熊野純彦のレビュー一覧

  • 極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる
    最上級に噛み砕いて、これほどわかりやすく『存在と時間』を解説してくれた本はない。

    自分の生を日常性から一歩深い視点で見つめることができる。

    初めて解説本を読んで、『存在と時間』そのものに挑んでみようと思えた。
  • 極限の思想 ドゥルーズ 内在性の形而上学
    「学」「二項性」の暴力性に抗うドゥルーズというイメージを持った。
    これはかけがえのない収穫だ。

    存在一義性、内在性は難しかった。
    第四章の狂気、第五章の表面、第七章の無人島(なかでも他者論)はかなり引き込まれた。

    著者の誠意を感じた。
  • 極限の思想 ニーチェ 道徳批判の哲学
    カント研究者の視点が随所に光る。
    キーワードは超越論的。
    ニーチェの道徳批判を『道徳の系譜』に基づいて丁寧に読みほどいている。
    ニーチェの問題意識がよく分かる。
    最後に著者が読み解いた、個人としてだけではなく、人類としても、歴史としても、道徳を解体していく「永遠回帰」の思想は魅力的だ。
  • 極限の思想 バタイユ エコノミーと贈与
    端的に言うと、聖と俗の二元論の浅はかさを撃ち、思索のうちに沈静するのでなく、この世の在り方、認識の仕方を根本的に超えていこうとするバタイユ論。

    アイテムとしては、経済、死、戦争、エロティシズム、宗教を新たな文脈の元で捉え直している。

    ハイデガー、サルトル、カイヨワ、レヴィナス、モース、レヴィ=ス...続きを読む
  • 極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる
    自分がいまだに通読したことのない『存在と時間』についての読みをこの一冊で包括的に提供してくれた、(単行本ではあるが)新書的アプローチの本。注釈を中心に国内外の最新のハイデガー研究の成果が書かれており、読者としては信用がおける。

    要約の仕方については論争的な部分もあることも含めて著者自身が丁寧に紹介...続きを読む
  • 精神現象学 下
    面白かったですね。
    (数年前に一度読んでいて、今、再読中)

    もちろん哲学書の御多分に洩れず難解なのだけれど、この難しさの質は「何とかなりそうな」難しさです。私たちにも馴染みのある合理や理性の射程範囲にあるような。まあそれでも私のような凡人には難解極まりないのですが。

    私個人としては哲学のテクスト...続きを読む
  • 日本哲学小史 近代100年の20篇
    前半は西田幾多郎に始まる日本哲学の系譜をまとめたもので,軽く確認するには良い。

    後半は代表的な著書の紹介で,各テーマからピックアップしている。
  • 極限の思想 ハイデガー 世界内存在を生きる
    本書は「私たちがそれぞれ『私』の生を生きているとはどのようなことか』という問題に対する取り組みとして『存在と時間』を解釈する。
    実存主義にも存在論にも還元できない、そうした『存在と時間』に固有とも言える哲学的洞察を評価する試みであることを個々に明記しておく。
  • レヴィナス入門
    とても丁寧で親切な解釈が提示されている。入門と呼ぶに相応しい。倫理を究極の形で探究したレヴィナスの鼓動を感じた。
  • カント 美と倫理とのはざまで
    自然と倫理の領域、第一批判が前者を、第二批判が後者を扱っており、両者は厳然と区別される。それでは、自由や目的が世界のどこに位置づけられるのか。第三批判の判断力こそが二つの領域を架橋する役割を果たす。

    判断力は、普遍的なものに特殊なものを包摂する能力である。そして、普遍的なものが予め与えられていない...続きを読む
  • 精神現象学 下
    P154 381
    「反抗する自己意識である場合にのみ、自己はみずから自身が引き裂かれ、分裂していることを知っている。そしてそのように分裂しているのを知ることで、自己はただちに分裂を超えて高められているのである。」「肯定の対象となるのは、ひとり純粋な〈私〉そのものだけである」
    この辺りとか、本当にナシ...続きを読む
  • 物質と記憶
    41
    対象群は,自分の身体の有する力が増減するのに従ひて秩序着けられる.私の身体を取り巻く対象群は,其れ等の対象に対する私の身体の可能な行動を反射するのである.

    99
    第一の仮説では,精神も亦物質と等しく認識不能な物となる.精神は定義し難い能力に帰されており,其の能力が感覚を何処からともなく呼び起...続きを読む
  • 精神現象学 下
    1年ぶりに読み返したけど面白かった!
    良心が赦しによって相互承認に至る過程は特に面白い。しかし、現代に引き付けて考えてみると、ヘーゲルの言うような「赦し」による和解が難しくなっているように感じる。むしろ、道徳の段階のような、自己の正しさに固執する契機の方が目につくのではないだろうか。自己の知の有限性...続きを読む
  • 西洋哲学史 古代から中世へ
     デカルトまでのギリシャ・ローマ世界における思想について、通史的にざっと知識を整理しようと購入したが、そのような実用的な用いられ方を拒むような著者の文体にあえなく返り討ちにあい、結局2度3度と読み返すことに。「世界と、世界をめぐる経験のすべてがそこに結晶しているような一語を語りだすためには、幾重にも...続きを読む
  • 西洋哲学史 近代から現代へ
    それぞれの時代の哲学者のそれぞれの思想を紹介するのではなく、ある事柄に関して、それぞれの時代の哲学者は、どのように考えたかを軸に紹介している。
    従って、それぞれの哲学者の違いは理解できるにしても、各哲学者の思想を知れる訳ではない。
    また、代表的な著作が紹介されている訳でもない。

    読み進めるのには、...続きを読む
  • マルクス 資本論の哲学
    哲学者熊野純彦さんによる資本論入門。本書の趣旨はご本人が終章で述べているように、「価値形態論を形而上学批判として読みなおすところからはじめて、資本の運動を時間と空間の再編過程ととらえるこころみを経て、科学批判としての資本論体系をきわだたせながら、利子生み資本と信用制度のうちに時間のフェティシズムを見...続きを読む
  • 近代哲学の名著 デカルトからマルクスまでの24冊
    各書を紹介している執筆者は、それぞれ異なる。
    が、本書を通して読むと、近代哲学が、一貫して何をテーマにし、何を問題にしてきたが、わかるようになっている。
    これは、編者の熊野純彦による力が大きいと考えられる。
    どの名著を読もうかと考えている読者にも、近代哲学のテーマを知ろうと考えている読者にも、近代哲...続きを読む
  • 西洋哲学史 古代から中世へ
    本社は古代から中世にかけての西洋哲学をまとめたものである。一般の西洋哲学史の本は、人物名とその人が唱えた概念を一文でまとめた形で纏められているものが多いが、本書は歴史のコンテクストを追いながら、それぞれの人物の思想について、具体的かつ論理的に説明しており、とても面白かった。説明してある内容はそれなり...続きを読む
  • レヴィナス入門
    フランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスの哲学を存在論の視点から描き出した入門書。フッサールやハイデガーになじみがないとやや難解な部分もあるが、全体としては読みやすい作りになっている。

    詳細に立ち入ることはやめておこう。
    ここに書き留めておくべきことはひとつ、レヴィナスは極めて繊細な感受性をもった...続きを読む
  • 廣松渉哲学論集
    廣松さんの文章は、半分も分かりません。
    難解な文章を書く事を良しとされるのには何か意味があるのだろうとは感じていました。

    複雑な物事を描写しようとしたら、複雑になるのは分かります。
    単純な物事と複雑な物事との関係をどう表現するのか。

    認識と表現の間の変換をどうすればいいのだろう。
    弟子の方々の今...続きを読む