漫画で財テク!お金・ビジネスにまつわるオススメの経済漫画11選
生きていく上で、切っても切れないのがお金。長く低金利が続く現代、ただ銀行に預けるのではない財テクが、私達日本人にとって重要になっていることは、言うまでもありません。今回は、経済やお金の仕組みを知るために最適な11作を紹介。また、お金や会社の仕組み、仕事論など、生きていく上で大切な情報が、どの作品にも詰まっています!
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目次
『インベスターZ』
完結『インベスターZ』 全21巻 三田紀房 / コルク
【今の日本経済について広く知りたい人にオススメ】超進学校に通う中学生が、日本経済のトップランナー達と出会う
経済漫画といえば、まずはこの作品。聡明な中学1年生の主人公を通して経済や金融に関するあらゆることを学べます。
北海道・札幌にある日本有数の名門校・道塾。中高一貫の男子校で、道内だけでなく全国から優秀な生徒が集います。
この学校には特殊なシステムがありました。創立者である明治時代の豪商・藤田金七によって定められた決まりで、入学金も授業料もタダ。学校の運営は資産運用によってまかなわれるというものです。その役目を担うのが、中1から高3までひとりずつ、学年ごとにトップ入学した学生6人によって構成される投資部。他の学生はもちろん、自分の親にまで口外無用の秘密の部活です。
入学式を終えた主人公・財前孝史は、図書室の奥の隠し部屋にある投資部の部室へいざなわれ、新メンバーとして迎え入れられることに。学校の総資産約3000億円を10代の少年だけで運用していく投資部で、日本経済に関するあらゆることを学んでいきます。
まず、財前が疑問に思ったのは、お金はどのようにして生まれたか、ということでした。それを彼に教えたのは、投資部主将の神代圭介をはじめとする優秀な先輩達、そして130年前の初代主将が書き残した投資についての格言集です。ノートを開いてまず書いてあったのは、
「金ハ人ナリ 人ハ金ナリ」
という言葉。お金は物流を容易くして、人と人との間に信頼関係を生み出し、人類はそれによってコミュニケーション力を高めていった。つまり、お金が生まれたからこそ文明は育っていったという、壮大な話が語られます。
お金とは何かという概論からスタートし、経済の仕組みや成功企業の秘密について学んでいく財前。本作の凄いところは、ストーリーに絡んで実在の社長や実業家が登場することです。TV通販でおなじみのジャパネットたかたの高田明社長(連載当時)、ZOZOTOWNを運営する株式会社スタートトゥデイ(現在は株式会社ZOZO)の前澤友作社長、そしてホリエモンこと堀江貴文。日本経済のトップランナーの言葉がまとめて読めて、優れたビジネス書にも匹敵する内容となっています。
物語が進むと、財前のライバルとして、創業者の直系の子孫である藤田慎司が登場。幼い頃から投資を続け、高校2年生にして自ら作り上げた資産は1億円を越える彼を相手に、財前は投資三番勝負をすることに。また藤田の妹・美雪も財前と大きく関わり、本作のヒロインとなっていきます。
『マンガで身につく 多動力』
完結『マンガで身につく 多動力』 全1巻 堀江貴文・室井博文・三輪亮介 / 幻冬舎コミックス
【型にはまらないビジネスマンを目指す人にオススメ】SF仕立ての奇抜なストーリーで「多動力」を理解する
ベストセラーとなった、ホリエモンこと堀江貴文さんのビジネス書『多動力』を漫画化した作品。
タイトルの「多動力」とは、あらゆることに興味を持ち、深く知るために積極的に行動する力のこと。IT風に言えばマルチタスクの持ち主ということです。インターネットやスマホが普及し、あらゆる産業の「タテの壁」がなくなっていく現代社会を生きるためには、その力が必要だというのが、堀江さんのメッセージです。
原著とは違い、ストーリー仕立てになっているのが漫画版の特徴です。主人公の鈴木は、若手サラリーマン。料理人になるという夢を持ったこともありましたが、一般企業に就職するという現実的な道を選びます。
鈴木の勤め先は、メールした後は必ず確認の電話をしろ、と怒る課長がいるような旧態依然とした会社です。そんな中で異彩を放っているのが、30歳の堀口靖史。変わり者ですが、営業成績はナンバーワン。しかも副業で会社の給料の3倍以上を稼いでいるといいます。平凡な鈴木にとっては近寄りがたい人間でした。
そんな二人が会社のエレベーターに乗り合わせた時、異変が起こります。地場の歪みが生じて、ビルごとどこかのジャングルに飛ばされてしまったのです。パニックに陥る社員達の中で、わくわくしているのが堀口でした。
そんな状況にも関わらず、必ず日本政府が助けに来るから通常業務を続けるように、と社長に命令されると、粛々と従う社員達。鈴木はそれに違和感を覚えて、たった一人サバイバルに備える堀口に従います。
ビジネス書の漫画化としては奇抜な展開に驚かされますが、本作のキモは、異常事態の中で堀口が鈴木に投げかけるさまざまな格言です。
「おかしなやつとは距離を取れ」
「小利口はバカには勝てない」
「恥をかいた分だけ自由になれる」
「飽きっぽい人ほど成長する」
などなど、堀口の言葉は古い常識に囚われないものばかり。それらは全て、「多動力」に繋がる言葉でもあります。
各エピソードに出てきた堀口の名言は、文章によってより深く掘り下げられ、読者の頭にたたき込まれます。鈴木が堀口との出会いで「多動力」に開眼したように、本作を読めばあなたも、今までの自分から脱却できるかもしれません。
『キミのお金はどこに消えるのか』
『キミのお金はどこに消えるのか』 第1巻 井上純一 / KADOKAWA / 角川書店
【ゼロから経済を学びたい人にオススメ】中国人妻の素朴な疑問を通して、経済の基礎を知る
一般的に当たり前だと言われていることが、実は経済学的には誤りであることが少なくないという事実が、よく分かります。
井上純一先生は、40歳オタク男と20代の中国人妻との楽しい夫婦生活を描いた『中国嫁日記』で有名。本作にも、作者自身と中国人妻の月(ユエ)さんが登場します。
始まりは、月さんの何気ないひと言でした。円安で中国への送金が高くついてしまったと嘆く作者に、
「減た分のワタシたちお金、誰が取りマシタか?」
と尋ねたのです。実はこの質問に厳密に答えるのは、専門家でも難しいとのこと。「これはマンガになる!!」と井上先生は閃き、連載が始まったのでした。
まず取り上げたのは、日本経済の信用度について。外国で大事件が起こって世界情勢が不安になると、どういうわけか外国人に買われる「円」。結果的に円高になるのですが、それは世界の人々が日本経済を信じているからだと、作者は月さんに教えます。「日本政府の財政は世界がうらやむ程健全経営」なのです。
「日本が危ないかどうかは!! 国債の長期利回りと物価を見よ!!!」
というのが、第1回のポイントとなります。難しい言い回しで、最初は頭に入ってきませんが、月さんに向けての丁寧な説明を追いかけていくと、この言葉の意味が分かってきます。
第2回は、資本家と労働者の格差の話。働いても働いても楽にならない労働者と、どんどん金持ちになっていく資本家。そこにはどんな関係があるのか、マルクスの「資本論」から始めて、その間違いを指摘し、近年、経済の不平等についての画期的な著書『21世紀の資本』を発表したトマ・ピケティへと話を進めて、格差拡大の仕組みを解き明かしていきます。
各エピソードの終わりには、企画協力者アル・シャード先生による「ライナーノーツ」が付き、本編を補足。また、監修者として明治大学准教授・飯田泰之先生が加わり、セリフの細部まで、正確性のチェックがなされているということ。内容の信頼性の高さは折り紙付きです。
そして何よりも、シンプルだからこそ鋭い月さんの疑問と質問。あまりに基本的過ぎて、分かったふりをしてしまいそうなことも、彼女がズバッと聞いてくれるので、基礎理解が高まります。
『銀のアンカー』
完結『銀のアンカー』 全8巻 三田紀房・関達也 / 集英社
【就活中、もしくは就活を控えている学生にオススメ】あらゆる就活のノウハウがここに。就活生必読漫画
経済漫画『インベスターZ』・受験漫画『ドラゴン桜』の三田紀房先生と、関達也先生との共著で、就活について、深く掘り下げています。
大学3年生の北沢千夏と田中雄一郎が出会ったのは、アメリカから帰国したばかりの白川義彦。アメリカ経済界で“草刈機”と呼ばれたカリスマ的なヘッドハンターです。2人が参加した就職セミナーで、講師を鋭く論破してみせた白川。直接話を聞こうと積極的に動いた千夏と田中は白川に気に入られ、彼の指導のもとで就活を進めていくことになります。
白川のアドバイスによって、自分には手が届かないと思っていたTV局のアナウンサー試験に挑戦する千夏。自らの長所や特性を明確に理解するところから、就活をスタートさせる田中。2人の就活のさまざまな局面が具体的に描かれていきます。
短い言葉でビシッと就活の本質を突く白川。転職してのキャリアアップに関しては
「日本の今の社会にそんな階段はない!」
と一喝。
「職に就くとは乗り換え不可能なエレベーターに乗るようなもの」
と、脇道に逸れることを許さない日本社会の厳しさを学生に教えます。
その一方で、「受けたいと思ったところを受け」て、自分の気持ちに正直に行動することが勝ちに繋がると、優しい言葉で学生を後押しすることも。いずれの言葉にも説得力があります。
巻が進むと、白川のもとに集まる学生が増え、それぞれの道を模索することに。OB訪問の極意、エントリーシートの書き方、ベンチャー企業の現実、そして起業の仕方などなど実用的な情報がいっぱいで、極めて実用的な作品となっています。
『マンガ 株で調子に乗って失敗しました。』
『マンガ 株で調子に乗って失敗しました。』 第1巻 深蔵 / イーストプレス
【株を始めようとしている人にオススメ】作者の失敗談を通して、株の面白さと怖さを知る
作者の失敗談を中心とした、身につまされる作品です。失った額は最大で500万円!かなりの高額で、「僕の失敗談が何かのお役に立てば嬉しいです」と作者は語ります。
7年務めた会社を辞めて、フリーのイラストレーターになった作者。不安定になった収入を補うために、退職金も入ったことだしと株の売買を始めることに。最初は20万円からスタートします。
しかし、買った株が下がるたびに貯金を投入し、1ヵ月後には含み損が100万円を越えてしまいました。株主優待によって、牛丼のタダ券をもらったりクオカードをもらったりといいこともあったのですが、100万円を稼ぐ大変さを思えば、心は重くなります。それでも株を諦めない作者は、損をしないためのマイルールを作って、再チャレンジ。すると今度は大きく値が上がって、巨額の利益を得ることに。値上がったり値下がったりするたびに、作者は一喜一憂するのですが、その姿が行き当たりばったりに感じられ、読者ながらに「大丈夫?」と心配になります。
現物取引よりも大きな額を一度に動かせる信用取引に手を出していく作者。そして、買った株の下落によって、ついに貯金のほぼ全てを失うことに。500万円という数字には、読んでいるこちらの背筋も凍りました。
それでも、株によっていろいろな企業に関心が持て、社会への視野が広がったと前向きに考える作者。そう簡単には株をやめません。
また、「NISA(ニーサ)」「単元株」「信用取引と現物取引」などなど、各回に出てきた専門用語を、コラムで詳しく解説。作中では、具体的な取引の方法も描かれていて、ネットを通しての株の売買が手に取るように分かります。本作を読んで株を始めるか、それともやめておくかは、あなた次第です。
『マネーの拳』
完結『マネーの拳』 全12巻 三田紀房 / 小学館
【起業を考えている方、すでに経営者である方にオススメ】企業経営の困難や成功の喜びがドラマティックに描かれる
本作も三田紀房先生の作品。主人公・花岡ケンはボクシングの元世界チャンピオン。実業の世界でもチャンピオンになるという意気込みで、企業経営に乗り出していきます。
ケンが最初に手掛けたのは居酒屋経営。しかし軌道に乗せることができず苦しんでいた時に出会ったのが、成功を収めた実業家・塚原為ノ介でした。塚原に経営者としての才能を認められたケンは1億円の出資を受け、再起を図ります。ただ、出資に際して塚原はある条件を出します。それはホームレスを10人雇う、ということ。ケンはその条件を守り、Tシャツ専門のアパレルメーカーを打ち立てていきます。
ボクシングの世界で世界チャンピオンまで登りつめたケンは、存在感のある主人公です。企業家に最も大切な経営のセンスとカンを持ち、決断も早い。その分、ワンマンになりがちで、敵を作りやすいタイプでもあります。そんな彼の最大の敵となっていくのが、大手商社のエリート社員・井川泰子。かなり強引かつ卑怯な手を使って、ケンと彼の会社を潰しにかかります。
中小企業が大企業の圧力に抵抗し、独自の道を切り開いて成功を収めていくのは、経済漫画の王道。一つ困難を乗り越えたら次の困難が待つ、ハラハラドキドキ展開は読み応えがあります。そして、三田先生の作品らしく、経営に関する格言が数多く登場します。
ケンにも名セリフは多いのですが、やはり成功者・塚原の言葉は重みが違います。
「楽して儲けるのが本当の商売だ」
「金とは水だ。貯めたら腐敗する。なんの価値もなくなるのだ」
などなど、経営や経済の本質をズバッと突いてきます。
巻が進むと、ケンは中小企業としての成功に飽き足らず、株式上場へ。すると創業メンバーとの軋轢が生まれ、会社経営は新たなフェーズに突入します。起業から事業拡大まで、あらゆるノウハウが詰まった作品です。
『タカネの花』
完結『タカネの花』 全2巻 新久千映・金森重樹 / コアミックス
【不動産投資について知りたい人・財テクに関心がある人にオススメ】元手がないなら不動産融資が最適!? 財テクを考える人は必読
不動産投資をテーマに、年収500万円の20代女性がマンションのオーナーになるまでを描いた作品。
主人公・安倍依子は26歳の看護師。勤務先は都立病院なので、公務員ということになります。年収も職種も安定していると言えますが、弟の保証人になってしまったことで、2億4千万もの借金を抱えてしまいました。
自殺すら考えた依子の前に現れたのが、ビジネスプロデューサーの幸田寛一郎・36歳。依子の年収と職種だったら、2億4千万の借金を3年で返済できると豪語し、マンションを購入して賃貸に回す不動産投資を勧めます。しかも、ひと部屋買うのではなく、マンション1棟全てを買えと、彼は言うのでした。
果たして、20代の女性にそんなことができるのか? 最初は不信感を持っていた依子ですが、幸田の仕事ぶりを間近で見ているうちに彼を信頼することに。2巻に入ると、いよいよマンション購入へと本格的に動き出します。幸田が依子にオススメしたマンションは、意外な土地に建っている意外な建物で驚かされますが、そこにはしっかりした理由がありました。
なぜ、依子の借金返済に不動産投資が最適なのか?
「金の無いところから金を生み出す。その唯一の方法が不動産融資」
だからだと、幸田は説明します。元手がいらない財テク。そんなことが本当に出来るのか、本作を読んで確認してみてください。
また、本作にはラブコメ要素も。仕事ができる幸田ですが、女性への接し方を知らず、彼女いない歴36年なのでした。依子が彼に恋愛指南することが、不動産投資へのアドバイスの対価となるのです。
全2巻とコンパクトながら、不動産投資のメリットとデメリットをしっかり教えてくれる作品。監修の金森重樹先生は、『1年で10億つくる! 不動産投資の破壊的成功法』などの著作を持つプロ。そのノウハウを、まずは本書で学んでみてください。
『ザ・ファンドマネージャー』
完結『ザ・ファンドマネージャー』 全3巻 周良貨・岩田やすてる / 集英社
【投資信託について1から知りたい人にオススメ】元手がないなら不動産融資が最適!? 財テクを考える人は必読
株式や債券を組み合わせた金融商品を買うことによって、個人でもリスクを分散して投資できる投資信託。そこで運用する株を選ぶ投資信託会社のファンドマネージャーの活躍を描いた作品。
主人公は、鋭い分析力を持ったカリスマ的ファンドマネージャー・沢村竜之介と、新人の吉永亜里砂のコンビ。ファンドマネージャーというと、企業のためというよりも、儲けのためにシビアに判断を下す存在という印象があるかもしれませんが、沢村はその逆を行くキャラクターです。
社長と直接話をするために社長のもとに足繁く通い、調査対象の会社の商品を自ら体験したり、地道な調査で企業の“人柄”を判断するタイプ。「数字のプロじゃなく人間のプロ」になることが、ファンドマネージャーとしての目標だと語ります。そんな沢村の活躍が亜里砂の目を通して語られ、分かりやすいストーリーになっています。
ある日、高校の同窓会に出席した沢村。そこでのシンゴ、ヨシという旧友との再会によって、物語は大きく動き出すことに。IT企業の社長であるヨシは、シンゴの務めるTV局の買収に動き出したのです。そして、ヨシの背後には拝金主義のファンドマネージャー・鮫島の存在が。本作が連載されたのは2005年から2006年。ライブドアのフジテレビ買収劇や、村上ファンドという、当時世間を騒がせていたニュースが物語に取り入れられているというわけです。
時流に流されることなく、企業の努力や誠実さと正面から向き合おうと心がける沢村。その清々しい態度を通して、金儲けだけではない、企業への投資することの意義を教えられます。
『銭』
完結『銭』 全7巻 鈴木みそ / KADOKAWA / エンターブレイン
【世の中のお金の仕組みを知りたい方にオススメ】漫画、ゲーム、同人誌など、エンタメの現場のお金の仕組みが分かる
霊体となった男の子のチョッキンと女の子のジェニーがさまざまな業界の現場に入り込み、経費や給料や利益がいくらくらいなのか知っていく作品です。
最初に描かれるのは2人の出会い。交通事故にあったチョッキンは、手術中にジェニーから話しかけられます。気づくと自分も霊体に。そこで話題となったのは、命の値段=「逸失利益」でした。その人がもし事故や病気などで死なずに、平均寿命まで生きていたら、いくら稼いだか試算するのが「逸失利益」。今まさに生死の瀬戸際にいるチョッキンの金額を、ジェニーは計算していきます。
お金について興味を持ったチョッキンは、霊体のままジェニーとともに手術室を出て、いろいろな職場で働く人のもとへ。各業界のお金の仕組みを知っていきます。
最初は漫画雑誌作りの現場、次はアニメの現場、2巻になるとゲーセンの現場、同人誌の現場と、いわゆるオタク系エンタメのネタを多く取り上げているのが、本作の特徴です。特に同人誌に関しては税金対策にまで踏み込み、8回にわたって詳細に描かれることに。同人をやっている人には有益な情報が詰まっています。また、4巻では華やかなイメージのある声優業界の内実にも切り込んでいきます。
各エピソードの登場人物が繋がって、全巻で一つの大きな話になっているのが特徴。ストーリー漫画としても読み応えがあります。
『M.I.Q.』
完結『M.I.Q.』 全3巻 マスヤマコム・浅井信悟・冨田かおり / 講談社
【これから日本で生きていく若者にオススメ】現代日本で、若者はどうお金と付き合うべきかを考える
破天荒な教師が、授業の一環で高校生に株式投資のノウハウを授けるというストーリー。
主人公・三浦アキラは高校2年生。新学期となり、情報の授業のために新たな教師が赴任してきました。サングラス、バンダナ、ロン毛という派手なルックスのその教師の名は、黒場新太(クロバシンタ)。驚かされたのは、黒場が持参した2つのアタッシュケースです。アタッシュケースを開けると1万円札がびっしりと入って、生徒達は思わず息を飲みます。そこに畳みかけるように、黒場は「お前たち若い奴らに金について教えに来た」と不敵に笑うのでした。
黒場の最初の授業は、100万円を1ヵ月で倍にする方法を考えろ、というもの。宝くじ、競馬、貯金などいろいろな答えが生徒から飛び出しますが、全部ダメ。では何が正解なのか? その一つが「株」でした。
本作が連載されたのは、2004年から2005年にかけて。株の売買の手数料が自由化され、ネット証券会社が普及して、誰もが手軽にデイトレードできるようになった時期と重なります。黒場の手ほどきによって、実際のネット証券口座を使い、売買を体験していくアキラ達。高校生にも分かりやすい解説で、売り買いのコツが語られていきます。
3巻に入ると、今度は起業がテーマ。アキラ達が代官山にあるカフェで働き始め、傾きかけていた経営を立て直していくという展開になり、別の角度からお金について考えていくことになります。
タイトルの『M.I.Q.』 とは、「マネーのI.Q」という意味。これからの日本を生きていくためには、それを高める必要があるというのが、黒場のメッセージです。本作が描かれてから10年以上経った今、その実感はさらに大きくなっているように思います。
『カネが泣いている』
完結『カネが泣いている』 全3巻 国友やすゆき / 講談社
【世の中のナマのお金事情を知りたい人にオススメ】消費者金融のキツい業務に、現代のお金事情を見る
主人公は、消費者金融ハッピーサポート・三本橋駅前支店の支店長となった高木誠。業績が悪いこの店を建て直すよう、上司から厳命を受けての赴任でした。
彼が最初に着手したのは、貸し付け金の回収業務。連載当時のデータですが、消費者金融では、支払期日に返済しない客が2割もいるということ。1万人の顧客がいる場合、その数は2千人。その一人ひとりに電話をかけるので、社員一人当たりの担当数は500近くなるということ。大変な仕事です。
その時、イライラするあまり客に乱暴な口を叩いた部下を、高木は叱責します。
「我々は金を貸してやってるんじゃない!!」
「金を借りてもらって利子をいただいて生活してるんだ!!」
「それが金貸しだ!」
そんな金貸しとしての哲学が高木にはあるのです。
貸し付けや回収のノルマはキツく、業績は常に上司に監視されていて、問題があるとすぐに電話でどなられる支店長は、ストレスの溜まる中間管理職。しかも、元支店長から降格させられた部下が高木の足を引っ張り、客には罵声を浴びせられたり、バケツの水をかけられたりすることも。しかし、どんなことがあっても高木は感情的にならず、金融業のルールをしっかり守って仕事をしていきます。その実直さが本作の大きな救いです。
全体的に重厚なムードの作品。それゆえにお金の貸し借りをすることの重みが伝わってきます。
終わりに
お金が絡むと見えてくるのが、人間の本質。経済・金融をテーマにした漫画は、より生々しい人間の姿が描かれた作品でもあります。今回紹介した作品を読んで感じたのは、理性の大切さでした。世間の常識や他人の意見に惑わされず、自らの気持ちに正直になること。情報収集を怠らず、理詰めの判断を素早く下すこと。それができるようになるのは大変ですが、お金と付き合う上では忘れてはならないことだと思いました。