出久根達郎のレビュー一覧

  • 大江戸ぐらり 安政大地震人情ばなし

    出久根さんお得意の人情話と…

    中身は題の通り。なんとなく温かい気持ちになるような、しんみりするような、出久根さんお得意の人情話が幾つか収録されています。
    しかしそれだけでは飽き足らず、この小説は後書きまでがきっちり楽しめるようになっています。
    どんでん返しにどんでん返し。
    そのどんでん返しを起こさずにはいられなかった経緯も、面白...続きを読む
  • 日本人の美風
    日本の風土に育まれた風習・文化だけでなく、日本人気質までもが急速に失われてゆく世の中だった。グローバル化なんて美辞に酔い、やたら迎合して失った日本人の美風。この著でそれを認識し、多少なりとも日本に生まれた誇りを回復した。
  • 御書物同心日記
    江戸時代、本を管理する部署に配属された丈太郎、本にまつわるいざこざの数々!本の時代本といえる小説です。
  • 逢わばや見ばや
    出久根さんの自伝的作品である。

    出久根さんは、昭和半ばに故郷の茨城県から中卒集団就職として、東京月島の古書店に「丁稚」として就職した。生家は村で唯一の電気も水道もない貧家だったそうな。

    そして古書店で勤務すると当然ながら沢山の書籍に目を通すことになる。しかも、出久根氏は父親譲りの投稿マニアで...続きを読む
  • 御書物同心日記 虫姫
    ふと今月の新刊の棚を見る。

    なんだかそそる書名である。

    江戸もの、そして奇書・珍書、稀覯本なんかが載っているのかとつい購入。

    読んだらそれはそれは面白い。

    これはシリーズ3巻目なので、早速前巻を探し回るハメに。

    江戸好き、書物好きなら必見。
  • 本のお口よごしですが
    古書店に出入りする人びとは、それぞれの人生の片鱗や新たな発見を店内に佇む書籍に求める。そこに悲喜交交な場面に遭遇する古書店主である筆者の視線と言葉が積み重なっていく。どこに私たちの居場所があるのか、それは人に決められるポジションではなく、自身の心の流動なのだ。ふらついていい、その心情の移ろいこそ素晴...続きを読む
  • 出久根達郎の古本屋小説集
    古本と古本屋がテーマの短篇小説集。1990年代までに書かれたもののアンソロジー。エッセイに近いものからいかにも小説というものまで。いずれにせよ著者の古本屋としての経験が元になっていると考えられる。
  • いつのまにやら本の虫
    一遍一遍は短いけれど、読んでてじんわりしてくるような滋味にあふれたエッセイ集。
    同じような内容がちょいちょいとあるのはご愛敬。
  • 御書物同心日記

    まったり読める江戸お仕事小説

    先ず驚いた事が江戸時代の江戸城内でこういう仕事に先祖代々就いていた方々がおられた事。
    将軍家の蔵書をただひたすらに管理・補修する毎日はどういった気持ちなのか、実際に生のお声を聞いてみたいと思った。

    物語としては淡々としており大きな事件はおきない
    。連作短編でよくある物語を通して一つの大きな...続きを読む
  • おんな飛脚人
    飛脚といえば佐川急便のかつてのマーク、髷に赤ふん姿で挟箱を担いで駆ける姿が懐かしい。トラックに描かれたあのマークに触れればいいことがある、などと囁かれていた。佐川疑獄でそんな噂も消えたが、飛脚を知ったきっかけではあった。この物語は庶民の味方の著者らしく、人馬が宿駅を継ぎ遠路を行く高額な飛脚便ではなく...続きを読む
  • 続 御書物同心日記
    ちょっとした事件が毎回おきますが、最後は余韻のある終わり方で味わいがあります。すぐ読んでしまうともったいないので少しずつ読んでましたが読み終わってしまった。続きも楽しみ。

  • 漱石センセと私
    吾輩は猫の雪江さんモデルの女性の話。漱石の周りは人物が華やか。でも、普通に学生だったりするから、楽しい。
  • 大江戸ぐらり 安政大地震人情ばなし

    小説とは

    小説とは架空の物語である。にもかかわらず出久根さんの小説はまるで本当にあった事のように感じられる。同じ印象を司馬遼太郎さんの文章にも感じた事があります。それほど出久根さんの小説はどれも面白いです。
  • 本のお口よごしですが
    古本屋となって32年。中学を卒えて上京し、店員から自分の店を開きこの道一筋で集めた古書をめぐる珍談奇談の数々を、奇妙な客との交流で知った人生のほろ苦い味で仕上げてみました。貴書発掘のドラマから万引、美少女、臨終の書……読書好きに必ず喜んでもらえる講談社エッセイ賞受賞の名文随筆集。(表紙裏)

    本及び...続きを読む
  • 漱石センセと私
    夏目漱石の作品を通してしか漱石を知らなかったが、俳人・久保より江さんを通して漱石の人物像を表現した作品。漱石の作品も身近な人を題材にして作られていたのも初めて知った。
    しかし夏目漱石の話しがメインではなく、あくまでも明治の女・久保より江の話しでしたが、なんとなく温かくてノスタルジックな作品で良かった...続きを読む
  • 漱石センセと私
     面白い。明治という時代背景に、ほんわかとした面白さが満ち溢れている。
     
     「おばあちゃんが化け猫だというんです」
     「襖を手で開けるから気味悪いって」
     「おや。確か猫は手で開けるよ。襖も障子も。重くなければ板戸だって横にすべらせるよ。器用に開けて外に出ていくよ。ちっとも変じゃないよ」
     「でも...続きを読む
  • 面一本
    剣道二段、居合道二段、ナギナタ初段の若苗が、西早稲田四丁目の古書店に嫁ぎ、地上げ屋相手に「めええーん」と豪胆ぶりを発揮するかと思えば、そうでない。あくまで清楚で可憐、さりとて毅然たる態度を保つのだ。いかにも著者が理想とするであろう女性像に違いない。せどりのシンゴさんとの古書仕入れの旅では、色々と勉強...続きを読む
  • 佃島ふたり書房
    (オーディオブックにて)
    佃島の話、というのに惹かれて読み始めた。
    古本屋の歴史。
    あまり期待していなかったに、気がついたら引き込まれていた。
    過去の出来事から今に到るまでの佃島を中心とした素敵な話です。
  • 続 御書物同心日記
    前作も、面白く読んだ。
    御書物方同心なる役があったこと、紅葉山の德川家の御文庫のこと、そこでどんな仕事があったのか、どれも知らなかったことばかりで興味深かった。
    ごく短い短編なのに、古書をめぐる謎とその解決がそれほど不自然でなく展開する手際の良さも、見事だと思った。
    ただ、前作は埃やネズミの糞、紙魚...続きを読む
  • 佃島ふたり書房
    出久根達郎さん、1992年の直木賞受賞作

    古本屋の話、本好きにはそれだけでも楽しい
    しかし物語は結構入り組んでいて、佃島という特殊な地域に対する愛着をたっぷりこめながら、共産主義や友情や恋の話を絡めつつ、過去と現在を行ったりきたりします

    こうやって振り返るといろいろ詰め込みすぎ、作者が描きたかっ...続きを読む