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フッサールとハイデガーに学びながらも、ユダヤの伝統を継承し、独自の他者論を展開した哲学者エマニュエル・レヴィナス。自身の収容所体験を通して、ハイデガーの「寛大で措しみない存在」などは、おそるべき現実の前に無化されてしまうと批判する。人間はどれだけわずかなものによって生きていけるのか、死や苦しみにまつわる切なさ、やりきれなさへの感受性が世界と生を結びつけているのではないか。こうした現代における精神的課題を、レヴィナスに寄り添いながら考えていく入門書。
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Posted by ブクログ
とても丁寧で親切な解釈が提示されている。入門と呼ぶに相応しい。倫理を究極の形で探究したレヴィナスの鼓動を感じた。
フランスの哲学者エマニュエル・レヴィナスの哲学を存在論の視点から描き出した入門書。フッサールやハイデガーになじみがないとやや難解な部分もあるが、全体としては読みやすい作りになっている。 詳細に立ち入ることはやめておこう。 ここに書き留めておくべきことはひとつ、レヴィナスは極めて繊細な感受性をもった...続きを読む哲学者だった、ということだ。 リトアニアに生まれたユダヤ系のレヴィナスはフランスに留学した後、第二次世界大戦に巻き込まれ、捕虜として収容所に入れられる。本書に「奇妙な戦争」とあるように、しかしその収容所生活は穏やかだったようだ。「夜と霧」を著したヴィクトール・フランクルの過酷な収容所体験に比べると非常に恵まれた境遇だったようだ。けれども収容所から解放され、戦火に巻き込まれて何もかもなくなった故郷を見た後、レヴィナスの「存在」や「私」、「他者」の思考が展開していく。 レヴィナスの繊細な感受性はそれを受けてこう記す。 “たったいま死んだものによって残される空所が、志願者の呟きによって充たされる。存在の否定がのこした空虚を、あるが埋めてしまうのだ” 哲学書を読む醍醐味は、こうした繊細な感性に捉えられた事象とそれを解きほぐしていく力強い思考をたどることにあると思っている。哲学者が語るのは真理ではない。彼ら彼女らが語るのは自らの感受性なのだ。その意味で言えば、哲学は芸術でありうる。
おそらく日本で一冊であろう、レヴィナスの入門書。 レヴィナスはハイデガーやフッサールのもとで現象学を学んでいて パリ5月革命は肯定的ではなかったあたりが、 自分の知らなかった、いくぶんか興味深いレヴィナスを知れた。 確かに一言でレヴィナスを語り尽くすのは難解であるが、 非常によくレヴィナスのエッセ...続きを読むンスを取り入れつつ、熊野氏の味も出ていると感じた。 最終章になるにつれ、レヴィナスの論理が彼の人生とともに変わっていくさまも見る事ができて、 感慨深かった。 他者論には欠かす事の出来ない偉人。
一通り目を通した。 読み終わったというにはほど遠い理解度かもしれない。 レヴィナスといえば、他者論。 前半を中心に扱われるフッサールやハイデガーとの接点は、自分の中で少しクリアになった気がする。 一方、6章以降、レヴィナス自身の他者論が中心となる部分になると、とたんに難しくなるのはなぜだろう? ...続きを読む文章も独特な感じ。 使われている言葉は、術語もあるけれど、全体としてはやさしい言葉が使われている。 何か、詩のような感じさえ受ける。 ところが、言っている内容は、なかなか頭に入ってこない。 こちらのセンスとレディネスの問題だろうけど。 なんだろう、この見かけの平明さとのギャップ。
「存在」「主体」「身体」「糧」「世界」「他者」「女性」等々のキーワードを、レヴィナスの思想の展開をたどりながら、説明していく。彼の思想を捉えるための手がかりが得られるように思うが、一読しただけでは、それもなかなか難しい、というのが正直なところ。
レヴィナスの思想について、判りやすくゆっくりと解説した入門書。 中身はしっかり詰まっているので新書だからといっても読むのに時間はかかるが、先に読んだ物よりも判りやすい印象を受けた。先に読んだせいかもしれないが、年譜と思想を交互に読んでいくせいか。
[ 内容 ] フッサールとハイデガーに学びながらも、ユダヤの伝統を継承し、独特な他者論を展開した哲学者エマニュエル・レヴィナス。 自己の収容所体験を通して、ハイデガーのいう「寛大で措しみない存在」などは、こうしたおそるべき現実の前では無化されてしまう、と批判した。 人間は本当はどれだけわずかなものに...続きを読むよって生きていけるのか、死や苦しみにまつわる切なさ、やりきれなさへの感受性が、じつは世界と生を結びつけているのではないか、といった現代における精神的課題を、レヴィナスに寄り添いながら考えていく、初の入門書。 [ 目次 ] 個人的な経験から―ばくぜんと感じた悲しみ 第1部 原型じぶん自身を振りほどくことができない―『存在することから存在するものへ』を中心に(思考の背景―ブランショ・ベルクソン・フッサール・ハイデガー;存在と不眠―私が起きているのではなく夜じしんが目覚めている;主体と倦怠―存在することに耐えがたく疲れてしまう) 第2部 展開「他者」を迎え入れることはできるのか―第一の主著『全体性と無限』をよむ(享受と身体―ひとは苦痛において存在へと追い詰められる;他者の到来―他者は私にとって「無限」である;世界と他者―他者との関係それ自身が「倫理」である) 第3部 転回:他者にたいして無関心であることができない―第二の主著『存在するとはべつのしかたで』ヘ(問題の転回―自己とは「私」の同一性の破損である;他者の痕跡― 気づいたときにはすでに私は他者に呼びかけられている) [ POP ] [ おすすめ度 ] ☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度 ☆☆☆☆☆☆☆ 文章 ☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー ☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性 ☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性 ☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度 共感度(空振り三振・一部・参った!) 読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ) [ 関連図書 ] [ 参考となる書評 ]
難しい。おそらく、字を追ってみたものの、何もわかっていないと思う。「入門」とは、かくも厳しいものであったのか。 これを読むためには、もう少し、初歩の初歩である知識が必要であったので、ものすごく気が向いたらいつか再読したい。 なんとなく読み取ったことは、自己の他者性(他者はいやおうなく自己に働きか...続きを読むけてくる、それに気づいた時点で自己は応答せざるを得ない)に対して何らかの方法で主体性を取り戻そうとしている、ということ。なんとなくだが、自己が存在することの悲惨さ、みたいなことはキャッチしたし、どちらかといえばしっくりくる考え方である。 関係ないのだが、女性は(息子を)産むことで世界を所有する的なことが書いてあったが、これは、先日読んだ『セカイからもっと近くに』と同じように、「命をつなぐこと」によって自分が社会とアクセスできる(と作品は示している)という考え方に通じるところがあると思った。
ちっとも入門ではない。語りは専門書みたいな感じ。迂遠な書き方になっているのは丁寧に前提を再定義していくのなら仕方がないとはいえ原書からわかりやすくなったところは殆どない。ただ、読んだ人が理解の助けになると思って少し諸々の関連性を述べているので延長線上にあるテキストといえる。理解が深まる度に、読み直す...続きを読むと見えてくるのかもしれない。そういう感じのテキストでおおよそ新書らしくはない。とはいえ悪いテキストではないと思う。
別の人の講義でレヴィナスを学んだときは「深そうなこと言ってるようだけどなんだか肌に合わないなあ」という印象だったが、著者による解説を読んで考えが変わった。著者の緻密な分析によるところが大きいのかもしれないが、結構かっちりとした真面目な倫理学的主張を展開している。
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