フェルディナント・フォン・シーラッハのレビュー一覧

  • テロ
    "モラル、良心、健全な理解力、自然法、超法規的緊急避難、どの概念も抵抗力がなく、揺らぎがあります。いかなる行動が今日正しいのか、そしてわたしたちの考えたことが明日もなお、いまと同じように有効かどうか、はなはだ心許ないのが現実です。"(p.106)


    "蒙を啓かれた民主主義が、それでもテロリスト、つ...続きを読む
  • テロ
    トロッコ問題、超法規的緊急避難

    【P158】ベンジャミン・フランクリンの警告「安全を得るために自由を放棄するものは、結局どちらも得られない」
  • テロ
    テロと法規っていう全く相容れない両者を、哲学的観点から読み解く意欲作。その表現方法としてのト書き形式も、ここでは上手くいっている気がする。結末を2パターン書くというのは、逃げというかちょっと反則な気がするけど、テーマがテーマだけに、仕方ない…のか?とはいえ、単純に物語を楽しむという意味でも、結構満足...続きを読む
  • コリーニ事件
    フェルディナンド・フォン・シーラッハの長編作品を初めて拝読した。

    この小説は彼の「懺悔」だ。祖父が元ナチスの高官であるシーラッハが抱えていたものを、私たちは計り知ることは出来ない。

    その「苦悩」がこれを書かせたのではないか。作中の主人公コリー二と同様彼も、先の大戦を根強く引きずっていた。

    彼の...続きを読む
  • 罪悪
    短編集でどれももやっとしたり、おお、と思ったりとなんかしら後味を残されるものばかりで一気読み。
    ただ、前作の犯罪を先に読みたかった…!失敗した!
    また犯罪も読もう、そしてこの作家さんの他の作品も読みたいと思った。
    イルミナティ、子供たち、解剖学、司法当局がなんかよかった。鍵はエンタメチックでこれはこ...続きを読む
  • コリーニ事件
    証拠も証人もそろい、わからないのは動機のみ。
    そして被害者は、子どもの頃世話になった人だった。

    たとえば司法解剖に立ち会ったあとのライアン。
    〈シャツの縞の数を数える。外階段での熱気。タバコ入れの冷たさ。震える手。〉
    カメラワークのような目線、心の動き。
    この作者らしい無駄のない焦点を絞ったような...続きを読む
  • 犯罪
    フェーナー氏は永遠の愛を誓った妻を殺してしまった。
    誓って以来数十年、愛蔵のレコードコレクションを捨てられた時も
    些細な事で怒鳴られた時も彼はただひたすら従順に妻を愛した。
    束縛や支配にすら他人には思えても、それはフェーナー氏だけがわかる愛なのだ。誓ったその時の妻の眼の奥に映った脅えや弱さを守ると決...続きを読む
  • コリーニ事件
    200ページぐらいの本なのだが…日本では、こんな本は書けないんじゃ無いかと思うかな。
    無益な戦争、ナチス時代を背景にした悲劇。そして法律の落度…歴史に翻弄される人々…中々難しい本だと思う。

    小説には、内面的な描写はあるけど、なんだろう著者の描写は、読者側が読んで想像するような書き方が、とても印象的...続きを読む
  • 罪悪
    “青い”の反対はなんだろう?
    この前に読んだ『空気の名前』が青いなら、こちらは。。。黒い?

    高め安定。
    ミステリーファンならこれは読まなくては。
    いやミステリーじゃないか、現実に基づいた犯罪短篇集。
    人って。。。
  • コリーニ事件
    以前の職場でお世話になったS先生は、刑法の研究者で現役の弁護士。囲碁とジャズをこよなく愛し、時おり絵筆も握られる、文人とお呼びするにふさわしい方です。仕事で研究室にお邪魔したときも、趣味の話で盛り上がることがしばしば。今は数年に一度お会いするくらいですが、フェイスブックを楽しく読ませていただいていま...続きを読む
  • 犯罪
    ドイツの弁護士が描く「犯罪」の数々。
    ドイツも非常に治安が悪いことが伺える。しかし弁護士がここまでミステリー風に実際の様々な事件を描けるとは❗
    2012年本屋大賞翻訳小説部門第1位を受賞しただけある!
  • コリーニ事件
    「犯罪」「罪悪」などの短編集で人気を得た著者の初長編。とはいっても200ページもない。短編と中編の間といってもいいくらい短い。しかし内容は深い。

     (簡単な物語の導入部の紹介)

     自動車組立工だったコリーニの職場での評判は、いたってまじめで、勤務態度は申し分なかった。定年まで勤めあげた彼が殺人を...続きを読む
  • コリーニ事件
    この本を読んでいる時には、犯人が被害者を殺害した時には、犯人が実際には手を下してはいなくて、それを主人公であるライネンが暴いて弁護するのだろうかと思いましたが、いい意味で予想が裏切られました。トリックではなく、大きな歴史がその前に横たわっているとは予想だにしませんでした。
  • コリーニ事件
    シーラッハ作品の魅力は、地の文で極力内面描写を行わずに読者に登場人物の心情を想像させ、物語のフレームを描かせるところにあると思っています。本作は初の長編になりますが、短編集『犯罪』『罪悪』で見せてくれた筆致は本作でも健在で、総じて楽しめました。訳者あとがきや瀧井朝世さんの解説が充実しているのも嬉しい...続きを読む
  • カールの降誕祭
    目次
    ・パン屋の主人
    ・ザイボルド
    ・カールの降誕祭(クリスマス)

    短編が3作。
    ぜんぶ合わせても100ページにも満たない。

    そして犯罪が3つ。
    そのうち殺人が2件。
    しかし悪意をもった犯罪者はいない。

    悪意をもたずに起こす殺人。
    それは、犯人にとってはやむを得ない行動であるのだが、第三者から...続きを読む
  • テロ
    憲法裁判所が違憲の判断をしているのに、それでもその法を執行する可能性を示唆していた元大臣。公然とそれを是認する議論をしていた軍部エリートの勉強会。表面上、旅客機を撃墜してはならないと命じながら、撃墜を前提とするかのように、スタジアムの避難を指示をしていなかった上層部(その判断をしたのは誰なのかは極め...続きを読む
  • 罪悪
    「犯罪」に続く短編集第2弾。
    正と悪、罪と罰という風には割り切れない話の数々。
    特に冒頭の何編か、重い影のようなものを置いてゆく。やるせなく、切なく、心に残った。
    簡潔な文章のよさを、今回も感じた。
  • テロ
    ■命の尊さは数で比較できるか

    旅客機をハイジャックしたテロリストが、7万人が詰めかけるサッカースタジアムに墜落させようと計画。 命令に反して、数百人が乗る旅客機を撃墜したコッホ空軍少佐を無罪にするべきか有罪にするべきか、という思考実験的な戯曲。

    非常にナイーブな問題だが、自分が陪審員だとしたら断...続きを読む
  • テロ
    いわゆる読む戯曲かな。上演もされているそうだけど、舞台で観るのはきつそう。一番落度があるのは、スタジアムの観客を避難させなかった当局だと思うけど、被告人の行為がやむを得なかったと言い切るには躊躇する。上の指令に従うのが軍人では?軍人としては有罪だと思う。少なくても英雄として彼の行為を讃える気にはなれ...続きを読む
  • カールの降誕祭
    3つの短編集です。やたらという簡潔で淡々とした文章ですが、内容は衝撃的です。主人公は、秩序とかルールとか常識とかの中では安定して生きているのですが、その枠組みがなくなった途端に壊れてしまいます。なんとなくドイツ人は日本人と似ている気がします。