ミステリ短編集……でもない未発表短編集
とても読みやすくあっさりとした印象なんだけど、決して薄いという事ではない独特の読み心地がある
以下抜粋して雑感
『鬼ごっこ』
登場人物が平然と他人の命を奪うシビアな世界観、そしてこのタイトル
読みながら、世にも奇妙な物語(と、その原作になった某短編)を思い出
...続きを読むして、もしやこれ本当にただ鬼ごっこしてるだけだったりして……なんて思ってたら本当にその通りだった作品
でも、でも!!でもでもとても面白かった
ただ鬼ごっこしてるだけなんだけど、それが大オチでもなくて、そのあとに設定をさらにいくつか盛り込んで放り出すように終わり
なのに中途半端な感じはなくてとても面白い
何より鬼ごっこの道中が読んでいてただただ面白いのよね
収録作で一番好き
『精霊もどし』
最後の一言が書きたかっただけでは?と思った作品(笑
一応物語にも筋があって、ちゃんと起承転結して終わるのだけど、とてもあっさりさっぱりしている
でも物足りないわけでもない、不思議な感覚
というか、この作品に限らず収録作全体に同じ感覚が付きまとう
『ハサミ男の秘密の日記』
この日記を読んだ印象、そして解説にある本人評「昔と変わらない態度と毒舌」とあるように、一筋縄ではいかないような人間性が垣間見える
のだけど、それが嫌味ではなく嫌悪感は抱かない
むしろスマートで洗練された印象さえある
作品には人間性が出ると言うけど、まさにこういう事なんだろうなと、作品を読み終えて最後にこの日記を読んでなるほどなと一人腑に落ちてました
この作者の作品は『ハサミ男』~『黒い仏』の初期三作しか読んでなかったので、隙を見つけて残りも読んでみたいな、と思わされるくらいに好きな文章でした