都筑道夫のレビュー一覧
-
解説で道尾秀介さんが言われている通り、まさに「渾沌」の書である。
タイトルからして人を喰っており「怪しげ」であるが、その中身はもっともっと「怪奇」そのものである。
どこへ連れていかれるのかわからない。
どこへ向かっているのかもわからない。
そして今、どこにいるかもわからない。
いわゆる「先が見え...続きを読むPosted by ブクログ -
タイトルにひかれて買いました。
各章の最初に書かれている言葉がおもしろかったです。
初めはなんてふざけた作品なんだと思いましたが、
終わりに近づくにつれて、ちゃんと怪奇小説になっていきました。
サイレントヒルというゲームをプレイしていたときのような気分になりました。
(ストーリーが似ているというわけ...続きを読むPosted by ブクログ -
江戸時代の話なのにあまり時代物という感じがしない、と常々思っていたのですが、その理由として武士の心構えがどうこうとか、武士の本分がどうこうとか、このシリーズにはそういうものが出てこないからだと『深川あぶら堀』を読んで初めて気づきました。
むしろ江戸の習俗なんかはたくさんちりばめられているのに。
これ...続きを読むPosted by ブクログ -
「からくり砂絵」:元ネタは落語や他の捕物帳だったり,他人が考えた「ありえない状況」だったり。そこに作者が合理的な「解決編」をつけるという趣向。元ネタを知っていると「本歌取り」の面白さがよりわかるという,若干クロウト向けな巻。Posted by ブクログ
-
士農工商から外れた身分のなめくじ長屋の面々が様々な謎を解き明かしていく時代劇&ミステリ。漫画的だけど砂絵のセンセーがかっこいいのです。Posted by ブクログ
-
なめくじ長屋シリーズ。今回は落語ネタなどが入ってますが。どれもこれもがばっちし本格!
お気に入りは「小梅富士」。だってねえ、これはもう事件の光景が秀逸でしょ! あまりにインパクト抜群でとんでもないです。でも解決は至ってシンプルなところがまた凄い。
「人食い屏風」も謎解きの過程が見事。だけどこれで凄い...続きを読むPosted by ブクログ -
話の後味は悪いんだけど、『小梅富士』はミステリとして好きだ。ハウダニットもの。
『人食い屏風』は悲しい話。ハウダニットと思いきや、ホワイダニットが主眼と思う。
『らくだの馬』はなんか好きだ。絶対に巻き込まれたくはないけど。
シリーズを通してハウダニットを前面に押し出してるけど、動機についてもしっかり...続きを読むPosted by ブクログ -
なめくじ長屋シリーズ。
以前中途半端に読んでいたのでシリーズ全巻再版(?)の機会に全部読もうと思いました。
一度読んだ話もいま読み返すと違う感じがして面白い。
センセーのなめくじ長屋の住人たちへの目が優しいなあと思います。
次巻も楽しみ。Posted by ブクログ -
<青春篇>と副題がつけられた短編集。
表題になっている「猫の舌に釘をうて」は、そのタイトルと内容がまったく違うというところがミソだ。主人公である男が、事件の「犯人であり、探偵であり、そして被害者」でもあるという話だ。彼は、その事件のあらましを「都筑道夫」という作家の束見本(くみあがりのページ数だけ...続きを読むPosted by ブクログ -
アウトローっていうのは死語なのかな?砂絵師のセンセーはじめ、なめくじ長屋の連中はまぎれもなくアウトローなんだけど。
捕物帳といったって、お上の手先になるじゃない。岡っ引の下げてくる酒目当て、事件にかかわった金持ちからの礼金目当ての内職がわりと嘯いて、奇妙奇天烈な事件をすっぱり解いてみせてくれる。
砂...続きを読むPosted by ブクログ -
道尾さんの人生を変えた本。
でも僕の人生は変わりそうにない。
構成が秀逸。
読み終えて満足を感じるタイプではないけれど、
読んでる最中は頭に?と…が交錯して惹き込まれる。
エッセイか、フィクションか、盗作か、妄想か。
読後に渾沌を見たという道尾さんの解説がまた面白い。
まぁ渾沌と繋げてしまうとわけ...続きを読むPosted by ブクログ -
長編怪奇小説の執筆依頼を受けた主人公(作家)が悩みながら書き進めて行く中で、昔の異常な記憶がネタになるのではと彷徨う中で、三十年前に病死したはずの従姉そっくりの女を見かける。ここからまさに怪奇と呼ぶにふさわしいストーリーが始まる。
結末の真相みたいなものは、ちょっと陳腐に感じたけど、それを打ち消す...続きを読むPosted by ブクログ -
推理小説論のエッセイか?と思える書き出しから一転、どんどん奇妙なほうへ転がっていく展開に驚かされた。ページ数こそ少ないものの、怪奇、メタ、ミステリ、エロ、冒険小説と、要素が盛りだくさんで読み応えがある。そしてそれらを継ぎ接ぎではなく”混沌”にして怪作に仕立ててしまうあたり、さすが都築道夫という感じ。...続きを読むPosted by ブクログ
-
都筑道夫さんの初期作品集。収録作品は、中編の「やぶにらみの時計」、そそて短編の6編、ショートショート2編、そして対談など盛りだくさんである。
一時期、「猫」の登場するミステリを探したりしていたのだが、「やぶにらみの時計」と短編の「黒猫に礼をいう」にも猫がさらりと登場している。
初期短編集とはいえ...続きを読むPosted by ブクログ -
元刑事でホテルの警備をしている主人公田辺が、ホテルで一人の男を殺すという予告を受けてその警備と推理に奔走する1日半を描いた「探偵は眠らない」他、元ボクサーの私立探偵西連寺剛がハワイで失踪した女性を捜索する「ダウンタウンの通り雨」、『銀河盗賊ビリイ・アレグロ』から最初の1章「双頭の毒蛇」など、<ハード...続きを読むPosted by ブクログ
-
パロディものの短編集。
ミステリの探偵を気取って事件に首を突っ込むという「もどき」をテーマにしたものは、「ポアロ」と「半七」を収録。また、ジェームズ・ボンドを日本に初めて紹介した著者らしく、007ならぬ000というスパイを面白おかしく書いている。
表題にもなっている「三重露出」は、二つの構造を持...続きを読むPosted by ブクログ -
元本絶版なので、これは嬉しい復刊。ちょっと高いけど、その価値はあるでしょ。
「怪奇・恐怖小説」なのだけれど、怖いばかりじゃないなあ。表題作だとか「気になる記憶」、「もういや!」など、ブラックユーモアが利いていて笑える作品も多い。考えてみれば、案外恐怖と笑いは紙一重なのかもね。
一方で本当に怖い「壁の...続きを読むPosted by ブクログ -
「近藤&土方」という「悪意銀行」のどたばた冒険ものだけでなく、SSや落語チックな短編、それからエッセーなど幅広く短編を収めた贅沢な一冊である。
もともとは西洋で発達したミステリに、落語の要素を取り入れるという手法は都筑さんの読者にはおなじみだろう。その絶妙な面白さは、とりあえず読んでいただくとして...続きを読むPosted by ブクログ