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草原の黒太子スカールとの対決に瀕死の深手を負い、雌伏を余儀なくされたイシュトバーン。しかし、彼の野望と若い生命力はたちまち彼を新たな戦いに駆りたててゆく。一方、グイン千竜長率いるケイロニア軍は、国境地帯でユラニア軍と対峙するが、膠着状態の戦線は一向に進展をみせようとしない。だが、それは嵐の前の静けさだった……。第26弾。(※電子書籍版には口絵・挿絵が収録されておりません)
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Posted by ブクログ
イシュトヴァーンも魅力も実力も並外れてあるのだろうが、スカールやグインと並べると一段下がって見えてしまう。そのようなところが、イシュトヴァーン自身には耐えられない屈辱であるのだ。イシュトヴァーンについてだけ考えてみれば、読者の人物に対する評価と物語での人物の自己評価が近似するという、とても素晴らしい...続きを読む出来である。このしっくりとくる立ち位置が物語にのめり込ませるための良い装置になっている。栗本薫先生はキャラクター作りがとても上手だと思う(他の作品を読んだ事がないので、いい加減な評価かもしれないが…)。 リンダがナリスから距離を置かれて不安を抱くシーンがあるのだが、よくぞ書いたと言いたい。リンダは勿論イシュトヴァーンを愛しているのだが、許嫁同然だった社交界の至宝ナリスを心の底では手放したいとは思っていないのだろう。つまりキープしたいのだ。これは皆さんも良く分かる精神の働きだろう。自分の一番の恋人ではなくとも、周囲が羨むような相手と良い仲であれば、殊更にそれを手放したくはない。まして従兄という絆と自らの美貌から当然にナリスの寵はまず自分にこそ注がれるべきという、無意識の自信があったと思われる。それが肩透かしを受ける訳だ。これはリンダとしては、今後ナリスを意識してしまわざるを得ないのではないか。イシュトヴァーンへの恋にリンダはどこまで忠を尽くせるだろうか。ナリスにあたら花を手折られるのではないかと、興味が尽きませぬなぁ。 他方、グインが所属を伏せたケイロニア軍を率い、ユラニア領を転戦する様は、戦国もの歴史小説を髣髴とさせる。戦いの書き振りも躍動感を持たせながら、良いテンポで進み北方謙三先生ふうの爽快感があった。 さて、この巻とは全く関係ないが、こうなると栗本先生が亡くなられた後に有志が承継したグイン・サーガは果たしてこの質を保っているのか、まだまだ道は長いのだが気になってしまう…。 とりあえずミーハーなことを言うようだが、スカールは本当に渋く、かっこいい。そして他の方も感想に書いているがグイン・サーガは表紙、挿絵ともにどのアーティストも素晴らしいため、電子書籍版よりも断然文庫版をお勧めする。しかし、悲しいかな次巻に関して本屋を探し回っても現物が見つからないの…。 ハヤカワさん、文庫版もう一刷りして…。
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