【感想・ネタバレ】漂流のレビュー

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年12月04日

江戸時代の漁師の漂流サバイバル小説。この小説を読むと、次のような効能が得られると思う。

・困難な状況に置かれた時、どういうメンタルで過ごすのが自分にとっても他人にとっても最善なのか
・日々食事にありつけるありがたさ、運動の大事さ
・ものを大切にしようとする気持ちが深まる
・一方で、必要最低限のもの...続きを読むでも生活することができるんだというミニマリスト思考にとっても参考になる
・サバイバルの知識つけといた方がいいなという危機感


冒頭に日本人のサバイバル例として戦後のアナタハン島の話や、横井庄一さん達のエピソードが紹介され、それも興味深く読み進めることができる。しかし本編はそれどころでない面白さで、江戸時代土佐の長平の話が始まり、漂流生活が始まるあたりから終幕まで一気読みしてしまうハラハラドキドキの展開の連続でした。

まず船が漂流する怖さが存分に伝わってきます。悪天候のため2km先の島に泳いで行くこともできない無力感や、漂流時間が経てば経つほどにどんどん離れていってしまう無力感が存分に伝わります。

漂流ものだと、例えば海外ドラマ「LOST」のように、漂流者同士のいざこざを描きがちですが、私はそういう人間の汚い部分を読まされるのは苦手です。この本ではそういった人間の汚い部分の描写が少ないので、読者として気持ちよく読み進めることができました。希望も見出しづらい極限の無人島生活なので、いざこざを起こしている場合ではないということもあるのですが、合計三度の漂着者が総じて「気持ちの良い男達」であり、困難な状況でも助けあい、思いやりがある日本人らしさが描かれているようで良かったです。

また、私自身は無宗教で、どちらかというと欧米の宗教感に懐疑的でさえありますが、無人島生活でのこの状況で信心深くなっていく長平や、当時の人達が仏にすがる宗教感は説得力があり、それによって心を支えている姿がとても真っ当でリアルに感じました。

これまでの読書歴ではサバイバルものだと、さいとうたかおの「サバイバル」が一番かなと思ってましたが、純粋なサバイバルの「過酷さ」「心理描写」「先行きのわからないドキドキさ」で考えるとこの小説の方が面白いと思います。

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Posted by ブクログ 2023年11月17日

とても面白かった。江戸時代の船乗りが太平洋の鳥島に漂流した後、試行錯誤をしながら祖国に戻る話。土佐で米を運んでいた長平ら4人は時化にあいアホウドリしか住まない孤島に漂流する。長平以外の3人は栄養失調などで死んでしまい一人で過ごすこととなる。その後儀三郎ら率いる大坂船、栄右衛門ら率いる薩摩船が漂流しそ...続きを読むの人らと生活をする。孤島で死を待つだけの生活を捨て船を作り島から抜け出し祖国に帰ることを決断した漂流民は流木などから船を作り見事八丈島に辿り着く。一人になっても1年以上島で生活した長平の気力がすごい。アホウドリが渡り鳥で一年中いるわけではないことに気づいたり、肉だけ食べても死ぬことだったり、水のため方など洞察力が優れていてまた忍耐も人並み以上のものがあるから生き抜けたんだなと思う。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年07月31日

江戸時代中期に伊豆諸島最南端、絶海の孤島である鳥島に流れ着いた漂流船の物語。

寝泊りする洞窟を見つけ、アホウドリの肉と雨水を得る方法を体得してからは、仕事もしなくてよい、誰にも拘束されないため、堕落してしまい、毎日寝て暮らすようになる。栄養が偏り体に異変が現れる。そして希望の無い境遇を嘆き、卑屈に...続きを読むなり、所有物(家屋や妻)への執着を見せるようになる。
そうやって仲間が次々と体調を崩し、絶望しながら生涯を終えていくなかで、主人公(長平)だけは自分の芯を強く保ちながら生きながらえる。

・毎朝日の出を眺めながら念仏を唱えるルーティン
・亡くなった仲間たちの墓参り
・体力増強と健康維持、規則正しい生活(漁と運動)
・「将来故郷に帰還できたら絶対に鶏肉を食べないという誓いのうえ」アホウドリを殺生

そして、後に流れ着いた漂流者達に食料を与え、生活の術を教えるだけでなく、毎日励まし続けた。もちろん、彼らは食料を消費したり、喧嘩をしたりと長平の足手まといになるのだが、長平にとっては「居てくれるだけで有難い、心の支え」という存在になっている。

長年の孤独な無人島暮らしの中で、モノへの執着や絶望を一通り味わった長平にとっては、漂流者の苦しみやトラブルなど酸いも甘いも知り尽くしていたのだろう。

そして、後に島を脱出するための造船作業において、その漂流仲間たちは、まさに頭脳であり労働力となった。長平1人の力ではなく、全員のチームプレーで数年かけて船をこしらえ、互いを鼓舞し、日本帰還という希望に向かう様子は感動的であった。

絶望的な極限状態においても一筋の希望を失わずにいること。孤独の中で、今現在に集中し、日々の生活を丁寧にすごしながら心身の健康を保ち続けること。人間として尊く生きるために、基本的ではあるが持続することはとても難しいことである。長平の成長とともに、人間の弱さと強さを徹底的に描いた一冊だと思う。

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Posted by ブクログ 2023年07月29日

絶海の孤島に漂着した長平は12年にも登る漂流生活を送る。男たちが力を合わせて生き抜く姿には感動した。素晴らしいドキュメンタリーだと思う。

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Posted by ブクログ 2023年07月08日

一気読み。
江戸時代に船が流され漂着した無人島で長年生き延び、苦闘の末生還したドキュメンタリー。
長いので何日かかるかと思ったら一日で一気読み。読み進める手を止められなかった。
あきらめないこと、工夫すること、祈ること、信じること。と同時にあきらめること。
生き抜くための知恵をインストールできた気が...続きを読むする。
読めてよかった。

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Posted by ブクログ 2023年06月22日

江戸時代に実在した漂流者を追ったドキュメンタリー。とは言うものの、データは記録のみで漂流者の手記などは無い。この500p超の作品を形作っているものは作者の圧倒的な情熱と力量。
作中には度々神への祈りが出てくる。食物である鳥魚の殺生を悔い、仲間を慈しみ、今後自身と同じ目に合うかもしれない者の為に想いを...続きを読む残す彼らを、神は遂に見つける事が出来たのではないか。
無神論者の心を動かす素晴らしい作品だった。

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Posted by ブクログ 2023年06月10日

絶望の中でも諦めない脅威的な精神力と生命力、そして運命というものが幾たびも味方し苦難を乗り越える様に大きく心を揺さぶられた。無人島で食料がアホウドリしかなかったら、そして1人になってしまったら、と考えると、自分は長平のように振る舞える自信はない。だが一方で、自殺を試みても死に切る自信もない。どれだけ...続きを読む早く長平のような割り切った考えに辿り着けるかが肝だと思うが、早くその境地に達してもそれはそれで苦しいのだろう。自分が長平ならば、と何度も考させられた本でした。

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Posted by ブクログ 2023年06月09日

まさかのノンフィクション。200年以上前の話なので細かなところは脚色かもと思いつつ、やはり鳥島に12年というのは想像しただけで怖くなってくる。
だって、キャンプ場に行って道具の忘れ物しただけでも泣きそうになるほど困ることあるのに、水のない無人島って・・・。ほんとすごい!感動した。

冒頭に残留日本兵...続きを読むの話があって気になったので、名前だけ知ってた横井庄一さんのドキュメンタリー番組を公式YouTubeで観た。横井さんもなかなか壮絶な28年をジャングルですごしてた。そして長平と横井さんどちらにも「素朴な宗教心」というものがあったんだと驚かされた。過酷な状況を生き延びるには信念が必要なのかもしれない。
長平はその後どんな人生を歩んだんだろう。気になる〜
亡くなったひとらの病気は脚気だろうか。ビタミン&運動だいじ!

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Posted by ブクログ 2023年03月13日

吉村昭の小説は、事実を丹念に検証し、分かり易く読み解いて小説の中に落とし込む。その事実の度合いが司馬遼太郎のそれよりも濃度が高い。だから、『難しそう』な気がして手を出していない人がいたとしたら、その人は読書人生で大きな損をしている。個人的には、そう感じます。

特に本書。江戸後期に『伊豆鳥島』に漂着...続きを読むした長平という実在の人物を主人公にした小説です。嵐に遭い、かろうじて辿り着いたのが伊豆鳥島。「鳥も通わぬ」と呼ばれた八丈島は、"一度行ったら生きては帰れない場所"とされていた。伊豆鳥島はそれよりも更に遠い。八丈島と小笠原諸島の中間辺りにポツンと存在する。当然近くを船が通行する事などありえない。
断崖絶壁に囲まれた島に身一つで上陸し、船は大破して所持品は一切無し。
長平に"運が良かった"点があるとすれば二つ。一つは温暖な気候。真冬でも単衣で過ごせる暖かさだったこと。同じ漂流民でもアリューシャン列島に辿り着いた大黒屋光太夫一行は真冬に次々と死んでいる。
もう一つは"アホウドリ"群生地だったこと。文字通り、"アホウ"な鳥が素手で幾らでも獲れたことだ。
そんな長平が、「この鳥は、ひょっとしたらツバメと同じように『渡り鳥』ではないか」と気付く場面は吉村昭の小説の白眉だ。
断崖に囲まれた火山島で魚釣りもできない島。火打石すら持たず、火の無い生活を続けている長平。その絶望感が、読む者の心を抉る。
それでも起死回生の手段で生き延びる手段を講じる長平。そんな彼を、仲間の死が続けて襲う。長平はそれから二年間、ひとりぼっちで炎を使うことすらできない生活を送るのだ…。

人間が極限状況に置かれた時、どう対処するのかは、一概に言えるものではありません。しかし、大きな震災などが起きた時には、私たちがこの小説の主人公と似たような選択を迫られる事は現代においても変わらないと思います。

伊豆鳥島は八丈島と小笠原諸島の中間辺り、『台風銀座の真っ只中』にあります。台風シーズンになったら想像してみてください。
"あの海の中の小島で、13年も、岩の窪みに身を寄せて生き延びた人がいたんだ"

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Posted by ブクログ 2023年01月31日

「吉村昭」の長編ドキュメンタリー小説『漂流』を読みました。

『虹の翼』に続き、「吉村昭」作品です。

-----story-------------
流れ着いたのは絶海の無人島、それでも男たちは生き抜いた。
江戸時代の史料にも残る不撓不屈の生還劇。

江戸・天明年間、シケに遭って黒潮に乗ってしまっ...続きを読むた男たちは、不気味な沈黙をたもつ絶海の火山島に漂着した。
水も湧かず、生活の手段とてない無人の島で、仲間の男たちは次次と倒れて行ったが、土佐の船乗り「長平」はただひとり生き残って、12年に及ぶ苦闘の末、ついに生還する。
その生存の秘密と、壮絶な生きざまを巨細に描いて圧倒的感動を呼ぶ、長編ドキュメンタリー小説。
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1975年(昭和50年)に『サンケイ新聞』に連載された漂流モノ… 天明年間に船の難破で伊豆諸島の鳥島へ漂着し、12年に及ぶ無人島生活の後に故郷へ帰還した土佐の船乗り「長平」の史実を基にした物語です、、、

水も出ず、植物もほとんど育たないという、あまりに過酷な環境での12年以上に及ぶ漂流譚… 途中で、何度もフィクションじゃないかと思ってしまうほどの生活、生き抜くことの凄さを感じた一冊でした。

「源右衛門」、「長平」、「音吉」、「甚兵衛」の4人の乗り込んだ三百石船が、土佐沿岸での航海で嵐に遭遇し舵を壊されて漂流… 苦難の末に流れ着いたのはアホウドリが棲息する以外、動物、植物も生育しない火山島、、、

4人は雨水を貯め、磯の貝や蟹を補食し、アホウドリやその卵を食べて生き延びます… アホウドリを渡り鳥と見抜き、鳥が旅立つ前に干肉として備蓄することで何とか食糧を確保しますが、食生活の偏りが原因による病により「源右衛門」、「音吉」、「甚兵衛」が相次いで亡くなり、「長平」は独り残されるが、絶望と孤独の中で、生きて故郷に帰りたいという強い思いを持ち続け、知恵と工夫と強い意思により、様々な困難を克服していく。

数年後、大阪の船の11人、薩摩の船の6人が漂着し、「長平」は彼等に島で生き延びる術を伝授しつつ、力を合わせて生き抜いていこうとする… その後、大阪2名、薩摩2名の死者が出ますが、彼らが持ち込んだ道具により生活環境は徐々に改善、、、

そして、その工具や新たな仲間の特技を活かし、漂着した流木等を使って島を脱出する船を造ることを計画… 釘が不足して、一度は建造を断念するが、岩礁に碇がひっかかっているのを発見し、フイゴを作り碇の鉄を溶かして釘に加工することで課題を解決、「長平」等、生き残っていた14人は孤島での生活に別れを告げ、本土に向かって出帆する。

それは「長平」が島に漂着してから、12年4ヶ月後であった… 一行は青島を経由して、八丈島までたどり着き、そして本土へと、、、

久しぶりの漂流モノ、面白かったですねぇ… 500ページを超える大作ですが、一気に読んじゃいましたね。

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Posted by ブクログ 2022年08月26日

シケにあって無人の青ヶ島に漂着した男たちが、過酷な自然や帰国が叶わない絶望と戦う。仲間が死んでいく姿や、何も無い中で飢えに苦しみながら生きていく様子が臨場感たっぷりに描かれている。読んでいて辛かったし、今の平穏は当たり前で無いんだなと日常に感謝した。もう少しこの作者さんの作品を読みたいな。
あと頭の...続きを読む中でどうしてもチョコプラの「長」田庄「平」さんの顔が浮かんでしまって、終始彼を思いながら読みました(笑)

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Posted by ブクログ 2022年08月13日

どんな状況下でも希望を持ち続けること

こんなに過酷な現実を生きることは、今の自分には非現実的だけど、どんなに厳しく苦しい時も、決して希望を捨てずに生きること、それが人間が生きていくためには必要不可欠なんだと、改めて考えさせられた。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年05月20日

面白くて一気に読んでしまった。
孤独で寂しいときも、新しい人が漂流されてきても、ことあるごとにアホウドリを捕っては食べているところが生々しくて良かった。一生分のアホウドリ食べた気分。

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Posted by ブクログ 2022年04月11日

吉村昭の小説で、極限状態を凌ぐ男の物語は、まあハズレがない。
嵐で高知から小笠原諸島まで船が流され、漂着した島は水が出ず、植物も生えず、まわりに船は通らず、乗ってきた船は壊れて、さあどうするという中で、主人公が生き延びる様がすごい。
あきらめず希望を捨てないこと、生活リズムと適度な運動が大事なことが...続きを読む分かる。
アホウドリは偉大

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Posted by ブクログ 2022年03月06日

無人島に漂着し、やがて生還するというあらすじを知っていながら、途中何度もその結末を疑う。絶望と希望を繰り返す様子に、同じく一喜一憂しながらも島を脱出する手段は全く考え付かない。脱出が実行され、頁が残り少なくなってもまだ生存を疑う生々しい描写。

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Posted by ブクログ 2022年03月04日

自分が生まれる前の作品とは思えないほど面白い。一気読み。
漂流モノの作品はリアルであればあるほど自分を同化することができる。この作品はまさにそうであり、自分だったらどうするか、どのキャラクターに当てはまるか、と考えながらのめり込んで読んだ。
この作者の他の作品も是非読んでみようと思えた。
ちなみに自...続きを読む分だったら早々に生きる意欲を失って死んでしまっていそうである…。主人公には頭が下がる。

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Posted by ブクログ 2022年01月27日

今まで読んだ吉村昭氏の本で、一番面白かった。感動した。もともとサバイバルもののノンフィクションが大好きなのだが、なかでも本書はすごいリアリティである。
時代は江戸。届けものを運んだ帰路に嵐に遭い、4人の船乗りを乗せた船は土佐の海からはるかかなた太平洋に流された。途中で舵を失い、帆柱も切り倒し、命から...続きを読むがらたどり着いたのは無人島であった。水も食べものもない場所で、生き延びるべく工夫する。仲間たちは次々と病気で死んでしまい、主人公の長平は一人で何年もくらした。そこになんと、他の難破船が漂着する…。
本書は吉村昭氏の徹底的な取材によって、事実に基づいて描かれたドキュメンタリーである。船乗りたちの、故郷を思う切なさ、孤独、希望がビビッドに伝わってくる。彼らが漂着したのは火山島の鳥島で、今も無人島で渡り鳥アホウドリの繁殖地らしい。それにしても、よく気が遠くなるほどの年月、生き延びたものだ。物理的な困難もだが、精神的なもののほうがつらいと思われる。いつほかの船が通りかかるかもわからない、先が見えない状況で絶望しないでいるのは難しい。
やはり吉村氏の作品は期待を裏切らない。

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Posted by ブクログ 2022年01月16日

無人道に流れ着いた男達の話。
12年もの間無人島での暮らしを強いられた主人公及び、その後に同島に漂着して一緒に暮らすことになる船員達の厳しい日常が克明に描かれている。
船を作り上げる工程のうち、釘を作り出すところがすごい。無人島でそんなこと考えついて実行するってほんまにすごい。

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Posted by ブクログ 2022年01月08日

よく此れまで生きてこれたなぁっと感心する位凄すぎて自分には生きていく自信がありません…
只々,長平さんに圧巻です。日本のロビンソンクルーソーです正に!

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「創作する遺伝子」小島秀夫推薦

2019年12月21日

断崖絶壁の木も生えない火山島で12年余りを過ごし、無事生還した人の記録を掘り起こした素晴らしい作品です。火打ち石が無く、火も起こせない、穀物も植物も取れない、ナイナイづくしの中で生きるすべを編み出し、一人になっても生きる気力を保つ前半部と、後半の帰還への努力と苦悩が深く胸を打ちます。色々なものがあり...続きを読むすぎて、すぐに手に入るこの時代にこそお勧めです。

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Posted by ブクログ 2022年12月11日

土佐の船乗り,長平がシケで遭難し,鳥島に漂着する.仲間が次々に倒れるものの,その後同じく遭難で漂着した大阪の船の乗組員たち,続いて漂着してきた薩摩の船の乗組員たちが合流し,力を合わせてついには島を脱出し,12年ぶりに故郷に帰るまでを描いた作品.前半の長平の同僚が次々と斃れる苦境,相次いで難破者が漂着...続きを読むする中盤と,奇跡が重なり脱出を果たすまでの終盤,いずれもだれることもなく,一気に読んでしまった.
江戸時代の日本の船は,鎖国政策のために外洋を航海する技術が全く育たず,このような難破は日常茶飯事だったらしい.帰国できた長平は本当に幸運だったのだろう.なにせ太平洋で遭難して地図の埃のような鳥島に漂着でき,また,様々な技術を持った人々が後からやってきて,さらに同じく埃のような青ヶ島に手作りの小舟で帰り着くことができたのだから.吉村昭の「大黒屋光太夫」とも共通の,生還を成し遂げるキーワードは生きようとする前向きな姿勢だ.

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Posted by ブクログ 2024年02月25日

しばらく鳥肉が食べられなくなりそうでした…。
悪夢を見るほど場面を想起させる圧巻の描写力で、読後はどっと疲れました。思い出すと今でも波に揺られている気がします。

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Posted by ブクログ 2023年12月12日

窮地に立たされた人の気持ちと、生き抜くための知恵。その知恵は、多くの事を知っていないとひらめかないものなんだなと思った。

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Posted by ブクログ 2023年12月06日

誠に壮絶な物語であった。

実際にはそのような漂流者がいたと言う記録のみが残っているだけで、本当は何があったのか? 当然ながら詳細は一切不明。本当の物語は更に壮絶で文章にはできないような事もあっただろう。
■健康であることの大切さ
■目標を持って生きる
と言う当たり前かも知れないが、基本的な事をあ...続きを読むらためて教えてくれる小説てある。

序章の旧日本兵の話も非常に興味深い。有名な横井さん、小野田さん以前にアナタハン島からの帰還者(アナタハンの女王事件)と言う事件があった事は全く知らなかった。

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Posted by ブクログ 2023年11月18日

4分の3くらいずっと無人島の話で、
単調な生活のはずだが、次々ネタが出てくる。
最後までずっと面白い。

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Posted by ブクログ 2023年09月01日

映像で見たい!そんなお話でした。
私の知識不足か、なかなかイメージが湧かない部分があった。ストーリーとしては単純なのだが、映像として見たら、面白いだろうなぁと思ってしまった、というか映画あったのか!?
以前、テレビで刑務所か無人島を選ぶならどっち?みたいなのがあったけど、この小説読んだなら、刑務所一...続きを読む択かもしれない。

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Posted by ブクログ 2023年08月22日

実話をもとにしていると聞くと、本当に想像がつかない。読んでいて大事だと思ったことは、生きている時に何か目指すべき目標が必要であるということ。何もない中では生きられない。短期的目標と長期的目標の2つが必要ではないかと思った。

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Posted by ブクログ 2023年07月29日

漂着した無人島で12年生き抜いた男の物語。
淡々とした文章でサラリと書いてあるけど、娯楽もない島での12年ってどれほど長く感じたんだろう…
過酷ではあるけど、恐ろしさよりも学びの多い作品だった。神仏への祈り、生活の知恵、発想と行動力と仲間との協力、なにより生きようとする強い気持ち。こんな日本人が実在...続きを読むしたことに心強さも感じるけど、神様の存在を忘れた今の私たちに救いの手は差し伸べられるのかしら。自分が何も持たずに無人島に辿り着いたらどれくらい生きられるんだろうと考えたけど、鳥を殺すこともそれを生で食べることも絶対無理なので1日で死ぬ。

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Posted by ブクログ 2023年07月27日

子供の頃読んだ、ロビンソンクルーソー、家族ロビンソン、15少年漂流記などは、ワクワクして読んだが、本作は史実に基づくドキュメンタリー小説という通り、とても壮絶で辛い物語だ。
無人島 鳥島(八丈島、青ヶ島の更に南)に流れ着いた土佐の船乗り4人。食べることのできる植物とてない中、アホウドリの肉と魚介や海...続きを読む藻を食べて生き延びる。しかし3人は次々と病で亡くなり、長平のみ生き残る。自殺も試みるが、信心と信念で生き延びる。やがて、新たな難破漂流者が加わり十数人で生きていくことに。精神的にもたず亡くなる仲間も出る一方、残ったものは、励まし合い知恵を出し合い工夫をこらして生きてゆく。日本人の凄さと素晴らしさを感じる作品でもある。

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Posted by ブクログ 2022年02月04日

吉村氏の著作は「熊嵐」以来二作目だろうか。現代のノンフィクションと思って読み始めてすぐ、江戸時代の話ということで興味が削がれたけど、その主人公の長平の漂流以降、史実に裏打ちされた物語にあっという間に引き込まれた。そして鳥島からの帰還になんとも言えない感動というか衝撃を受けた。人がいかに組織化すること...続きを読むで力を発揮して夢を実現しようと努力することで近付くのかということを実感し、単純に凄いと思った。そして故国に戻って無人島と言われる辺りに人間の残酷さとユーモアを感じた。とても面白かった。

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Posted by ブクログ 2023年08月01日

日本は海に囲まれている。
ということを地理的な意味でも、意識的な意味でも、
強烈に感銘した重厚な一遍であった。

江戸時代、船がシケにあって船乗りが絶海の孤島に漂着。
火山島で水が湧かない、草木もわずかの実はアホウドリの生息地、
現代、鳥島と呼ばれているところにである。
そしてサバイバル、次...続きを読む々と遭難仲間も増え、12年ののち、故郷に帰れるのである。

定評のある吉村氏の筆力が、壮絶に書き尽くしているのは当然ことである。

鎖国の政策が江戸時代の船乗りたちにどんな危険を与えたか、に怒りを覚え、
主人公の「長平」という人物がサバイバルに打ち勝つその人間の成長に共感する。

克明で、淡々とした吉村氏のメッセージ、
海に囲まれ黒潮の流れる太平洋に面している日本の位置を強く意識させられた。

また
この主人公の読み書きもままならない若者が、人間として成長する強さは
やればできる!という希望を与えてくれる。

閑話休題
その鳥島のアホウドリを食べることが主人公たちの命を救うのだが、
たしか、今ではそのアホウドリも絶滅の危機で、
トキのように保護繫殖の労をとっている、とドキュメンタリーで見た。
その時に食べつくしたわけではあるまいが(笑

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