【感想・ネタバレ】違国日記(11)のレビュー

人間はいつから「大人」になるのだろう?

両親の死によって、独身の叔母・槙生に引き取られた中学生・朝。
家にこもりきりの小説家である槙生は、独特な感性の女性。
一方で、朝は両親が死んだことに対して現実感を持てない、大人びた少女。
似ているようで正反対の二人が、日々の暮らしの中でやがて心の距離を近づけていく作品。

槙生が仕事に熱中するのを、さりげなくサポートするしっかり者の朝。その姿はお互いの年齢を鑑みると、ちぐはぐな風景でちょっとおもしろい。
けれど、家の外側や、人間関係のこととなると、槙生は迷いながらも、母性というよりは理性によって、的確な言葉で朝を導く。
15歳の朝にとって、それらの言葉はすぐに理解できないこともある。けれど、現実と照らし合わせながらじわじわと納得していく健気な姿がとても印象的。

では30歳を手前にした自分は槙生と朝、どちらに近い地点にいるのだろう?と考える。
「自分はまだまだ子供」だと思う。けれど、朝が戸惑っている幼い姿を見ると「こうしたらいいよ」と言ってあげたくなることが多々あった。
どんなに大人びていても15歳の朝が大人ではないように、アラサーの私も着実に大人になっているのか、と気づかされる。
槙生を「違国」と感じながらも、朝も確実に「大人」へ近づいている様子を、そっと見守っていきたい。

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Posted by ブクログ

ネタバレ

人が家族になるまで
家族になれるまで
はたまた
人間同士が歩み寄るということ
が丁寧に向き合って描かれている。
どこかにこんな優しい世界があれば良いのにと、
涙が止まらなくなる。

0
2024年05月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ

今年1冊目の登録本。
11巻で終わるとは知らなかったので、手にとってびっくりした。

読めば読むほど、唯一無二の本。
孤独と向き合うこと、相手を尊重すること、相手を思いやること、自分を大切にすること、誰かを大切に思うこと、そして大切な人にあなたは大切と言葉で伝えること…。
その全てが共存して描かれている、大切な大切な物語だった。
漫画としてだけではなく、言葉を大切に選んでいることを感じる。
小説を読むように、描かれていない部分も想像しながら読んでいたような気がする。
ところどころ時間の経過の仕方が早くなったり遅くなったりして戸惑うこともあったけれど、そこも現実に体感する時間の流れのようなリアルさがあって、この作品のすごさを感じた。
楽しい時間はあっという間に過ぎたり、印象的な時間はスローモーションのように覚えていたり、毎日同じ繰り返しのことでも大切に思い出したり。

ラストまでの流れが圧巻で、この物語が11冊も続いていたなんて信じられない。
ラストページが終わると、もう一度最初から読み返したくなる。
この本を私の本当の本棚にお迎えするのが楽しみだ。
きっと私のそばになくてはならない本になるだろう。

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2024年01月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

お正月で全巻読み切りました
言及すべきエピソードが多すぎて、感想が自分の中でまとめきれてない…
これからの人生で何度も読み返すと思うし、
歳をとってもっと深く理解して、体現できるようになりたいと思う物語だった

私は好きな人に『幸せに生きてほしい』と伝えがちだけれど、最終巻のマキオさんが朝ちゃんに伝える
『それでもあなたが幸せでいてくれればいい
って言うと幸せでいなきゃいけないみたいだね
ときどき不幸せでもいいよ』
が、私にはまだ到達できていない愛の深さだった。打ちのめされたなー、、、

夏の映画も観に行こ〜
2時間でどうまとめるねんという感じですが、主演のガッキーが正欲でかなり好演していたから、期待

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2024年01月03日

Posted by ブクログ

ネタバレ


歴史的傑作

完結した今年中に読めて本当に良かった。
立ち会えてよかった。

最後は詩で、「わたしたち」という一人称複数形への帰着。だから(この)あとは、言葉を持たない者たちへのまなざしを追究してほしい。つまり、人間中心主義と言語中心主義(併せてヒューマニズム)の問い直し。

『日記』と銘打たれた本作が、根本的に、言葉を持つ者のなかで閉じてしまっているのは仕方ない。むしろ、その範疇でこれ以上ないほどに誠実で網羅的で倫理的な物語を紡いでくれたとは思う。


出生主義・生殖主義に関してはかなりいい具合に回避出来ているほうだと思うが、当然に完全ではない。

あとは、なんやかんや言って、東京近郊の、都会に住むという点で恵まれた人たちの話だから、次作ではちゃんとそこの出身・居住地の特権性そのものも告発してほしい。もちろん、都会の人間だからこそリベラルな思想を内面化し易いというリアリティはあるので、この作品内部での整合性は高いのだけれど。だからこそ、田舎から都会へ上京してきた『呪術廻戦』の釘崎野薔薇さんのような表象が重要なんだろうな(彼女自身の個人主義、マクロで政治的な視点の欠如という限界も含めて非常に見事な造形である。)



朝の父親の話についてあのように決着させるんだ、という意外性。(いや、もちろん”決着”するような問題ではないし、決着させているつもりもないだろうけれど。)


クライマックスが「詩」であるというのは、一見、本作が漫画であることの否定とも捉えられかねないが、全くそのようなレベルにない。ともすると物語の内容や登場人物たちの造形・関係・”思想”などばかりが取り沙汰されて賞賛されるかもしれないこの物語は、しかし”漫画”としても極めて優れていたと言わざるをえない。『違国日記』の漫画表現について、”わたしたち”はもっと積極的に語るべきだ。その思想や物語面と同じくらいに。

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2023年12月31日

60

ネタバレ 購入済み

特別な作品

人と生きる限りあり続ける違和感、生きづらさ、愛憎の輪郭を鮮明に捉えて言語化してくれる、まきおさんの言葉に何度共感し救われたか。
他者との絶望的な隔たりも、内心に消えることない不安も、諦観に埋もれた孤独も若気の至りも抉るように鋭く描き出しながら、それも悪くないかも、な希望を忍ばせてなんでもなく重なり続ける日常で包み込んでくれる優しい作品。完結巻も愛情と向き合ったまきおさんの言葉えらびと詩に涙止まりませんでした。ときどきは不幸せでも、なんて、本当に不器用で最上級の愛だなって…
良いも悪いも人間というものをよく観たうえでまるっと愛してくれてるような目線が大好きな作家さん、
なかでも自分にとって時別な作品になりました。何度も読み返すと思う。

#癒やされる #感動する #共感する

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2023年12月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

大好きな異国日記が終わってしまった。最初から最後まで、言葉が、色んなことへの捉え方が、それぞれの関係性が、本当に素敵で心の奥の奥まで刺さる話だった。
槙生が朝に、自宅へ迎えたときをなぞるような言葉で、でもあの頃とは全く違う気持ちで、ずっといていいよって言うところ、朝のダイブのところでめちゃくちゃ泣いてしまった。どんなに言葉を尽くしても足りないくらい大事なんだよね。

本当に好きで好きでたまらない作品なのに、自分の拙い語彙力ではこのキラキラした感情を表しきれないことが、悔やまれてならない。

0
2023年08月27日

ネタバレ 購入済み

難しい話だった

全巻読みました。
言葉が難しい。会話が多いが内容をよく把握できない時がある。そんな行間を読む力が必要な作品だったと思う(ヤマシタ先生の作品は他のも割とそんな感じ)。一度読んだだけだったり、片手間でサラッと読むとあっという間に終わってしまったりで話を理解しきれないので、いつもこの作品を読む時は一人で静かに読める時間にゆっくり読んでいた。とても良い作品でした。モノローグも会話も全てを語らず、人物の表情を見てあとは読者がそれぞれ自由に感じればいいという感じ。
でも読解力がないのは私が本をあまり読まない人間だからかも。

#泣ける #切ない #深い

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2023年08月14日

匿名

ネタバレ 購入済み

愛の表現方法

朝と槇生が家族になるまでの話

愛してるだけでは足りなくて言葉を尽くす様がよい。
親が持つ子供への愛を言葉を変えて何度も伝えるので、何度もじんわり染み込んでくる。

読み込みが足りない自覚はあるので、また全部通して読みたい。買ってよかった。

#エモい

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2023年08月10日

ネタバレ 購入済み

最終巻

はーーー終わってしまった。
この巻で終わりとは知らず読みました。
もっと笠町くんとのあれこれも読みたかったし、朝さんのこれからも追っていきたかった。
朝さんの成長だけじゃなく、大人である周りの人間の心の成長もたくさん見させてもらった。

0
2023年08月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

終盤に向かうにつれ、ふたりの感情がよくわからなくなってしまった。言葉が美しすぎるわりに表情がポーカーフェイスだから、素直に染み入るよりも、本当にそう思ってた?と違和感のほうが優ってしまった。
たくさんの人に影響を与える作品だと思うし、総じて良い作品だということは揺るがないのだけど、個人的に絵がハマりきれなかったのだと思う。

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2023年12月31日

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