出久根達郎のレビュー一覧

  • 無明の蝶
    正直、めちゃめちゃ面白い。文章のリズムが心地よく、読み終わるのが勿体なかった。読書の醍醐味って、つきつめれば「読んでて心地いいかどうか」だと思う。直木賞候補作にもなった本作。なのに、何でこの本が絶版なのか!?解せない。
    古本屋「芳雅堂」を営む「私」が語り手の、連作短編集。ユーモラスで、どこか奇妙な古...続きを読む
  • 御書物同心日記
     漸くきました。以前、哲学生なのに「紅葉山文庫について」なんて論文を15枚ほど書いて、方向性を失っていた私。いよいよ、あの論文が役に立ちました!
    主人公は紅葉山御文庫に務める新米同心。本大好き人間、と聞き私は興味を惹かれるばかりです。内容は短編集。本の知識とか、彼らの仕事とかわかります。事件とゆぅほ...続きを読む
  • 出久根達郎の古本屋小説集
    出久根さんの本に触れ、また講演でお会いして早18年が過ぎる。古本屋にまつわる小説も数多読んできたが、氏の生業が題材であるだけに虚構なのか実録なのか判じかねることしきり。極めて日常的な話の流れからして体験に基づくモノなのだろう。いずれにせよ、どれほどの儲けがあるのやら、帳場であれほど暇な稼業でよく食べ...続きを読む
  • 出久根達郎の古本屋小説集
     古本にまで手を伸ばしたら収拾がつかなくなるので、あまり古本屋巡りをすることはなかったが、古書・古本に関する本を読むことは好きだった。今では文学全集を筆頭に古書の価格は下落しているし、大体の価格もネットで分かる時代になってしまったが、自分が上京してきた頃は、文学書の初版を収集したり掘り出し物を一所懸...続きを読む
  • 本のお口よごしですが
    古本屋さんの主人が古本にまつわるエピソードを書き綴ったエッセイ集。
    街に古本屋は中々入るのは敷居が高いけど、これを読んでちょっと興味が出て来た。
  • 世直し大明神 おんな飛脚人
    前巻の巻末で安政の大地震に見舞われることが予告されていたもんで、いつ揺れるのか、誰か犠牲になるのかと案じながら読み進める。茂右衛門は残念だったけど、予見したかのごとく引退したのちで、十六屋を支える仲間たちは皆無事でよかった。まどかと清太郎だけど、惚れたはれたの恋仲については著者らしく有耶無耶というの...続きを読む
  • 犬大将ビッキ
    年老いた2人の母と、愛犬のパピヨンのビッキの赤裸々な介護生活を書いたエッセイだ。
    ペット飼育に対する知識は古いものがあったが、2人の母へのそして、愛犬への愛昔の念が強く感じられる。
    表題の剽軽なイメージからは考え思いつかないほどの心に染みる内容だった。
  • 漱石センセと私
    面白かったです。出久根さんは初めて読みました。
    より江という少女の視点で、夏目漱石や妻の鏡子を描く…というより、メインはより江の成長でした。
    より江と猪之吉とのあれこれがほとんどだったのですが、優しい目線でおおらかに読めます。
    描かれる出来事は、どの登場人物にとっても結構おおごとなのですが、穏やかに...続きを読む
  • いつのまにやら本の虫
    古書店店主であり小説家でもある作者の古書店エピソード日記。本に対する愛情がひしひし。読書を楽しむ者の共感を得るこの手の本はもっとあってもよいと思えるジャンルと思う。
    自分も同じように読書に関するエッセイを書きたくなり、時折妄想してしまって読む妨げになってしまった。古書の価値にはあまり興味はないが人の...続きを読む
  • 佃島ふたり書房
    内容(「BOOK」データベースより)
    佃の渡しが消えた東京五輪の年、男は佃島の古書店「ふたり書房」を立ち去った―大逆事件の明治末から高度成長で大変貌をとげる昭和39年まで移ろいゆく東京の下町を背景に庶民の哀歓を描く感動長篇。生年月日がまったく同じ二人の少年が奉公先で知り合い、男の友情を育んでいく。第...続きを読む
  • 漱石センセと私
    夏目漱石と樋口一葉に関しては一家言もニ家言も持ちあわせてる著者が、漱石センセに縁のある久保より江という俳人の半生を追う。わたくしは俳句に造詣なく、初めて知る女性だ。より江が少女時代に、漱石と正岡子規が彼女の祖父母の家に下宿していたようで、彼らとのほのぼのとしたやり取りが微笑ましい。やがて、医学博士に...続きを読む
  • おんな飛脚人
    軽いですね。悪く言えば軽薄。でもなんだか明るくて、スピーディーで良いです。
    著者・出久根さんは古本屋のご主人。どちらかと言えば、ちょっと重い感じの作品が多かったと思うのですが、これは妙に軽い。飛脚問屋を舞台にしたせいでしょうかね。
    何も残らない作品だとは思いますが、爽やかな一気読みでした。
  • 面一本
    出久根さんの現代物は初挑戦。先日からどうも時代物で良い作品に出会えず、現代物に走ったわけですが・・・・。
    面白い本です。でもね、やっぱり少し肌触りの悪さを感じてしまいます。
    最後の地上げ屋の黒幕との対決シーンは頂けませんが、その前の部分は古本屋(著者の実際の家業でもあります)という面白い世界を舞...続きを読む
  • 御書物同心日記 虫姫
    出久根さんの本は、何故か肌触りの悪さみたいなものを感じることが覆いのですが、これは殆どそんなことが無かったですね。なかなか良い出来です。
    一つには古本屋・小泉屋の娘・おしんの存在が大きくなった所為かも知れません。話全体に少し色気が出てきたのが良かったのかな。
    あまり高い評価はしていませんが、一気...続きを読む
  • 御書物同心日記
    古書店営む傍ら、作家活動をしている人と聞いて、以前から一度読んでみたかった。
    まさしく古書に絡む作品。

    江戸時代の、徳川家の文庫(紅葉山文庫)を守る同心たちの物語。
    公方様の本、神君家康公の御手沢本に万一のことがあっては、と、挟まっているごみのようなもの、汚れまで一々記録を残すお役所的な発想に、思...続きを読む
  • 御書物同心日記 虫姫
    将軍家の蔵書を管理する小役人・東雲丈太郎の周りで生じる事件簿。ささやかないざこざかな。どこか頼りなげでいて芯のある主人公の設定は梶よう子さん、ほのぼのと心暖まる展開は伊藤桂一さん、江戸情緒をきっちり伝える台詞や情景描写は故杉本章子さん、それぞれの作家と作風が通じる。糶取師の新六は、後々の事件にも絡ん...続きを読む
  • 御書物同心日記
    なんだか、分かったような、よく分からないような、フワッとしたまま終わる感じの話が多い。ミステリ未満ミステリ?
    当時のお役所がどのように貴重な本を扱っていたのかが分かって面白かった。本1冊でワクワクする丈太郎にはなんだか親近感がわく。
  • 雑誌倶楽部
    雑誌という媒体を通じて近代史を振りかえる。大正から昭和初期に発刊されていた雑誌を紹介されており、ほとんどを知らないんだけれど懐かしく感じる。かの時代の文化の名残がまだいくらか漂う中で育ったからだろうか。当時の雑誌の表紙絵は駄菓子屋で買ったメンコの絵のタッチだし、各家庭の倉庫や納戸にはそうした古雑誌が...続きを読む
  • 雑誌倶楽部
    古い雑誌に現れた言葉や記事から様々な話題を提供して売れるエッセイ。古本屋店主の面目躍如。取り扱う範囲も広く楽しい一冊。
  • 続 御書物同心日記
    御書物方をのどかなどと感じたが、今でこそ空調と機械警備に任せて古文書を管理しているものの、あれを人力でやるならば相当難儀に違いない。無事であってあたりまえながら、一日24時間、永劫に大事を許されない重責であると思い直す。