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絵の世界は激しく熱く奥深い『ブルーピリオド』感想解説|鷹野凌の漫画レビュー

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鷹野凌です。今回は講談社「アフタヌーン」で連載中のマンガ『ブルーピリオド』をレビューします。著者は山口つばささん。単行本は第4巻まで発売中。成績優秀でイケメンな男子高校生が、ある日一枚の絵に心を奪われ、美術の世界へ踏み込んでいくお話です。第2回マンガ新聞大賞で3位、マンガ大賞2019で3位など、注目されつつある熱い作品です。

『ブルーピリオド』アフタヌーン公式サイト(モアイ)

『ブルーピリオド』作品紹介

『ブルーピリオド』

『ブルーピリオド』 1~4巻 山口つばさ / 講談社

『ブルーピリオド』を試し読みする

真剣に絵を描いてみて、初めて人と話せた気がした

本作の主人公は、矢口八虎(やぐち・やとら)。サッカー日本代表の試合をテレビで友人と観戦しながら、朝まで酒を飲みタバコを吸う金髪の高校2年生。でも成績は超優秀で、明るく愛嬌のあるイケメンです。なんでしょうこのハイスペック男子は。でも、テレビ観戦で感動しつつ「これは俺の感動じゃない」と、冷めたところもあります。

父親からは

「学校の勉強ばかりしているとつまんない大人になるぞ」

と言われるいっぽう、母親からは

「遊んでばかりいないで勉強しなさい」

と言われる八虎。ノルマのクリア感覚で結果は出ているけど、褒められるたびに虚しくなる、手応えがない毎日。そんな八虎はある日、タバコを隠していた美術室で「すげえ」と圧倒される絵に出会います。

その絵を描いた先輩に、思わず

「才能あって羨ましいです」

と言ってしまう八虎。先輩は

「手放しに才能って言われるとなにもやってないって言われてるみたいでちょっと…」

と反論します。そりゃそうだ。努力している人ほど「才能」のひとことで済まされるのは、腹立たしいことでしょう。

美術の課題の提出期限日になって、はじめて真剣に取り組む八虎。塗り終わったあとに鉛筆で線を引こうとし、絵の具が乾いていないことに気づきます。「なんでもっと早く描かなかったんだろう」と悔やみますが、後の祭り。しかし、その絵は友人たちや先生からも褒められるのです。うれしい! 八虎は「初めて人と話せた気がした」と感じます。

「美術は文字じゃない言語」という謎

……という、ハイスペック高校生が絵の道に目覚め、めきめき上達していくプロセスを描く作品です。と言ってしまうと身も蓋もないのですが、読者はその絵の世界の奥深さと激しさを八虎とともに味わうことができます。

さて、美術の先生は八虎に「美術は文字じゃない言語」という、謎かけのような言葉を投げかけます。私は、文字表現を中心とした世界で仕事をしているので、この「美術は文字じゃない言語」という一節は、直感的には受け入れ難いものがあります。表現手段として絵は通常「非言語」に分類されると思うのですが……うーん、深い。

美術の世界で描かれる絵には、通常、文字表現は用いられません。例外的にコラージュで使われたり、絵のタイトルや解説という形でキャンパスの外に表現されることはありますが。そのいっぽうで、マンガというのは、文字と絵の組み合わせ表現です。

しかし本作を読んでいると、マンガという表現を超えたところで、文字と絵、言語と非言語、論理と非論理の表現世界を、いったりきたりできるような、そんな不思議な感覚を味わうことができます。絵も実はロジカルだし、非論理的な文章に心を動かされたりする場合も、あるのですよね。

『ブルーピリオド』

『ブルーピリオド』 1~4巻 山口つばさ / 講談社

『ブルーピリオド』を試し読みする

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