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正確な知識で描かれた医療ミステリー『天久鷹央の推理カルテ』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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今回は『天久鷹央の推理カルテ』をレビューします。天才で変人な女性医師が、病気診断を通じて謎を解き明かす、医療系ミステリー作品です。原作小説は知念実希人(ちねん・みきと)さんで、本業は医師です。キャラクター原案は、いとうのいぢさん。

コミカライズ担当は緒原博綺(おはら・ひろき)さん。漫画は「月刊コミック@バンチ」で連載され、単行本は全4巻で完結しています。原作小説は新潮文庫nexで11巻まで刊行中。

『天久鷹央の推理カルテ』作品紹介

天久鷹央の推理カルテ

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完結『天久鷹央の推理カルテ』 全4巻 知念実希人・緒原博綺・いとうのいぢ/新潮社
『天久鷹央の推理カルテ』を試し読みする

天才で変人の女性医師が“事件”を診断

主人公の天久鷹央(あめく・たかお)は、天医会総合病院の副院長で統括診断部長。子供から「子供の先生」と呼ばれるような外見をしている、小柄で童顔な女性医師です。超人的な集中力や記憶力と、常軌を逸した好奇心と行動力を持ち合わせている反面、ずけずけ言う性格で空気が読めず、人付き合いは苦手。つまり、天才で変人です。身体能力は低め。

統括診断部は、そんな彼女の特異な能力を活かすべく、病院の“科”の垣根を越え診断が困難な患者を診るために設立された部署です。ところが天久はその好奇心から、病気診断だけでなく“謎の匂い”まで嗅ぎ取ってしまい、病院外の“事件”にまで首を突っ込み解決していきます。カッパの正体や人魂の謎などが、病気診断とともに解き明かされていくのです。

天才で変人だけど、超人ではない

小鳥遊優(たかなし・ゆう)は、そんな天久の下で働く内科医見習いの元外科医。大学病院から天医会総合病院へ派遣されています。天久からは「小鳥」と呼ばれ、便利に使われているアシスタント的存在です。研修医のあいだでは、天久と小鳥遊が恋人同士だという噂が流れていますが、そんな雰囲気など微塵も感じられない関係性。

「こんなに使い勝手が良くてからかいがいのある男なかなか居ないんだぞ!?」

という天久のセリフが、なかなか象徴的です。ミステリー作品という意味では、天久がホームズで、小鳥遊がワトソンといったところ。ただ、天才で変人な天久も、診断を誤る(誤診)ことや、謎がなかなか解けずに諦めかけてしまうこともあります。ホームズほど超人的ではないのです。そんなとき小鳥遊が、なにげに重要な役回りを果たすこともあったりします。たまに。いいコンビです。

「蛇足カルテ」は蛇足じゃない

前述のとおり、原作の知念実希人さんは現役の医師。幕間に差し込まれる「蛇足カルテ」も、現役医師ならではのトリビアばかり。正しい医療知識でリアルな医療現場が描かれたことが売りの、楽しい上に“ためになる”エンタメです。こういうご時世だからこそ、こういう作品がもっと読まれて欲しい。

天久鷹央の推理カルテ

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完結『天久鷹央の推理カルテ』 全4巻 知念実希人・緒原博綺・いとうのいぢ/新潮社
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『天久鷹央の推理カルテ』のレビューページ

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新潮文庫nex特集ページ

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