吉村昭のレビュー一覧

  • 羆嵐

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    羆がヒグマと読むことを知った。

    この事件については、ドキュメンタリーなんかで知っていたけど、映像を遥かに超える迫力が文章から伝わってきた。

    一頭の熊に二百人もの人間がなす術もなく、一人の熊撃ちに託す、その辺の件は熱くさせられるものがあった。

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    2024年08月25日
  • 遠い日の戦争

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    八月は戦争関連の本を読む月間。

    太平洋戦争末期に北九州をB29による無差別爆撃で大量の市民を殺戮し、その後撃墜されて俘虜となった米軍兵と、その俘虜を斬首処刑した日本軍人。
    日本人が倹しい生活に苦しむ中、爆弾投下で大量殺戮をした米軍兵が収容所でぬくぬく暮らしていることに憤りを抑えられず個人の感情で斬殺するが、米軍兵が最後に残した愛する人の名前を呼ぶ声が耳に残る。果たして正義とは、戦争とは何か。

    戦後、連合国から戦犯として処刑されることを逃れるための逃亡劇は重苦しい、吉村昭の世界。

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    2024年08月14日
  • 漂流

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    1785年、土佐藩の船乗り長平は悪天候と黒潮の影響により3人の船乗り仲間とともに無人島にたどり着く。
    そこは土佐から700km離れた鳥島という場所だった。

    食物も育たない活火山の岩山で雨水をのみ、アホウドリを食べ心身ともに極限状態の中を生き抜き生還した長平の12年間。

    ・感想
    さすが吉村先生、面白かった。
    江戸時代の奉行所の公的文書でしか残されていない漂流者の記録から、壮絶なサバイバル生活を綿密な取材と想像力で描写してた。
    淡々とした文章ながら、いや、だからこそ厳しく牙をむく自然が恐ろしく感じたし、絶望、孤独感、諦観などの人間の心理に納得させられた。
    手に汗握る展開もありするす

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    2024年08月12日
  • 雪の花

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    天然痘の予防のために種痘を広めた町医者の鬼気迫る命を繋ぐ戦いの記録です。

    ワクチンの考えがなかった日本にこの予防法が受け入れられるには大変苦心したと思います。自分の職場にもインフルのワクチンでも拒否反応のある人もいますし、気持ちが分からなくもないです。

    それにしても電車も車もない時代の雪山越えの凄まじさ!命懸けです。かなり後半になってもなかなか種痘法が受け入れられず、やきもきしました。私が車出してあげたい!と何度も思いました。

    子供たちが死んで大八車で運ばれていく列を見るのはもう嫌だと自分の命を削っても助けたい思う優しさが本当に泣けます。7日置きに種痘するって大変すぎじゃない!?

    自分

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    2024年08月02日
  • 高熱隧道

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    ネタバレ

    ・あらすじ
    昭和11年8月中旬、日本電力株式会社は黒部第三発電所の建設を開始した。
    豪雨、豪雪、急峻な崖。
    人を寄せ付けない大自然を相手に、欅平から仙人ダムまでの約6キロの隧道工事に命をかけた男達の話。

    ・感想
    超絶面白かった…!!
    立山黒部アルペンルートに旅行へ行く前に工事が過酷を極めたという黒部ダムとかその辺りにある発電所の背景でも知っとくか〜くらいのテンションで読み始めたんだけど、面白すぎて(内容的に面白いと言ってしまって良いのか分からないけど)あっという間に読み終わった。
    (作品はクロヨンでも黒部ダムでもなくそれより前の黒部第三発電所建設時の話)

    ずっーーーと「昭和11年っていつよ

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    2024年07月29日
  • 破船

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    小さな村で過ごす少年の3年が書かれている。
    魚をみろ、魚でさえいつも体を動かしている、と口癖のように言う母。お金のため3年の奉公に出た父。お船様からの恵みがなければまともに食べていけない貧しい村。
    少年が成長していく描写が多いにも関わらず、いつこの日々が崩れるのかという緊張感や悲しさが漂っており、小さなお船様が来た時には、こうなるだろうと頭では分かっていながらハラハラした。
    悲しい物語と銘打たれている小説より、毎日を淡々と、感情さえも淡々と書かれている方が一層悲しく思えることもあるものだと思った。

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    2024年07月18日
  • 高熱隧道

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    戦時下での黒部ダム建設の過酷な労働状況を読み進めながら、働くという行為に向かう気持ちには共感できる場面が多かった。同時に、いとも簡単に人命が失われる、現代との著しい相違にも驚愕した。毎日当たり前のように使っている道路、橋、水道などの社会基盤を届けてくれた先人達に、感謝しなければならないと思った。

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    2024年07月13日
  • 漂流

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    ネタバレ

    一気読み、ドキドキ面白い。作者の調査と想像力がすごい。漂流し無人島での生活等が描かれる。無人島で何もすることもなく無気力に過ごし、仲間たちが精神や身体を病む様子は現代人への戒め様にも感じてしまう。主人公の長平は前向きかつ島暮らしを達観し修行僧のよう、他の漂流者とともに大自然相手に難しい仕事に取り組むことで生活にハリが出て長い時間をかけ未来を切り開く。これが実話に基づいていることが恐ろしい。

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    2024年07月02日
  • 星への旅

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    感じたことや印象をうまく言語化するのが難しい本。しかし、この難しさが確実に自分の心の襞になった作品。
    死に結びついた歪な欲望、執着。ここでの死はセンチメンタルなものでなく、生物が死体という物体になるという、物的なものとして描かれている。死がそのようなものとして描かれているから結局欲望や執着は無意味なもののように感じられる。表題作の「星への旅」で描かれる無動機な自殺は、このような死の即物的な側面を顕著に表していると思う。

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    2024年06月30日
  • 羆嵐

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    これが、かの有名なあの事件。
    怖い。熊ってプーさんのイメージで可愛い印象あるけど、可愛いなんて姿は全く皆無。
    自然に近い環境って羨ましい思いもあるけど、危険とも隣り合わせなんだな。

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    2024年06月27日
  • 羆嵐

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    名著

    事実を最小限物語風に。
    ありのままにお話は進行。
    創作ではないという事に恐怖感を煽られる。
    ラストに「ちょっといい話になるかな~」ってところがあるが、
    ストンと現実戻される。
    綺麗事はいらない、あくまでも事実を。

    名著

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    2024年06月18日
  • 魚影の群れ

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    うちは今、けっこうな田舎にあって、この前、2、3日うちを開けたら、ネズミかハクビシンか、アナグマが天井裏に住みついてた。というか東京に住んでた時も、防災用のビスケットがネズミにやられて、そこはあんまり田舎関係ないかも。前に虫に詳しい友達が言ってたんだけど、害虫を家に入れないためには、たえず「ここは人間のテリトリー!」とアピることが大事らしい。なので天井は、クイックルワイパーでドスドスつついてがんばった。ケーブルかじられて火事とか怖いし。人間さまの尊厳ってないね。虫やハクビシンとタイマン張らないと、家も守れない。

    よく「自然を守ろう」とかって言ったりするけど、自然って、ちょっと気を抜くと、自分

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    2024年06月15日
  • 高熱隧道

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    起承転結ならぬ転転転結で読む手が止まらない
    昔の日本人の体力は凄いものだったんだと感心させられた
    地道な作業の積み重ねと人夫達の汗と涙と命で不可能と思われる高熱隧道が完成した
    黒部ダムへ行きたくなったし行きたくない気持ちも同時に出てきた
    そのくらい凄い本だった

    実話なのよね…すごい

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    2024年06月07日
  • 新装版 白い航跡(下)

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    上巻は主人公よりも周りの歴史背景の記述が多くて読みにくかったけど、下巻は「脚気」を治療するには…についてあれこれと試行錯誤しながら、関係各所に進言したりと読み応えあった。
    文豪として知られる森鴎外の登場には驚き。

    小説中では米(白米)より麦(精製されてないのかな?)が良いとされていたけど、現代ではグルテンが腸に良くないなど…時代が変われば色んなことがわかってくる。

    それを一から(今のような環境では無いところで)発見するとは骨の折れたことだろう。

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    2024年06月01日
  • 高熱隧道

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    正月の地震の時に日本海側にいて、実は近くの避難所に避難をしたのだが、幸い居たところはひどい被害にはあわなかった。だが、道一本隔てた知人の家の庭の石燈籠が落ちたり、壁に亀裂が走った。地震のあと、余震を警戒して火を使わずにすごしたが、毎夜、氷点下はまぬかれたものの、室内の気温が1℃、や0.5℃で、雪が降りだすと、一時間で軽く30cmや40cm積もる。降りだせば、翌日、またその上に積もる。冷蔵庫に入れなくても、冗談でなくものが腐らない。ただ、食品がいつ尽きるかは、絶えず気にしていた。買い出しに行けるか? 雪が溶けないと本当の被害はわからない。本当に春が来るのはふつう、5月だ。10月には、寒くなりはじ

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    2024年05月26日
  • 漂流

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    読みながらなにかに似てると思ってたんだけど、後半になって気づいた。これアンディ・ウィアー『火星の人』にそっくり。長平はマーク・ワトニーそのもの。
    人間のちっぽけさと、偉大さ。
    裏表紙を読まなかったので、長平が生き残るのかどうかを知らずに最後まで読めたのが最高にエキサイティングだった。

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    2024年05月21日
  • 羆嵐

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    Wikipediaで知った作品。
    熊害の被害の描写は生々しく、想像するだけでゾッとする文章。淡々と書かれているのが怖さを際立てている感じがする。
    後半にかけては区長の心の動きや銀四郎の様子など人物が中心になり物語性が増した印象。
    羆を倒してからも定住はできなかったところに、自然への敵わなさを感じた。結局自然からすれば人間はただの侵入者なのだろう。
    登場人物としてはやはり銀四郎が魅力的。

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    2024年05月13日
  • 羆嵐

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    熊と言ったらこの本を読め、という感じに紹介されていたので読んだ。『ゴールデンカムイ』を以前読んでいたので、比較ができた。また文章も読みやすく、惹きつけられる。
    北海道の開拓村・三毛別川六線沢でヒグマが家を襲い、人を食う。亡くなった人を埋葬する習慣は人として良いものだけど、ヒグマが自分の獲物を奪われたと感じて襲ってくるんじゃないかとヒヤヒヤした。
    (村の人たちはまだ数年しか住んでいないので、熊の多いこの土地の風習に詳しくない。またアイヌとも距離があり交流は少ない様子)
    区長の銀四郎へのアル中で暴れん坊で不安な気持ちと熊撃ちとしての信頼が揺れ動くのも人間的。
    タイトルの「羆嵐」は、ヒグマが死んだ時

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    2024年05月08日
  • 関東大震災

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    関東大震災について,被災,朝鮮人の集団虐殺,警察による社会主義者のリンチ,復興の初期段階,地震学者の葛藤を描いたルポルタージュ.
    関東大震災の発生から101年が経過している.「アベノミクス」で経済が崩壊寸前の我が国を,このタイミングで首都直下型地震が襲ったら,もうこの国は持たないであろう.

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    2024年05月02日
  • 漂流

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    こわいけど、おもしろい
    久々に読む手が止まらなかった
    ただ、とある点がトラウマになって食生活に影響出始めてるな、、、

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    2024年04月30日