初心者にもおすすめのファンタジーBL漫画10選【異世界・魔法・人外】

2020/06/04

※2020/06/04に『銀閣博士とモルモット完全版【全年齢版】』『錆のゆめ』『わななく牙のダリア』を追加しました。
魔法や人外、ロボットに擬人化など独特な世界観が私たちを惹きつけてやまないファンタジー。いわゆるファンタジー作品はBLにも面白いものがたくさんあります。今回は、世界観や設定に特徴のある、初心者にも読みやすいBLのファンタジー漫画を10作品ご紹介します。

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『銀閣博士とモルモット』
『錆のゆめ』
『わななく牙のダリア』
『鴆－ジェン－』
『VOID』
『不幸中のしあわせ』
『坂の上の魔法使い』
『クリムゾン・スペル』
『だってまおうさまは彼が嫌い』
『マウリと竜』
最後に
その他おすすめのファンタジーBL漫画

『銀閣博士とモルモット』

完結『銀閣博士とモルモット完全版【全年齢版】』　全1巻　池玲文 / ジュネット

【設定】人間同士（ときどき機械）・近未来
【エロ度】★★★★☆

近未来の人体実験がえっちすぎる件

2107年、日本ではエネルギー問題を発端に富裕層と貧困層の格差が広がり、一部の富裕層は快楽の追求に明け暮れるように。そんな中、人間嫌いの天才科学者・銀閣博士は、あふれんばかりの才能を富裕層向けのラブグッズ開発のために浪費していた。そのせいで、銀閣博士の論文に惚れ込んで助手になった茅ノ谷は、博士のエッチな実験に付き合わされてばかり。「俺はモルモットにされに来たわけじゃない！」と博士の研究所を飛び出そうとしますが……。

これが全年齢版とは思えない濃密なエロスに次ぐエロスが腐女子の滋養強壮によく効きます。近未来という設定をこれでもかと酷使した全自動ディルドや搾精マシン✕奥ゆかしく嫌がりながらもきっちり絶頂に達して、涙目で気を失ってしまう茅ノ谷助手……。えっちがすぎるという理由で、人間嫌いで潔癖症の銀閣博士すら変な気持ちにさせてしまいます。
しかし本作、ただのエロ漫画ではありません。エロスの向こうには、理想に敗れて厭世的になっていた銀閣博士が、茅ノ谷の健気さに心動かされて初めて人を好きになるという激エモ展開が待っているのです。散々エロい実験をしておきながら、いい年して初恋に戸惑う博士、控えめに言ってかわいすぎます、くぅ……。

極道に生きる男たちのハードで重すぎる愛を描いた『媚の凶刃』シリーズ（リブレ）で、多くの腐女子をヤクザBLの沼底に叩き落とした池玲文先生。エロピュアな本作でも腐女子を殺しにかかってきてくれます（にっちゃり笑顔）。

『銀閣博士とモルモット完全版【全年齢版】』を試し読みする

『錆のゆめ』

完結『錆のゆめ』　全2巻（上下巻）久間よよよ / プランタン出版

【設定】人間×セクサロイド・現代
【エロ度】★★☆☆☆

かわいくて残酷な、人間とセックス・サイボーグの恋

生きた少年の身体を改造したセックス用サイボーグの教育係に任命されたサラリーマン・進藤。人間の脳と体を弄って、心は無垢なままに他人の体を受け入れ快感を得るサイボーグを作るというグロテスクな実験に、嫌悪感をあらわにする進藤ですが、自分を無邪気に慕ってくるサイボーグ・としおに愛着のようなものを感じるようになっていきます。

妹に恵まれた養家を探してもらうのと引き換えに、人生を奪われた少年・としお。としお自身に悲壮感はなく、ただただ進藤と一緒にいられることに幸せを感じ、できることが増えていくのを喜ぶという、まさに幼児が成長していくかのごとくなのですが、その姿がかわいければかわいいほど、開発者たちのエゴイスティックでグロテスクな欲望が際立って複雑な感情に……。としおに過剰に同情するでもなく、淡々と彼にこの世界のことを教え、彼の意志を尊重しようとする、進藤の誠実な姿勢だけが救いです。しかし、この本能が「かわいいっ！」と叫ぶと同時に、理性が「残酷な事実を直視せよ！」と叱責してくる感じ、妙に中毒性があります。まるで、「良薬口に苦し」の反対に、甘くて美味しい猛毒にいつまでも浸っていたくなるような。

続編『錆のゆめ　左』『錆のゆめ　右』（プランタン出版）もマストチェック。一緒に暮らすようになってしばらく経った進藤ととしおのお話です。進藤のためにとしおがお弁当を作ったり、掃除をしたり、これはもはや新婚生活……!? この続編ではひたすら幸せな2人を愛でたいと思います！

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『わななく牙のダリア』

『わななく牙のダリア』　1～2巻　高永ひなこ / ビーボーイ編集部

【設定】獣人の臣下×人間の王子・獣人と人間が共存する異世界
【エロ度】★★★★☆

獣人の家臣と人間の王子、種族と身分を超えた真実の愛！

人間と獣人が共存する世界で、突如起きた獣人たちによるクーデター。王子ニコラウスは両親を殺されたうえに一夜にして捕虜に身を落とし、兄弟同然に信頼していた家臣である狼の獣人・トラヴィスからも「自らの意志でクーデターに加わった」と告げられます。さらに失意のニコラウスのもとに、クーデターを起こしたギル＝ガル元帥の魔の手が迫り……。

獣人、身分違い、下剋上、体格差、オリエンタルな衣装、囚われの美しい王子――ファンタジー萌えの全てが詰まった本作。やや温室育ち気味だけど高潔な心を持つ王子と、不器用ながらも王子を一途に愛する武人という2人のキャラクターも良さしかありません。ともすれば王道でありきたりなストーリーになりかねない設定ですが、トラヴィスがクーデターに加わった理由や、いざというときに見せるニコラウスの凛とした強さに惹きつけられて、ページを捲る手が止まらなくなってしまいます。
2巻からはライオンの獣人ハダルと、獣人と人間のハーフ・ナビ―という用心棒コンビも登場。母国を守るためのニコラウスとトラヴィスの旅はよりにぎやかに、そして、イチャイチャシーンも増えて糖度も上昇中です！

学園BLの名手である高永ひなこ先生としては異色といえる本作。なのですが、時に切なく、時に甘く、読者の心を揺さぶる萌えや、美麗な画風は共通しています。そこにハマった方には、健気なわんこ系後輩✕傍若無人な先輩が主役の代表作『恋する暴君』（海王社）や、爽やかでイケメンな野球部エース✕無口無表情な美術部員の純情ラブを描いた『不器用なサイレント』（リブレ）などもおすすめです。

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『鴆－ジェン－』

完結『鴆－ジェン－』　全1巻　文善やよひ / プランタン出版 / Canna Comics

【設定】人外（鳥人）・中華系ファンタジー
【エロ度】★★☆☆☆

鳥人と人間の愛憎に胸が締め付けられる

猛毒を好み、その毒こそが羽を美しく鮮やかに変える鳥人「鴆（ジェン）」。古代中国を思わせるこの国では、鴆を飼うことが権力の象徴でした。かつて兄と共に鴆飼であり、今は武人となったフェイ将軍は、上司の命令で、兄を殺した最も美しい鴆・ツァイホンの世話をすることになります。ツァイホンを憎みながらも、殺すこともできないフェイは高飛車なツァイホンを苦しめるため、鴆にとって拷問になりえる「発情」を強制的に行わせることで怒りを鎮めようとしましたが……。

中国の伝承に登場し伝説上の動物とされている、猛毒を持つ鳥・鴆をモチーフに、本作では、人間の言葉を理解し、人間の顔と鳥の手足を持つ生き物として描かれています。フェイはツァイホンの面倒を見るうちに、傲慢な顔の下にあるツァイホンの別の一面を知り、やがて憎しみだけではない複雑な感情を覚えるようになります。強すぎる毒のせいで愛する人とつがいになることのできない鴆の悲しさや、育てた鴆を幸せにできなかった鴆飼の葛藤、そして、憎む者と憎まれる者との間に生まれる新たな感情など、鳥人と人間の濃密な愛憎劇は、兄の死に隠された事実が明らかになった時、どうしようもない切なさに胸が締め付けられます。

鴆の美しく彩られた羽根や装飾品などが細かく丁寧に描きこまれ、カラーページもさることながら、モノクロのページでさえ色鮮やかに見えるよう。中華風の世界観にどっぷりつかることができるのもポイントです。また、『極夜』には『鴆－ジェン－』の番外編が掲載されており、2人の日常の一コマも楽しめますよ。無毒の白い鴆と猛毒の黒い鴆の絆を描いた続編『鴆　比翼の鳥』も必読です！

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『VOID』

完結『VOID』　全1巻　座裏屋蘭丸 / ビーボーイ編集部

【設定】人外（ヒューマノイド）・SF
【エロ度】★★★★☆

すりこみの愛に翻弄されるヒューマノイドと人間のSFファンタジー

ヒューマノイドが一般的に普及した世界。違法製造で出荷手前だった男性専用愛玩タイプのヒューマノイド・アラタがマキの家に運び込まれます。アラタは容姿と記憶の一部を実在の人物からコピーされており、アラタのオリジナルはかつてのマキの恋人・レンでした。最初に見た人間を好きになるという「すりこみ機能」によって、アラタはマキに懐きますが、マキにとってレンとの過去は思い出すのも辛い思い出で……。

「ヒューマノイド」が出てくる作品なので、ロボットや未来人がでてくるような世界観を想像してしまいますが、本作は現実とほぼ変わらない世界なので初心者にも読みやすい作品です。アラタがマキに依存するように刷りこみされていることをいいことに、マキは過去の恋人への歪んだ感情をアラタにぶつけます。しかし、アラタとレンが別人であることに気付かされ、マキはアラタ自身と向き合うことになるのです。アラタと穏やかな生活を送っていたある日、あることがきっかけでマキはアラタのすりこみ機能の解除を決意しますが……。

この作品のテーマは、「偽りの愛は本物になるか？」ということ。アラタにとって、マキと過ごした日々は本物の愛だったのか、それともただの作られた愛だったのか？2人の物語の結末はぜひ本編で。

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『不幸中のしあわせ』

完結『不幸中のしあわせ』　全1巻　エンゾウ / 集英社

【設定】人外（神様）・現代
【エロ度】★★☆☆☆

無駄にハイスペックな疫病神と人間の日常系ファンタジー

八百富永寿（やおとみえいじゅ）は、名前のとおり、とても運の良いサラリーマン。ところがある日を境に、なんだか運の巡りが悪くなって来たような……。そこで通りすがりのお地蔵様に厄よけをお願いしたところ、なんと自分に憑いている疫病神が見えるようになってしまいます！それからというもの、お地蔵様から喧嘩を売られたり、見えてはならないものが見えてきたりと、永寿は大混乱！

注目して欲しいのは疫病神のヤト。疫病神に憑かれると不幸になる＝生活が堕落していく、というようなイメージはありませんか？しかし、ヤトはそのイメージとは真逆。見た目に反して、無駄にハイスペックなのです。料理・掃除・洗濯・裁縫など一通りの家事をこなし、甲斐甲斐しく世話をやく様子はまるで新妻!?

神も人間も巻き込んだ大乱闘にクスッと笑えながらも、疫病神の葛藤や心からの切ない願いにホロっと泣ける本作。なんだか最近ついてない……という時には、疫病神に担当替えされてるかも……？とついつい妄想が捗ってしまう作品です。

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『坂の上の魔法使い』

完結『坂の上の魔法使い』　全1巻　明治カナ子 / 大洋図書

【設定】魔法使い・異世界
【エロ度】★☆☆☆☆

宿命を負った主従関係が切ない王道ファンタジー

魔法使いのリーと弟子のラベルは、魔法使いの棲む町ゲルの外れにある荒れ山に住んでいます。どこか影のあるリーは変わり者で町が苦手。2人の生活は質素そのものです。風変わりなリーに振り回されながらも、ラベルは学校や魔法の勉強に励みながら毎日を健やかに過ごしていました。しかし、町に棲む魔法使いの悪巧みをリーが阻止した時から、2人の穏やかな生活に波風が立ち始めます。

一見おとぎ話のような雰囲気のある作画ですが、ストーリーは王族と魔法使いの主従関係、魔法使いの宿命、愛やエゴといった人間の真に迫ったテーマも描かれている深い作品です。リーと生活を共にしている弟子のラベルは、実はかつてリーが仕えた王の忘れ形見で、リーは王への信義から養い親としてを育てています。王へ主従関係以上の気持ちを抱きながらも、魔法使いの宿命のせいで、真実を伝えることができなかったリー。ラベルを育てることが、リーの王への忠誠と伝えられなかった愛を表しているのかもしれません。

過去の出来事と現在が幾重にも重なり、物語は多くの謎をはらんだまま、『無二の王～坂の上の魔法使い2～』、『黄金の川岸～坂の上の魔法使い3～』へと続きます。一人の魔法使いの王への思いが、国の運命を変えていく本作。BLの枠を超えて読んでほしい作品です。『記憶の糸　坂の上の魔法使い外伝』もぜひどうぞ。

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『クリムゾン・スペル』

『クリムゾン・スペル』　1～6巻　やまねあやの / 徳間書店Chara

【設定】人外（獣人化/魔法使い）・異世界
【エロ度】★★★★☆

手に汗握るバトルもエロスも魅力の長編ファンタジー

魔物に襲われた王国アルスヴィーズ。王子であるバルドは城の人間を守るため、先の王が封印した禁断の剣で魔物を倒しますが、それはバルド自身に呪いをかけるものでした。呪いを解くためにバルドは魔導士ハヴィを訪ねますが、解術の条件にハヴィの頼みをきくことに…。バルドはハヴィの護衛として共に旅立ちます。

「ファインダーシリーズ」のやまねあやの先生が描く本作は、魔物を相手に剣術や魔法を駆使して繰り広げられる、迫力のバトルファンタジー。また、うさぎのような見た目の霊獣・ルルカも仲間になり、数々のステージを攻略していく様子がRPGを思わせます。冒険の様子やバトルシーンも見ごたえがありますが、注目したいのはバルドの変化。バルドは呪いのせいで夜になると魔獣になり、本能のままに暴れてしまいます。魔獣化したバルドをハヴィは抱いて鎮めているのですが、当の本人は魔獣の時の記憶はなく、夜な夜なハヴィに抱かれていることを知りません。昼の清廉潔白なバルドと本能むき出しで乱れまくるの魔獣のバルド、そのギャップがたまらない！夜のバルドがハヴィに手なずけられていく様子もかわいいです。

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『だってまおうさまは彼が嫌い』

『だってまおうさまは彼が嫌い』　1～3巻　山田2丁目 / コアマガジン

【設定】魔王と勇者の末裔・現代
【エロ度】★★★★☆

ヤクザな勇者×善人の魔王が斬新

町の便利屋さんを営む眞王（まお）は、30代目「魔王」で、目が合った人々を「下僕化」させてしまうという特殊な能力を持っています。ある日、29代目「勇者」と名乗る神子（かみこ）が現れ、魔王を征服しに来たのでした。ただし、現代の征服方法は、エッチすることで……!?

現代を舞台に繰り広げられる、魔王と勇者の戦いが描かれている本作。押しが弱く善人風の眞王（＝魔王）と、態度がデカく柄の悪い神子（＝勇者）の乱れた共同生活が楽しめる作品です。どっちかというと、魔王と勇者、逆だよね？と思ってしまうほど、「らしくない」魔王・勇者っぷりが面白いです。眞王は魔王の特殊能力を使って神子を下僕化しようと試みるものの、毎度神子のテクニックにメロメロになり、返り討ちにあいます。一枚も二枚も上手な神子のペースに振り回され、これは征服される日も近いな…と思わざるを得ません！それでも神子を征服しようと努力する眞王に思わず笑みがこぼれてしまう作品です。

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『マウリと竜』

『マウリと竜』　1～2巻　元ハルヒラ / ビーボーイ編集部

【設定】人外（神様）・異世界
【エロ度】★★☆☆☆

ファンタジーBLの定番！神様と人間のほのぼの癒されラブ

舞台はどこか懐かしさを感じる世界。そこでは「巡る神」と呼ばれる神々が、それぞれの役割や目的をもって各地を巡っています。山あいの小さな村にやってきた巡る神は大きな竜。その村の風習では、若く美しい娘を生贄として神様に捧げるのですが、竜のもとにやって来たのは、少年マウリ。聞けば、マウリの村には女がいないとのこと。竜はマウリを生贄とせず、一緒に暮らし始めます。ところがある日、薪を拾いに行ったマウリが村の男たちに乱暴されそうになり、竜は村に女がいない理由を知ることになるのです。

竜や蛇、鳥や馬などの姿をした「巡る神」と人間が出会って恋をする物語。巡り神は、気持ちが通じ合った相手と同じ姿になる性質があり、神様が人間の姿に見えているとしたら、それは自分のことを愛している証拠なのです。表題作の「マウリと竜」はファンタジーBLの中でも根強い人気があり、続編も発売されました。2巻ではマウリと神様の、アツアツなご夫婦ぶりにニヤニヤしてしまうこと間違いなしです。かわいい神様たちのほのぼのとした恋愛が楽しめる作品です。

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