ぶくまる – 書店員おすすめの漫画・本を紹介!

書店員が選んだ「本当に面白い漫画・本」をご紹介!

氷上のドラマがアツい! フィギュアスケート漫画6選

  • このエントリーをはてなブックマークに追加

figure_skate_comic

浅田真央さん、羽生結弦選手を筆頭に数々のスターを生み出してきた、日本のフィギュアスケート界。フィクションに目を移すと、2016年にTV放送されたアニメ『ユーリ!!! on ICE』が大ヒット。現在、『ユーリ!!! on ICE 劇場版:ICE ADOLESCENCE』が鋭意制作中で、その公開をファンが心待ちにしています。
もちろん漫画にも、フィギュアスケートの世界を描いた作品がいくつも存在します。そこに描かれているのは、華やかな氷上の世界と、競技に人生を賭ける男女の熱い青春! 今回は、その中から6作をピックアップ。ぶくまる書店員が、魅力を紹介します!

また、リンク先の電子書籍ストア ブックライブでは、新規入会者限定の50%OFFクーポンを差し上げています。気になった方はご利用ください。

『モーメント 永遠の一瞬』

モーメント 永遠の一瞬

『モーメント 永遠の一瞬』 1〜14巻 槇村さとる / 集英社

トップクラスの選手となっていく少女の、ドラマチック過ぎる半生

10代のころにフィギュアスケートに魅せられて、プロの漫画家になるとフィギュアを題材にした作品をいくつも描いてきた槇村さとる先生。その中の最新作が、2014年に連載がスタートし、現在も継続中の『モーメント 永遠の一瞬』です。

物語は、ソチオリンピックで華やかな活躍をする現在の北原雪を描くところからスタート。二人の男性、むっちゃん(中村睦月)とダイヤ(吉岡大也)が、スタンドから彼女の姿を見守ります。雪がトリプル・アクセルを跳ぶと、次のページでは時間がさかのぼって、10歳のころの姿に。この見事な導入から、雪の長い物語が描かれていくことになります。

フィギュアスケートの選手を目指して、母とともに札幌から上京した雪は、神南リンクの門を叩きます。そしてスクールを飛ばして、いきなりクラブ所属に。最初から高い技術と、未来への可能性に満ちた存在として描かれます。しかし、スクール生の女の子たちの反感を招き、学校でも自分の取材記事が新聞に掲載されたことをきっかけに、いじめに合うことに。そんな彼女の支えになったのが、同じ年の睦月と大也でした。

雪を有望視した神南クラブは、上級の専任コーチをつけることに。そうしてやって来たのが、「メダリストメーカー」と呼ばれた大関仁(おおぜき じん)でした。しかし、有能ですがクセのある人物で、その指導法に悩まされることに。やがて、とある事件が起こったことで、師弟関係は解消へと至るのでした。

自分を深く理解してくれる人間から敵視する人間、同年代の子どもから大人まで、さまざまな人間関係を通じて、オリンピックに出場できるようなトップクラスのスケーターへの道を歩んでいく雪。しかし、6巻の冒頭で彼女の身に決定的な出来事が……。槇村先生が作り出すアップダウンの激しいドラマに、どんどん引きこまれていきます。

本作の前に描かれた全1巻の『ヒロインの条件』も合わせてオススメ。こちらはかつて天才と呼ばれた女性コーチが、新たなる才能を見出す物語です。

『モーメント 永遠の一瞬』を試し読みする

『白のファルーカ』

白のファルーカ

完結『白のファルーカ』 全8巻 槇村さとる / 集英社

フィギュア+濃厚な人間ドラマのコンボに酔いしれるべし!

男女のペアによる競技「アイスダンス」を題材にした物語。1987年から1989年まで、別冊マーガレットにて連載されました。タイトルにある「ファルーカ」とは、フラメンコの曲種のひとつ。哀愁とともに男性的な力強さが特徴です。そのタイトルにたがわず、情熱的なストーリーが展開していきます。

主人公は、17歳のアイスダンス選手・秋吉樹里(あきよし じゅり)。10歳のときに両親を交通事故で失い、高級料亭を営む祖母とともに暮らしています。亡くなった両親はともにフラメンコの踊り手。大恋愛の末に駆け落ちし結ばれたという情熱的なカップルで、その血を受け継ぐ樹里もまた、明るく奔放な少女です。

樹里にはスケートを始めるきっかけとなった憧れの存在がいます。それは19歳にして世界第4位のフィギュアスケーター、松木恵(まつき けい)。しかし恵は、樹里も見つめる中、公式大会の演技で転倒し、大怪我を負ってしまうのでした。怪我から復帰はできましたが、以前のように高く飛べなくなってしまった恵はアイスダンスに転向。そして、樹里をパートナーに見初めることになります。しかし、樹里にとっては憧れていたことに腹が立つくらい、最悪な出会いに。さて、二人はどのようなペアに成長していくのか──というのが、本作です。

トップアスリートならではの傲慢さ、複雑な家庭環境に育った繊細さ、そして人間としての純粋さ。そんなものを合わせ持つ恵は、かなりアクの強いキャラクター。そんな彼の言動に腹を立てたり、きゅんとしたり、樹里の感情は大きく揺さぶられていくことに。ペアとしての絆だけでなく、恋愛感情も育っていき、フラメンコに象徴されるごとく情熱的なストーリーが展開していくことに。

さらに、スペイン人のフラメンコダンサーを母に持つスケーター・海堂恩(かいどう しのぶ)が、樹里と恵の間に割って入り、人間関係はさらに絡まっていきます。80年代らしい華やかさと力強さを持った作品で、アイスダンスの描写は、もちろん本格的。靴の種類から演技まで、シングルとの違いがよく分かります。

樹里たちを見守るコーチとして、同じくアイスダンスを題材にした『愛のアランフェス』の登場人物、筒美一(つつみ はじめ)とその妻の真紀子(まきこ)も登場。本作から『愛のアランフェス』に戻ると、また新鮮な感動があります。

『白のファルーカ』を試し読みする

『メダリスト』

メダリスト

『メダリスト』 1〜2巻 つるまいかだ / 講談社

スタートが遅かった女子小学生を、新米コーチがメダリストに育て上げる!?

月刊アフタヌーンで連載中の『メダリスト』。単行本はまだ2巻という段階ですが、ほとばしる熱気に注目が集まっています。

舞台は、フィギュア王国と言われる愛知・名古屋(愛知は安藤美姫さん、浅田真央さん、宇野昌磨さんら歴代の名選手を生み出した土地)。作者の地元でもあります。

26歳の司は、元フィギュア選手。現役時代は華々しい結果を残せず、フリーターをしながら、アイスショーのオーディションを受けては落ちる日々を過ごしていました。そんな彼が出会ったのが、いのりという小学5年生の少女。偶然の邂逅があった後、とあるクラブのアシスタントコーチとなった司は、母親に連れられ、そこを訪ねてきたいのりと再会します。

11歳というのは選手を目指してフィギュアを始めるには、ギリギリの年齢ということ。いのりは勉強や日常生活がダメダメなタイプで、さらに姉が過去にスケートに挫折していたため、母親は、クラブ側にきっぱり断られて、諦めさせようと思って連れてきたのでした。
しかし滑りを見てみると、基礎がしっかりと身についている上に、教えられたことがすぐに出来る飲み込みの良さも。そして、何よりも本人にやる気がありました。司はいのりの専任コーチになることを志願し、母親を説得。そこから二人の挑戦がスタートします。

司といのりは、どちらも周囲に認められないまま生きてきたタイプ。自信の支えとなる経験がなく、何事をやるにも過剰に自分を奮い立たせないといけません。そんな二人が手に手を取って努力していく姿がかっこよくて、目を離すことができなくなります。

そして、スポーツ漫画には欠かせないライバルキャラ。本作におけるそれは、いのりと同い年の天才少女・狼嵜光(かみさき ひかる)。今の段階では遥か先にいる光に、いのりはどのようにして追いついていくのか。今後の展開が楽しみです。

『メダリスト』を試し読みする

『キス&ネバークライ』

キス&ネバークライ

完結『キス&ネバークライ』 全11巻 小川彌生 / 講談社

アイスダンスのカップルの成長とサスペンス要素の出会い

『きみはペット』の小川彌生先生が描く、サスペンスタッチのフィギュアスケート漫画。フィギュアスケートの大会で、演技を終えた選手とコーチが採点を待つ席を「キス&クライ」と言いますが、それをもじったタイトルになっています。

主人公は、子ども時代をアメリカで過ごした黒城みちる。スポーツメーカーの社長を父に持つお嬢様です。ただ、今の父は母の再婚相手で、母とペアを組んでいたフィギュアスケーターだった実の父は、みちるが生まれてすぐ亡くなっていました。
母の再婚によって、幼いころから恵まれた環境でフィギュアスケートに打ち込んできたみちる。シングルスケーターとしての指導を受けている彼女ですが、夢は実の両親と同じアイスダンスを踊ることでした。

しかし、幸せだった日々は、とある出来事で急変することに。みちるが母とケンカしてプチ家出をした夜、みちるを指導していた四方田(よもた)コーチが何者かに殺されるという事件が起きます。どうやら、事件の秘密を知っているようなみちるですが、「誰にも言っちゃダメ……」と固く口を閉ざし、明るかった性格に影が差し始めるのでした。

それから6年後、18歳になったみちるは、シングルの選手としてシニアの国際大会にデビュー。元世界ジュニア女王ということで注目されますが、いきなり大怪我を負い、高いジャンプが跳べなくなってしまいます。そして、母に勧められてアイスダンスに転向し、日本で活動を再開することに。ここから彼女の運命が回り始めます。

カギとなるのは2人の男性。ひとりは、アメリカ時代からみちるに思いを寄せていた、春名礼音(はるな れおん)。現在はモダンバレエのダンサーで、日本でみちると再会することになります。もうひとりは、みちるのパートナーとなる四方田晶(よもた ひかる)。アメリカでみちるを指導していた四方田コーチの弟で、兄の死の真相を調べています。礼音が、みちる&晶ペアの振り付けを担当することになり、アイスダンスに打ち込むごとに、三角関係のドラマも燃え上がっていきます。

四方田コーチの死の真相と、その夜の記憶を失ってしまったみちるの謎というサスペンス要素を含みつつ、フィギュアに賭ける思いと、2 人の男性の狭間で揺れる恋が盛り上がっていくという、読みどころ満載の内容。10巻で物語は完結し、11巻はみちるたちの後日談が描かれます。

『キス&ネバークライ』を試し読みする

『新装版 ブリザードアクセル』

新装版 ブリザードアクセル

完結『新装版 ブリザードアクセル』 全6巻 鈴木央 / 講談社

不良少年が、天才的なフィギュアスケーターに急成長!?

少年漫画らしい熱さと派手さ、そしてユーモアにあふれたフィギュアスケート漫画。作者は『七つの大罪』で知られる鈴木央先生です。

中学1年生の北里吹雪(きたざと ふぶき)は、日々ケンカに明け暮れる不良少年です。なぜケンカをするのかというと、目立ちたいから。勉強やスポーツに輝かしい結果を残している3人の兄ばかりが両親の愛を受けて、平凡な末っ子の吹雪は目も合わせてもらえないという複雑な家庭環境が、彼をケンカに駆り立てているのでした。

そんな吹雪が出会ったのが、フィギュアスケートでした。全くの素人ながら、いきなり四回転半ジャンプを跳んだ吹雪は、着地は派手に失敗しつつも人々の拍手喝采を受けることに。初めて自分がほめられた感動のままに、吹雪はフィギュアスケーターへの道を歩き始めます。

やがて物語の舞台は、吹雪の生まれ故郷の福島から東京へ。黒塚コーチの勧めによって、日本トップレベルと言われる白帝FSC(フィギュアスケートクラブ)の特待生試験に挑戦することに。ここでも、四回転半ジャンプにつぐ三回転半ジャンプの連続技で、名門クラブのコーチ陣の度肝を抜くのでした(もちろん着地は失敗していますが)。

このように13歳でズブの素人だった吹雪が、隠し持っていた才能を開花させ、みるみる成長していくのが本作の面白さです。そしてなんといっても、吹雪の活躍を盛り上げる、ケレン味たっぷりの画面が魅力的! たとえば、シュトラウスの「ラデツキー行進曲」に合わせて滑った特待生試験では、吹雪の演技と、楽曲のモデルとなったラデツキー将軍が戦地で活躍する姿が重なり合って描かれることに。しかも吹雪によって、史実では老将軍だったラデツキーが、若く勇猛果敢な英雄へとイメージが変わっていくのです。

白帝FSCに入ってからは、吹雪とペアを組むことになるヒロイン・白原六花が登場。続いては、名古屋の名門クラブとの熱い交流戦がスタートし、ドラマはどんどん盛り上がることに。また、技の詳しい解説や少年漫画らしいギャグも満載で、あらゆる方向から読者を魅了してくれる作品です。

『新装版 ブリザードアクセル』を試し読みする

『アイスフォレスト』

アイスフォレスト

完結『アイスフォレスト』 全12巻  さいとうちほ / 小学館

アイスダンスの演技シーンがとにかくゴージャスで、引きこまれる!

宝塚歌劇団の大ファンであり、舞台をいくつも漫画化。アニメ『少女革命ウテナ』の原案とコミカライズでも知られるベテラン作家さいとうちほ先生による、フィギュアスケート漫画です。元フィギュア選手の都築奈加子さんと野上由樹絵さんが監修者として入り、ドラマティックなストーリーとともに、スケート選手のリアルな姿が描かれています。

主人公は、17歳のアイスダンサーの珠洲雪野(すず ゆきの)。かつてはシングルの選手で、14歳のときにはジュニア大会で優勝した経歴の持ち主ですが、怪我によってアイスダンスに転向。しかし、パートナーに恵まれず、思うように大会に出場できないまま、所属クラブが解散するという憂き目にあっていました。

そんな雪野の運命を変えたのが、ホテル経営を手掛ける煌河グループの御曹司・煌河一己(こうが いっき)との出会い。元フィギュアスケーターである一己は、雪野をバックアップし、パートナーとして、ロマン・ギルベールという19歳の青年を紹介します。カナダでアイスダンスの選手だったロマンは、婚約者であったパートナーと破局を迎え、日本に新たな活躍の場を求めたのでした。

雪野を優しくサポートする一己と、アイスダンスのパートナーとは二度と恋愛をしないというロマン。ふたりの見目麗しい男性に挟まれて、雪野のアイスダンサーとしての活動がスタートします。

演技の中に、男女の放つ色気が求められるアイスダンス。17歳の雪野は一己とロマンとの関係の中で、次第に大人の女性としての経験を積んでいくことに。深みのある男女関係が描かれるとともに、一己が煌河グループの権力争いに巻き込まれていくという展開も。フィギュアスケートというスポーツの経済的な一面まで踏み込んだ、大人の作品です。

そんな中で本作の一番の魅力は、アイスダンスの演技の描写でしょう。巻が進むごとに描写が華麗になっていき、最終巻で雪野たちが踊る「トリスタンとイゾルデ」は宇宙規模の壮大さ! このゴージャスな世界観に、ぜひ引きこまれてみてください。

『アイスフォレスト』を試し読みする

おわりに

一流選手になれるのはほんのわずかであるフィギュアスケートの選手たち。その喜びや苦悩がたっぷり味わえるのがフィクションの世界です。いろいろな作家が、それぞれの視点で、それぞれの時代に合わせて描いたフィギュアスケート漫画。どの作品もロマンと熱気に溢れていますし、フィギュアを通して、音楽やバレエなど芸術への理解も進みそう。ひと味違ったスポーツ漫画を求めている人にも、強くオススメします!

関連ページ

バレエ好き書店員厳選!おすすめのバレエ漫画6選【華麗で熱い!】

  • このエントリーをはてなブックマークに追加
  • LINEで送る

こちらもおすすめ

『異世界おじさん』異世界モノの逆をひた走る!現実ファンタジー?の魅力を徹底解説!
『異世界おじさん』異世界モノの逆をひた走る!現実ファンタジー?の魅力を徹底解説!
『アンデッドアンラック』の面白さを徹底解剖! 人気急上昇の理由は?
【世界史漫画地図つき】面白くて勉強にもなる世界史漫画おすすめ16選
お寺の知られざる日常&お坊さんの苦労を知る「坊主マンガ」5選
心が震えるおすすめの音楽漫画10選【クラシック・ジャズ・合唱・三味線まで】
ダンジョン飯
ファンタジーなのに飯テロな『ダンジョン飯』を徹底解説!【ネタバレ注意!】