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十年におよぶ海外左遷に耐え、本社へ復帰をはたしたものの、恩地への報復の手がゆるむことはなかった。逆境の日々のなか、ついに「その日」はおとずれる。航空史上最大のジャンボ機墜落事故、犠牲者は520名――。凄絶な遺体の検視、事故原因の究明、非情な補償交渉。救援隊として現地に赴き、遺族係を命ぜられた恩地は、想像を絶する悲劇に直面し、苦悩する。慟哭を刻む第三巻!
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Posted by ブクログ
御巣鷹山事故の詳細な記述は迫力があり胸に迫る。 精巧な筆致は本当に読むものの心を掴んで話すことがない。 主人公自身の話とは少しずれているが、今後の主人公の人生に救いはあるのか、次巻が気になる。
年始の羽田空港での事故をきっかけに読んでみようと思った作品。御巣鷹山の123便墜落事故が起こったことは知っていましたが、詳細は知りませんでした。 123便がレーダーから消え、墜落、炎上するところから、事故地点の確認、ボイスレコーダーやフライトレコーダーの捜索、機体の残骸の回収、原因究明。一方で、生...続きを読む存者の有無や救出、遺体の検視、遺体確認、遺族の方のお世話、お通夜や葬儀の手配、補償まで細かく描かれいます。 直接的な原因は整備不良ですが、その背景にある企業体質も大きな問題だと感じました(責任を感じていないようなJALの態度に苛々) 520名の命を一瞬にして奪うだけではなく、遺族の人生も狂わせる。病気になったり自殺したり会社が倒産したり、想像できない辛さを思うと心が痛いです。 もう生きかえることはない520名の命を無駄にしないためにもこのような最悪な事故を起こさないこと。JALだけでなく全ての航空会社が安全を守り続けることが、償いになるのだと感じました。
520人もの命が予期せぬ事故で突然失われるとはどういうことなのか。亡くなられた方それぞれに培ってきた人生と家族があり、それらが一瞬にして壊され、二度と戻すことはできない。それであっても加害者側は保身と利権に走る。小説であっても現実に起きたことを基に書かれており、あの時の事故も当事者の航空会社は、こう...続きを読むだったのかと眉を顰めずにはいられない。 そして、その会社で長年冷飯を食わされ続けながら、被害者のお世話係という仕事を全うしようとする恩地元の思考や志を理解するには、まだ全てにおいて自分は浅すぎるということなのだろうと思う。実際の御巣鷹山事故の時にも恩地元のような人物はいたのだろうか。
あまりに辛すぎて、読み飛ばしてしまいそうになりました。520名の命が一瞬にして亡くなることの重さを、少しでも理解できたように感じます。520名の方には、それぞれ家族や大切な人がいて、その方たちの人生までも狂わせて奪ってしまっているんだと、改めて気付かされました。それでまだ、利益や保身に走る人間がいる...続きを読むことに、げんなりさせられ、現実とはそうゆうものかと諦めそうになりますが、恩地さんの存在に私も励まされます。
日航機墜落事故のこと自体を知らない人は少ないだろう。 ただ、その事故がどうやって起きて、どうして500人以上が亡くなったのか、 詳しく知っている人の数は年々減っているはずである。 この作品を最初から読むのではなく、純粋に事故のことを知りたくて、この巻だけ読み始めた。 あまりに衝撃的な事故を起こした...続きを読む日本航空という会社の雰囲気を知るにあまりあった。 事故が起きるには、沢山のヒヤリがあると言われている。 今後も空の安全を追求するためにも、この事故のことを知る人が減らないことを祈りたい。
事故は死んだ者だけでなくその一家も破壊するという言葉がささった。ここまで事故処理や対応が大変ものだとは思っていなかった。国民航空の反省しない態度も嫌になる。でも世界的大企業の実情や一部が知れてよかった。はやく報われてほしい。
10年以上前に読みました。 当時は仕事のトラブルが続き、読書好きでも無いのに何かを変えたく気まぐれに手に取った作品。 謝罪を通じて遺族に何かしらの提案をする姿勢は、以後仕事への姿勢に影響を与えてくれた印象深い作品です。
自分が子供の頃に起きたジャンボ機墜落事故そのものの話しだった、、、当時私はお盆で父方の実家を訪れており、大好きな従姉妹のお姉ちゃんがもうすぐ出産で大きなお腹に手を当てて、ニュースがこればかりなんよ。とジャンボ機墜落のニュースを流すテレビを指さしたのを鮮明に覚えている。お姉ちゃんと楽しむ時間に夢中でそ...続きを読むの時はニュースに関心を抱かなかった。小学生の頃だったと思っていたが中学生の頃だったと思い直した。それでも当時は遠い遠い知らない所での出来事に思えた。 そんな記憶しかなかったがこの本を読み続けると事故直後からその後当時見たニュースの内容が途切れ途切れに思い出された。 奇跡的に助かった女の子のうつろな表情を思い出した。 坂本九さんが亡くなったこと。 しかしそんな情報はほんのひと握りにも満たない微量な情報だと思い知らされた。 読めば読むほど気付かされる被害者の苦しみや、現場で献身的に働いた人達の数々、、無責任な加害者側。 人として。の在り方がこれ程までに差が開く物なのかと。 心打たれ、また逆に憤りを覚えさせられた。 実際にあった話しを題材に作者の取材力の凄さに参った。 ⑴⑵と読んで来て変わらず恩地の人柄にも共感し、きっとこんな思いやりのある人達が実際当時どれだけ遺族の力になったであろうか、、 遠い所での遠い昔の事故として記憶の片隅にあったが、少しでも弔う気持ちを持て読むことが出来て良かったと思えた。
1.著者;山崎豊子さんは、小説家。大阪の老舗昆布店に生まれ、毎日新聞に勤務後、小説を書き始めました。上司は作家の井上靖氏で、薫陶を受けています。19歳の時、学徒動員で友人らの死に直面。「個人を押しつぶす巨大な権力や不条理は許せない」と言っています。社会派小説の巨匠と言われ、権力や組織の裏側に迫るテー...続きを読むマに加え、人間ドラマを織り交ぜた小説は、今でも幅広い世代から支持されています。綿密な取材と膨大な資料に基づく執筆姿勢はあまりにも有名です。「花のれん」で直木賞を受賞。その後、作家業に専念し、菊池寛賞や毎日文化賞を受賞。 2.本書;御巣鷹山篇は、日本航空が起こした飛行機事故をモデルに執筆。1985年8月、東京発大阪行ジャンボジェット機が群馬県の御巣鷹山に墜落した事故。520人もの尊い命が犠牲になりました。遺族はもちろん、それに関わったすべての人達のドキュメントです。壮絶な墜落現場、肉親の遺体を狂気の如く探し求める遺族、補償交渉の非情な現実・・・を緻密に書いています。 3.私の個別感想(気に留めた記述を3点に絞り込み、感想と共に記述); (1)『第3章 無情』より、「(52歳の男性が墜落直前の機中で書いた遺書)・・・きのうみんなと食事したのは最後とは、何か機内で爆発したような形で煙が出て降下しだした、どこへどうなるのか・・・本当に今迄は幸せな人生だった、と感謝している」「(主人公の恩地)遺書の文言を思い返すと、涙をこらえる事が出来なかった・・・その文字から滲み出ているものは、強靭な意志と、家族に対する限りない愛情、人間の尊厳に満ちた惜別であった」 ●感想⇒落ちていく機内で書かれた遺書の筆跡は、上下左右に大きくブレながら、記されていました。私は、これまで大きな事故に遭わずに生きてきました。もしこうした事故に直面した場合を想定すると冷静に遺書が書けるかどうか自信がありません。故人の恐怖の中での“家族への想いと感謝”に感銘あるのみです。心中より冥福をお祈ります。ちなみに、遺書の全文が、新聞で大きく報道され、多くの国民に深い感動を与えたそうです。 (2)『第4章 真相』より、「(記者)事故機が、・・・羽田へUターンすることに固執した背景には、慣れた空港へ戻ろうというより、他へ降りた場合、乗客を運ぶ代替機を飛ばさねばならず、経済的にマイナスになると、機長が考えたからではないですか」「(大蔵省)『(梱包や残骸回収)そんな費用は出せない、タダで済む自衛隊に頼め』と大柄に命じた」 ●感想⇒会社には3M(人・もの・金)が必要です。中でも、社員給与・株主配当・納税等の責任を果たす為に、金銭が重要な事は理解できます。資本主義の宿命です。しかし、私は“企業は人なり”と言われるように、人が最も重要と考えます。故に、人命尊重の観点で、安全保証は経営責任です。本書の航空会社では、人命よりも金銭を重んじる体質が社内に蔓延していたと思います。一方、官庁の体質にも問題ありです。日本の高度成長は、官民の護送船団方式のお陰だと言われるように官庁の役割は絶大でした。しかし、報道によれば、❝2020年度の税金無駄遣い2108億円❞とあります。官庁の行動はどこかおかしいと思うのは私だけでしょうか。御巣鷹山の大惨事は、航空会社はもとより業界を監視する官庁にも責任の一端ありです。猛省とこうした悲惨な事故を二度と起こさない信念と対策を講ずる事が官民両トップの責務です。 (3)『第6章 償い』より、「(遺族)『死んだ娘の命の代償を、よくも退職金なみに云うなど、あんたいう人は・・・』怒りに声が震えた。これが二言目には誠心誠意と、繰り返している国民航空の偽らざる本音かと思うと、そんな会社の飛行機に乗って死んだ娘が憐れで、涙が込み上げた」「黒塗りの車の中で、三人の娘の名前すら、覚えて来んかったのか、何が誠心誠意や、人の娘を三人も殺しておいて、この人でなしめ」「会社大事で、遺族を馬鹿にするのか、そんなことは絶対許さんぞ」 ●感想⇒遺族が言うに言われぬ屈辱を受けた心中を察すると、かける言葉がありません。会社の対応に厭きれるどころかこんな所で、日夜頑張っている社員が気の毒に思います。社員のやりがいとは何だろうか?と同情のみです。会社の立直しは容易ではないでしょう。 4.まとめ;会社に係る事故で遺族に対応するのは、人事総務部門です。いくら謝っても遺族は許しません。罵倒され、土下座させられ、対応者の苦労は押して知るべしです。役員達は、悲惨極まりない事故を起こしても、担当任せで、時間が解決するとばかりに、だんまりで時の流れを待つばかりです。何かやりきれなく、怒りをどこにぶつけたらよいか分かりません。フィクションとは言え、入念な調査を重ねて執筆した本書に、山崎氏の執念を感じます。“歴史は繰り返す”と言いますが、決して繰り返してはなりません。世の経営者には、役割を再認識する為にも本書を読んでほしいと思います。悲惨な飛行機事故の実態を風化させない為に、この作品は後世に語り続けてほしい一冊です。(以上)
これまでの物語からは一転して、日本航空123便墜落事故をめぐる話題となる。『沈まぬ太陽』全体で考えた場合には起承転結の承に当たる。この巻に至るまでのアフリカ編上・下を読んでいなくても理解できる構成となっているため、123便墜落事故について当時の様子を知りたい場合にこの巻だけ単体で読むのもあり。
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山崎豊子
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