【感想・ネタバレ】高熱隧道のレビュー

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Posted by ブクログ 2023年10月14日

とても面白かった。今まで知らなかった土木作業、トンネル工事の描写は興味深かった。最高165℃にもなる隧道工事に苦戦する技師、人夫たち。特に現場で働く人夫たちはダイナマイトの不発弾による事故や泡雪崩による事故で300人以上もなくなっており、作中でも描かれていたが技師と人夫の立場が資本主義って感じがした...続きを読む。前半の方は人夫たちは事故で亡くなっても原因を追及したりせず受け入れていて技師は人夫たちの心を掴むように立ち振る舞うが事故が重なり人夫たちの不満が増してき、不穏な空気が流れ技師たちは隧道貫通と共に逃げるように山を降りるのは印象的。
自然の力って人の力ではどうしようないことあるんだな

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Posted by ブクログ 2023年09月01日

黒部第三発電所建設のための軌道トンネル掘削を描いた本作品。
黒四ダム建設のような荒々しい男の戦いをイメージして読み始めたものの、ただただ過酷な自然との戦いが休むことなく続き、事故が起きる度に打開策に注力し、やがて克服する人々の様子を描いているのだけれども、少しも自然に勝ったという気持ちを抱かせてくれ...続きを読むない、ある種切なく悲しい物語に感じました。
おそらく現在の技術でもってしても、このトンネルを貫通させるのは非常識極まりないもののような気がしますし、それに従事した人々の姿は決して情熱なんてものではなく、得体の知れない恐ろしい何かが原動力になっているのがひしひしと伝わってきました。
ラストは想像とかけはなれたもので、衝撃的。
作者がどういう意図で筆を走らせたのか、読者には計りしれません。

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Posted by ブクログ 2023年08月02日

骨太な構成、緻密な心理描写と繋がり、なのに読みやすく、飽きのこない内容、あまりにも小説として完成している‥。読んでいて夢中になってしまい一文一文読み飛ばしせず丁寧に読んだにも関わらず、仕事のある日の夜2日間で読破。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年04月29日

黒部の自然の脅威に立ち向かい、隧道工事に挑んだ熱き男達の物語、それがこの小説を手に取った時のイメージ。
そのイメージは間違っていた、とまでは言えないけれど、そんな生易しいもんではなかった。荒れ狂う黒部の自然の前に、人を使う側の技師も使われる側の人夫も狂っていく様はまるでパニック小説。
そんな困難も乗...続きを読むり越えてのトンネル開通、完工で大団円…とも行かず、ラストの後味の悪さは最早ホラー。でもあれだけのことがあって終わり良ければ全て良しで片付けるのも、それはそれで後味悪いよなというのも確かで…最後の数ページは緊張しながらめくりました。
ラストは創作だそうだけど、綿密に重ねられた取材に基づいて書かれたとのことなので取材先からそういうこともあり得るという空気をビンビンに感じ取ったんだろうな…

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Posted by ブクログ 2023年04月29日

黒部のダム工事と聞くと黒四ダムしか思い浮かばなかったけれど、これは仙人谷ダム建設にまつわる話だった。 黒部峡谷での工事が難しいのは、道とも呼べない断崖絶壁の狭隘な場所での資材の運搬だと思っていたけれど、それに加えて166度にも達する高温との闘いがあったとは・・・。 そんな環境下でのご苦労は想像だに出...続きを読む来ない。 いつの日か、多くの方々の犠牲の上に出来上がったこのトンネルを辿り、その苦難の功績をこの目で確かめたい。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年04月25日

ラストシーンの敗北感が印象的。

自然の脅威に翻弄され、多大な犠牲を払いながらも、やっと隧道を通すことができた。それなのに、逃げるように去らなければならなかった藤平たち。

今度は人夫たちの怒りが発火しそうになっている。これまでのことを思えば、とっくに発火していてもおかしくはない。臨界点はとうに越え...続きを読むている。今までは騙し騙しやってきただけにすぎないーーダイナマイトの自然発火と重なる描写だなと感じた。

すごい物語を読んだ。

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Posted by ブクログ 2023年04月05日


黒部第三発電所に付随する隧道を掘り進めた男達の話。
『高熱隧道』とあるが、それと平行して描かれるのは、雪山・雪崩といった圧倒的な“冷たい”脅威で、熱と冷気のコントラストが人の生命を拒絶する自然の圧倒的脅威として写り、絶望感が凄い。
特にヒリつく様な緊迫感で描かれる、国のインフラを支えている“人夫”...続きを読むと、それを使う者との関係には現代にも通ずる物がありハッとする。全編通して迫力と自然の恐怖感に満ちた傑作。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年02月22日

とても面白かった。

最初の方は、半沢直樹とか八甲田山みたいな感じかなーと思っていた。権力を持ったヤバイやつが金と力で推し進めていくのかと、で、この課長の藤平という人が苦労する話なのかと思って読んでいた。

違った。特に悪役は出てこない。読んでると、本当に工事中止が残念でならなくなってくるから、天皇...続きを読むと軍の力で無理矢理続行になった時はよかったとも思えた。

雪山に藤平と越冬隊を残して根津が山を下って行ったあたりは「あのヤロウ・・」と思ったけど、その後の自然発火事故でバラバラになった遺体を血まみれで運んでいるところでは藤平と同じように感動した。

しかしそれも違ったらしい。

藤平目線で話が進んでいくからか、藤平に感情移入して読んでいるけど「どうして人夫たちはあんなに熱くても働くのか」とか「人夫たちをまとめる秘訣はあるのか」という質問で、なるほど、自分は藤平じゃなくてその質問をしている発注者のような、もっと遠くにいる傍観者なんだなと実感する。

小説の最後は、あんなに惨たらしい目に合わせておいてタダで済むと思うなよという怨嗟の声が聞こえる気がしてくる。申し訳ない、と心に過ぎったところで発狂した千早を思い出した。

読んでる時は藤平から見た景色を見ているようだったのに、読み終わると人夫の事が気になって仕方がなかった。

人夫とかボッカとか結局誰なんだ、どういう経緯でそこにいるのかと。ネット検索ではいい書籍や記事を見つけられずにいたけど、そういえばこの前行った相模湖記念館で見た「このダムの建設には中国人捕虜と朝鮮人が」っていうのを思い出した。(もちろん日本人もいる)
それでまた検索すると“黒部・底方の声 : 黒三ダムと朝鮮人”にあたった。

この本はすごい。きっと私はこの先、黒部や仙人谷、志合谷、阿曾原谷などをテレビか何かで目にしたらこの小説を思い出すと思う。読み進めるのが恐ろしかったけど読んで良かった。

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Posted by ブクログ 2022年10月12日

現代では考えられない程の壮絶な現場だと思います。トンネル技術者としての使命と人としての倫理観の狭間で悩む姿は、胸を抉られます。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年08月26日

会社の読書会仲間に紹介された本。
土建業の厳しさ、社会的責任を再確認しようと手に取ったが、衝撃を受けた。山岳工事におけるタコ部屋労働の話は想像していたが、ここまで人間に酷いことをさせていた時代があったとは。。

「僅か数十センチの断崖絶壁の道を吹雪の中歩く」
とか、
「地熱でダイナマイトが自然発火し...続きを読む、作業員の死体が散らばる」
とか、
「数階建の宿舎がまるごと宙を舞う」
とか、
とにかく想像を絶する世界である。
これだけの犠牲者が出続けているにも関わらず、国、発注者、技術者、そして作業員までもが、工事を放棄せずにトンネルを完成させることに執着するという精神状態も信じられない。

・「ここにトンネルを作りたい」という人間のエゴ、
・「死の危険を犯しても大量のお金が欲しい」という欲望、
・「技術者のプライドに掛けて貫通させたいから突き進め」という思考停止、
・「今の環境から抜け出したければ、とにかく完成を急ぐか、死ぬしかない」という極限状況は、
是非この本を読んで体感頂きたい。

2024年から、この高熱隧道も一般利用が可能になるという。もちろんいつか通って見たいという興味はあるのだが、この本を読んでしまった今としては、犠牲になった方々や、工事に従事した方々に恐れ多くて近寄りがたい。特に、今も廃墟として残っている当時の宿舎の写真をネットで見つけ、鳥肌が立った。

厳しい自然の力を利活用したいが故に、大自然に挑んだ結果、尋常ならざる犠牲を出した黒部川電源開発。戦争へと突き進む日本の闇を見せつけられた。

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Posted by ブクログ 2022年08月22日

黒部峡谷に隧道を建設する男たちの物語。高熱を発する岩盤に挑み続ける。今であればこんなに犠牲者を出せば確実に工事中止に追い込まれるだろうと思うほど自然の力は偉大だ。

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Posted by ブクログ 2022年08月18日

我々が享受する日常は死屍累々の歴史の上に成り立っている。嫌というほど、それを思い知らされる壮絶な文章だ。
不測の事態、大自然の脅威にさらされてなお計画を遂行し続ける様にはぞっとさせられるが、命こそかかっていないものの我々の日々の暮らしでもこういった無鉄砲は無縁なものではない。

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ネタバレ購入済み

目を離せない展開

2020年10月20日

作者の徹底した現実感の表現は、どの作品でも心を捉えて離さない。関係が薄いのではないかと訝るプロローグが物語の大きな問題と深く関わってきたり、物語の中では些細な出来事に過ぎないのではと思っていると、皮肉なエピローグにつながったり。単なる事実の羅列のように見えながら、小説としての構成の見事さもその一因か...続きを読むと。

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Posted by ブクログ 2023年02月23日

序盤に出てくる「おれたちは葬儀屋みてえなもんだ」「遺族のことは決して考えるな」とか、発火事故での「みんな諦めろ。仏ばかりだ」とかには、ドキッとしたが、これが通底するテーマ。
後半の二度の「泡雪崩」を含む各ハプニングでの、人夫(作業員)らのとまどいをどう納めるか、どう工事を進めさせるかという技師たちの...続きを読む人間模様(たとえばご遺体の取り扱い、あるいは「演技」?までも)が心を打つ。
あるいはまた、結局遺族らの泣き叫ぶ姿や、追加で見つかった遺体の取り扱い等をめぐり、技師と人夫の関係が崩れていくというのと、一貫した描写だとも思う。

その他にも、自然との闘い(高熱ぶりや泡雪崩における「専門家」の無力さ)とか、
「貫通」へのロマンないし熱狂(競争や嗚咽)とか、
建設事業を進める上で必要な「神経の強さ」等、訴えてくるものは多い。

泡雪崩の一回目のこと含めて、史実とは異なるフィクションもないわけではない。が、個人的には、曽野綾子の『無名碑』並みに印象に深く残る「土木小説」になりそうである。

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Posted by ブクログ 2024年04月28日

一度、水力発電所を見学したことがあったので、本の内容が少しイメージできた。

この時代の人たちの情熱と意志の強さを感じた。
事故の内容は知る度に衝撃を受けた。どうやって竣工するのかが全く想像もつかなかった。
主人公となる人物とその周りの人々の心情をこと細かいに描かれていて素晴らしい。
多くの人の屍の...続きを読む上に成り立っていると考えると心苦しさを感じるが、それの感情だけでは語れない力強さも同時に感じた。

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Posted by ブクログ 2024年02月20日

往時の苦難が偲ばれる内容の本だった。吉村昭さんの本は、正確な調査に基づき記述されているように感じます。

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Posted by ブクログ 2024年02月16日

こんなに昔の本とは驚き。色褪せない。
序盤から中盤は出来事中心、中盤以降は人間にスポットが当たるので特におもしろかった。
創作のはずの登場人物たちがすごくリアルだった。

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Posted by ブクログ 2023年10月20日

頭の中の半分では感動.ただし残りの半分では,やはりどうしても嫌悪感を拭い去れない.人を人とも思わず,半ば気合いで乗り切ろうとする工程.当時から北陸の人たちは発電の犠牲になってきたんだなあ.

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年09月20日

壮絶。。ここまでして工事をする必要があったのか?見直さない、鼓舞して続けるというところに、軍国主義真っただ中の日本がどういう社会であったかを物語っている。。色々とひどいことが多すぎて、呑気に観光なんてする気分じゃなくなりそう。。この工事がもたらした経済効果っていったいどれだけあったんだろう。この時代...続きを読む、人の命がほんとに軽すぎる‥。合掌。

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Posted by ブクログ 2023年08月28日

評価3.5
迫力ある内容だったけど、自分の都合で細切れでしか読めなかったので3.5。そこが残念。
命と工事が天秤にかけられ工事が重くなる、技師と人夫の関係からくる緊張感、そして最後の爽快感とは遠い終わり。(貫通してよかったで終わると思った)
読みごたえあった。

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Posted by ブクログ 2023年08月27日

吉村昭のノンフィクションは読みやすくありありと場面が頭に浮かぶ。まるで映画をみているように読み進められる。
過酷な環境下で工事を行う人夫達の奮闘と犠牲者がでる度に殺気立つ現場の空気。岩盤温度165℃まで上昇し身体は火傷だらけ。自分が何時死ぬかわからない。それでも貫通させるという人間の意思のちからは凄...続きを読むまじいものがある。

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Posted by ブクログ 2023年08月21日

昭和11年から昭和15年、軍需産業のために建設が進められた黒部第三発電所。

未開の大自然を切り拓く人々のエネルギーと、それを阻むかのように犠牲を生むその大自然。
大きく熱く冷たいこの自然は本当に人間が入り込み、制してよいのかとたくさんの疑問を持たざるを得ない迫力があった。

その人々が費やした時間...続きを読むやエネルギーに、現代の人々は支えられ知らぬ間に恵みをも与えられている。

少なくともそうした事実を知り、考える時間が出来たことに感謝。

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Posted by ブクログ 2023年08月05日

一気読み。
終わった…熱かった…自然の前に人間は無力だった…でも成し遂げた…。
特に関心のないテーマでもぐいぐい読ませてしまう吉村昭さんの作品。読後の満足感も大きく、ハズレなし。黒部に行ってみたくなった。行く前に読めてよかった。

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Posted by ブクログ 2023年07月28日

黒部ダムに行きたくなる。粗筋にもあるが極限状態で人がどんどん壊れていく恐ろしさがこの話にはある。めちゃ面白い!

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Posted by ブクログ 2023年05月03日

黒部の太陽で回想された「地獄」

黒部ダム訪問をきっかけとして読んだ。
タイトルにもなっている高熱隧道の下りは、学者の意見も当てにならない中強行突破せざるをえない現場の息苦しさを感じさせるが、
泡雪崩の件はもう言葉にならないというか、これが小説の中でなく現実にあったというのが信じられない。ついに神の...続きを読む怒りに触れたのかと、山に挑む人間の戦意を完全に喪失させるに足る事故だった。
あまりにも多くの人夫の死を目にしすぎた建設会社の新入社員が、一人は精神に異常をきたして雪山に消え、一人は強くーーつまり静かに狂っていく様が悲しかった。

そして隧道貫通後の、爽快感とはほど遠い幕切れ。
死者と敗者しかいない一大事業の上に、我々の平和な生活がある。

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Posted by ブクログ 2023年04月22日

隧道の一般公開を控えた話題の土地に関する本なので読んでみた。結果、その地に行く気がしなくなってしまった。
今の生活がめちゃくちゃ有難く感じるし読む価値はあるが、凄惨な描写に耐性があってもきついかも。

羆嵐の作者であの話も相当に精神を抉られる描写が多かったが、この本の方が個人的には色々と抉られた気が...続きを読むする。

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Posted by ブクログ 2023年01月23日

誰かが殺した動物の肉を食べる感謝で「いただきます」の挨拶がある様に、他人が生きる為の発電に犠牲になった人が居る事を忘れない。

戦後に完成した黒部ダムの話ではなく、戦前の黒部第三発電所建設のトンネルを掘る話。
黒部ダム行きたいなーと思ってたので読んだ。
近現代を支えた先人の壮絶な状況は出来るだけ知り...続きを読むたいと思う。

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Posted by ブクログ 2022年11月11日

「吉村昭」のノンフィクション作品『高熱隧道(こうねつずいどう)』を読みました。

『戦艦武蔵』に続き「吉村昭」作品です。

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岩盤最高温度165℃。
そこは人が手を出してよい場所だったのか……。
黒部第三発電所建設を背景に極限で生きる人間を描いた傑作。
...続きを読む
黒部第三発電所――昭和11年8月着工、昭和15年11月完工。
人間の侵入を拒み続けた嶮岨な峡谷の、岩盤最高温度165度という高熱地帯に、隧道(トンネル)を掘鑿する難工事であった。
犠牲者は300余名を数えた。
トンネル貫通への情熱にとり憑かれた男たちの執念と、予測もつかぬ大自然の猛威とが対決する異様な時空を、綿密な取材と調査で再現して、極限状況における人間の姿を描破した記録文学。
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日本電力黒部川第三発電所水路トンネル、欅平(けやきだいら)駅~軌道トンネルの工事現場や人間関係について、建設会社の現場土木技師の目を通じて描いた作品です、、、

佐川組はゼネコンの佐藤工業をモデルで、登場人物は架空の人物だそうです… また、雪崩の記述には誇張した表現もあるようですが、基本的には実話をもとに描かれているようですね。

黒部川上流の黒部峡谷は、雨量、河川勾配から、早くから電源開発の最好適地として注目され、欅平から上流にダムを設置し、欅平付近の水力発電所まで水路トンネルで水を落下させて発電を行なうという黒部川第三発電所の建設工事が1936年(昭和11年)8月に着工された… そこは、資材を運搬するだけでも転落死する者が出るほどの、秘境に近い環境だった、、、

紆余曲折の末、富山県の建築会社である佐川組は、発電所から峡谷までの水路・人道の建築を担当することになり、佐川組の技師である「藤平健吾」、「根津太兵衛」たちは黒部峡谷を訪れる。

ところが、工事現場の地下には高熱の断層が通っており、わずか30m掘り進んだだけで岩盤温度は摂氏70度を超えた… それどころか、地質学者たちの予想などを軽々と裏切って、岩盤温度は奥に進むにつれて上昇を続け、ついには触れただけで火傷を起こすほどにまで達する、、、

「藤平」たちは、作業者に水をかけて冷却するなどの策を講じて工事を進めていくが、岩盤の温度によってダイナマイトが自然発火・暴発を起こしたのを皮切りに、泡(ほう)雪崩で鉄筋コンクリート造の宿舎が根こそぎ飛ばされるなどの事故が発生し、異例の数の犠牲者が出ていく… 技師の中にも、精神に異常をきたして冬山に失踪する者が出たりした。

そしてとうとう岩盤温度は摂氏166度を記録し、史上類を見ないほどに過酷な環境が形成されていった… この過程で、犠牲者の発生を見続けた作業者の間で不穏な空気が漂っていった、、、

あまりにも犠牲者が多い事から富山県警察部から再三に渡って工事中止命令が出されたが、国策ということで工事は続けられ、「藤平」たちの執念の末にとうとう隧道は貫通する… しかし、既に彼ら技師と作業者たちの溝は埋めがたいものとなっていた。

喜ぶのも束の間、「藤平」たちは、人夫頭の警告を受け、暗いトンネルの中を逃げるように歩いて、峡谷を去って行った… うーん、想定外の結末でした、、、

300名以上の犠牲者を出した危険で過酷な現場作業で酷使される人夫たちと、国策という大義名分を利用しつつ、自分たちのプライドを賭けて工事を推進した技師たちとの関係については、ダイナマイトの自然発火・暴発による死亡事故が発生した際の「根津」の献身的な行動により良好な状態へ変化しつつあると思っていたのですが… その後の作業継続により、埋めがたい大きな溝になっていたんですね。

このエンディングはフィクションらしいのですが… 意外だけど、納得感のある結末でしたね、、、

また、大自然のもつ強大な力についても改めて気付かされた作品でした… 自然に屈することは決して屈辱ではないだよ という考え方も、持っておきたいですね。

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Posted by ブクログ 2022年05月29日

黒部峡谷鉄道に乗りながら感じた大自然の爽快さと背中合わせにある危険性。
時期的規制でトロッコでは鐘釣までしか行っていないが、乗車直後に読み進めたせいで、ビジュアル的な臨場感とともに一気に読み進めた。
圧倒的な自然の力に怯えつつ、社会背景に翻弄されながら生じる人間の狂気性を、おぞましいまでに描き切って...続きを読むいる。

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購入済み

高熱隧道

2017年08月08日

吉村昭氏の著作は愛読しています。歴史の表舞台に出てきた英雄的な人の話も好きですが、そうではない、縁の下の力持ちであった人々、普通に暮らしていたら知らなかったであろう人々の話が特に好きです。当作品は、登場人物は氏の創作によるものですが、事実を題材にしており、迫力があります。「闇を裂く道」も同じようなト...続きを読むンネルを掘る話で、こちらも面白かった。併せてご一読をお勧めします。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年12月02日

黒部第三発電所でなくて,黒四ダムに行く前に読んだ。

いやー凄い工事だったんだ。

2022年11月に再読開始

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Posted by ブクログ 2024年04月16日

04月-07。3.5点。
今シーズン、下ノ廊下へ行こうと思っているので読んだ。
過酷、過酷のひと事。「黒部は人間を寄せ付けない」と現場の課長が思うほど、工事不可能な感じ。臨場感あり、面白かった。

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