いよいよクライマックス突入です。
魔法使いを貸し出す事を生業としていた伊庭いつきのアストラル事務所は
魔法界においては弱小もいいところ。その弱さが仲間の分散という結果を招いてしまい、
アストラルの魔法使い達はそれでも再び元の形へと戻れるように己を高めていきます。
その甲斐あってか魔術界を牛耳る協会、
...続きを読む異端結社である螺旋なる蛇が潰し合う中に割って入り、
仲介者として両者の大魔術決闘をセッティングするまでにアストラルを成長させます。
幕が切って落とされた大魔術決闘の最中、今迄消息不明だったいつきの父・司までもが割り込む。
父の行動を斟酌しながらも決闘は続き、その中で犠牲者が出、傷ついて行きます。
それぞれにそれぞれの主張・思想があり、相譲れぬ駆け引きが続く中で、
戦場となる布留部市の竜脈が侵され、そもそもの始まりとなるいつきの幼少時代の事件が
明らかになっていき、父の行動の理由へも思い至るのです。
重厚な魔術のぶつかりあいは実に説得力があり、作品を損なわせていません。
某人気作品の様に魔術が単なる"必殺技”には堕ちてはおらず、
その描写の中でも本来魔術が持っている得体の知れ無い底の深さがあり、
幅広さがあり、風土風習との係わりが感じられ、そして歴史が感じられます。
魔法を扱った作品の多くが、案外そういったものを疎かにし、
却って魔法本来の魅力を損ねてしまっているかもしれません。
また魔法使いの気概と言う点でも大きな隔たりがあると感じます。
そしてそれを守る為のリスクにも確りと描かれているので、
作品全体への厚みへと繋がっているのだと思います。
文章慣れしていない人には拳一つで何とかなってしまうような安直、或いは単純なものの方が
理解がし易い、楽なのかもしれませんが、作者にも読者にも勿体ない事だと思わせる
魔法ものの代表的作品であると私は評価しています。
次巻で物語の幕を閉じるようですが、だらだらと続けさせず、確りと構成を重ね
最後に至らせ、幕を閉じさせられる事は私は作家として評価出来ると感じます。
終わったと思ったらまた何やら始まるのって何だかね。。。
親しんだキャラ達と離れがたいのかもしれませんが、
そういったところにも今の読み手自身の甘さが見られる気がします。