【ネタバレ注意】古今東西の英雄集結 相関図&年表で『ドリフターズ』の世界観を一発理解!【震えて読め】
関ヶ原の英雄に天下を統一した戦国大名、そして伝説的な弓の名手……。世界各地、各時代の実在の英雄たちが群雄割拠する「ドリフターズ」は、歴史好き垂涎の“ずるい”漫画です。
歴史を勉強していなくてもはちゃめちゃに楽しめる本作。しかし、あえて断言しよう。登場人物にまつわる歴史的なエピソードや人となりを知るだけで、面白さは何倍、何十倍にもなると。
そこで今回は、登場人物の紹介を中心に本作を解説。相関図や年表を使って視覚的に解説しますので、「歴史なんて……」という人もご安心ください!
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※当記事に記載の内容は全て「ぶくまる編集部調べ」です。また、当記事にはネタバレを含みます。
目次
- 『ドリフターズ』あらすじ
- 登場人物紹介
- 〈漂流者(ドリフターズ)〉
- 島津豊久…廃城組のリーダー、通称“妖怪首置いてけ”
- 織田信長…みんな大好き“第六天魔王”
- 那須与一…「扇の的」で知られる弓の名手
- 安倍晴明…十月機関を束ねる陰陽師
- ハンニバル・バルカ…ナポレオンが認めた「ローマ最大の敵」
- スキピオ・アフリカヌス…ハンニバルの好敵手
- ブッチ・キャシディ&ザ・サンダンス・キッド…今日を生きる強盗団
- 菅野直…猪突猛進七生報国のデストロイヤー
- 山口多聞…グ=ビンネンとの交渉のキーパーソン
- サン・ジェルミ伯…キレ者のオカマ伯爵
- 〈廃棄物・廃棄者(エンズ)〉
- 黒王(こくおう)
- 土方歳三
- ジャンヌ・ダルク
- ジルドレ
- アナスタシア
- ラスプーチン
- 明智光秀
- 〈その他〉
- 九郎判官義経
- 紫
- E.A.S.Y(イーズィー)
- オルミーヌ(セム)
- 人物の関わりを年表でチェック!
- 一目でわかるドリフvsエンズの攻防戦
- 終わりに
『ドリフターズ』あらすじ
1600年の関ヶ原の戦い。敗色濃厚な雰囲気の中、敵陣にがむしゃらに突っ込んでいった島津豊久は、奇妙な通路を通って「異世界」に飛ばされます。そこで出会ったのは、すでに死んでいるはずの織田信長と那須与一。時代を超えて、次々に集結する彼ら「ドリフターズ」と、世界廃滅を企む「エンズ」との大戦争が始まります。
『ドリフターズ』 1~6巻 平野耕太 / 少年画報社
登場人物紹介
まずは物語の鍵を握る主要キャラクターたちを、「ドリフターズ」「エンズ」「その他」に分けてチェック。歴史上のエピソードも補足しながらご紹介しますので、歴史の勉強にもお役立てください!
〈漂流者(ドリフターズ)〉
「どこか」の世界から飛ばされてきた歴史上の偉人。エンズに比べて自我があり、生前の世界での人格を保っています。
島津豊久…廃城組のリーダー、通称“妖怪首置いてけ”
【史実のプロフィール】
現在の鹿児島県にあたる薩摩藩を拠点とした、島津家の戦国武将。関ヶ原の戦いで敵に囲まれ孤立した島津軍が、前方の敵を突破して退却した「島津の退き口」の立役者。
【作中でのキャラクター】
30歳。圧倒的なカリスマ性を見込んだ織田信長により、豊久・信長・与一の通称「廃城組」の首領となります。歴史に名を残す薩摩隼人ぶりは作品世界でも健在。常に大将首を狙うことから、“妖怪首置いてけ”と呼ばれることも。
空気を読まない行動で度々周囲を驚かせますが、それこそが彼を異世界に飛ばした謎の男・紫の意図なのかもしれません。
【知っておきたい薩摩語】
「捨てがまり」…死ぬまで戦うこと。関ヶ原の戦いで敗軍についた島津藩が、死ぬまで戦った壮絶な捨てがまり戦法が有名です。
使用例)「命捨てがまるは今ぞ!」
織田信長…みんな大好き“第六天魔王”
【史実のプロフィール】
日本人なら誰もが知る戦国大名。日本三大奇襲の一つ「桶狭間の戦い」、大量の火縄銃を使用して寡兵で今川軍を退けた「長篠の戦い」などで有名です。武田信玄の挑発的な手紙に対して「第六天魔王」と署名した返事を送ったとされることから、「第六天魔王」の名でも知られています。
【作中でのキャラクター】
長髪に隻眼の五十路で、ドリフターズチームの戦術家。
自身の経験をもとに、ドワーフなどを従えて大量の鉄砲を作り、黒王軍に立ち向かいます。趣味は焼き打ちとか皆殺しとか。
那須与一…「扇の的」で知られる弓の名手
【史実のプロフィール】
源氏に仕えた平安時代末期の武将。「与一」とは、十あまる一、つまり十一男の意味です。弓の名手で、『平家物語』に描かれた「扇の的」を射抜く逸話が有名。
【作中でのキャラクター】
19歳。片目かくれのポニーテールで、一見女性かと見紛うような美男子。しかし彼に言わせれば、11人の兄弟の中では一番のブサイク。
エルフを中心とした弓矢部隊を率い、時々言葉の後ろに「ゲンジバンザイ」とつけるよう強制します。ドリフターズとエンズの中間に立つ義経とは、過去に因縁があるようです。
安倍晴明…十月機関を束ねる陰陽師
日本史上で最も有名な陰陽師。作中ではドリフターズを監視し、集め、エンズと戦わせる魔導結社「十月機関」を統率しています。腰をクイッとさせる艶かしいポージングがクセ?
ハンニバル・バルカ…ナポレオンが認めた「ローマ最大の敵」
古代カルタゴの将軍。「アルプス越え」「カンナエの戦い」など奇策を弄してローマに挑んだ稀代の戦術家。
黒王軍の襲撃によってスキピオと離れたことで痴呆のような状態になりますが、時々正気に返って信長にひらめきを与えます。ヒゲで歴戦のナイスシルバー。
スキピオ・アフリカヌス…ハンニバルの好敵手
共和政ローマ期の軍人、政治家。「ザマの戦い」でハンニバルを破り、第二次ポエニ戦争を終結させました。
ハンニバルとともに行動していましたが、離散後は菅野直と合流。その頭脳で菅野を山岳森林地域の王に導きます。
ブッチ・キャシディ&ザ・サンダンス・キッド…今日を生きる強盗団
アメリカで結成された強盗団「ブッチ・キャシディのワイルドバンチ」メンバー。アメリカ映画「ワイルドバンチ」「明日に向って撃て!」で有名に。
現状では十月機関の指示に従い、銃火器・人物の運搬や、連絡係となって動いている二人。これから大いに活躍するはず!?
菅野直…猪突猛進七生報国のデストロイヤー
太平洋戦争において、“撃墜王”の異名をとった海軍軍人。飛行学生時代に練習機を何機も壊したことから、「菅野デストロイヤー」と呼ばれたとか。
不時着した先の山岳森林地域で犬族、猫族を従えてやりたい放題。その後、スキピオと何人かの犬族、猫族とともに山口多聞と合流します。口癖は「バカヤロウコノヤロウ」。
山口多聞…グ=ビンネンとの交渉のキーパーソン
大日本帝国海軍軍人。日中戦争時に、蒋介石政権を壊滅させるために強行策をとったため、大きな犠牲を出してパイロットから「人殺し多聞丸」と呼ばれました。
ともに作中世界に飛ばされた航空母艦「飛龍」を狙うグ=ビンネン連合水軍と共闘している様子。菅野直を呼び寄せた意図とは……!?
サン・ジェルミ伯…キレ者のオカマ伯爵
18世紀のヨーロッパを中心に活躍。歴史上では「サンジェルマン伯爵」と呼ばれることが多いようです。不老不死など数々の伝説を持ち、一説にはタイムトラベラーともいわれる特異な人物。
オルテ帝国の1/4を所有する巨大貴族で、年齢不詳のオカマ。しかし、オルテの劣勢を悟るや否や自らを「売国奴」と称して廃城組に接近し、クーデターを提案します。頭の回転が早く、信長と悪巧みをすることもしばしば。驚くほどの教養を持つ知識人ですが、彼(彼女?)ですら黒王の正体はつかめていない様子。
余談ですが、オルテ帝国を築いたドリフターズとして、アドルフ・ヒトラーが登場しています。連載初期には黒王の正体として予想していた方もいるかもしれませんね、わかります。しかし、巻が進むうちに「国父」として名前が挙がったことと、平野先生が「前のマンガとかぶる」と言っていることから、ヒトラーが具体的に登場し、暗躍する可能性は低め。
前のマンガとどうかぶるのか気になる人もならない人も、平野先生の前作『HELLSING』(少年画報社)を絶対にチェック! 約束だぞ!
〈廃棄物・廃棄者(エンズ)〉
ドリフターズ同様「どこか」の世界から飛ばされてきた者のうち、人ならざる悪しき者。ひたすらこの世を憎み、世界廃滅を目論んでいます。世界を恨むのも納得(!?)の、歴史上の出来事とともに見ていきましょう。
黒王(こくおう)
エンズの親玉。長いマントに身を包み、正体は不明。
全てを憎み、殺戮し、破壊しようとする一方、癒しの力や命あるものを無尽蔵に増やす力を持っています。異形の化物たちを増やし、癒し、共通言語や統一宗教を作り、農業を始めさせて文明化を企んでいるようです。
その能力から、正体はイエス・キリストの可能性が考えられますが、それにしてはあまりにも未来の戦術や武器に通じすぎています。うーん、ワクワクですね。
土方歳三
泣く子も黙る新撰組鬼の副長。旧政府軍として最後まで戦いぬくも、箱館五稜郭の防衛戦中に亡くなります。
新撰組メンバーを霧のように出現させ、攻撃させる能力を持ちます。オルテ攻防戦にて豊久と交戦した際、豊久が新政府軍=新撰組の敵である薩摩藩サイドの人間と見抜き、激しい憎悪を燃やします。しかし、真正面からぶつかってくる豊久にサムライの魂を感じ、一旦引き下がった後はライバルとして接するように。
ジャンヌ・ダルク
イングランドとの百年戦争において、神託を受けてフランスを勝利に導いた聖女。しかし、魔女として異端審問にかけられ、火あぶりの刑に処せされます。
火あぶりで命を落とした恨みからか、攻撃には炎が使われます。豊久と交戦して敗北しますが、「女性の首は取らない」という豊久の態度を屈辱に感じ、恨むとともにリベンジの機会を狙っています。
ジルドレ
フランスの貴族・軍人。オルレアン包囲戦でジャンヌ・ダルクに協力し、戦争の終結に貢献しました。しかし、ジャンヌが捕らえられたことで心が荒み、数え切れないほどの幼い少年たちを拉致、陵辱、虐殺。最終的には聖職者の拉致・監禁をきっかけに捕まり、絞首刑にかけられました。
ジャンヌとともに行動。異常な頑丈さで与一を翻弄しますが敗北。彼の死により、エンズを構成しているものが同質量の塩だと判明しました。
アナスタシア
最後のロシア皇帝・ニコライ2世の娘。二月革命の際、家族とともに監禁された上、家族・従者とともに超法規的な手段で銃殺されました。
雪国を連想させるクールな女性。氷を使う王女さまということで、4巻のあとがき漫画では「アナスタシアと雪の女皇」と平野先生にからかわれています。
ラスプーチン
“ロシアの怪僧”として、奇怪なエピソードを多数持つ人物。同時代を生きたアナスタシアからは絶大な信頼を得ていました。一説には、ロシアのプーチン大統領の祖父とも言われているようです。
アナスタシアのそばに控えているようでいて、人を操る術を使って自分の手でも世界をかき回します。エンズ側の参謀として権謀術数をめぐらす、食えないキャラクターです。
明智光秀
織田信長に取り立てられたにもかかわらず、1582年の本能寺の変で彼を自害させた張本人。その直後、山崎の戦いで羽柴秀吉に敗れ、同年に没したとされています。
信長を殺せるなら、とエンズ側につくことを承諾。信長の戦略をことごとく見破り、マモン平原の戦いをエンズ側の勝利に導きます。
〈その他〉
最後に、ドリフターズでもエンズでもないキャラクターや、実在しない作品オリジナルのキャラクターをご紹介します。
九郎判官義経
牛若丸としても有名。異母兄の源頼朝のために数々の功績を上げますが、最終的に頼朝の怒りを買い、自刃した悲劇の武将です。モンゴルに逃げ延び、チンギス・ハンとなったという説もあり。
ドリフターズでもエンズでもない中立な立場で、「面白い方」に付くという変わり者。しかし、6巻までの現段階では、どちらかといえばエンズの立場に近いようです。与一との関係が気になって仕方ありません、平野先生!
紫
豊久や信長を異世界へ旅立たせた、公務員のような格好の冷静な男。E.A.S.Y.と対立しており、常に変化する新聞でドリフターズの活躍を追っています。安倍晴明やサンジェルミは彼と関わりがある様子。
E.A.S.Y(イーズィー)
黒髪ロング、ゴスロリ風ファッションの女の子。名前はEternalから始まる言葉の略称のようですが、まだ明確にはわかっていません。紫と同じ組織に属していますが彼とは反発しており、エンズを支援しています。物語の本質は、紫とE.A.S.Y.との代理戦争なのかも?
オルミーヌ(セム)
作者の性癖……もとい、愛を感じさせる巨乳メガネツインテール。十月機関の一員で、廃城組の監視担当をしていたばかりに彼らにいいように使われるように。
実戦経験は少ないですが、導師としては優秀です。
人物の関わりを年表でチェック!
本作には、歴史好きならたまらない偉人・傑物が大集合しています。それゆえキャラクターたちがどの時代に生きていたかを大体でいいのでつかんでおくと、「与一、信長、豊久の時代にはこんなに開きがあるのか」「だから菅野は多聞を知っていたのか」など、改めて発見することがあるはずです。
以下は没年で主要キャラを並べた年表です。
こう見ると、西暦0〜1000年の間に亡くなった=異世界に飛ばされたキャラクターがいないことがわかります。これから登場するのか、それとも黒王の正体がこの期間中に亡くなった人物なのか……。妄想が捗ります。
また、1800年以降(特に1900年代)の人間が多く登場しているのはさすが平野先生というべきか。この時代からは、まだまだ多くのドリフターズ/エンズが登場するかもしれませんね。たぎる。
一目でわかるドリフvsエンズの攻防戦
読み進めるほどに胸が高鳴るドリフターズ対エンズの戦いですが、スケールが壮大なだけに混乱している読者もいるのではないでしょうか?
戦いを理解するポイントは、
- エルフ村に近い廃城組
- オルテの南にあるグ=ビンネン商業連合
- オルテ北にある森林地域
- 北から南へ進軍している黒王軍
のざっくり4つのエリアに分けて考えることです。
6巻までに起きた出来事を上記の4つのブロックにふり分け、各キャラクターたちの動きを追った表がこちら。
1巻の出来事とエリアごとの動き
2巻の出来事とエリアごとの動き
3巻の出来事とエリアごとの動き
4巻の出来事とエリアごとの動き
5巻の出来事とエリアごとの動き
6巻の出来事とエリアごとの動き
作中にはわかりやすい地図が登場していないので想像で補うしかありませんが、誰がどこにいて何をしているか整理しながら読むと、楽しさが倍増するはずです!
終わりに
まず第一に、登場する偉人たちがみんな魅力的。ドリフターズあるいはエンズとなった偉人たちには、死の状況が明確でなかったり、非業の死を遂げたりした者が多いため、つい色々な想像をめぐらせてしまいます。それがまた楽しい。
第二に、ストーリーが壮大でワクワクする上に、伏線を回収したり新たに発見したりするのが楽しい。例えば廃城には、信長と豊久のそれぞれの父親の名前が掘られた石碑が打ち捨てられています。
やたら大きいという廃城……その秘密はいつ明かされるのか…!
ほかにも言いたいことは山ほどありますが、ファンを代表して最後にこれだけ。
平野先生!! 新刊楽しみに待ってます!!