん、心象風景、相手を言いくるめる流れから決めゴマで締めることで、明確な勝ちの印象を与えています。それ以外にも歌詞のサンプリング(引用)や先行、後攻で作る勝ちへのロジックなども語られ、勝敗の結果に説得力を与えています。

キャラクターとして魅力的なMCしおりん

実は一番大事なのはこの漫画のキャッチコピーにもある『和歌のお嬢様、ラップ始めました。』というところ。これがいかにもラップをしそうな強面の人がラップしても、全く華の無い作品になってしまいますが、可愛い女の子でしかもお嬢様がラップをするというだけで、読者は興味をそそり、入りやすくなります。

お嬢様が相手をディスるというとてつもないギャップですが、それだけでは終らない主人公の魅力があります。主人公の栞は超が付くほど真面目な優等生なのですが、ミキに「犬」と言われて反発する(やり返す)負けん気を見せたり、どうしようもなくフリースタイルラップバトルに惹かれ、とんでもない状況に巻き込まれても震えながら涙目で進んでいく芯の強さがあります。僕は怖いけど進んでいく栞の姿に、オタクだけどダンスバトルに出ようと決意した自分を重ね何度も泣きそうになりました。

ラップ漫画として如何に優れているかといってイコール面白い漫画ではありません。一番大事なのは”キャラクターがいかに魅力的か”なのです。

みなさんも囲碁やカードゲームの漫画でルールがわからないけど面白くてついつい読んでしまうってことはありませんか? あれは、ゲーム自体の面白さではなくキャラクター自体が魅力的でそれを追ってしまっているからなんです。マイナースポーツを描くにはまずルールがわからなくても読み進められるキャラクターの魅力が絶対なのです。そういった意味では主人公の栞はとても魅力的な主人公だと思いました。

また性格が正反対の同級生のミキとの友情がいわゆるバディモノや若干の百合っぽさの要素もありキャラクター同士の会話だけでも楽しい。そして高校生ラップ選手権という野球漫画でいうところの「甲子園」的目標も作ってあり、読者の興味の持続を続かせるという王道的な漫画の面白さをちゃんと担保しているのも凄いなと思いました。

最後はやはりなんといっても作品の熱量! 曽田正人先生の作品特有の読んだとき感じる震えるぐらいの高揚感! これはもう読んでもらって感じてもらうしかない! 僕はダンスで感じた事ですが、ステージに立った興奮、相手と対面した時の緊張感、集中力が研ぎ澄まされる感じ! その時の高揚感をこの漫画からは感じ取れるのです! ラップ漫画として色々書いてきましたが、最後はほんとこの漫画から感じるジャンルを超えた『熱』を感じ取ってほしい!絶対みんなに刺さるから!

そんな感じで今熱いフリースタイルラップバトルに負けないくらい熱い漫画『Change!』みなさんもこの熱に充てられてみませんか…?

紹介した作品はこちら

Change! 和歌のお嬢様、ラップはじめました。

RABマロンの描く”しおりん”!

RABマロンのマンガ連載はこちら

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