気ままな旅は楽しいばかりじゃない、けれど『魔女の旅々』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー
今回は『魔女の旅々』(まじょのたびたび)をレビューします。若き魔女が諸国を気ままに旅し、出会いと別れを繰り返す、連作短編式のファンタジー作品です。
原作小説は白石定規(しらいし・じょうぎ)さん。Kindleダイレクト・パブリッシングで自己出版した上下巻に加筆修正し、GAノベル(SBクリエイティブ)創刊と同時に商業デビュー。2巻以降は全シナリオ完全オリジナルで、既刊は本稿執筆時点で13巻まで刊行中です。
キャラクター原案はあずーるさん。コミカライズ版はスクウェア・エニックス「マンガUP!」にて連載中で、作画は七緒一綺(ななお・いつき)さん。本稿執筆時点で2巻まで刊行中です。TVアニメが2020年10月から放映予定になっています。
『魔女の旅々』作品紹介
ⒸJougi Shiraishi / SB Creative Corp. キャラクター原案:あずーる
ⒸItsuki Nanao /SQUARE ENIX
『魔女の旅々』 1~2巻 白石定規(GAノベル/SBクリエイティブ刊) / 七緒一綺 / あずーる / スクウェア・エニックス
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諸国を気ままに旅する若き魔女
本作の主人公はイレイナ。幼いころ「ニケの冒険譚」シリーズを読み、魔女が世界各地を旅する様子にあこがれ、努力を重ね魔女見習いの昇格試験に14歳の若さで最年少合格。1年の修行ののち師匠に認められ、魔法使い最上位の「魔女」になります。
灰色の長い髪を持つことから、二つ名は「灰の魔女」。いかにも魔女らしい黒いとんがり帽子と黒いローブを羽織り、ほうきに乗って空を飛び、諸国を気ままに旅しています。訪れた国でいろんな人と出会ったり、別れたり、事件に巻き込まれたりします。
ほうきで飛行中に他の人とぶつかって、身分を示す魔女のブローチを落としてしまったり。旅先で資金不足に悩み、占いと称して小銭稼ぎをしたり。ねずみに化けて屋根裏に忍び込んだはいいけど、魔法が解けて天井板を突き破ったり。意外とドジなイレイナ。魔法は便利ですが、万能ではないのです。
旅は楽しいばかりじゃない、だけれど
旅は、楽しいばかりではありません。魔法が万能ではないがゆえに、そして、旅人として通りすがるだけの身であるがゆえに、イレイナは何度も歯がゆい思いをします。魔力で毒を吐く花畑に囚われた兄妹。奴隷として虐げられる女性。難病に倒れ死にかけた若者。などなど、思わず「うわあ」と声が出るような、ゾッとする話もあります。
イレイナは基本的に冷静沈着でシビアな性格。でも実は、頼み込まれたら断れない、困っている人を見たら放っておけない、お人好しだったりします。傍観者ではいられないけど、酷い状況を抜本的に解決できるような力があるわけでもない。それでも、まだ見ぬ景色や誰かと出会うため、今日もイレイナは旅を続けるのです。
怖い話もあるけど、殺伐としているわけではなく。魔女になる前の、師匠とのエピソードや再会にほっこりしたり。巻末の短編小説にクスリとさせられたり。不思議な雰囲気の作品です。カバー下の、なんかぶっ飛んでるショートストーリーも魅力的。筋肉男ってなんぞ(※小説版に出てきます)。漫画の本編にもいずれ出てくるんだろうか?
ⒸJougi Shiraishi / SB Creative Corp. キャラクター原案:あずーる
ⒸItsuki Nanao /SQUARE ENIX
『魔女の旅々』 1~2巻 白石定規(GAノベル/SBクリエイティブ刊) / 七緒一綺 / あずーる / スクウェア・エニックス
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