仕事でお世話になっているシステムベンダーさんのお薦めの書。といっても、いわゆるシステムの話ではなく、もっと広く世の中は総じてシステムで成り立っているという、システム思考の話である。
解説より。
「本書では、システム思考の基本的な原則や、身の周りにあるシステムをどのように捉えればよいかを指南している。
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「共通するプロセスは、(1)『何が起こっているか」』をありのままに見つめ(指標)、(2)なぜ起こっているかを説明できるものごとのつながりを見いだし(システムの観察)、(3)レバレッジ・ポイントと呼ばれる効果的な介入ポイントを特定して働きかけを探り(イノベーション)、(4)その実施や移行のための戦略を築いて(戦略)、(5)リソースを動員する人たちの合意を得る(合意)ことである。」
以下、本文より。
「システム思考は、構造(ストック、フロー、フィードバックの図)と挙動(時系列グラフ)の間を、絶えず行ったり来たりします。システム思考家は、スリンキーを話す手(出来事)とその結果としての振動(挙動)と、スリンキーのらせん状のコイルの機械的な特徴(構造)の間のつながりを理解しようとします。」
「『物事にはどれぐらいの時間が必要か』について、私たちは繰り返しびっくりさせられます。ジェイ・フォレスターはよく、こう言っていました。『建設や処理の時間的後れをモデル化するときには、そのシステムの中にいるすべての人にその時間的遅れはどのくらいの長さだと思うかを尋ねて、最も妥当だと思われる数字を考え、それを3倍しなさい』」
「限定合理性とは、『人は自分の持っている情報に基づいてきわめて合理的な意思決定を行う』ということです。」
「直視しましょう。世界はごちゃごちゃだということを。非線形で、乱流のようで、ダイナミックなのです。数学的に美しい等式ではなく、どこか別の場所へ向かう道上でのつかの間の挙動に時間を費やします。自己組織化し、進化します。多様性と画一性を作り出します。それが、世界を興味深いものにし、美しいものにするのです。それがあるから、世界は機能するのです。」
■再生可能な資源システムに起こりうる挙動
・行き過ぎてから、持続可能な平衡状態へと調節する
・その平衡状態を超えて行き過ぎ、その後、平衡点あたりで振動する
・行き過ぎて、その後、資源とその資源に依存している業界が崩壊する
レジリエンス、自己組織化、ヒエラルキーという3つのものがあるから、ダイナミックなシステムはつねにうまく機能することができます。システムのこういった特性を促進・管理することは、長期的に機能する能力を向上させ、持続可能なものにできます。
■限定合理性
「人は自分の持っている情報に基づいてきわめて合理的な意思決定を行う」
行動科学者は、「私たちは、自分の持っている不完全な情報を完全に解釈することすらしない」と言います。リスクの認識を誤り、物事について実際よりもずっと危険だと考えたり、実際よりもずっと危険ではないと考えたりします。私たちは”誇張された現在”に生きているのです。最近の経験には過大に注意を払い、それよりも過去の経験にはほとんど注意を払わず、長期的な挙動よりも現在の出来事を重視することになります。経済的にも環境的にも意味をなさないほど、未来を軽視します。入ってくるシグナルのすべてに、ふさわしい重きを置きません。自分の好まないニュースや、自分のメンタル・モデルに合わない情報はどれも受け入れません。つまり、私たちは、システム全体は言うに及ばず、自分個人にとってのよいことを最大化する意思決定すらしないのです。
■オランダの家庭の電力 メーター
アムステルダムの近くに、一戸建ての家が建ち並ぶ住宅地があります。同じ時期にどれも同じように作られた家です。そう、ほぼ同じように、ということです。理由はわからないが、何軒かの家の電力メーターは地下に設置され、ほかの家の電力メーターは玄関に設置されていたからです。
その電力メーターは、ガラスの球体の中に小さな金属の輪が水平に置かれたものでした。その家庭が電力を使えば使うほど、その輪の回転が速くなり、目盛盤がこれまでに使ったキロワット時を加算していくのです。
1970年代初めに石油が輸出禁止となり、エネルギー危機が到来した時、オランダ人は自分たちのエネルギー使用に細かく注意を払うようになりました。そこでわかったのは、この住宅地の何軒かの家の電気消費量は、他の家より3分の1少ないということでした。だれにも説明できませんでした。どの家も電力料金の単価は同じでしたし、どの家にも同じような家族が住んでいたのです。
結局のところ、違っていたのは電力メーターの設置場所でした。
電力消費量が多い家族は、メーターが地下に置かれた家に住んでいました。地下ではほとんど目にすることはありません。電力消費量が少ない家庭の家は、メーターが玄関に設置されていました。小さな輪が回って月の電気料金が上がっていくそばを、1日に何度もみんなが通るのでした。
共有地を搾取する人の動機は理解しがたいと思うのなら、「自分はどのくらい進んで、大気汚染を減らすために、自動車の相乗りをするだろうか?汚したときはいつも自分できれいにしようとするか?」と自問してみてください。共有地のシステムでは、その構造から、コミュニティ全体や将来に対して責任のある行動よりも、利己的な行動のほうが、便利で儲かるものになるのです。
共有地の悲劇を避けるには、3つの方法があります。
・教育し、勧告する。共有地を制限なく使うことの結果が人々に見えるようにする。みんなのモラルに訴える。控えめにするよう説得する。違反する人には、社会的に非難したり、「地獄に落ちる」と脅したりする。
・共有地を私有化する。共有地を分割し、各自が自分自身の行動の結果を受け取るようにする。自分の私的資源の許容量以下に抑える自制心を欠く人がいた場合、損なうのは当人の分だけであって、他の人には損害は及ばない。
・共有地を規制する。ギャレット・ハーディンはこの選択肢をぶっきらぼうに、「相互の合意による相互強制」と呼んでいます。規制には、ある行動を全面的に禁止することから、割当制、許可制、課税、奨励策まで、多くの形態がありえます。効果を出すためには、取り締まりや罰金で、規制を施行する必要があります。
パラダイムにしがみつく人々(つまり、私たちのほぼ全員)は、「自分の考えていることはすべて、間違いなく無意味だ」という大きな可能性を一瞥すると、急いでペダルを踏んで反対の方向へ行ってしまいます。たしかに、「行動すること」は言うに及ばず、「存在すること」にも、力も、コントロールも、理解も、理由すらありません。「どんな世界観にも確実なものはない」という概念に具体化されています。しかし、実際には、瞬間的にせよ、生涯にわたってにせよ、この考え方を受け入れることができた人はだれでも、それが根本的な力を与えてくれる土台であることに気がつきます。正しいバラダイムは存在していないのであれば、どれであっても自分の目的を達成する役に立つものを選ぶことができます。どこで目的を得ればよいかわからなければ、宇宙に耳を傾けることができます。
パラダイムを超越したこの「極み」の領域で、人々は中毒を捨て去り、不変の喜びの中に生き、帝国を打ち倒し、拘留されるか、火あぶりの刑に処されるか、はりつけになるか、撃たれるかし、何千年も続く影響をもたらすのです。
できるならば、十戒に1番目の掟を付け加えたいと思います。「汝、情報をゆがめたり、遅らせたり、伏せたりするなかれ」。情報の流れを混乱させることで、システムをめちゃくちゃにすることができます。よりタイムリーで正確で完全な情報を与えることができれば、驚くほど簡単をよりよく機能させることができます。
定量化が難しいなら存在しないことにしよう」ということにすると、誤ったモデルになってしまいます。重要なものではなく、測りやすいものを中心に目標を設定することから陥るシステムの落とし穴については、すでに見てきました。ですから、その落とし穴にはまってはいけません。人は、数える能力だけではなく、質を評価する能力も授かっているのです。質を検知するようにしてください。質の存在・不在を検出して歩く、”うるさいガイガーカウンター”になってください。
何かが醜悪であれば、そう言いましょう。悪趣味なもの、不適切なもの、釣り合いがとれていないもの、持続不可能なもの、道義に反するもの、環境を劣化させるもの、人間をおとしめるものは、黙って見過ごしてはなりません。「定義し、測定できないなら、注意を払う必要はない」という作戦に足止めをくらってはいけません。だれも、正義、民主主義、安全、自由、真実、愛を定義したり測定したりすることはできません。どんな価値も、定義したり測ったりできる人はいないのです。しかし、それらのために声を上げる人がいなければ、システムがそれらを生み出すよう作られていなければ、私たちがそれらについて話し、そのあるなしを示さなければ、そういったものはなくなってしまうでしょう。
わからないときにすべきことは、虚勢を張ったり凍りついたりするのではなく、学ぶことです。学ぶのは、実験によってです。または、パックミンスター・フラーが言うように、「試行錯誤」どころか「試行錯誤・錯誤・錯誤」によって学ぶのです。複雑なシステムの世界では、逸脱を許さない硬直的な指示を手に進んでいくことは適切ではありません。「進路から外れない」のがよい考えであるのは、自分が正しい方向に進んでいると確信できるときだけです。実際はそうではないのに、自分は掌握しているというふりをすると、過ちを招くだけではなく、過ちから学ぶこともできなくなります。学ぶ際に適切なのは、小さなステップで、つねにモニタリングしながら進み、その先に何があるのかがよりわかるにつれ、進路変更を厭わないことです。
それは大変なことです。間違えること、そして、より大変なことに、その過ちを認めることな心理学者のダン・マイケルが「誤りの受容」と呼ぶものなのです。自分の誤りを受け入れるには大きな勇気が要ります。
■システムの定義
・システム(System):一連の要素や部分が整然と組織され、相互につながったもので、多くの場合「機能」または「目的」と称される、特徴的な一連の挙動を生み出すパターンや構造を持つ。
・ストック(Stock):時間をかけてシステムに貯まってきた物質や情報の蓄積。
・フロー(Flow):ある時間軸で、ストックに入ってくる、またはストックから出ていく物質や情報。
・ダイナミクス(Dynamics):システムやその部分の経時的な挙動。
・フィードバック・ループ(Feedbackloop):ストックの変化が、その同じストックへのインフローまたはアウトフローに影響を与えることができるメカニズム(ルールや情報の流れ、シグナル)。ストックからの因果のつながりが、そのストックの水準によって決まってくる一連の意思決定や行動を通して、ふたたび、そのストックを変えるフローとして戻ってくる。
・バランス型フィードバック・ループ(Balancingfeedbackloop):安定に向かう、目標追求型の調整フィードバック・ループ。どの方向への変化かにかかわらず、システムに課せられる変化に逆行・反転しようとするため「負のフィードバック・ルーブ」とも呼ばれる。
・自己強化型フィードバック・ループ(Reinforcing feedback loop): 増幅・強化型のフィードバック・ループ。変化の方向性を強化するため、「正のフィードバック・ルーブ」とも呼ばれる。悪循環または好循環。
・支配のシフト(Shifting dominance):競合するフィードバック・ループの相対的な強さが、経時的に変化すること。
・レジリエンス(Resilience):かく乱から回復するシステムの能力。外的な力による変化のあとの、復旧・回復・立ち直る能力。
・自己組織化(Self-organization):新しい構造を作り出し、学び、多様化するよう、自らを構造化するシステムの能力。
・ヒエラルキー(Hierarchy):より大きなシステムを作り出すやり方で組織されているシステム。システムの中にサブシステムがある。
・部分最適化(Suboptimization):システム全体の目標を犠牲に、サブシステムの目標を優先することから生まれる挙動。
・動的な均衡状態(Dynamic equilibrium):インフローとアウトフローにもかかわらず、ストックの状態(その水準や規模)が安定して変わらない状態。インフローの合計がアウトフローの合計と等しい時のみ起こりうる。
・線形の関係(Linear relationship):原因と結果が比例するシステム内のふたつの要素の関係性。グラフ上では直線として描くことができる。その影響は追加的。・非線形の関係(Nonlinear relationship):原因が比例的な(直線的な)結果を生み出さないシステム内のふたつの要素の関係性。
・制約要因(Limiting factor):ある具体的な瞬間に、システムの活動を制限するのに必要なシステムのインプット。
・限定合理性(Bounded rationality 122 頁):システムのある一部では合理的であるものの、より大き 文脈や、より幅広いシステムの一部として捉えたときには、合理的ではない意思決定や行動を導く論理。
・原型(Archetypes): 特徵的な挙動パターンを作り出す、よく見られるシステム構造。
■システムの原則のまとめ
システム
・システムは部分の総和以上のものである。
・システムの相互のつながりの多くは、情報の流れを通じて作動する。
・システムの中でも最も目につかない部分である機能や目的が、システムの挙動を決める上で最 も重要であることが多い。
・システムの構造がシステムの挙動の源泉である。システムの挙動は、経時的な一連の出来事としてその姿を現す。
ストック、フロー、動的な均衡状態
・ストックとは、システム内の変化するフローの歴史の記憶である。
・インフローの合計がアウトフローの合計を上回れば、ストックの水準は上昇する。
・アウトフローの合計がインフローの合計を上回れば、ストックの水準は下落する。
・アウトフローの合計がインフローの合計と等しければ、ストックの水準は変化しない――動的な均衡状態に保たれることになる。
・ストックは、アウトフローのペースを落とすことによっても、インフローのペースを上げることによっても、増やすことができる。
・ストックはシステム内で、時間的遅れ、バッファー、衝撃吸収材として機能する。
・ストックは、インフローとアウトフローを切り離し、独立したものにすることができる。
フィードバック・ルーブ
・フィードバック・ループはストックから、ストックの水準によって定められる一連の意思決定やルール、物理的な法則、行動を経由し、フローを通してふたたび戻ってストックを変える、閉じた因果関係の連鎖。
・バランス型フィードバック・ルーブは、システムの中で釣り合いをとろうとする、または目標追求型の構造で、安定性と変化への抵抗の両方を生み出す。
・自己強化型フィードバック・ループは、自らを強化するもので、時間の経過とともに、幾何級数的な成長または暴走型の崩壊につながる。
・フィードバック・ループ(非物理的なフィードバックですら)のもたらす情報が影響を与えうるのは、将来の挙動だけである。いま現在のフィードバックを駆動している挙動を正すことができるほどの素早さでシグナルを届けることはできない。
・ストック維持型のバランス型フィードバック・ルーブは、そのストックに影響を与えるインフローまたはアウトフローのプロセスを補うよう、適切に目標を設定しなくてはならない。そうでなければ、フィードバック・プロセスはストックの目標に足りなかったり行き過ぎたりすることになる。
・似たようなフィードバック構造を持つシステムは、似たようなダイナミクスの挙動を生み出す。
支配のシフト、時間的遅れ、振動
・システムの複雑な挙動はフィードバック・ループブが、続いて別の相対的な強さがシフトし、最初にあるルー別のループが挙動を支配するにつれて生じることが多い。
・バランス型フィードバック・ループにおける時間的遅れは、システムの振動を生じさせる可能性がある。
・時間的遅れの長さを変えることは、システムの挙動を大きく変える可能性がある。
シナリオとモデルのテスト
・システムのダイナミクスのモデルは、起こりうる将来を探り、「もし~だったら?」と問う。
・モデルが役に立つかどうかを決めるのは、「その推進力となっているシナリオが現実的かどうか」だけではなく(だれも確かなことはわからないので)、「現実的な挙動パターンに対応するかどうか」でもある。
システムに対する制約
・幾何級数的に成長する物理的なシステムでは、少なくともひとつの成長を推進する自己強化型ループと、少なくともひとつの成長を制約するバランス型ループがあるはずである。有限の環境において永久に成長するシステムはないからだ。
・再生不可能な資源は、ストックの制約を受ける。・再生可能な資源は、フローの制約を受ける。
レジリエンス、自己組織化、ヒエラルキー
・レジリエンスにはつねに限界がある。
・システムは生産性や安定性のためだけでなく、レジリエンスのためにも管理される必要がある。
・システムは自己組織化の特性を持つことが多い。自らを構造化し、新しい行動を作り出し、学び、多様化し、複雑化する能力である。
・ヒエラルキーのあるシステムは、ボトムアップで進化する。ヒエラルキーの上層の目的は、下層の目的に資することである。
システムにびっくりさせられる理由
・システム内の多くの関係は、非線形である。
・切り離されたシステムはない。世界はつながっている。システムのどこに境界線を引くかは、議論の目的による。
・どのタイミングであっても、システムにとって最も重要なインプットは、最も制約的なものである。
・複数のインプットとアウトプットを有する物理的なものは何であっても、層状の限界に取り囲まれている。
・成長にはつねに限界がある。
・あるものの量が限界に向かって幾何級数的に成長する場合、驚くほど短時間でその限界に達する。フィードバック・ループに長い時間的遅れがある場合、何らかの「先を見ること」が極めて重要である。
・システム内のそれぞれの主体者の限定合理性は、システム全体の幸せを高める意思決定をもたらさない可能性がある。
メンタル・モデル
・「世界について知っている」と考えていることはすべてモデルである。
・私たちのモデルは世界と強く調和している。
・私たちのモデルは、実際の世界をすべて代表するにははるかに足りない。
■システムの落とし穴から逃れる
施策への抵抗
・落とし穴:さまざまな主体者がさまざまな目標に向かってシステムのストックを引っ張ろうとするとき、結果として、施策への抵抗が生じる場合がある。どんな新しい施策でも、効果的なものであれば特に、他の主体者の目標からさらに遠くへとシステムの状態を引っ張ることになり、さらなる抵抗を生み出し、だれも好まない結果を維持するために、だれもが大きな努力をすることになる。
・脱出法:手放すこと。すべての主体者を集めて、抵抗のために使っていたエネルギーを用いて、すべての目標を実現するための相互に満足のいくやり方を模索すること。または、全員が力をるための相互に満あわせて引き寄せることのできる、より大きくて重要な目標を定義し直すこと。
■共有地の悲劇
・落とし穴:共有の資源があるとき、どの利用者もその利用から直接的に利益を得るが、その過剰な利用のコストは全員と分かち合うことになる。したがって、資源の状態から、資源の利用者の意思決定へのフィードバックはとても弱いものになる。その結果、資源は過剰に利用され、減衰し、最後には、だれにも使えなくなってしまう。
・脱出法:利用者への教育や勧告をし、資源の過剰利用の結果が理解できるようにする。また、各自が自分の過剰利用の直接的な結果を感じられるよう資源を私有化するか、(私有化できない資源もたくさんあるので)利用者全員の資源へのアクセスを規制することによって、欠けているフィードバックのつながりを取り戻したり強めたりする。
■低パフォーマンスへの漂流
・落とし穴:パフォーマンスの基準が過去のパフォーマンスに左右されることを許していると(特に、悪いものに偏って過去のパフォーマンスを認知していると)、目標のなし崩しの自己強化型フィードバック・ループが生まれ、システムは低いパフォーマンスへと少しずつ流されていく。
・脱出法:パフォーマンスの標準を絶対的なものにしておくこと。さらによいのは、最悪のパフォーマンスにやる気をそがれるのではなく、実際の最良のパフォーマンスによって、基準を良のパフォーマンスにド高めていくこと。高いパフォーマンスへの漂流を設定すること!
■エスカレート
・落とし穴:ひとつのストックの状態が、他のストックの状態を上回ろうとすることで決定されるとき(逆も同じ)、そこには自己強化型フィードバック・ループが存在し、そのシステムを、軍拡や富の競争、中傷キャンペーン、エスカレートする騒がしさや暴力に引きずり込む。エスカレートは幾何級数的で、驚くほどあっという間に極端な状態につながる可能性がある。何も手を打たなければ、そのスパイラルはだれかの崩壊によって終止符を打たれることになるだろう。なぜなら、幾何級数的な成長は永久には続けられないからだ。
・脱出法:この落とし穴から脱出する最善の方法は、その落とし穴の深みに入らないようにすること。エスカレートのシステムにはまったら、競争を拒むこと(一方的な武装解除)で、自己強化型ループを断つことができる。または、エスカレートを統制するバランス型ルーブを持つ新しいシステムを交渉することができる。
成功者はさらに成功する
・落とし穴:競争の勝者が再び勝つための手段を報酬として与えられるシステムになっていると、自己強化型フィードバック・ループが形成され、そのループが阻害されることなく回ると、最後に勝者はすべてを得て、敗者は消え失せることになる。
・脱出法:多様化すること。それによって、競争に負けている人がゲームから降りて、新たにゲームを始めることができるようになる。だれであれひとりの勝者が手に入れられる割合を厳しく制限すること(独占禁止法)。条件を公平にする施策。それによって、最強のプレーヤーの優位性の一部を取り除いたり、最も弱いプレーヤーの優位性を高めたりする。次回の競争に傷りを生じないように、成功に対する報酬を工夫する施策。
介入者への責任転嫁
・落とし穴:責任転嫁、依存、中毒が生じるのは、「システムの問題に対する解決策が、症状を減らす(または隠す)が、根本的な問題を解決することはなにもしない」ときである。人の知覚を鈍らせる物質にせよ、根本的な問題を隠す施策にせよ、選んだ、麻薬”は、実際の問題を解決しうる行動のじゃまをする。
問題を正すための介入によって、元々のシステムの自己維持力が弱まったり損なわれたりすると、その後、破壊的な自己強化型フィードバック・ループが動き出す。システムは悪化し、すると、解決策がさらに多く必要となる。システムは、介入への依存度を高めるようにな自らの望ましい状態を維持することはますますできなくなっていくだろう。
・脱出法:繰り返しになるが、この落とし穴を避ける最善の方法は、落とし穴にはまらないことである。実際には問題に取り組むわけではない、症状を和らげたり、シグナルを否定するような施策に注意すること。短期的な苦痛の除去に注目するのをやめ、長期的な再構築に注力する。自分が介入者なのであれば、システム自体の問題解決能力を取り戻す、または高めるようなやり方で取り組み、そのあと、自分自身は身を引くこと。
もし自分が支えがたいほど依存している側なのであれば、介入を外すまえに、自分のシステム自体の能力を構築して戻しておくこと。早ければ早いほどよい。先送りにすればするほど、抜け出すプロセスは困難なものになるだろう。
ルールのすり抜け
・落とし穴:システムを統治するルールは、ルールのすり抜けにつながる可能性がある。それは、「ルールに従っている」、「目標を達成している」という見かけを与えながら、実際にはシステムをゆがめる、邪悪な行動である。
・脱出法:ルールのすり抜けの方向ではなく、ルールの目的を達成する方向に創造性を解き放つよう、ルールを設計したり、設計し直すこと。
間違った目標の追求
・落とし穴:システムの挙動は、フィードバック・ループの目標に特に敏感である。目標(ルールを満足したという指標)の定義が不正確または不完全だと、システムは従順に機能して、実際には意図していない、または望んでいない結果を生み出すかもしれない。
・脱出法:システムの実際の福利を反映する指標や目標を明確に示すこと。特に、「結果」と「それを得るための努力」を混合しないように気をつけること。そうでないと、「結果」ではなく、「努力」を生み出すシステムになってしまうだろう。
システムに介入すべき場所(有効性の増す順)
12 数字:補助金、税金、基準などの定数やパラメーター平などの定数やパラメーター
11 バッファー:フローと比較したときの安定化させるストックとその結節点
10 ストックとフローの構造:物理的なシステムとその結節点
9 時間的遅れ:システムの変化の速度に対する時間の長さ
8 バランス型フィードバック・ルーブ:そのフィードバックが正そうとしている影響に比べてのフィードバックの強さ
7 自己強化型フィードバック・ルーブルーブを動かす増幅の強さ
6 情報の流れ:「だれが情報にアクセスでき、だれができないか」の構造
5 ルール:インセンティブ、罰、制約
4 自己組織化:システム構造を追加、変化、進化させる力
3 目標:システムの目的または機能
2 パラダイム:そこからシステム(目標、構造、ルール、時間的遅れ、パラメーター)が生まれる考の大きさ
1 パラダイムを超越する
システムの世界に生きるための指針
1 システムのビートを理解する
2 自分のメンタル・モデルを白日にさらす
3 情報を大事に考え、尊重し、広げるシステムの概念で強化する
4 言葉は注意して用い、大事なものに注意を払う
5 測定可能なものだけではなく、大事なものに注意を払う
6 フィードバック・システムのためのフィードバック方針をつくる
7 全体の善を求める
8システムの知恵に耳を傾ける
9 システムの中の責任のありかを見つける
10 謙虚であり続け、学習者であり続ける
11 複雑性を祝福する
12 時間軸を伸ばす
13 学問の”領域”に逆らう
14 思いやりの境界線を拡大する
15 善の目標を損なわない