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書店員が選んだ「本当に面白い漫画・本」をご紹介!

書店員が選ぶ「大長編ドラえもん」ランキング&見どころ紹介!

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どんな願いも、不思議なポッケで叶えてくれる『ドラえもん』。読み返すたびに新たな魅力に気づかされる、藤子・F・不二雄先生の代表作です。今回は、子どもにも大人にも読んでほしい「大長編ドラえもん」シリーズをピックアップしました。

映画版の原作である「大長編ドラえもん」シリーズは、過去や未来、異世界や宇宙など、時空を超えた世界が舞台となることが多く、連載版・テレビ版とはひと味違った壮大なストーリーや、ゲストキャラとの熱く泣ける友情シーンなど、見どころがたくさん!

今回は、BookLive! 書店員の「好きな大長編ランキング」と、そのほかの大長編の魅力紹介、2本立てでお送りします。現在、電子書籍でも読めるので、かつて読んでいた方もこの機会にぜひどうぞ!

BookLive! 書店員による「好きな大長編ドラえもん」ランキング

まずは、ドラえもん大好きなBookLive! 書店員が選んだ「好きな大長編ドラえもん」をランキング形式でご紹介します。以下、あらすじと見どころで、本編の内容について触れているので、一切のネタバレなくまっさらな気持ちで読みたい方はご注意くださいね。

【第1位】ギガゾンビの脅威と、魅力的なひみつ道具に釘付け!『大長編ドラえもん9 のび太の日本誕生』

大長編ドラえもん9 のび太の日本誕生

『大長編ドラえもん9 のび太の日本誕生』 藤子・F・不二雄 / 小学館

2016年3月5日に「映画ドラえもん 新・のび太の日本誕生」として、新たに劇場版がリメイクされる本作。元祖映画版、そして原作も根強い人気で、ダントツの投票数1位を獲得しました。

家出を計画したのび太たちは、住む場所を求め、まだ人間が土地を所有していない7万年前の日本にタイムスリップ! 「史上最大の家出」を敢行します。一方、同時期に原始人のヒカリ族・ククルが時空乱流に巻き込まれ、のび太たちのいる現代にタイムスリップ。現代でククルと鉢合わせしたのび太たちは、ヒカリ族が精霊王・ギガゾンビ率いるクラヤミ族に虐げられていることを聞き、彼らの救出に向かいます。一度はクラヤミ族からヒカリ族を救ったものの、再びギガゾンビの魔の手が迫ります。

本作の印象的なところは、強敵・ギガゾンビの恐ろしさと、その手下で壊しても壊しても復活するツチダマの不気味さ。ドラえもんでさえも歯が立たないその強さは、映画を観た子ども心にもゾクッとした方も多いのではないでしょうか? また、時空乱流と「神かくし」を結びつけ、ドラえもんが実際にあった集団失踪事件について語るところも、SF的なリアリティにあふれていてゾクゾクします。

もちろん、大長編ならではの魅力的なひみつ道具もたっぷり登場します。「畑のレストラン」のごはんは、器になっている外側のダイコンの部分すら美味しそう! また、のび太が複数の動物アンプルを掛けあわせ、架空の生き物であるペガサス(ペガ)、ドラゴン(ドラコ)、グリフィン(グリ)を作るのも夢があります。のび太の優しい親心となつく3匹の姿、そして別れにホロリとさせられたファンも多いのでは?

「精霊大王ドラゾンビ」として、ノリノリで活躍するお茶目な一面を見せるドラえもんですが、ヒカリ族が新たな村を開拓するために、ひみつ道具を貸してあげようとするジャイアンたちを制止し、

「石器時代の人が鉄器をつかっちゃ歴史がメチャメチャになる。時代によってそれなりのやりかたがくふうされるんだ。それを文明の発展というんだ。」

と、むやみに手を貸さないところも、隠れた名場面と言えるでしょう。

語りきれないほど魅力たっぷりの本作。今年の映画もあわせて見てみると、また違った楽しみ方ができるかもしれません。

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【第2位】さらわれたドラえもんを救出せよ!『大長編ドラえもん13 のび太とブリキの迷宮』

大長編ドラえもん13 のび太とブリキの迷宮

『大長編ドラえもん13 のび太とブリキの迷宮』 藤子・F・不二雄 / 小学館

ある日、玄関に置かれていた見知らぬトランク。扉をくぐり、いざなわれたのは「ブリキンホテル」でした。ブリキのおもちゃで構成された世界でリゾートを楽しむのび太とドラえもん。ですが、ひみつ道具に頼りっぱなしののび太にドラえもんは呆れ、2人ははぐれてしまいます。謎のブリキ軍団にさらわれてしまったドラえもんを助けるため、そして少年・サピオに頼まれ、チャモチャ星の人々を救うために、のび太たちはナポギストラー一世が率いる反乱軍と戦うことになります。

本作では、ドラえもんのひみつ道具任せなのび太と、ロボットに頼りっきりになってしまったチャモチャ星の人々の姿が重ねて描かれています。「道具に頼りきってしまった人間の弱さ、脆さ」の描写は、高度に進化した文明社会と、それに依存しきった人間に対する、藤子先生ならではの警鐘なのかもしれません。また、ナポギストラーたちを倒すために、コンピュータウイルスを使う作戦は、この作品が1993年に描かれたことを考えると非常に先進的で、藤子先生のアイデアの引き出しに改めて驚かされます。

反乱軍にさらわれたドラえもんは、電圧による拷問で壊れてしまいます。無造作に海底のゴミおき場に捨てられてしまったドラえもん。意識はあるけど動けないドラえもんが、のび太が助けに来てくれた夢を見て目覚めた時に「夢か…………。」と独り呟くシーンは、とても切ないです。

普段はドラえもんに頼ってばかりののび太たちが、自分たちで考え、ドラえもんを救出しようとするところには、成長が見られて胸が熱くなります。これ以上は争いに巻き込めないと、サピオが無理やりのび太たちを家に帰す場面も、友情を感じる名シーンです。

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【第3位】雲に乗れるワクワク感は夢たっぷり!『大長編ドラえもん12 のび太と雲の王国』

大長編ドラえもん12 のび太と雲の王国

『大長編ドラえもん12 のび太と雲の王国』 藤子・F・不二雄 / 小学館

「雲かためガス」で雲の王国を作るのび太とドラえもん。ジャイアン、スネ夫、しずかちゃんにも協力してもらいながら、雲の王国を拡大していきます。そんな中、天上界に住む天上人・パルパルと出会います。最初は歓迎してくれた彼女たちですが、実は極秘裏に恐ろしい計画が進んでいたのです。

誰もが一度は夢見る「雲に乗りたい」という願望を叶えてくれるのは、さすがドラえもん! 同じ地球人でありながら、地上に住む人とは別に、雲で暮らしている人が存在するという設定も、ワクワクするロマンにあふれています。

一方で本作は、のび太たち地上人と、天上人の対立が中心になっています。地球の資源を使い果たし、動物の住処を奪って絶滅させ、さらには核兵器も持っている地上人。天上人は、地上のものを洪水ですべて流してしまう「ノア計画」を実行しようとしていました。その話を聞いたしずかちゃん、ジャイアン、スネ夫は必死に抗議しますが、

「空気は汚れるしオゾン層はやぶれるし…………。」
「悪いのは地上人じゃないの!! 自然を破壊し、煙や排気ガスをまきちらし、川も海も汚しっぱなしで!!」

というパルパルの言葉は、私たちも「地上人」として、非常に耳が痛いところです。環境問題を扱いつつ、描かれている内容は国や人種の違いで起こる対立の縮図にもなっており、大人になってから読むと、改めて気づかされ、考えさせられることの多い作品です。

また、『ドラえもん』の連載版に登場しているキャラが多数出てくるところも見どころの一つ。「ドンジャラ村のホイくん」、「モアくんとドードー鳥」など、「知ってる!」というドラえもんファンは多いのでは? そして物語の鍵を握る、驚きのあのキャラも! 知っている人も知らない人も、ぜひ本編で見てみてくださいね。

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【第4位】ロマン溢れる巨大ロボと、しずかちゃんの活躍に注目!『大長編ドラえもん7 のび太と鉄人兵団』

大長編ドラえもん7 のび太と鉄人兵団

『大長編ドラえもん7 のび太と鉄人兵団』 藤子・F・不二雄 / 小学館

突然、空から降ってきた巨大なロボットのパーツ。のび太はドラえもんのひみつ道具だと思って組み立て、ロボットに乗って遊びますが、実はそれはロボットの惑星・メカトピアから送り込まれた恐ろしい兵器だったのです。

巨大ロボに乗り込んで自分の手で操縦するという、男の子の夢や希望が具現化されたロマン溢れる本作。

「もっと強そうなのがいい。マジンガーとかガンダムとか。」

と、のび太が具体的なロボット名を挙げてくるセリフには思わずニヤリ。ドラえもんの案によって「ザンダクロス」と命名されたロボットは、ガンダムに負けず劣らずかっこよく、ストーリー全体を通してザンダクロスが躍動します。

そして、本作はメカトピアの少女・リルルが重要な鍵を握っています。「おざしき釣り堀」に「逆世界入りこみオイル」を垂らして作った鏡面世界で、リルルは無数のロボットと共に新たな街を建造し、鉄人兵団の「地球人捕獲作戦」を遂行しようとします。かつて支配者(貴族ロボット)と被支配者(奴隷ロボット)が存在していたメカトピアでは、奴隷制度が廃止されたことにより、新たな労働力として人間を使う計画が進んでいたのです。ロボットは人間よりも優位にあると信じているメカトピアの歴史が、人類が辿ってきた歴史をそのままなぞっているところに皮肉さを感じます。

見どころは、リルルとしずかちゃんの女の子同士の友情シーン。負傷しているリルルと言い合いになり、ロボットと人とでは気持ちが通じないと、怒り悲しむしずかちゃん。ですが、放ってはおけず、またリルルの治療に戻ります。

「……人間のすることってわからない。どうして敵を助けるの。」
「ときどきりくつにあわないことするのが人間なのよ。」

という2人のやり取りは、人の本質を突いていて、藤子先生の人間への眼差しを感じる一幕です。のび太たちと出会ったことで、リルルは地球人の考え方を知り、祖国の思想に次第に疑問を持ちはじめ、葛藤することになります。

もちろん、ジャイアンとスネ夫も大活躍! のび太が、鉄人兵団の危機を大人たちに話しても誰も信じてくれない中、彼らだけは信じてくれたというのも、友情の厚さを感じて嬉しくなります。後半、しずかちゃんのある考えによって物語が大きく動きますが、ラストには悲しい別れが。切なくも希望を感じさせるラストには、しみじみとした余韻が残ります。

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【第5位】もし、恐竜が地下世界で生きていたら…?『大長編ドラえもん8 のび太と竜の騎士』

大長編ドラえもん8 のび太と竜の騎士

『大長編ドラえもん8 のび太と竜の騎士』 藤子・F・不二雄 / 小学館

ひみつ道具「どこでもホール」で地下の空洞を見つけ、思い思いにのんびりするのび太たち。ですが、スネ夫が行方不明になってしまいます。実は空洞の先には地底世界が広がっており、地底人や恐竜が暮らしていたのです。

「○×うらない」で、「地球上に恐竜は1匹も生き残っていない」と言われ、一度はがっかりしたのび太たちですが、実は「地底世界」に恐竜が生きていた! という、太古のドラマを感じるお話です。

地底人(恐竜人)で竜騎隊士のバンホーと出会い、スネ夫と再会できたのび太たちは、科学文明が発達した地底世界を案内してもらいます。親切な地底人でしたが、裏では恐竜が滅亡する前にタイムスリップし、地上世界を取り戻すための「大遠征計画」が進行していました。恐竜人は、自分たちの先祖である恐竜が滅び、地下での生活を余儀なくされたのは、何者かの力によるものと信じ、地上の生物に対して「聖戦」をしかけようとしていたのです。

なぜ地球上から恐竜が絶滅したのか? その原因が「彗星の衝突」にあるとし、ひみつ道具を駆使したドラえもんらしいストーリーが展開されます。地底人の「聖域」の伏線回収も、なるほど! と唸らされますよ。また、「風雲ドラえもん城」は、元ネタを知っている世代の方ならニヤリとするはず! 分からない方は、お父さん、お母さんに訊いてみてくださいね。

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【第5位】バギーちゃんの淡い恋心に涙…『大長編ドラえもん4 のび太の海底鬼岩城』

大長編ドラえもん4 のび太の海底鬼岩城

『大長編ドラえもん4 のび太の海底鬼岩城』 藤子・F・不二雄 / 小学館

書店員投票では『のび太と竜の騎士』と同率5位だった本作。1千メートルを超える山々、1万メートルの谷など、地上よりも高低差のある壮大な海底世界。「テキオー灯」で、どんな場所でも住めるようになったのび太たちは、夏休みの海底キャンプを楽しみます。一方、バーミューダ諸島で発見された沈没船を探そうと、ジャイアンとスネ夫はドラえもんに黙って出かけてしまい、瀕死の大ピンチに。そこを海底人のエルに助けられます。

船や飛行機が行方不明になるというバーミューダ三角海域(トライアングル)の話は有名ですが、本作ではこれが海底の2つの連邦、ムーとアトランチスの争いに繋がっていきます。七千年前に滅亡した海底の連邦・アトランティスに残された自動報復システム「ポセイドン」が、海底火山の噴火を「敵からの攻撃」と見なし、鬼角弾を世界中にばらまく……という話は、背筋がゾッとする恐怖を感じます。鬼岩城の兵隊は、みな意志を持たないロボットなので、話し合いがまったく通じないところも恐ろしいです。

そして、本作の重要キャラと言えば、ひみつ道具の「水中バギー」です。機械ですが、口が悪くてちょっとポンコツ、そして怖がり。でも、「バギーちゃん」と呼んで可愛がってくれるしずかちゃんにだけは心を開きます。バギーの淡い恋心と、ラストのバギーの特攻に涙したファンも多い作品です。

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【第7位】魔法の呪文はチンカラホイ!『大長編ドラえもん5 のび太の魔界大冒険』

大長編ドラえもん5 のび太の魔界大冒険

『大長編ドラえもん5 のび太の魔界大冒険』 藤子・F・不二雄 / 小学館

1984年に第1作が、2007年にリメイク版「のび太の新魔界大冒険 〜7人の魔法使い〜」が公開された作品です。

ドラえもんファンにはおなじみのひみつ道具「もしもボックス」で、この世を「魔法の世界」にしたのび太。森で出会った満月博士と美夜子さんから「魔界接近説」の話を聞いたのび太たちですが、もしもボックスがゴミ収集に出されてしまい、元の世界に戻せなくなってしまいます。そんな中、満月博士が魔界にさらわれてしまい……ネコになった美夜子さんと共に、大魔王デマオンを倒す旅に出ます。

ママもジャイアンもスネ夫もしずかちゃんも、みんな魔法が当たり前の世界で暮らしていて、そこでは「科学」が迷信とされています。その逆転状態が面白く、「魔法が使えたら、こんな日常なんだろうな」と憧れが膨らみます。それでいて、魔法習得にはやっぱり努力が必要だったり、空飛ぶじゅうたんは高くて、しかも運転免許が必要だったりと、魔法世界なのに甘くない現実も描かれているところは、思わずクスッとしてしまいます。

夢いっぱいの魔法世界でありながら、本作はミステリアスでハラハラする場面も多いです。序盤に登場する、ドラえもんとのび太そっくりの謎の石像が、だんだんと部屋に近づいてくるような描写には、子ども心に恐怖を感じた方も多いのでは? また、敵のメジューサが、時空を超えてのび太の机の引き出しから出てくるところもゾッとします。

ゲストキャラ、美夜子さんの可愛さと勇敢さ、間一髪で助けに来てくれるドラミちゃんの頼もしさも魅力的な作品です。読んだ後は、きっと魔法の呪文「チンカラホイ」を唱えたくなりますよ。

『大長編ドラえもん5 のび太の魔界大冒険』を試し読みする

【第7位】白銀の剣士・ノビタニヤンが大活躍!『大長編ドラえもん14 のび太と夢幻三剣士』

大長編ドラえもん14 のび太と夢幻三剣士

『大長編ドラえもん14 のび太と夢幻三剣士』 藤子・F・不二雄 / 小学館

書店員投票では『のび太の魔界大冒険』と同率7位だった本作。思いどおりの夢を見ることができるひみつ道具「気ままに夢見る機」で、現実逃避しようとするのび太。知恵の木の実をくれた謎の男に、夢見る機で「夢幻三剣士」というカセットを見るように勧められます。夢の中で、魔法使いドラモン(ドラえもん)と、「三剣士」となったノビタニヤン(のび太)、ジャイトス(ジャイアン)、スネミス(スネ夫)は、王女シズカリア(しずかちゃん)を助けるための旅に出ますが……。

夢見る機で再生するのは「カセット」というところが、時代を感じさせますね。本来は楽しい夢を見るための道具なのですが、夢見る機の「かくしボタン」で、夢と現実を逆転させたところから、じわじわと境界線がぼやけていく感覚は、少々不気味な怖さがあります。

妖霊大帝オドロームはかなりの強敵で、部下に対しても非情な冷酷さを見せます。夢世界とは言え、のび太としずかちゃんは一度塵にされてしまうなど、苦戦を強いられます。また、謎の男の正体である、オドロームの部下・鳥のトリホーが、終始妖しい存在感を放っていて、ハラハラドキドキを煽ります。

剣と魔法の世界と、立ちはだかる強敵との戦いという、ファンタジックなロマンを堪能できる本作。最後、夢は夢として終わりますが、のび太としずかちゃんの関係にささやかな変化があるところは、2人の未来の姿を垣間見るようでキュンとしますよ。

『大長編ドラえもん14 のび太と夢幻三剣士』を試し読みする

【第9位】小さな星で繰り広げられる壮大な戦い!『大長編ドラえもん6 のび太の宇宙小戦争』

大長編ドラえもん6 のび太の宇宙小戦争

『大長編ドラえもん6 のび太の宇宙小戦争』 藤子・F・不二雄 / 小学館

のび太は、ピリカ星から来た親指サイズの宇宙人・パピと出会います。彼は独裁者ギルモアが率いる情報機関PCIA(ピシア)から追われ、地球に亡命してきた大統領。話を聞いたのび太たち5人は、パピを助けるために団結し、地球にやってきたPCIAに対抗しますが、しずかちゃんを助けるためにパピが連れ去られてしまい……のび太たちは救出のため、ピリカ星に向かいます。

敵にスモールライトを奪われたために、ピリカ星人と同じ大きさのまま戦うことになったのび太たちは苦戦します。タケコプターのバッテリー切れのように、道具の効果が切れて敵に見つかる……というのは、大長編ドラえもんシリーズでよくあるシーンですが、本作では

「ききめが永久につづく薬なんてあるか!! なんにだって有効期限はあるんだ!!」

というドラえもんのセリフがラストへの伏線になっており、「おおー!」 と感嘆してしまいます。

小さい宇宙人と戦うためにたくさんのラジコン戦車が作られる場面では、スネ夫のラジコン制作の才能がいかんなく発揮されています。ドラえもんの改造によって宇宙空間を自由に飛び回る戦車は、少年心をくすぐられてワクワクしてしまいますね。

また、のび太たちと宇宙人のパピとの友情も見どころ。パピの愛犬ロコロコの話がやたらと長いところも愛嬌があります。しずかちゃんが自分の身代わりになってくれたパピのために、1人で敵地へ乗り込むところが、女の子ながらかっこいいところです。また、敵の大軍に怯えてたスネ夫も「女の子を1人で危険な目に遭わせられない」とついてくるところには、騎士道精神を感じます。

『大長編ドラえもん6 のび太の宇宙小戦争』を試し読みする

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のび太とピー助の親子のような関係性に感動!『大長編ドラえもん1 のび太の恐竜』

大長編ドラえもん1 のび太の恐竜

『大長編ドラえもん1 のび太の恐竜』 藤子・F・不二雄 / 小学館

記念すべき劇場版第1作にして、2回映画化されている人気作です。

のび太はある日「タイムふろしき」を使って、化石になっていた卵を孵化させます。現れたのは首長竜の子ども。のび太は「ピー助」と名づけて育てますが、未来から来た恐竜ハンターに狙われたことから、ピー助を白亜紀へ帰そうと決意します。しかし、タイムマシンに乗ったのび太たちは、トラブルで白亜紀のアメリカに漂着。襲ってくるハンターや恐竜と戦いながら、日本へ、そして現代に戻るため奮闘するのでした。

のび太とピー助の親子のような関係性に、心打たれる作品です。自分の大好物のおさしみもピー助に与えるのび太。ボール遊びをしてもらって喜ぶピー助。それぞれのいじらしい姿に感動させられます。故郷に帰されても鳴きながら追っかけてくるピー助を、のび太があえて置いて去るシーンでは、涙が止まりません。大人になってから本作を読むと「これは子離れなんだ」と、子供のころの感想とは違う理由で泣けてしまいます。

スネ夫が機械いじりの知識を活かしてタケコプターの使い方を提案したり、助けられたジャイアンが恩返しで男気を見せたりと、それぞれのかっこ良さが描かれているのも本作の見どころ。翼竜の群れに襲われた時、

「くやしいんだよ。しずちゃんを守ってやれないのが。あんなにこわがってるのに、なんにもしてあげられない。」

と涙ながらにつぶやくのび太には、優しさに隠れた男らしさを感じます。

『大長編ドラえもん1 のび太の恐竜』を試し読みする

固い友情と、ラストの清々しい切なさに胸が熱くなる!『大長編ドラえもん2 のび太の宇宙開拓史』

大長編ドラえもん2 のび太の宇宙開拓史

『大長編ドラえもん2 のび太の宇宙開拓史』 藤子・F・不二雄 / 小学館

超空間の歪みによって、宇宙の遥か彼方にある宇宙船の倉庫と、のび太の部屋の床下が結合。出会うはずのなかったコーヤコーヤ星のロップルくんたちと、のび太たちが友達になり、悪漢と戦う冒険活劇です。強敵・ギラーミンが西部劇を思わせるガンマンで、のび太の特技「射的」がいかんなく発揮されており、西部劇のようなガンマンの一騎打ちの場面も。のび太の活躍が際立つ作品です。

のび太たちが、地球よりも重力の小さいコーヤコーヤ星へ行ったことで超人となるのが、本作の面白いところ。ロップルくんにたびたび嫌がらせをするガルタイト鉱業の悪漢どもをやっつける様子が爽快です。特にジャイアンが岩石をバットでボカスカ打って敵の宇宙船を破壊するくだりは、冒頭に出てきた野球の伏線も活きていて、ストーリーの巧みさにシビれます。

何よりの魅力は、ロップルくんたちとの友情の熱さと、別れの切なさ。超空間の歪みが外れかけて、もう地球に帰って来られないかもしれない状態で、ロップルくんたちを助けるためにコーヤコーヤ星へ向かうのび太たちに胸が熱くなります。最終的に超空間の歪みが外れ、ロップルくんたちとは二度と会えなくなってしまいますが、切なくも清々しいラストシーンには、温かな余韻が残ります。

『大長編ドラえもん2 のび太の宇宙開拓史』を試し読みする

現代の地球上にもまだ秘境はある!?『大長編ドラえもん3 のび太の大魔境』

大長編ドラえもん3 のび太の大魔境

『大長編ドラえもん3 のび太の大魔境』 藤子・F・不二雄 / 小学館

異世界や宇宙、地底や雲の上など、「絶対に行けなさそうな所」が舞台となることの多い大長編の中で、めずらしく現代の地球上が舞台の作品です。

迷いイヌを拾い、ペコと名づけて飼うことにしたのび太。ペコの不思議な行動に導かれ、のび太たちはアフリカの奥地へ旅立ちます。そこで遭遇したのは、イヌが立ち、話し、高度な文明を築いている社会でした。実は、ペコの正体はその犬の王国のクンタック王子。のび太たちはペコと協力し、悪い大臣を倒すために戦うのでした。

密林やサバンナ、高山といった秘境に分け入り、野獣に襲われたり死霊の伝説におびやかされたりと、冒険気分を堪能させてくれる作品です。ジャイアンの存在感が際立っている作品でもあり、自分の失敗に落ち込んだり、仲間のために危険な戦いに飛び込んでいったりする責任感の強さや秘めた優しさに、ちょっぴりキュンとしちゃいます。

『大長編ドラえもん3 のび太の大魔境』を試し読みする

社会問題への痛烈なメッセージ『大長編ドラえもん10 のび太とアニマル惑星』

大長編ドラえもん10 のび太とアニマル惑星

『大長編ドラえもん10 のび太とアニマル惑星』 藤子・F・不二雄 / 小学館

動物たちが高度な進化を遂げ、平和に暮らしている「アニマル星」が舞台。イヌのおまわりさん、ヤギの郵便配達さんなど、童謡を思わせるゲストキャラが可愛い、ほのぼのとした世界観の作品です。ネコ耳をつけたドラえもんやウサギ耳のしずちゃんが何とも愛らしく、スネ夫がキツネと呼ばれたり、ジャイアンがゴリラに間違えられたりするのは、クスッと笑ってしまいます。

その反面、地球ではゴルフ場建設が社会問題となり、アニマル星の「月」も環境汚染や核戦争でボロボロという、シリーズ屈指のシリアスな作品でもあります。

見どころは、アニマル星を守るため、のび太たちが悪の人間たち「ニムゲ同盟」と戦うシーン。ひみつ道具を使い、木の実や花粉で立ち向かうのどかさにほっこりします。テーマがシリアスな本作ですが、ラストシーンでは人類への希望も感じられます。最後にのび太が

「それはアニマル星はすばらしい星だけど、でも、やっぱりぼくらは地球人だからね。」

と言って地球への帰還を選びますが、これは藤子先生のメッセージを代弁しているかのようです。

神話の「光の階段」と「星の船」の正体には、「やられた!」と思う人、多いと思いますよ!

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絵本の世界と歴史上の世界がクロスオーバーする!『大長編ドラえもん11 のび太のドラビアンナイト』

大長編ドラえもん11 のび太のドラビアンナイト

『大長編ドラえもん11 のび太のドラビアンナイト』 藤子・F・不二雄 / 小学館

ひみつ道具「絵本入りこみぐつ」を履いて、絵本の世界の中で遊んでいたのび太たち。しかしトラブルで、アラビアンナイトの絵本の中にしずかちゃんだけが取り残されてしまいます。絵本はママに燃やされてしまって入れなくなったため、ロボットガイド・ミクジンの案内で、過去の中東へタイムスリップ。しずかちゃん救出に向かいます。

絵本(フィクション)の中のしずかちゃんを助けるために、ドラえもんが「アラビアンナイト」の中に実在の人物を見つけ、タイムマシンで現実時間線上の過去に行き、次第にその虚実がクロスオーバーするところが、他作品にない特徴であり読みどころです。また、しずかちゃんが奴隷商人に捕らわれ、ひどい仕打ちを受けても、のび太たち4人が絶対に助けに来てくれると信じて疑わないところは、5人の揺るぎない友情を感じて胸が熱くなります。

また、本作はゲストキャラたちも非常に魅力的! ミクジンはちょっと抜けているお騒がせキャラ、シンドバッドは太っちょで脱力系のおじいさんなのですが、そんな2人が最後に魅せてくれる活躍にシビれます。

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キミは神さま、世界を創れる―『大長編ドラえもん15 のび太の創世日記』

大長編ドラえもん15 のび太の創世日記

『大長編ドラえもん15 のび太の創世日記』 藤子・F・不二雄 / 小学館

夏休みの自由研究に困ったのび太は、ドラえもんから「創世セット」をもらい、宇宙を創造してその観察日記をつけ始めます。今の地球と同様に進化させようとするのび太。ところが、羽虫に「進化退化放射線源」を向けてしまったことから、知能の発達した虫が出現します。やがてのび太の創った地球に、人間と昆虫人間の戦争の危機が迫ります。

本作では、ビッグバンから地球の誕生、生命の進化、そして人間の歴史までを学ぶことができます。といっても堅苦しいわけではなく、舌切りスズメの民話が出てきたりして、テンポ良く展開されます。神さまに生け贄を捧げる儀式や宗教戦争の描写もあり、人の本性や愚かさがしみじみと伝わってきます。

創世者の目線で、独自の進化をたどるというストーリーは、他の漫画ではなかなかありません。藤子先生ならではの造詣の深さがうかがえる作品です。

『大長編ドラえもん15 のび太の創世日記』を試し読みする

天才ガンマンのび太の実力が際立つ!『大長編ドラえもん16 のび太と銀河超特急』

大長編ドラえもん16 のび太と銀河超特急

『大長編ドラえもん16 のび太と銀河超特急』 藤子・F・不二雄 / 小学館

22世紀で流行しているミステリートレイン、銀河超特急で宇宙旅行に出たのび太たち。小惑星群に建設された未来の宇宙遊園地へ行き、「西部の星」「恐竜の星」「忍者の星」などのアトラクションを楽しんでいました。そこへ、人間の体を乗っ取る謎の宇宙人ヤドリが来襲。スネ夫が乗っ取られてしまい、他の4人は囚われの身に……。

列車強盗に襲われたのかと思ったらアトラクションだったり、アトラクションかと思えば宇宙人の襲撃だったりと、スリリングな展開が楽しい作品です。銀河超特急からは惑星や銀河の眺めが素晴らしく、未来の遊園地にはイマジネーション豊かなアトラクションがいっぱいと、面白ネタが盛りだくさん! のび太は射的の腕を活かし、ジャイアンは習った忍法を活用、しずちゃんはおフロでヤドリの弱点を発見と、各自がそれぞれのキャラらしい活躍をするのも見どころです。

いつもはさえないのび太が

「何度も何度もぼくらは戦い、そのたびにのりこえてきた。今度もにげないでぶつかっていこうよ!!」

と言い、スネ夫が

「のび太……、大長編になると、かっこいいことをいう。」

と驚いているところは、クスッと同意してしまいますね。

『大長編ドラえもん16 のび太と銀河超特急』を試し読みする

まだまだあります!「大長編ドラえもん」シリーズ配信中!

大長編ドラえもん17 のび太のねじ巻き都市冒険記

『大長編ドラえもん17 のび太のねじ巻き都市冒険記』 藤子・F・不二雄 / 小学館

大長編ドラえもん18 のび太の南海大冒険

『大長編ドラえもん18 のび太の南海大冒険』 藤子・F・不二雄 / 小学館

大長編ドラえもん19 のび太の宇宙漂流記

『大長編ドラえもん19 のび太の宇宙漂流記』 藤子・F・不二雄 / 小学館

大長編ドラえもん20 のび太の太陽王伝説

『大長編ドラえもん20 のび太の太陽王伝説』 藤子・F・不二雄 / 小学館

大長編ドラえもん21 のび太と翼の勇者たち

『大長編ドラえもん21 のび太と翼の勇者たち』 藤子・F・不二雄 / 小学館

大長編ドラえもん22 のび太とロボット王国

『大長編ドラえもん22 のび太とロボット王国』 藤子・F・不二雄 / 小学館

最後に

「大長編ドラえもん」を読み返してみると、子どもの時には気づかなかった発見や、感心してしまう名シーンがたくさんあって、藤子先生のすごさを改めて感じます。「ああ、バーミューダ三角海域のことを知ったのは、この漫画だったなぁ」なんて懐かしい気分にもなります。

そして、大冒険が終わり、別れを経て、またいつもの生活が始まる……。ハラハラしながらも、読んだ後に残るすがすがしさ。その魅力に惹かれてやまないからこそ、私たちは「大長編ドラえもん」を読み続けるのかもしれません。

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