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仮想世界で女の子たちが大暴れ!『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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こんにちは、フリーライターの鷹野凌です。今回は、KADOKAWA / アスキー・メディアワークス「電撃マオウ」で連載中の漫画『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』をレビューします。

『ソードアート・オンライン』(以下、SAO)はVRMMORPG(Virtual Reality Massively Multiplayer Online Role Playing Game:仮想現実大規模多人数同時参加型オンラインロールプレイングゲーム)を題材とした川原礫さんのヒット小説シリーズ(電撃文庫)ですが、本作はその第3部にあたる「ファントム・バレット」編(5巻・6巻)のゲーム世界「ガンゲイル・オンライン」(以下、GGO)を舞台としたスピンオフ小説(電撃文庫)の、コミカライズです。

原作は時雨沢恵一さん、キャラクター原案は黒星紅白さん。二人は電撃文庫『キノの旅』でもコンビです。作画は、たもりただぢさん。本稿執筆時点で、単行本は2巻まで刊行中、テレビアニメも放映中。仮想世界で銃を持った女の子たちが、チームでサバイバルゲームをする物語です。殺伐としていますが、現実には人が死なないのが前提なのでご安心あれ。SAOを知らない人でも、楽しむことができる作品です。

■ 電撃文庫作品紹介ページ

■ TVアニメ公式ウェブサイト

『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』

『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』 1~2巻 たもりただぢ / 時雨沢恵一 / 黒星紅白 / 川原礫 / KADOKAWA / アスキー・メディアワークス

ちっちゃくてかわいい女の子への憧れから

作の主人公は、小比類巻香蓮(こひるいまき・かれん)。19歳の大学生です。身長は183センチ。思春期からずっと「大女」と揶揄され続けたことで、コンプレックスの塊になってしまっています。近しい人以外とはほとんど会話しない、内向的な性格です。

「ちっちゃくてかわいくなりたい!」と思っていた香蓮はある日、VRゲームの存在を知ります。ところが、ファンタジー世界などかわいい系のゲームでは、ことごとく長身のアバターになってしまう香蓮。「せっかくだから最後に」と試してみたのが、GGO。そこで香蓮は「ちっちゃくてかわいいわたし」と運命的な出会いを果たします。

GGOは、いわゆるFPS(First Person Shooter)ゲームのVR版です。SAOシリーズのVRゲームでは唯一、リアルマネー・トレーディングができる(つまりゲーム世界の通貨と現実世界の通貨が交換できる)ため、プロゲーマーまで存在します。殺伐とした銃器世界なので、女の子のプレイヤーはとても少ない、という設定になっています。

ちっちゃい女の子が笑みを浮かべながら男どもをなぎ倒す

そんな殺伐とした世界にもかかわらず、すっかりGGOにのめり込んだ香蓮(=キャラネーム:レン)はある日、顔にタトゥーを刻んだちょっと怖そうな女の子プレイヤー・ピトフーイと出会います。モンスターとばかり戦ってきたレンはピトフーイに誘われ、対人戦、いわゆるPK(Player Killer)の楽しさを知ってしまいます。そして、少人数チームのバトルロイヤル大会「スクアッド・ジャム」に出場することになるのです。

コミック2巻までの時点だと、主人公のレンが速度重視のステータス「AGI型」でちょこまか動き回るシーンばかりが目立ちます。が、実は本作で活躍するのは、ほとんどが女の子プレイヤーだったりします。女の子のプレイヤーはとても少ないはずなのですけど、少ないぶん目立つということなのでしょうか。女の子が銃を持ち、ときに笑みを浮かべながら男どもをばったばったと倒していくさまは、凄惨ではありますが、なんだか爽快でもあります。

SAOの第1部「アインクラッド」編(1巻・2巻)は「仮想世界で死ぬと、現実世界でも死ぬ」という恐ろしい設定のデスゲームでしたが、GGOは、死んでも死なない、言ってみりゃただの娯楽です。いや、どちらかというとスポーツでしょうか。SAOの主人公・キリトは「死んでもいいゲームなんてぬるすぎるぜ」という名言を吐きましたが、まさにそういう前提でバトルをする世界なのです。

ただ、そうは思っていない人が約1名ほどいるようですが……?

プロ作家による公認二次創作

なお、GGO小説1巻のあとがきによると、銃器マニアの時雨沢さんはSAO「ファントム・バレット」編を読んで、「どうして自分は、この設定を思いつかなかったのかっ!」と悔しくて身悶えてしまったそうです。仮想世界なら「人が死なないガンアクションストーリーを、いくらでも書けるではないか!」と。

そこで、この世界設定を舞台とした二次創作小説を書きたい! というアイデアを担当編集に伝えたところ、関係各者に許可をとった上でなら可能と回答されます。その後、SAOアニメ2期の銃器監修を引き受けた縁でお願いした結果、この企画が実現したという経緯があるそうです。結果、商業作品のプロ作家による公認二次創作が、シリーズ化されコミカライズもアニメ化もされていくという、作品世界の新たな広がりを見せているのです。

SAOには「ザ・シード(世界の種子)」というVRゲーム作成・制御用のフリーソフトがあり、膨大なVRゲーム世界を生み出す根幹になっています。GGOは、この「ザ・シード」から生まれたゲームの1つであり、同時に現実世界では、SAOを「種」として生まれた新たな作品でもあります。なんだか面白いですね。こういう創作の連鎖が、もっと起きるといいのに。

『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』

『ソードアート・オンライン オルタナティブ ガンゲイル・オンライン』を試し読みする

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