超有名作品をとうとう手に取った。いわずと知れた日本列島大災害スペシャル。
昔から読まねばならないとおもいつつ、ここまで引っ張った理由はなんだったか?じゃ、どうして読んだのか?
引っ張った理由は、昔のSFで、今から読むと昔の物語みたいに思っちゃうのではないかと思い込んでいたこと。だって私が子供のころ
...続きを読むから父の書棚にありましたから。
読んだ理由は、そんなにくっきりはしていないのだけど、名作にはふれておかねばと思ったこと。これまた失礼な話だが、藤沢周平とか読まなきゃ読まなきゃと思っても読んでいなかった小説が、やっぱり面白かったなと。『日本沈没』が歴史小説というつもりは決してありません。
それで、読んでみたところ、いろいろな意味で思い込みを打ち砕かれました。まず全然古くない!今の時代でも最先端そのもの。多少コンピュータの性能や使い方は変わっていても、本質的な部分でその使い方想定は全くはずれていない。また、日本列島が大地震にあう前提や、被害状況などは阪神淡路や東日本を経て、その想像力の現実感が物凄い。まさにそのとおり、あるいはもしかして未来で見てきた?といっても過言じゃない。
そして、本書は単なるSFじゃない。社会派小説そのものである。政治家が考えること、あるいは国の責任者となったときの絶対的な孤独、国を率いることの重さといった表現は、そこだけ取り出してもそのまま小説になる。科学者として重大な警告は安易にできない、逆に社会におもねりすぎたとき、結局首が閉まってしまうのは誰なのか?象牙の塔にこもってしまったままでよいのか?社会との上手なコミュニケーションを模索し続ける必要はないか?重大な危機に直面し、与党だの野党だのあるいはイデオロギーを振りかざして過去の行動を攻撃することの意味があるのかないのか。
どれも重いテーマが一つ一つ丁寧に構築されており、手抜きなし感がはんぱない。であるからかもしれないが、一人一人の登場人物の心の動きや人間通しの精神的なやりとりは少々薄いかもしれない。もしかしたらテーマや思い題材の影に隠れてうすくみえているだけなのかもしれないが。
というわけで、ここまで引っ張ってしまったことに後悔しつつ、第二部を予約したのであった。